今月のキーワード エネルギージャーナル社

今月のキーワード

産業界も気候変動対策に舵を切る
2018/12/26(Wed) 文:(山)

 清少納言の「枕草子」には「ただ過ぎに過ぐるもの」のとして「ほ(帆)かけたるふね(舟)。人のよはひ(年齢)。春、夏、秋、冬」とあります。地球の回転の速度は変わっていないのに、歳を重ねるごとに時の流れが速くなっていくように感じます。人間の感性は1000年以上も前とそうは変わらないのかもしれません。というわけで“早いもので”今年も残すところ半月足らずとなりました。そこで本誌は「創省蓄エネルギー」今年の十大ニュースを掲載しました。
 話はかわりますが、今年はわが国の産業界で「脱炭素」に向けた流れが大きく加速しました。事業で使うエネルギーのすべてを再生可能エネルギーでまかなう「RE100」に加盟した日本企業は昨年まで3社でしたが、今年は10社が加わりました。これは十大ニュースでも取り上げています。
また日本気候リーダーズ・パートナーシップ(J−CLP)は国連気候変動枠組条約第24回締約国会議(COP24、ポーランド・カトヴィツェ)が始まる前の先月30日、「パリ協定に基づく長期成長戦略への提言」を発表しました。J−CLPは「脱炭素社会へ先陣を切ることが自社にとって次なる発展の機会」と捉え、2009年に設立され、現在、大企業を中心に93社が加盟しています。
 提言は脱炭素社会の方向性を共有、目的地とそこに至る経路について具体的なシグナルを発することが必要として、以下の5項目をあげています。@国民全体で気候変動への危機感を共有 A「脱炭素ビジネス立国」を掲げる B2050年温室効果ガス排出ゼロ Cカーボンプライシングと公共投資による脱炭素インフラの整備 D脱炭素ビジネスへの「転換マネジメント」の仕組みを構築。
 このように気候変動対策に後ろ向きとみられていた産業界も大きく舵を切りつつあります。世界的にも脱炭素に着手した企業がビジネスで優位に立てる時代となってきたように感じます。来年こそ産業界だけでなく、国民全体が脱炭素社会の形成に向けて行動を起こす年ではないでしょうか。本誌もその一助となるよう頑張りますので、引き続きご愛読のほどよろしく願い申し上げます。




いびつな日本の再生エネ事業を脱却する契機に
2018/12/06(Thu) 文:(水)

 経済産業省が打ち出した事業用太陽光発電(PV)の未着工案件に対するFITの買取り減額措置が侃々諤々の議論になっている。自民党の再生可能エネルギー普及拡大議連(柴山昌彦会長)は先月8日に会合を開き、大手PV事業者から減額措置案に対する意見をヒアリングしたが、自民党会合では珍しく経産省への過激な批判が集中した。
 例えば、これまで200件・250万kW以上の太陽光発電関連ファイナンスを扱ったという法律事務所の弁護士は、「今までで最悪の制度変更だ。経産省が減額措置案を発表したわずか1週間で25億、40億、16億円の融資がストップした。新規案件だけではなく、全く問題なくもう少しで運転開始する事業までリスクありとみられている」と、事業継続の危機感を強く訴えた。続けて法制度の運用面でも瑕疵があると指摘。FIT制度の買取価格と期間の20年は法律で保証されているものであり、これの着工が遅れているからといって過去に遡って不利益な変更をすることは法治国家ならば「禁じ手」だ。少なくとも告示変更などの安易な対応ではなく法律改正が必要なはずと指摘、FIT制度に対する内外の信頼を失墜させると断じた。業界関係者によると、今回の措置によって大手金融機関が投融資しているPV案件の計3000億円程度が焦げ付く可能性があるという。
 経産省の未着工案件に対する減額措置案は、再生エネの普及拡大に真面目に取り組む良質の事業者と一時の利潤稼ぎだけを狙いとした悪質事業者を峻別し、中長期的な再生エネの主力電源化に脱皮するショック療法ともいわれる。ただ、ショック療法とは言っても日本の再生エネ市場が成熟し、制度変更リスクを十分吸収できる余地があればの話であろう。
 特に今回議論になっているのが、着工遅れの原因が事業者自らの責に帰さない、例えば環境アセスや林地開発等の許認可遅れのケースの扱いだ。確かに手続きに4〜5年もかかる事例があるかもしれない。しかし冷静に見れば、急斜面の崖地や景観を無視した乱開発など近隣住民との紛争事例がとみに最近増えているようであり、こうした強引な開発手法が時間のかかる要因にもなっているわけで、いびつになっている日本の再生エネ事業を脱却させる契機かもしれない。




再生可能エネルギーの自立と連系を
2018/11/22(Thu) 文:(一)

 9月上旬の北海道胆振東部地震では、離島を除く道内の全電源が停止する大規模停電(ブラックアウト)に陥った。九州では10月半ばから11月にかけての週末(土日)、一部の太陽光発電所や風力発電所を止め、出力が抑えられた。ブラックアウトは地震の被害が北海道電力の想定を上回り、強制的に供給エリアを遮断する強制停電を繰り返しても、電力供給が追いつかなかったことが原因。一方、九州電力が実施した再生可能エネルギーの出力制御は、工場や事業所が休みになって電力需要が減る週末の日中、太陽光発電や風力発電がフル稼働すると、供給過剰になってしまう恐れがあったため。何とも対照的な事態だ。
 電力の送配電は需要と供給を一致させる“同時同量”が原則。電力システム改革の時流と相まって再エネの導入が進んだが、さまざまな課題も浮き彫りになってきた。今後の再エネ活用は自立化と、連系がキーワードになるだろう。
 自然豊かな北海道は風力発電の先進地で、広大な土地を生かした大規模太陽光発電所(メガソーラー)も多い。一方の日射量に恵まれた九州はメガソーラーのメッカとなった。両発電方式とも自然の気象条件によって出力が大きく変動する。送配電を担う電力会社にとって、出力変動が大きい再エネは扱いにくい存在。こうした再エネ電力が増えてくると必然的に、電力会社側の調整は難しくなってくる。実際、北海道電によるブラックアウトからの復旧過程でも、風力発電などの接続は影響が出にくいように、火力発電所などが再稼働して電力系統がある程度の規模になってからになった。ただ、北海道のブラックアウトでも太陽光発電システムがある家庭の85%が自立運転モードに切り替えて発電電力を自家利用し、蓄電池を併設した家庭では2日間程度、普段通りに生活できたという。
 分散型電源の再エネに蓄電池を組み合わせれば非常時、マイクログリッド(小規模電力網)として運用できる可能性が広がり、送配電網との連系も容易になる。再エネ導入に併せて、蓄電池や電力を地域間で融通し合う連系線などを整備する仕組みが求められる。



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