今月のキーワード エネルギージャーナル社

今月のキーワード

再生可能エネルギーの自立と連系を
2018/11/22(Thu) 文:(一)

 9月上旬の北海道胆振東部地震では、離島を除く道内の全電源が停止する大規模停電(ブラックアウト)に陥った。九州では10月半ばから11月にかけての週末(土日)、一部の太陽光発電所や風力発電所を止め、出力が抑えられた。ブラックアウトは地震の被害が北海道電力の想定を上回り、強制的に供給エリアを遮断する強制停電を繰り返しても、電力供給が追いつかなかったことが原因。一方、九州電力が実施した再生可能エネルギーの出力制御は、工場や事業所が休みになって電力需要が減る週末の日中、太陽光発電や風力発電がフル稼働すると、供給過剰になってしまう恐れがあったため。何とも対照的な事態だ。
 電力の送配電は需要と供給を一致させる“同時同量”が原則。電力システム改革の時流と相まって再エネの導入が進んだが、さまざまな課題も浮き彫りになってきた。今後の再エネ活用は自立化と、連系がキーワードになるだろう。
 自然豊かな北海道は風力発電の先進地で、広大な土地を生かした大規模太陽光発電所(メガソーラー)も多い。一方の日射量に恵まれた九州はメガソーラーのメッカとなった。両発電方式とも自然の気象条件によって出力が大きく変動する。送配電を担う電力会社にとって、出力変動が大きい再エネは扱いにくい存在。こうした再エネ電力が増えてくると必然的に、電力会社側の調整は難しくなってくる。実際、北海道電によるブラックアウトからの復旧過程でも、風力発電などの接続は影響が出にくいように、火力発電所などが再稼働して電力系統がある程度の規模になってからになった。ただ、北海道のブラックアウトでも太陽光発電システムがある家庭の85%が自立運転モードに切り替えて発電電力を自家利用し、蓄電池を併設した家庭では2日間程度、普段通りに生活できたという。
 分散型電源の再エネに蓄電池を組み合わせれば非常時、マイクログリッド(小規模電力網)として運用できる可能性が広がり、送配電網との連系も容易になる。再エネ導入に併せて、蓄電池や電力を地域間で融通し合う連系線などを整備する仕組みが求められる。




アクセルとブレーキを同時に踏む再生エネ政策
2018/11/07(Wed) 文:(水)

 経済産業省が最近打ち出した再生可能エネルギー政策が波紋を呼んでいる。一つは8月に示した再生エネの買取価格制度(FIT)の運用で、現行の買取価格(住宅用太陽光発電=26円/kWh、風力発電=21円など)を4〜5年先にはそれぞれ半分以下にするような対応措置を示した。もう一つは、先月関係する審議会が事務当局案をほぼ了承したもので、2012年以降3年間にFIT設備の認定を取得しながら未だに未着工の太陽光発電等に対して、来年3月末を期限に同様の状態が続けば認定時の価格の引き下げ措置を行うとしたこと。いずれも根っこは、FIT制度開始後膨れ上がった賦課金(国民負担)の総額約2.4兆円を抑制するための対応である。
 しかし、これら方針を決めるたった3ヵ月前に閣議決定した政府の「エネルギー基本計画」では、再生エネの主力電源化を打ち出し、2030〜50年以降に向けた国際的な脱炭素化時代のベース的なエネルギー供給の主役を担うべきとしていた。計画では、化石燃料に代わる主力電源化を目指してさらなる量的拡大を図るとしながら、その一方で急激な価格抑制方策と買取価格減額を行うという、いわばアクセルと急ブレーキを同時に踏む政策展開が進められようとしている。かつて小泉純一郎政権時代の田中眞紀子外相(父は故田中角栄元首相)は、積極的な外交政策を展開しようとしたが、官邸からスカートの裾をいつの間にか踏まれ、前へ進もうにも進めないとぼやいたことがあったがその構図と似ている。
 再生エネを中長期的にさらに一段と導入拡大しなければならないのは時代の要請であり、かつエネルギーセキュリティや化石燃料の輸入に莫大な国民の稼ぎを費やしている現実から見て論を待たないと言えよう。そこに急ブレーキをかければ、再生エネ事業者は右往左往するばかりで、これからの事業経営にも意欲をなくし、関連ビジネスからの撤退や廃業・倒産が増え、強いては再生エネ事業全体の衰退になりかねない。
 経産省はアクセルとブレーキを同時に踏むのではなく、むしろ一定期間は推進のアクセル踏みつつ、現行の化石燃料資源の確保や原発などに偏重している財政支援のスキームを見直し、再生エネ事業の推進基盤整備こそに力を注ぐべきではないだろうか。




  ノーベル賞、来年はペロブスカイト太陽電池に期待
2018/10/16(Tue) 文:(山)

 今月初旬にノーベル賞の自然科学3賞が発表された。そのうち生理学・医学賞が京都大学高等研究員の本庶佑特別教授(76歳)らに授与されることが決まった。受賞理由は「免疫細胞制御分子の発見とがん治療への展開」。本庶さんはPD−1という免疫の働きにブレーキをかける分子を発見、がん細胞を攻撃する免疫の働きを活発にし、腫瘍の増殖や転移を抑えることに成功した。この研究が小野薬品工業のオプジーボ開発につながった。
残念ながら日本人の物理、化学賞の受賞者はなかった。でも来年以降の受賞が期待されている日本人研究者は少なくない。なかでもエネルギー関連で、有望視されているのが桐蔭横浜大学の宮坂力特任教授(65歳)である。宮坂さんは「効率的なエネルギー変換を達成するためのペロブスカイト材料の発見と応用」、つまりペロブスカイト材料が太陽電池に応用できることを見い出した。
 ペロブスカイトは灰チタン石(CaTiO3)という鉱石で、これと同じ結晶構造をペロブスカイト構造と呼ぶ。宮坂さんは2009年に、この結晶構造が太陽電池に適していることを見い出し、実際に製作した。変換効率は当初3%台だったが、世界中の研究者が着目して研究が進み、10年足らずで20%台を実現し、シリコン太陽電池に近づきつつある。
 材料費が安く製造プロセスがシンプルで、シリコン結晶に比べて低コスト、印刷のように基板に塗るだけなので、ビルや電車の窓、曲面のある車などにも塗布できる。このため、オフィスの節電や電気自動車などへの応用が期待される。課題だった耐久性も解決の突破口が見え、実用化へのハードルが下がった。最近ではインクジェット法によるペロブスカイト層の低温成膜に成功したと新聞で報じられている。一般的な樹脂基板の耐熱温度である150℃の条件で成膜し、インクジェット法では世界最高のエネルギー変換効率13.3%超を達成した。折り曲げ可能な太陽電池の実用化が視野に入ってきた。
 今後、効率向上と長期間の耐久性維持が実現すれば、シリコン太陽電池にとってかわることも夢ではない。来年は地球温暖化の原因であるCO2を排出しない低コストの発電装置を開発した宮坂さんのノーベル賞受賞を期待したい。



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