今月のキーワード エネルギージャーナル社

今月のキーワード

どうする?もう一つの「非常事態宣言」
2020/06/04(Thu) 文:(水)

 政府は5月25日、約1ヵ月半続けた新型コロナウイルス感染拡大防止対策のための「緊急事態宣言」を首都圏と北海道を最後に全面解除した。まだ感染再発の油断はできないが、ようやくわが国の経済社会活動も重苦しかった目の前の濃い霧が消え、視界が開きつつある。世界中を震撼させたコロナ禍は3密の回避や移動の自粛・制限、働き方改革など、今まで当たり前に繰り返してきた社会経済活動の慣習にことごとく変更を迫った。一つは在宅勤務(テレワーク)という新たな働き方の選択であり、そのためにはわが国に長年根付いていた決済や意思決定があったことを証する「ハンコ文化」そのものが大きな障害になっていることも明らかになった。
 「電子署名サービス」に代用すれば人の活動の絶対量が大きく減少、エネルギー需要の削減にもつながり地球温暖化をもたらすCO2削減に大きく貢献する。特に霞が関における長年の慣習見直しはハンコ文化だけではなく、コロナ禍後のわが国の新しい社会経済活動のあり方を考える上で極めて重要と思われる。
 一例を挙げてみよう。各省庁が毎年行う政策立案→予算要求→概算決定→施策展開による予算執行というサイクルを2年に1回にしたらどうか。その方が時間的余裕も生まれて政策展開の質も向上し、地方自治体も含めて長期の視点を見据えた行政展開が可能となるはずであり、民間の経済活動にも好影響を与える。この可能性を財務省に聞いてみた。答えは財政法で1年間という「会計年度」が明記されており、法律改正しないと無理という。
 2年に1回の予算編成は財政面にも役立つ。政府はコロナ対策で急遽巨額の1〜2次補正予算を具体化したが、霞が関だけが聖域であってはならない。その財源の大半は国債発行となり、いずれ国民には消費税の再引き上げというツケが回ってくる。ならば法律改正して当初予算は2年間での執行として、その余剰分は財源対策に回せばよい。コロナ禍で実施された緊急事態宣言と同じような危機認識は、すでに気候変動の「非常事態宣言」としてすでに国内では20余自治体、世界では1000超の都市が共有している。この10年の対応が気候変動の限界を超えるかどうかの分岐点ともいわれており、CO2削減のための社会経済活動の大変革も待ったなしだ。




洋上風力の進展に期待
2020/05/15(Fri) 文:(山)

 皐月の空に鯉のぼりが泳ぐ季節になったが、今年はあまり見かけなかった。4月29日の昭和の日から3日開けて5月3日から6日まで憲法記念日、みどりの日、こどもの日、振替休日と4日連続の休日が続き、土曜日が休みの会社なら5連休となった。
 とはいうものの、今年のゴールデンウイークはとてもゴールデンとは言えない事態だった。鯉のぼりを眺めて「屋根より高い〜〜」と歌う気にはなれなかった。ご存知の通りコロナウイルスの蔓延である。企業に取材に行っても自宅勤務している人が多く、まともな取材ができない状態である。スーパーマーケットには買いだめの人たちの行列ができるほどだが、飲食店などは閑古鳥が鳴いている。コロナウイルスを退治する薬剤として富士フイルム富山化学の抗インフルエンザウイルス薬ファビビラビルなどが期待されているが、どうなのだろうか。とにかく、コロナウイルス罹患者の回復に全力を尽くすとともに、これ以上の罹患者を出さないことが何より大切なことである。
 大変に厳しい状況だが、弊紙スタッフは全員無事で5月合併号を読者の皆様にお届けできました。特集は「洋上風力」です。日本は山が多いので、風車を設置する場所が限られている半面、海に囲まれていることなどから、洋上への風力発電設置が期待されていた。だが、これまでは@海域の占用に関する統一的なルールがないA先行利用者との調整の枠組みが存在しない――などにより導入が進んでいませんでした。それで遅きに失した感がないではないが、政府は昨年4月に「海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律(再エネ海域利用法)」を施行しました。
 それにより今後、洋上風力の建設が増えることが期待されます。風車が回ると低周波音や機械音が発生し、陸上の風力発電が生活圏の近隣の場合、住民から騒音問題などの苦情が出ることがありましたが、洋上ではこの問題はなくなります。もちろん、海を利用している漁業者や船舶の邪魔をしないことが前提ですが、周囲を海に囲まれたわが国でこそ、洋上風力の活躍が期待されるところです。もちろん、海で発電したからといって電気は塩辛くなることはありません。これは冗談ですが、海から送られてきた電気で生活するなんて、なかなか良い気分になれるかもしれませんね。




削減目標据え置き−日本の意欲が問われる
2020/04/21(Tue) 文:(一)

 21世紀後半に温室効果ガスの排出量実質ゼロを目指す地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」は、各国が自主的に策定した排出削減目標を5年ごとに見直し、取り組みを徹底することを求めている。パリ協定は2015年の国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)で採択され5年目。だが、政府は削減目標の上積みを見送った。脱炭素社会の実現に向けた世界の潮流を弱めてはならない。
 海面上昇や異常気象など、地球温暖化がもたらす被害が現実となった。パリ協定は気候変動による危機回避には平均気温の上昇を産業革命前に比べ2度未満に抑える必要があるとして、今世紀後半に温室効果ガス排出量を実質ゼロにするシナリオを描く。さらに1.5度未満にするという努力目標も定めた。日本政府がCOP21を前に、国連へ提出した温室効果ガスの削減目標は2030年度に2013年度比26%減。しかし、各国が削減目標を達成しても、平均気温上昇を産業革命前に比べ2度未満に抑えるシナリオとは大きなかい離があるのが実態だ。
 温室効果ガスの排出量が最も多いのは中国で、それに米国、インド、ロシアが続き日本は世界5位。日本は環境先進国を標ぼうしてきただけに、削減目標据え置きでは示しが付かないのではないか。諸外国の取り組みに悪影響を与える懸念もある。低炭素・脱炭素化をビジネスの視点から目指す企業ネットワーク「日本気候リーダーズ・パートナーシップ(Japan−CLP)」(事務局=地球環境戦略研究機関)も「今回の決定(据え置き)は緊急性のある気候危機への対応としては不十分であると言わざるを得ず、また気候変動対応が企業競争力に影響する中、海外の取引先企業や投資家に対して日本の気候リスクが増大するとの印象を与えかねない」と懸念を表明した。
 各国が初めて削減目標の見直し作業を経て臨むはずだったCOP26は、新型コロナウイルス感染症の拡大で来年に先送りされた。一方、日本政府は年内に「地球温暖化対策計画」を見直すことが決まっている。この機会を生かして議論を深めて、これまでの政策決定プロセスにとらわれず削減目標上積みを含め、思い切った施策を打ち出して世界に意欲を示したい。



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