今月のキーワード エネルギージャーナル社

今月のキーワード

「カーボンプライシング」の検討と毒饅頭
2017/06/20(Tue) 文:(水)

 環境省は今月2日、「カーボンプライシングのあり方に関する検討会」の初会合を開き、本格的な炭素税や排出量取引制度の導入に向けた議論を開始した。トランプ米大統領による「パリ協定」からの離脱表明があったものの、国際世論は世界第2位の温暖化ガス排出大国の身勝手な振る舞いに批判的だ。
 パリ協定は世界の190ヵ国以上が合意して昨年11月に発効、2020年までに「加盟国は今世紀半ばの温暖化ガス低排出型発展の長期戦略を策定し通報すること」としている。いわば2050年までに温暖化ガス排出の80%削減という「低炭素社会」づくりのメニューを各国が提出することになるわけで、炭素税導入などを意味する環境省の「カーボンプライシング」検討もその一環だ。
 炭素税制の導入は、あらゆる経済行為に地球温暖化の原因となる炭酸ガス(CO2)の排出に課税してその価格付けを一般化させるものだが、実はその変形が2012年から「地球温暖化対策税」として実施されている。現在、石油・天然ガス(LNG)・石炭に炭素排出トンあたり289円が課税されており、その税収分(16年度は約2600億円)がエネルギー対策特別会計として、省エネ・新エネ事業や低炭素型まちづくりなどの施策に補助されている。
 ただ、この仕組みはあくまで温暖化対策に向ける財源を確保するためのものであり、あらゆる経済行為に炭素価格づけされ商品等の取引がなされているわけではない。当時の検討では、本格的な炭素税導入か財源確保のための税制か、という環境省と経済産業省の間で喧々諤々の議論となった。結局は環境省が産業界から強い反対が出されていた炭素税の導入を断念、自らの財源欲しさに経産省から出された“毒饅頭”を食べたと非難された。この時に我慢して毒饅頭に手を出さなければ、今回のような一から始める本格的な炭素税導入のきびしい論議や検討に要する時間も効率化できたかもしれない。
 もちろん温対税を導入した当時に比較して今はCO2削減に関する政策的な優先度が大きく高まり、国際社会でも低炭素社会づくりに向けたビジネスが潮流となっている。しかし二度あることは三度ある。今回の炭素税制実現が再度、財源確保のための税制になってしまわないか、本当に使命感を持った制度が実現されるか先行きが心配だ。




「環境」と完全統合したエネルギー基本計画を
2017/06/07(Wed) 文:(水)

 政府のエネルギー政策展開の大黒柱である「エネルギー基本計画」が2014年6月の策定後3年経ち、改定時期を迎えている。経済産業省はこの夏頃から実質的な作業に入る構えだ。今のエネルギー政策には重要課題が山積しており、米国が先日のG7サミットで「パリ協定」からの実質離脱方針を示した地球温暖化問題への対応とともに、骨太の計画にする必要がある。
 14年に策定された基本計画は東日本大震災と東電福島第一原発事故を踏まえたエネルギー政策の大幅見直しを打ち出したことに特徴があった。すなわち電源の確保については、「再生可能エネルギーの最大限の導入」と「原発依存度の可能な限りの低減」と軌道修正、3.11以前の原子力主導+石炭・LNG火力による電力供給を大幅に変更した。同時に、需要家の選択肢を広げ市場競争による価格下げを実現するとして「エネルギーの総合企業化」の必要性を指摘、従来の垣根を取り払う電力・ガス事業の構造改革を推進するとしていた。
 しかし、現実のエネルギー産業は海図なき航海に直面しているといってよい。確かに電力・ガス事業への新規参入は進んだが、小売料金はまだまだ下がっていない。原発の再稼働は徐々に出てきたものの、最終的にわが国の原発規模をどうするのかという一番肝心な点は依然あいまいにしたままだ。再生エネの導入は確かに飛躍的に拡大しているが、一方で認定取消し分が約2800万kWも発生、この後始末とともに系統接続問題も抜本的な解決の方向になっていない。さらには相次ぐ石炭火力の新増設計画による電気事業のCO2削減目標の達成見通しが困難という状況もある。
 こうした混迷状況の原因は緊要な政策課題への判断をこれまで後送りしてきたツケがたまってきたためと思われる。その一つが原発依存度の現実的な設定であり、それを前提にした各種電源の組み合わせの見直しであろう。再生エネの導入拡大もそれによって変化するし、化石燃料への依存度も明確になり、しいてはCO2削減への対応もはっきりさせることができる。今やエネルギー政策は温暖化対策と一体であることを強く認識し、「エネルギー・環境基本計画」として見直すべきではないか。もう一つは「総合エネルギー企業化」のグランドデザインを政策当局が提示することだろう。




CO2排出量、2年連続の減少−予断は許さない
2017/05/15(Mon) 文:(一)

 日本の温室効果ガス排出量が2年連続で減少した。環境省が確定した2015年度の排出量は二酸化炭素(CO2)換算で前年度比2.9%減の13億2500万トン。正式に国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)事務局に提出された。昨年末にまとめられた速報値は同3.0%減の13億2100万トン。算定方法の見直しなどを反映した結果、減少率が0.1ポイント下がり、排出量で400万トン増となった。
 14年度に続く2年連続の減少は、09年度以来6年ぶり。08〜09年度はリーマン・ショックによる経済活動の停滞が主因だった。14〜15年度は緩やかに経済が回復する中で省エネルギー機器・設備が普及し、再生可能エネルギーの導入も進んだことで、大部分を占めるエネルギー起源のCO2排出量が減少した。また、15年度は原子力発電設備が再稼働したことで、約410万トンの省CO2効果があった。
 政府は排出量削減の暫定目標として20年度に05年度比3.8%減を掲げていたが、同5.3%減で前倒し達成。また、13年度比では6.0%減になり、地球温暖化対策の新たな国際枠組み「パリ協定」で日本の国際公約となった30年度までに13年度比26%減の達成に向け、滑り出しとしては順調に見える。
 エネルギー起源のCO2排出量は前年度比3.4%減の11億4900万トン。産業部門や運輸部門に比べ、これまで取り組みの遅れが目立った商業施設やオフィスなどの業務その他部門と、家庭部門も大幅に減少した。空調の省エネ化と発光ダイオード(LED)照明の普及が背景だ。
 ただ、予断は許さない。化石燃料からのダイベストメント(投融資撤退)が世界的な潮流となっても、日本国内では依然として石炭火力発電所の建設計画が多数ある。さらに、温室効果ガスだがオゾン層を破壊しない代替フロン(冷媒)として普及したハイドロフルオロカーボン類(HFCs)の排出量が、CO2換算で同9.6%増の3920万トンと増加基調にあり、省エネの重い足かせになってきた。
 今世紀後半に温室効果ガスの排出実質ゼロを目指す「パリ協定」のハードルは決して低くない。今後も相当な努力が必要だ。



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