エネ環こぼれ話 エネルギージャーナル社

エネ環こぼれ話
[過去5〜10 回までのこぼれ話]


原子炉等規制法改正案に盛り込まれた“密告”制度
1999/12/04(Sat)19:49:41 文:清水

 国会で審議中の原子炉等規制法改正案(11月25日に衆院通過)の第66条の2で、「主務大臣に対する申告」として今回次のような規定が新しく設けられた(要旨)。
 「原子力関係事業者または使用者がこの法律に基づく命令の規定に違反する事実がある場合は、これらの従業者はその事実を主務大臣に申告することができる」「原子力関係事業者または使用者は、前項の申告したことを理由として、その従業者に対して解雇その他不利益な取り扱いをしてはならない」
 つまり、これは原子力発電所や核燃料加工工場などでおかしなことが行われている場合に、それについての「密告」を勧めるものであり、仮りに「密告」があっても会社側はそれを理由に不利益な扱いをしてはならないという規定だ。こうした規定は労働安全衛生法などの法律にままみられるらしいが、かなり異例な条文ともいえよう。案の上、先月24日に開かれた総合エネルギー調査会の原子力部会では、複数の委員からその運用に際して慎重な扱いを求める声が出された。これに対して、通産省の事務当局は衆人監視ということもあってかムニャムニャ答弁で切り抜けたが、たしかに難しい問題かもしれない。日本社会ではもっともきらわれる「働いている仲間でも裏切れ」ということであり、そこでの職場の雰囲気自体がトゲトゲしいものとなるだろうし、かえって「安全確保への連帯感」が損なわれる可能性もあるからだ。おそらく、より重要なのは常時の安全対策の仕組みが地域社会や一般国民に常にピカピカのガラス張りになっているということかもしれないが。
              (参照号数 No1574)



ダイオキシン対策法とクロス・メディア・アプローチ
1999/11/17(Wed)15:36:47 文:

 ダイオキシン対策法の環境基準・規制基準等の案について、パブリックコメントが開始された(詳細は環境庁ホームページhttp://www.eic.or.jp/kisha/199911/66185.html)。この法律で注目すべき点の一つが、一つの物質に着目し、同時に複数の環境領域を規制の対象にした「クロス・メディア・アプローチ」を導入したことだと思う。
 環境規制の場合、たとえば大気の規制基準で工場の排気ガスの規制を導入すると、同じ物質が排水や廃棄物として、濃縮された形で排出するということがかつてはあったらしい。すなわち煙突への規制導入で、別の環境領域にしわ寄せを及ぼす可能性があるということだ。
 特にダイオキシンのような難分解性物質の場合、大気の規制が水質や土壌など他の環境領域にしわ寄せをしてしまうことの影響は大きいと考えられる。こうした点は環境庁もかねてから指摘していたことだが、法律という国民にとってわかりやすい形にまとまったのは初めてのことだ。
 同法や今回の基準案への評価としては、基準や規制が甘いという批判がマスコミ紙上ですでに出ている。一方で関係者には、「知見が確立していないのに環境基準等を設定するのは時期尚早ではないか」などという別な見方がある。私も記者として、それらの点は引き続き検証していきたいと思うが、まず複数の環境領域の規制を実現したことは評価しておきたい。

本誌参考号数 : No.1571


【こぼれ話 最新版】

【TOP】 【今月のキーワード】 【行事予定カレンダー】 【エネ環ダイジェスト】
【書籍紹介】 【最新号見出速報】 【今週の注目記事】 【記事データベース】
【こぼれ話】 【省エネ・新エネ】 【出版物案内】 【本誌紹介】 【会社概要】 【リンク集】