今月のキーワード エネルギージャーナル社

今月のキーワード

わが国初の「ブラックアウト」発生
2018/09/21(Fri) 文:(水)

 小説の世界だけかと思っていた「ブラックアウト」がわが国で初めて発生した。今月6日の北海道胆振地方を震源とする震度7の地震が引き金となって、大主力電源の北海道電力・苫東厚真火力発電所(出力計165万kW)がトリップ、道全域の295万戸が約1日半一斉停電となった。昭和20年代に現在の10大手電力会社体制になって以来、これだけ広域的に事前予告なしに大停電となったのは初めての経験だ。
 「ブラックアウト」というタイトルの本が数年前に電力関係者の間で話題になったことがある。中身は某国の工作員がわが国に決定的な打撃を与えるため、柏崎刈羽原発近くの送電鉄塔によじ登ってダイナマイトで破壊、大停電を発生させて首都圏に経済的・社会的混乱をおこして、自らの目的を成就するという内容だった。
 わが国は常々、電力の安定供給を最優先政策として掲げ、大停電の確率は欧米とは違って10年に一度位であり、それだけ電力供給の品質が高いネットワークが築かれている、と経済産業省は今日まで胸を張っていた。あの東日本大地震+福島第一原発事故においても、計画停電はされたが突然のブラックアウトはなかった。今回は想定外の地震が大規模発電所を直撃したとはいえ、本当に防げなかったのか十分な調査と検証が必要だ。そうでないと再度起こる可能性がある。
 今回の大停電を起こした直接原因は、北海道の当時の需要ピーク約380万kWのほぼ半分を賄っていた苫東厚真が地震の衝撃でボイラー蒸気漏れや火災をおこしたことだが、唯一の主力電源がこんなにも脆いものなのか。きちっとしたメンテナンスをやっていたのかどうか。大手電力は近年の激しい電力間競争を勝ち抜くため、不要不急のコスト削減、特に送電系統設備や発電所機器のリニューアルなど修繕費の先送り措置が顕著になっている。欧米式の競争至上主義の導入が本来の公益事業という役割を毀損していないのかどうか。
 もう一つは集中大規模電源供給方式の再検討である。これだけ大量の再生可能エネルギー導入が進んでいるにもかかわらずリスクの高い一点供給方式がとられ、分散型電源との機能分担が未だにできていないことだ。原発という大電源の扱いも含めて早急にあるべき姿の提示と議論が必要といえよう。




隔靴掻痒の気候変動適応対策
2018/09/03(Mon) 文:(水)

 8月の後半だというのに全国的なこの夏の猛暑がまだ収まらない。1日の最高気温が40度を超えるような地域が出現し、「命の危険がある気象条件」という警告がテレビで何度も流された。
 こうした地球温暖化が引き起こす気候変動対策への抜本的な対応策は国際政治の舞台や国内でも先送りされ、原因のCO2等排出を世界各国が自主的に削減する「パリ協定」が発効、年末にポーランドのカトヴィツェにて開かれる締約国会議(COP24)でその具体的な内容を決定しようとしている状況だ。つまり地球温暖化の進行→気候変動による被害の拡大に政治も行政も追いつけないという現実が我われの目前にあることになる。
 「気候変動適応法」という法律が先の国会で成立、年内12月までに施行される。簡単に言えば、この法律は一定の地球温暖化の進行はもう止められないから、気温上昇が進んでも被害が最小になるように高温耐性品種の普及や亜熱帯・熱帯果樹への転換、防潮堤など公共インフラの再整備を計画的に進めるというものだ。ただ、道路・河川・ダムなどの公共インフラ事業と農漁業などを全く所管していな環境省主導の法律のためか、具体的な措置を見ると「気候リスク情報等の共有と提供を通じた理解と協力の促進」にトーンダウン、そのための情報システムと拠点づくりに化けている。これでは現に被害を受けつつある国民にとっては隔靴掻痒の感覚ではないか。
 いま大事なことは三つのことに最重点で取り掛かるべきである。一つは、従来の公共事業が前提としていた安全指針等を総点検し、例えば30〜50年に1回の稀有な気象条件に耐えるという設計・構造物でよいのかどうか。ダムの放水基準なども当然点検すべきであろう。二つは、その総点検結果を反映させた新たな公共事業政策を立案することだ。三つは、被害を被った住民らの保障や生活再建がどんな形で行われるのか、被害の受け損なのかそれをつまびらかに明らかにすべきだろう。こうした対応は何も公共事業分野に限ったことではない。停電も従来の想定をはるかに超えて頻発するかもしれない。西日本豪雨被害では保険会社の支払いが台風以外の水害では過去最高となって保険会社を慌てさせたという。気候変動の影響は過去の常識を根底から崩しつつある。




本当に間に合うのか、気候変動対策
2018/08/27(Mon) 文:(水)

 この7月から8月にかけて日本も世界も記録的な猛暑が続いている。日本列島の最高気温は7月23日に埼玉県熊谷市で41.1度、8月6日に岐阜県下呂市で41.0度を記録するなど、歴代上位10の観測地点のうち実に4地点が今年の7〜8月に集中、まさに猛暑というより「炎暑」という言葉がふさわしい気象異変だ。暑さだけではない。西日本一帯を襲った豪雨による大規模な土砂崩れやダムの決壊、河川の氾濫による多くの犠牲者と建物の損壊、欧米・中国でも記録的な高温や豪雨、山火事などが相次ぎ、まさに地球規模の異変が深刻化しつつあると言えよう。実はこうした地球規模の異変は、20年以上前からIPCC(国連気候変動政府間パネル)が指摘しており、この夏におきている気候変動事象の大半を的中させている。IPCCは地球平均気温の上昇による様々な悪影響だけではなく、局地的にその地域の地理的条件や気象特性によって今夏に頻発している極端な事象が発生すると警鐘を鳴らしていた。
 2016年にはパリ協定が発効、現在2030年と50年に向けた温暖化ガス(CO2等)削減方策を検討中だが、およそ20年以上も前から指摘されていた世界のCO2排出量の削減は未だに実現せず増大トレンドは変わっていない。この間G7・G8やG20などで何度も議論され、対応策も打ち出されたが実効性は上がっておらず、政治の責任は依然として果たされないままだ。わが国でも8月3日、官邸主導による2050年以降のCO2等を80%削減するための戦略を検討する有識者懇談会が始まった。安倍首相肝いりの懇談会だが、議論のベースは環境対策を経済成長に取り込み成長なくして温暖化対策なしの前提という。
 この前提は少しおかしくないだろうか。この10年を見ても経済成長率は微々たるものであり、そもそも成長率に大きく寄与する個人消費は今後伸びる余地が少ない。では経済成長が止まった場合、温暖化対策を停止するか緩めるという選択になるのか。そもそも50年目標というのも長すぎる。極論すれば、非現実的だが2049年に80%削減のための対策を一挙にとればそれでもパスという話だ。しかし気候変動被害は確実にいま拡大している。50年に向けた戦略よりも、目の前の20年や30年に向けたCO2等をどれだけ減らすべきかの検討こそ、責任ある政府の取り組む対応ではないだろうか。



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