今月のキーワード エネルギージャーナル社

今月のキーワード

皐月の風をいっぱいに受けて
2019/05/22(Wed) 文:(山)

 「甍の波と雲の波 重なる波の中空を橘かおる朝風に 高く泳ぐや鯉のぼり」―5 月といえば鯉のぼりというイメージがあった。田舎にいた子供のころ、風に泳ぐ鯉のぼりを見ながら、大声で歌った記憶がよみがえる。だが、今の東京では鯉のぼりはほとんど見られなくなった。
 その一方、皐月の風を受けて回転している発電用風車をあちこちで見かけるようになった。NEDOによると、国内の風力発電の累計導入量は昨年3 月末で2253 基、総設備容量は350 万2787 kW。10 年前の167万4280kWからずいぶん増えたが、それでも英国など欧州と比べると雲泥の差だ。台風の多い日本では強風に耐える風車にするために設置コストがかさむことや風況のよい平地が少ないこともあり、風力よりも太陽光を重視する傾向にあった。だが、昨年11 月下旬にいわゆる洋上風力開発促進新法が成立し、今年4 月に施行された。
 共同通信は4 月26 日付で『洋上風力発電普及法に基づく国の調査に対し、北海道、青森、岩手、秋田、山形、千葉、新潟、佐賀、長崎の9道県が「適地がある」と報告したことが分かった。年内にも第1 弾の「促進区域」を指定する見通しだ』と報じた。洋上風力発電は海中に基礎をつくらなければならないことや塩害対策、建設や故障時のメンテナンスのための船舶、電気を陸に送るケーブルなどコストがかさむ。また漁業者の理解を得ることも必要になる。設備の寿命がきた時の原状回復も大変な作業になると思われる。
 それでも陸上風力に比べて発電量が稼げる洋上が注目されているのだろう。ひとたび事故が起こったら大惨事となる原子力発電や温室効果ガスを排出する石炭火力の恐怖から逃れることができるなら、多少コストがかかっても洋上風力の普及を図ってほしい。周囲を海に囲まれている日本にとって最適な電源になるのではないだろうか。




IMOによる船舶NOx規制への対応が急務
2019/04/25(Thu) 文:(一)

 停泊中も黒煙を燻らせている煙突は船のシンボル。大型船だと船会社のロゴマークを配して、カラフルにデザインされていることも多い。そんな船舶からの排ガスに、厳格な環境規制の網がかけられる。港を描いた絵画にもしばしば登場するシーンだが、風情に浸るだけでは済まない現実がある。国際海事機関(IMO)は2020年1月、船舶排ガスの環境規制を本格導入する。排ガスの硫黄酸化物(SOx)を減らすため、燃料のC重油に含まれる硫黄分濃度を現状の3.5%以下から0.5%以下に制限する。公海を行き来する船舶運用は一国の政府による規制では縛りきれず、16年10月に開かれたIMOの海洋環境保護委員会で導入が決定された。
 C重油は原油を精製して液化石油ガス(LPG)、ガソリン、ナフサ(粗製ガソリン)、灯油、ジェット燃料、軽油などを抽出した残渣。成分としては道路舗装などに使われるアスファルトに近い。日本の石油業界は原油の大部分を重質の中東産に依存していることもあり、現状では石油精製で一定量のC重油やアスファルトができてしまう。低硫黄のC重油を量
産するには、中東以外から硫黄分の少ない割高な軽質原油を調達して原料にするか、重質油熱分解装置の増強が必要になる。ただ、石油業界にとって燃料油は主力の自動車向けガソリンを含め、需要が頭打ちの成熟商品。2年半前に規制導入が決まってからも、動きは鈍かった。
 船会社側で既存船にSOxの除去装置「スクラバー」を取り付ける方法もあるが、IMOはSOx規制に続き、25 年には温室効果ガスの二酸化炭素(CO2)を削減する燃費規制導入も決めている。IMO加盟国は50年までに、海運分野のCO2排出量を08年比で半減することで合意しており、段階的な規制強化により既存船での対応が難しくなる状況も想定されている。欧州ではC重油に代わるLNG(液化天然ガス)燃料船導入の動きも目立つが、まだ日本は実証事業レベル。IMO規制はSOxや粒子状物質(PM)による人の健康や環境への悪影響を低減するため世界一律で実施されるものであり、我が国も環境先進国として、適切に対応していくことが必要だ。




原子力発電所の畳み方を説明してほしい
2019/04/18(Thu) 文:(水)

 今夏の参議院選挙を前に、わが国の原子力発電所のあり方をどうするかの議論が盛んになってきた。小泉純一郎元首相を一枚看板とする原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟(原自連)は、開会中の通常国会に野党を通して「原発ゼロ法案」を提出しているが、与党からの握り潰された状態が続く。先日、原自連側は経団連の中西宏明会長に公開討論会を申し入れたが、実現していない。実現しない背景には、統一地方選と参院選を前に原発是非論議をヒートアップさせたくない首相官邸筋の“要請”があったと言われている。
 小泉元首相が展開する「原発廃止論」を要約すると、▽多重防護をとっているから絶対安全、▽電源コストが一番安い、▽CO2を出さないクリーンエネルギー――という論拠が今日崩壊し、これまで政治・行政・電力会社がウソをついていたというもの。こうした主張は勇ましくかっこよく国民受けもする。しかし原発廃止論には致命的な欠陥がある。仮に原発を畳むとした場合の国民への傷みを具体的に提示していないことだ。
 仮に原発をこの先10年で畳んだらどうなるか。まず、すでに廃炉を決定した24基(検討中含む)に加えて、新たに36基の座礁資産が生まれ1基350〜500億円といわれる廃炉費用に加えて運転停止による膨大な固定費の未回収分が発生する。さらに巨額な資金を投じて推進してきた再処理などの核燃料サイクル事業が中止となり、後始末におそらく20〜30兆円近くの国民負担が生じよう。そうなると国策故になんとかバックエンド事業に協力してきた青森県はちゃぶ台をひっくり返し、一時貯蔵の使用済み核燃料や放射性廃棄物の引き取りを迫る可能性がある。また原発立地県における雇用問題の発生など地域経済への打撃もある。一方で福島第一の事故処理には総額20〜40兆円もかかるという試算も明らかになった。
 つまり原発を畳むとすればそのため資金だけでもゆうに最低50兆円、場合によっては100兆円ともなり、その大半が今後の国民負担となる。さらにパリ協定で約束したCO2削減は、2030年目標どころか50年の△80%は再生可能エネルギーだけでは到底達成できず、単一エネルギーに依存するリスクが増大する。小泉元首相はそうした原発の畳み方に是非具体的に触れて欲しいものである。



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