今月のキーワード エネルギージャーナル社

今月のキーワード

常連「化石賞」の安易さと政府の沈黙
2023/01/20(Fri) 文:(水)

 エジプト東部のシャルム・エル・シェイクで開催されていた27回目の国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP27)は当初予定の会期(2週間)を2日延長、11月20日に気候変動対策全般の強化を求める「シャルム・エル・シェイク実施計画」や2030年までのCO2等排出量削減計画の強化、途上国が強く主張していた気候変動の悪影響に伴う損失と損害支援のための「ロス&ダメージ基金」(仮称)の設置などが採択された。参加者の帰国チケット時間ギリギリまで最後の結論が出ないというのは毎度のことだが、それだけ全体合意の綱渡り状況が続いているのもこの国際会議の宿命とも言えよう。
 我が国からは西村明宏環境相を筆頭に外務省、環境省、経済産業省など10省庁の関係者、同時に開催されたサイドイベントには30以上の企業・自治体・団体・環境NGOが参加、温暖化対策への積極的な取り組みを発信した。なかでも我が国が海外環境協力事業として特に力を入れているパリ協定第6条規定の「二国間クレジット制度(JCM)」では、昨年のCOP26会合での日本主導による実施指針決定に引き続き詳細ルール(報告様式・記録システムの要件等)の策定を主導するなど、重要な役割を果たした(本誌でJCM実施企業の取り組みを連載中)。
 それにしても解せないのは国際的環境NGO(気候変動アクションネットワーク=CAN)が地球温暖化対策に後ろ向きな国にバッドジョーク賞として授与する恒例の「化石賞」の日本授与と、その妥当性をほとんど分析することなく毎回取り上げる大手メディアの報道姿勢である。同様に、授与に対して何の反応も示さない日本政府の対応だ。日本の化石賞授与は1999年のCOP5を皮切りに毎回のように受賞、今回も米国、ロシア、エジプトなどと一緒に名を連ねた。我が国はパリ協定の目標1.5℃に沿った削減対策を国あげて実施、毎年のCO2排出量は削減傾向になっているにも関わらず、恣意的な物差しで選定するというのは公平性を欠く。懸命に節電などを実践している国民からすれば授与は納得できるものでなく、環境省もその不当性を反論すべきだろう。
 ここ数年を見れば世界のCO2等排出量の約40%を占めているのは中国と米国であり、特に中国は28%強を占めしかも2030年まではまだ増やし続ける方針という。そうした世界最大の排出国・中国こそ授与国にふさわしいはずだが、最近自国に有利な国際世論形成に熱心な中国から鼻薬でも効かされているのだろうか。




生物多様性のCOP15間近、日本は何を主張?
2022/12/19(Mon) 文:(M)

 先日、東京都調布市にある都立神代植物公園に出かけた。武蔵野の面影を残す雑木林をめぐり、4800種の植物を1本ずつ見て歩くだけですぐに夕方になった。最後はベンチでコーヒーを飲むと、喧騒を離れた場所でリフレッシュできたと感じた。他にも親子や学生、老夫婦がバラ園や芝生公園でくつろいでいた。自然は人に癒やしを与えてくれる。
 紅葉の季節を迎えた各地の景勝も観光客でにぎわっている。自然を目当てに人が集まれば、周辺の商業施設にも経済効果が生まれる。こうした誘客も自然の力だ。もちろん生態系保全や二酸化炭素(CO2)吸収による気候変動対策の機能、防災、都市の魅力向上の効果もある。
 海外でも自然の多様な機能が注目されており、欧州では政界や経済界のリーダーが「Nature based solutions」という言葉を使う。日本語で「自然を基盤とした解決策」と訳され、通称「NbS」と呼ばれる。生物多様性に貢献しながら他の社会課題も解決する自然の保護・再生活動を指す。
 CO2の排出削減だけでは地球温暖化の進行が止まらず、欧州のリーダーたちはNbSにも気候変動対策を担わせようと主張している。一方の途上国はNbSに警戒する。気候変動と生物多様性のそれぞれで資金支援を得たいが、NbSの考えで同時解決となると獲得できる資金が目減りする。
 活発な議論を尻目に、ある日本企業の幹部は別の心配していた。欧州の有識者と会話すると、手つかずの生態系を守ることが自然保護という思想があると感じるためだ。一方、日本では人が手を入れながら自然を守ってきた。その代表が里山だ。もし欧州流の価値観で自然の改変を一切許さない自然保護のルールが決められると、日本流の自然共生は認められなくなる。その幹部は日本が正当な評価を受けられなくなると危惧する。
 気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)が終わると、12月には生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)が開かれ、国際ルールとなる「ポスト2020生物多様性枠組み」が話し合われる。その原案にはNbSの発想で生態系の機能で温室効果ガス排出量を削減する目標がある。また、ビジネスによる生態系への悪影響を半減させる目標があり、日本企業も強い関心を寄せる。
 自然保護と言っても国や立場によって利害や思想が異なり、激しい交渉が予想される。日本政府は何を主張するのか、戦略を問いたい。




陸上風力開発と劣化する国土環境の保全
2022/12/02(Fri) 文:(水)

 かつての石炭・石油が主役だった高度経済成長時代を含め、ここ数十年にわたって我が国の国土開発のあり方を問い、地域の産業立地や公共事業などに対して計画の是正を求める運動を続けてきた日本自然保護協会が近年の大型陸上風力開発事業の進め方に危機感を募らせている。
 同協会が10月に公表した調査結果によると、現在国の法アセス対象となっている大型風力発電事業計画(最大出力計5万kW以上)は全国に318件あり、そのうち約14%の件数が自然公園内にかかっているほか、植生自然度(国土の植生を人間に改変された度合いによって1〜10の等級づけしたもの。環境省の5年ごと調査で1は市街地、10は自然草原を指し、これに近いほど自然度が高い)が9(自然林)以上に該当する原生的な森林エリアが数多く含まれているという。特に北海道、東北、九州、四国エリアでの事業計画に多いようだ。
 これらエリアの事業計画には、自然環境保全法で学術上重要な群落として保護すべきとリストアップされている「特定植物群落」が全体の15%含まれているほか、保安林内での計画が90%以上、また希少鳥類に指定されているイヌワシ・クマタカの生息地が全計画地の1/4〜1/2に存在するという。
 こうした数百年手つかずだった良好な自然植生が維持されているエリア周辺で、特に大型の風力発電開発計画が目立ってきたのは、2020年に河野太郎規制改革・行政改革担当大臣が就任して規制緩和のタスクフォースチームを設置し、再生可能エネルギー事業関連制度の規制や手続きなどを次々と緩和、事業の効率性と経済性アップを容認したことが契機と言われている。環境アセス制度も例外ではなく、審査期間の短縮などが実現している。
 もちろん国土保全・自然保護だけが唯一の価値観ではなく、独りよがりの考え方を押し付けてくることもあるかもしれない。問題なのは再生エネ導入拡大という国策にも近い重点施策に便乗して、自然生態系を無視した安易な開発計画がかなり登場していることだという。例えば同協会は陸上風力開発トップ企業のユーラスエネルギーをあげている。国連の生物多様性目標の「30by30」実現を進めている環境省は、国土の森林吸収源として国際約束したCO2排出削減量分の10%程度を予定しているが、排出削減対策の強化だけでなく、自然植生など総合的な国土保全による効果も考慮してほしいものである。



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