今月のキーワード エネルギージャーナル社

今月のキーワード

省・創エネルギーの超大国を目指せ
2022/05/11(Wed) 文:(水)

 3月16日23時36分、福島沖を震源とする最大震度6強が発生、エリアにあった計14基・約650万kW相当の火力発電所が停止、広域ブラックアウトを自動的に防ぐ周波数低下リレー(UFR)の起動によって東京エリアで最大約210万戸、東北エリアで同約16万戸が停電(約3〜21時間)となった。その後も需給の不安定状況が22日まで続き、真冬並みの寒波襲来と悪天候による太陽光発電の大幅出力低下(通常の1/10)もあって停電必至の状況だった。
 資源エネルギー庁幹部も一時は広域停電を覚悟したというほど需給がギリギリに迫り、21日夜初めての「電力需給逼迫警報」を発令し、各自治体や商工団体、業界団体などに節電の協力を要請。萩生田経済産業相は二度の記者会見で「このままでは広範囲の停電を行わざるを得ない状況が近づいている」と、危機感を露わにした。最終的には広域停電という最悪事態を間一髪回避できたが、その大きな要因は当時の節電目標量の最大120%を実現した省エネ・節電の効果だった。経産省は消灯(都庁、スカイツリー等のライトアップ中止)、暖房の設定温度抑制、自家発電の最大活用や電力融通、工場の稼働停止などを要請、業界団体等もこれに短時間で応じた。
 ある宇宙飛行士が人工衛星に乗って漆黒の宇宙から地球を眺めた時、ぼんやりと浮かんだ日本列島がほかのどの大陸よりもことのほか明るく浮かんでいたというコメントがあった。あるいは欧州へ出張や観光などで出かけた人からは「どこでも日本は明るすぎる」という話をきいたことがある。そうした冗長的な話だけではなく、わが国のGDP当たりのエネルギー効率は下がり続け、この10年では先進国中で最低水準とのデータもある。
 経産省は今回の一連の対応で、当初は従来通り「無理のない範囲での節電のお願い」を要請したが、いきなり需給逼迫警報に変わり需要家を困惑させた。この先もロシアによるウクライナ侵攻が長引き、エネルギー需給の厳しさと高価格の継続が必至の情勢だ。ここはエネルギー輸入国・日本が底力を示す時であり、わが国の自衛のためにも年間5〜10%の省エネを実現するような“攻めの省エネ”そして供給削減と同じ効果を持つ需要抑制≒創エネを具体化する時期ではなかろうか。わが国にはそれを実現する超一流の産業技術力が存在するはずである。




気候変動問題、トップの説明責任が問われる時代に
2022/04/20(Wed) 文:(M)

 朝日新聞に掲載されたサッカー・Jリーグ前チェアマンの村井満さんのインタビューを読んだ(3月15日付)。数々の窮地を振り返る言葉から、トップに求められる姿勢が見えた。
 村井さんはリクルートからスポーツビジネスの世界に転じ、プロサッカー組織の最高責任者を3月中旬まで8年間務めた。前任者が導入したばかりの制度の廃止、動画配信の開始、コロナ禍での生き残りをかけた戦略転換を次々と決断。「問題が起きても、何もせずにいれば物事や時間は流れていく。そうすれば、責任を取る必要もなく、あつれきも生まない」と事なかれ主義を批判した。Jリーグの命運を賭けて政府と渡り合ったエピソードも明かしている。企業の社員にも頼もしい“BOSS”だろう。
 その真逆というか、不安になる発言を聞いた。環境対策に熱心な企業グループに加盟するA社幹部が「グループには社内の別部署が入っている」と明かした。企業グループは炭素税導入に賛成だが、A社が属する業界団体は「炭素税反対」なので、幹部は「炭素税に反対です」とあっさりと言う。
 多様な意見が許されることは、社内の風通しが良くて健全な証拠だ。しかし、外から見ると企業グループのA社も業界団体のA社も同じ会社。「違う部署」という説明で世間は納得するだろうか。もし記者会見でA社の社長が炭素税について聞かれた時、「部署によって意見が違います」と“事なかれ主義”でやり過ごすのだろうか。
 ESG(環境・社会・企業統治)を評価する投融資が盛んになり、投資家も環境対策に目を向ける。4月から東京証券取引所のプライム市場に上場する企業は、気候変動に関連した情報開示が必要となる。環境問題について経営者の説明責任が問われる時代になった。
 また4月は、多くの若者が社会人の仲間入りをする。「環境問題の解決に貢献したい」と希望を抱いて入社した社員も多いはずだ。それにホームページで「カーボンニュートラルに貢献します」と宣言している企業も少なくない。「別部署でやっている」と言われた新入社員はどう思うだろうか。社内の曖昧な発言をなくすには、対応を決断できるリーダーの存在が求められる。




ガソリン補助で本気度を疑うCO2削減政策
2022/03/30(Wed) 文:(水)

 岸田政権は国内経済運営の緊急措置として石油元売り事業者に対する補助金交付を決定、経済産業省は10日から1旭あたり現行5円から17.7円に増やした。これへの財源手当ては約3600億円と言われているが、現下の緊迫したウクライナ情勢があり、相当長引く措置になる可能性が高い。さらに国会では揮発油税として暫定的に上乗せしている分を外す、いわゆる「トリガー条項」の適用も協議が続けられている。いずれも今夏の参議院選挙を意識してのことだ。
 しかし、緊急的な対応とはいえこうした政府の措置は国際的な気候変動対策の緊要性、カーボンニュートラルの実現や2030年に向けた中間目標の達成からみれば真逆の政策だ。岸田首相の肝煎りで検討中のクリーンエネルギー戦略とも相容れない。国会は20年11月、全会一致で「気候非常事態宣言」を決議しており、それとの整合性もない。また先進国を中心に化石燃料系への補助金や需要促進策はご法度としており、それをも無視した恰好だ。
 確かに、世界的な石油の需要回復基調にロシアのウクライナ侵攻が加わり原油取引価格が1バレル130ドル以上に急騰、経済活動と国民生活の身近なところで大きな経済負担が強いられているのも事実だ。あの頑迷固陋のプーチン率いるロシアを見る限り長引く可能性があり、そうなると今回のガソリン等補助対策もエンドレスになるかもしれず、CO2削減対策の優先順位は大きく後退しかねない。山口環境相も「今は非常事態なので仕方がない。柔軟に対応することで危機は乗り越えられる」と述べ、温暖化対策はこの10年が“勝負の年”と強調しているのとは別人のような認識を示していた。
 国際エネルギー機関は8日、21年の世界のCO2排出量が前年比6%増の363億トンで過去最高になったと発表、世界の排出削減は待ったなしだ。ロシアへの制裁措置の一つにサハリン2プロジェクトの是非が俎上に上がっているが、このわが国エネルギー輸入分に相当する6%をこの際日本全体で改めて省エネルギーすることで対応したらどうか。ウクライナ国民に対する強い連帯にもなる。宇宙衛星から地球を眺めると、他の国に比べて日本だけがことのほか明るいという省エネ対策の不十分さを見直す契機にもなるはずだ。



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