今月のキーワード エネルギージャーナル社

今月のキーワード

必至となるか中央省庁再々編の足音
2018/05/22(Tue) 文:(水)

 財務省での公文書改ざんやセクハラ不祥事など一部官僚組織による国民の信頼を裏切る行為が相次ぎ、2001年以来の中央省庁再々編を検討する動きが強まっている。すでに自民党の行政改革推進本部(甘利明本部長)が役員会で現行体制・組織の課題洗い出しを確認したほか、5月以降新たな方向性に関する議論を行う方針だ。
 現在の中央省庁は1府12省庁体制を基本として、これにその時々の重要課題を担務する兼務または専任の担当大臣を置く。当時の1府21省庁という大組織を、縦割り行政を排して政治主導による政策決定を目指すとして、強大な権限を持つ内閣府の新設や10以上の局を抱える総務省、厚生労働省の創設とともに組織のスリム化も図った。
 そうした組織改編から20年近くたち、官僚組織の肥大化が目立つ一方で少子高齢化に伴う行政ニーズ、電子政府化の要請、地球温暖化対策の強化と再生可能エネルギーの主力電源化に伴う既存インフラの再構築など、現在の縦割り一府省完結主義では対処できなくなっている。加えて「森友学園」と「加計学園」の問題では、安倍首相への官僚による忖度が組織ぐるみで公文書改ざんという行為に発展、安倍政権の支持率低下を招いている。ここは人心一新、霞が関の再々編に打って出て国民の信頼を回復させ、安倍政権の延命につなげようという戦略であろう。ただ、膨大なエネルギーと政治力が必要となる“体力”が安倍政権に果たして残されているかどうかが微妙だ。
 ではどのような霞が関の再編が望ましいか。財務省の分割再編や巷間指摘されている内閣人事局の見直しとか、単なる組織いじりにとどまってはならない。組織が必要となる前提にこそ目を向けるべきだ。例えば、@当たり前となっている単年度予算編成方式を2年ごとに変更、A一府省庁での政策展開完結主義の見直し(同じような行政組織の廃止)、Bほぼ無用となっている法律・制度の統廃合――など、大胆かつ繊細に次世代のニーズに対処できるようにすべきと思う。特にBは地味だが重要と思われ、現在ごまんとある法律のスクラップと廃止を具体化して、行政のスリム化と余力の確保に結び付けるべきではないか。




石炭火力の新増設−法的規制は避けたい
2018/05/11(Fri) 文:(一)

 環境省が3月下旬に公表した2017年度の電気事業分野における地球温暖化対策進捗状況評価で、環境負荷が大きい石炭火力発電をめぐって課題や懸念を示した。同省は電力業界の自主的な温室効果ガス排出削減の取り組みを前提に、石炭火力の新増設を容認する姿勢だったが、ふたたび疑念を強めている。自主的な取り組みを徹底し、法的規制だけは避けたいところだ。
 現状で国内の二酸化炭素(CO2)排出量のうち、電力部門が約4割を占めている。同部門の低炭素化が、温室効果ガス排出削減のカギを握るのは自明の理。だが、東日本大震災後の電力需給逼迫と電力自由化を背景に、安価な石炭を燃料とする火力発電計画が相次いだ。
 15年に地球温暖化対策の新たな国際枠組み「パリ協定」が採択されたが、政府はそれに先立ち、日本の30年度における温室効果ガス排出量を13年度比で26%削減する目標を決めた。前提となる30年度の望ましい電源構成(エネルギーミックス)で石炭火力の割合は26%程度とされ、これに合わせて電気事業者35社は同年、30年度に販売電力量1kWh当たりのCO2排出量を示す排出係数0.37kg程度、火力発電所の新設に当たり実用化できる最良の技術(BAT)を活用することにより年間で最大約1100万tの排出削減という目標を設定している。
 しかしながら、石炭火力の新増設計画は50件近くあり、計画どおり建設されると目標達成が危惧される。当時の望月義夫環境相は履行を担保する仕組みがないことから、環境影響評価法に基づいて事業者が提出した環境配慮書に対し意見書で「是認しがたい」を繰り返した。
こうした状況を受け、電力業界が自主的に取り組みをチェックする電気事業低炭素社会協議会(電力会社と新電力42社加盟)を設置し、翌16年に後任の丸川珠代環境相が経済産業省との間で新設容認の合意に至った経緯がある。ただ、同協議会は任意団体で拘束力を持たず、目標達成に向けた道筋を描き切れていないのが実態だ。
 このままでは2年前の議論に逆戻りしてしまう。消費者が“環境に優しい”電力自由化のメリットを享受できるように願いたい。




河野外相のエネルギー政策への深謀遠慮
2018/04/06(Fri) 文:(水)

 2月19日、河野太郎外務大臣に提出された「エネルギーに関する提言」の内容は、霞が関の官僚をざわつかせるのに十分だった。提言は「日本の新しいエネルギー・気候変動外交の方向性をまとめた」としているが、その矛先は経済産業省が検討中のエネルギー基本計画に向かったものだろう。提言の中身は、所掌する外交政策に対する課題指摘というよりも、従来の価値観にしがみつく国内のエネ政策に対する痛烈な批判となっている。
 そのエキスを拾ってみると、▽各国はパリ協定が求める脱炭素社会の実現に邁進しているがその速度は日本を遥かに上回る、▽日本は再生エネの拡大で先行する諸国に水をあけられた、▽世界の努力と齟齬ある政策を続ければ、カーボンリスクを重視する世界市場でビジネス展開の足かせとなり、国際競争力を失う、▽エネルギーのことをエネルギーだけで考える時代は終わった――などなど。特に最後のフレーズは経産省への最大の当てこすりだろう。
 提言を読んだ経産省の某課長は、「政府方針にフライイングしているどころか、所掌の枠を超えている」と、不快感を隠さなかった。世耕弘成経産相はエネ基見直しに関して、「2030年目標のエネルギーミックスの見直しは必要ない」と再三言明しており、河野外相が提言を踏まえたアクションを起こせば「閣内不統一」と批判され、政府内調整も難しくなる。また中川雅治環境相も、50年に向けた低炭素社会づくりへの礎として、石炭火力の削減と再生エネの主力電源化を提示、外務省―環境省の連合軍ができる可能性もある。
 ただ外務省の有識者会合が河野大臣に提言した文書は、外交を進めるうえでのあくまで「参考」にするという位置づけで、それ自体が重要な役割を果たすものではない。形式的には河野大臣が提言を受けたとなっているが、しかしこの会合を河野外相自ら主導し数回出席するなど、この種の会合では異例ともいうべき力の入れようだった。当然、政治家として一時のパフォーマンスでは済まされない責任が今後も要求されよう。
 「森友学園問題」で安倍長期政権が先行き不透明になってきた。河野外相が再生エネを主力にした日本再興と、封印していた脱原発を旗印に「ポスト安倍」に挑む姿が見られるのだろうか。



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