今月のキーワード エネルギージャーナル社

今月のキーワード

CO2排出量、2年連続の減少−予断は許さない
2017/05/15(Mon) 文:(一)

 日本の温室効果ガス排出量が2年連続で減少した。環境省が確定した2015年度の排出量は二酸化炭素(CO2)換算で前年度比2.9%減の13億2500万トン。正式に国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)事務局に提出された。昨年末にまとめられた速報値は同3.0%減の13億2100万トン。算定方法の見直しなどを反映した結果、減少率が0.1ポイント下がり、排出量で400万トン増となった。
 14年度に続く2年連続の減少は、09年度以来6年ぶり。08〜09年度はリーマン・ショックによる経済活動の停滞が主因だった。14〜15年度は緩やかに経済が回復する中で省エネルギー機器・設備が普及し、再生可能エネルギーの導入も進んだことで、大部分を占めるエネルギー起源のCO2排出量が減少した。また、15年度は原子力発電設備が再稼働したことで、約410万トンの省CO2効果があった。
 政府は排出量削減の暫定目標として20年度に05年度比3.8%減を掲げていたが、同5.3%減で前倒し達成。また、13年度比では6.0%減になり、地球温暖化対策の新たな国際枠組み「パリ協定」で日本の国際公約となった30年度までに13年度比26%減の達成に向け、滑り出しとしては順調に見える。
 エネルギー起源のCO2排出量は前年度比3.4%減の11億4900万トン。産業部門や運輸部門に比べ、これまで取り組みの遅れが目立った商業施設やオフィスなどの業務その他部門と、家庭部門も大幅に減少した。空調の省エネ化と発光ダイオード(LED)照明の普及が背景だ。
 ただ、予断は許さない。化石燃料からのダイベストメント(投融資撤退)が世界的な潮流となっても、日本国内では依然として石炭火力発電所の建設計画が多数ある。さらに、温室効果ガスだがオゾン層を破壊しない代替フロン(冷媒)として普及したハイドロフルオロカーボン類(HFCs)の排出量が、CO2換算で同9.6%増の3920万トンと増加基調にあり、省エネの重い足かせになってきた。
 今世紀後半に温室効果ガスの排出実質ゼロを目指す「パリ協定」のハードルは決して低くない。今後も相当な努力が必要だ。




トランプ政権、パリ協定「無視」の歴史的責任
2017/04/26(Wed) 文:(水)

 トランプ政権による気候変動問題への対処方針がほぼ明らかになってきた。3月29日に示した大統領令の中の「エネルギー安全保障と経済成長の推進概要」によれば、気候変動問題に関連して次の事項が提示されている。▽各行政機関長は国内エネルギー資源の開発・使用の負荷になり得る全ての行政措置を見直し、そのためのプロセスを見直す ▽EPA長官は「クリーンパワープラン」見直しのために必要な措置を直ちに実施。これら考え方の通底は、2030年に向けた温室効果ガス・CO2の国別削減目標の設定と達成をルール化した「パリ協定」の否定であり、事前に指摘されていた「パリ協定の無視」の政策化、実質的なパリ協定の脱退化でもある。
これに対して、わが国は安倍晋三政権の是認姿勢や責任意識の希薄さによるマスコミ界の批判的意見の欠如が目立つ一方で、一部の環境NGOらが共同または単独で米国方針を指弾している。ちょうど、パリ協定で定める今世紀後半に向けた長期温暖化対策の取り組む方向を議論中なのに動きが少なすぎる。
 気候変動問題が国境を超える人類不可避の地球環境問題として提起されてからほぼ半世紀たつ。この間、科学者は曲がり道しながらも数次の研究成果をあげ、科学的な因果関係の結論として温暖化の進行と脅威を注意・喚起→警鐘→警告→確証へと最高水準にまで高めた。延べ2000人以上が「対応策の実施と技術の適用に時間がない」との見解も強調してきた(5次にわたるIPCC報告書など)。後は、最も意識と行動が遅れている政治の世界だが、G7サミットはじめ十分な主導力が見えず、すでに30年以上も停滞して責任を果たしていない。しかし、今日の政治家の責任は30年前とは明らかにその度合いが大きく異なっている。一つは科学的材料の十分性、二つは今回明らかになったCO2許容総体排出量=残り1兆t、三つはこれまで起きた気候変動被害の大きさである。
 こうしたことの理解の上で、国際社会がようやく実現したパリ協定を米国が「無視」の行動をとりこれに同調する国が増えれば、トランプ大統領には「温暖化を加速させた最悪の米大統領」として、水没した国や気候難民から裁判を提起されるかもしれない。気候変動問題では一日も早くトランプ氏だけではなく政治家が覚醒してもらいたいものだ。




次世代車の本命は燃料電池車だ
2017/04/05(Wed) 文:(徐)

 トヨタ自動車が2014年末に世界で初めて燃料電池車(FCV)を発売、ホンダは16年8月から販売を始めた。FCバスはトヨタが今年、販売を開始した。FCVは水素社会へのスタートポイントであり、トヨタは第2世代車により20年には3万台販売を見込む。ホンダはGMと組み、20年に両社は第2世代FCVを世に出そうとしている。ドイツ・ダイムラー、BMW、韓国・現代自動車もFCVが実用化フェーズにある。自動車は120年の歴史の中で再び電動車の時代に戻りつつある。FCVにはエネルギーの多様化、ゼロエミッション化、走りの楽しさ、航続距離の長さ、水素充填時間の短さ、電源供給の大きさと、本命になる資格が整っているのだ。
 FCVを最初に開発したのはGM。1964年に月着陸船・アポロに搭載したFCスタック(1.5kW)と同じスタックを32kWでトラックのバンに配置した。運転席以外はFCシステムがびっしりと詰まった、走る水素プラントだった。現在もGMに展示されている。トヨタは92年から、ホンダは80年代後半から開発を始めた。100年以上の歴史がある内燃機関とは全く異なる駆動機構のFCVが、1台700万円台と高価だが販売に入ったことは、開発スピードの速さを感じざるを得ない。
 気候変動枠組み条約のパリ協定を踏まえ、世界が地球の平均気温上昇を2℃以下に抑えるには、50年にCO2を現状の90%削減が求められる。その実現には新車の90%が内燃機関でなくなることを意味する。
 ハイブリッド車を現在まで1000万台を販売したトヨタにとっても、今後の本命はFCVなのである。同社は電気自動車(EV)の開発にも力を入れ始めたが、次世代車の核にFCVを置いていることに疑いはない。高い販売価格、少ない水素ステーションといった課題もあり、充電インフラが簡単なEVが本命になるとの声も聞かれる。日産自動車のEV「リーフ」は25万台を販売した。EVと家庭との電気の相互利用など利用価値も広がろうとしている。ただ再生可能エネルギーが普及し、再エネ電気の大量貯蔵、消費が30年には一般的になってくる。それは水素の時代であり、究極のエコカーともなるFCVとFCバス、FCトラックが持続可能なモビリティ社会を支える時代でもある。



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