今月のキーワード エネルギージャーナル社

今月のキーワード

原発に対する“地元同意”の近代化
2020/03/23(Mon) 文:(水)

 昨年世間を驚かせた関西電力の原子力発電を巡る多額の金銭授受問題の最終的な対応が表に出てこなくなった。福井県高浜町に立地する高浜原発4基の新増設や稼働に関連して、20年以上にわたって地元の有力者が関電幹部ら20人余に計3億2000万円余の金品を贈与。一部は返却されたがその要因解明と企業責任、再発防止対策を昨年社外に設置された第三者委員会が検討中だ。年度末も迫りそろそろ検討結果をまとめる時期に差し掛かっている。 年度末は会社にとって決算をまとめる重要な時期であり、それにつきものの次期幹部人事を決める必要がある。関電の場合、過去の金銭授受問題へのかかわり度合いによっては会長・社長などの役員不適任という事態になりかねず、首脳部人事の新たな陣容が難しい。
 そうした関電としてのけじめのつけ方と社会的責任のとりかたもさることながら、第三者委員会のまとめではこれまで何十年と繰り返されてきた旧態依然の「地元同意のあり方」を是非とも問題提起してほしい。今回の多額な金銭授受の要因は、原発の新増設や再稼働への対応で絶対的条件といわれる当該市町村・県レベルからの「同意」の獲得、あるいは関電と地元との良好関係の維持がその動機にあったのは間違いない。しかし、この地元同意(合意)がどのようなプロセスで行われ、誰がどう判断したのかはその大半が常に藪の中であり、そこに様ざまな利権が発生する余地があった。
 もちろん原発の新増設等では、電気事業法や環境アセスメント法などが適用され公正な手続で進めることになっているが、それはあくまで建前であって、肝心の「地元同意」の条件については明確な規定がなく、慣例と地元首長の判断に委ねられている。原発推進の経済産業省も、自らは何もせず旗を振っているだけだ。電力会社はこの地元合意を形成するために、案件の説明と理解獲得のためのローラー作戦で社員7000人以上を集中的に投入という事例も珍しくない。
 重要なことは国に対して地元同意の十分条件とは何かを法律上明確にさせること、その上で例えば住民投票や条例等に基づくアンケート方式、さらにはフランスなどで採用され始めた委嘱者による直接意思決定方式など多様な手段を提示してほしいものである。




見えてきた水素社会−地域で、企業活動で
2020/03/16(Mon) 文:(一)

 日本は1次エネルギーの大部分を、海外から輸入する化石燃料に依存している。エネルギー安全保障の確保と、温室効果ガス排出削減を両立する有力な資源として注目を集めるのが水素だ。2月末には福島県浪江町に、メガソーラー(大規模太陽光発電所)の電力から水素を製造・貯蔵するパワー・ツー・ガス施設「福島水素エネルギー研究フィールド」が完成する。製造した水素は、まず今夏の東京五輪・パラリンピックで利用される。東京都は各種競技会場への移動手段として、燃料電池(FC)バスを100台以上導入する。
 2011年に起こった東日本大震災からの復興施策として、政府は福島県で再生可能エネルギーの導入拡大を意欲的に進めている。福島水素エネルギー研究フィールドはその拠点施設の一つ。水素社会実現に向けた先導モデルとして期待されている。太陽光や風力などの再生エネ導入で、最大のネックとなっているのが電力系統の需給バランス維持。蓄電池に加え、水素システムを組み合わせて再生エネの余剰電力を利用すれば、電力系統の安定化だけでなく、水素を“電気の素”として蓄えられる。
同フィールドに設置される1万キロワット級の水素製造装置は、定格で1時間当たり1200ノルマル立方メートルの水素を製造。1日の製造量で一般家庭約150世帯へ電力を供給できる。FC普通車なら約560台分の燃料だ。パワー・ツー・ガスは、再生エネ電力から水素を取り出すプロセスだけではない。水素を利用したメタン化やメタノール化なども可能になる。
 民間企業にも新たな動きが−。トヨタ自動車は船舶向けのFCシステムを開発した。FC乗用車「MIRAI(ミライ)」の基幹部品を使い、船舶用システムを仕立てた。再生エネで世界一周航海を目指すフランスの「エナジー・オブザーバー号」に提供する。エナジー・オブザーバー号は太陽光や風力などの再生エネと、海水から生成した水素を用いたFCを動力とする。トヨタがFC技術を船舶向けに応用するのは初めて。トヨタはJR東日本と連携し、鉄道車両へのFCシステム搭載も見据える。
 まだ片鱗に過ぎないが、こうした動きが水素社会実現に向けた好循環につながっていくことを期待したい。




「気候危機」は政治を変えるか
2020/03/06(Fri) 文:(水)

 昨年からわが国では2050年に向け地球温暖化の原因である温室効果ガス(CO2等)の排出をネットゼロとする「ゼロカーボン社会づくり」を宣言する自治体が31にものぼり、さらに増える勢いだ。ほかにも「地球危機宣言」を行った長野県や長崎県壱岐市のように、30年先の目標設定ではなく近年の異常気象による風水害や農業・漁業被害などを目の当たりにした対策の緊急性を訴える動きが顕在化している。
 海外でも温暖化の要因と見られる高温・集中豪雨・寒波・干ばつ・森林火災がこの10年観測史上例を見ない深刻さと回数で発生している。地球の肺といわれるブラジル・アマゾンにおける大規模な森林消失には驚かされたが、追い打ちをかけるようにオーストラリアの東南部地方で大規模な森林火災が昨年後半から発生、日本のほぼ半分に相当する約19万km2を焼き尽くし、今も延焼中といわれる。
 翻って日本の温暖化対策の現実はどうか。上の前向きな自治体や先駆け企業による「RE100」の取り組みは出てきているものの、政府の対応は30年先のCO2等削減目標を強調するばかりで、地球環境の運命を左右するといわれるこの先10年間の対策内容は旧態依然のままだ。その典型が昨年閣議決定した首相官邸と経済産業省が主導する「革新的技術イノベーション戦略」で、2050年までにCO2を大量に他の有用物に変える画期的技術を開発して、それを実装化していくという。いったい技術開発が成功しなかった場合どうするのか、その代替策は何も示されていない。
 ただ、日本でもようやく気候変動問題に対する政治家の意識が覚醒してきた。この通常国会の代表質問で自民党の二階俊博幹事長や公明党の斎藤鉄夫幹事長、立憲民主党の枝野幸男代表が気候変動対策を取り上げ、政府の対応をただしていた。今国会中に超党派による「気候危機議員連盟」の発足も予定されている。この動きに日本の環境NGOも是非とも連携してオールジャパンの体制をつくり、選挙の際には自らの主義主張を超越して2〜3人の国会議員を送り出せるような組織力と財力を持ってほしい。もう一つ重要なのは、大手マスコミの政治部記者の気候変動問題に対する鈍感さだ。政治部記者はあのスウェーデンのグレタさんの鋭い指摘に謙虚に耳を傾けるべきである。



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