今月のキーワード エネルギージャーナル社

今月のキーワード

言葉遊びでなく、国民に通じる言葉で
2021/11/17(Wed) 文:(M)

 象は鼻が長い−。日本語の「は」と「が」の使い分けを解説する有名な一文だ。主語は「象は」なのか、それとも「鼻が」なのか。普段は気にしていないが、そう聞かれると即答できない。
 与野党トップの発言が似通っており、違いが分からないと話題となった。岸田文雄首相は所信表明演説で「分配なくして成長なし」と強調。すると立憲民主党の枝野幸男代表も「分配なくして成長なし」を選挙公約にすると発表したのだ。
 与野党が同じ政策を掲げて選挙を戦うはずはない。演説文を読み返すと岸田首相は「大切なのは成長と分配の好循環」とも語り、「『成長か、分配か』という不毛な議論から脱却し、『成長も、分配も』実現する」と訴えていた。一方、記者会見で違いを問われた枝野代表は「成長していない原因にしっかりと切り込んで適正な富の再分配を行う」とし、分配重視と主張する。言葉遊びではなく、国民のための政策議論であってほしい。
 普段から耳にしていても、意味を理解できていない言葉もある。内閣府が2020年11〜12月に実施した世論調査で「脱炭素社会を知っている」と答えた68.4%のうちの半数が「言葉だけは知っていた」と答えた。10月1日号の小欄でもカーボンニュートラルを理解できている国民が少ないと指摘した。漢字の「脱炭素社会」も同じだ。政府は専門用語を踊らせて国民を煙に巻くようなことはあってはいけない。
 似た用語の乱立も困る。「再生可能エネルギー由来電気」「再生エネ実質100%電気」「CO2フリー電気」「CO2排出実質ゼロ電気」といった名称の電気が登場している。どれも同じ意味としたら、利用者は混乱するだろう。気候変動対策には国民の理解と行動が欠かせない。わかりやすい言葉の選択、意味の浸透、用語の統一が必要だ。
 さて冒頭の文だが、小説家の井上ひさしさんは「象は」は主語ではないと説明する。これから象という動物について話すことを提示する助詞として「は」が使われているためだ(『井上ひさしと141人の仲間たちの作文教室』新潮文庫)。日本語は主語がなくても通じるが、政治家や政府、電力業界には国民に通じる言葉で語ってほしい。




東京オリ・パラのコロナ感染者863人に思う
2021/11/02(Tue) 文:(山)

 前号でカタカナ語の氾濫が取り上げられていたが、まさにその通りである。日本には大昔から日本語があり、言葉だけでなく、書き物も当然、日本語で記されている。もちろん、国際化した現在は外国人と話をするときに、その国の人の言語が話せれば、それは大変良いことだと思うが、普段、日本人同士はきちんとした、正しい日本語で対話すべきではないだろうか。
 街中や電車の中で若者たちの話が耳に入ってくることがある。別に聞きたいとも思わないが、意味不明の日本語で話していると、なんだか気になってしまう。話している人たちがそれで分かり合っているなら問題はないのかもしれないのだが…。まあ、大半の若者は会社に入って仕事をすることになれば、普通の日本語で会話するようになるのだろうが、どうも気になってしまう。
 話は変わるが、歳をとると月日のたつのは早いもので、もう10月も半ばとなり、今年も残すところ2ヵ月半となった。なんだか、時計が早回りして、時間があっというまに過ぎていくように感じるのは歳のせいだろうか。すぐに年の瀬が来て「もういくつ寝るとお正月〜〜」などとのんきに歌っていると、すぐにその次の年の正月が来てしまいそうだ。
 今年は多くの人々がコロナウイルスに見舞われた大変な年だった。NHKのまとめによると、8月26日に2万4956人だった罹患者数が10月9日は777人になったそうだ。罹患者数はだいぶ減ったようだが、それでもまだまだ油断できない状況が続いていると考えるべきだろう。外出時のマスクが必需品であることはしばらく続きそうだ。
 ちなみに、東京オリンピック・パラリンピック関連のコロナウイルス感染者数は大会組織委員会のまとめによると、選手や関係者を合わせて863人だったそうである。NHKの集計によると、選手41人、大会関係者201人、メディア関係者50人、組織委員会職員29人、大会の委託業者502人、ボランティア40人である。いまさら言っても始まらないが、そこまでしてオリンピックをやる必要があったのだろうか。一生懸命に技を磨いてきた選手には残念なことだろうが、コロナが収まってからのオリンピックで、さらに磨いた技をもとに十分に力を発揮することもできたのではないだろうか。




カタカナ語は国民の胸に刺さらない
2021/10/18(Mon) 文:(水)

 最近の霞が関の資料や報告書で目立つのはカタカナ語の氾濫である。特に欧米において先導的な政策展開が多い故か、地球環境問題や国際金融の分野で横文字をそのまま表記しているケースが多い。新聞やテレビも安易にそれに追随、日本語文化の危機を感じる。
 環境省の令和4年度概算要求の重点施策発表資料の中に、次のような表記があった。「カーボンニュートラルに向けたカーボンプライシングを含むポリシーミックスの推進」。これは来年度税制改正要望を示したもので、焦点となっている気候変動対策としての炭素税や排出量取引を引き続き検討するという意味だが、理解不能な文章だ。
 この文章の38文字中28字が実にカタカナ表記である。試しにここで使われている「カーボンニュートラル」の日本語の意味を友人や会社の周りの人に聞いてみたが、10人中9人は正解らしき答えがなく、一般の人にはまるで理解されていなかった。しかもこうした長い単語は編集者泣かせの最たるもので、予定した行数をオーバーして泣く泣く別の文章を削らざるを得なくなるし、見出しを付けるにも苦労する。つまりカタカナ語の濫用は百害あって一利なしとも言えよう。
 「霞が関文学」という独特の文化を持つ官僚がカタカナ語を多用するのは、▽省庁間でその言葉の定義がはっきりしない、▽カタカナ語を使うことで故意にあいまいにしておく、▽正確な日本語にするのが面倒――などが動機と見られる。しかし当然の話だが、その言葉の意味が容易に理解されなければ国民の支持も得られない。カタカナ語を聞いた国民はいちいちその意味を理解しようとする努力も面倒だし、第一そんなに時間的な余裕もない。環境省が最大の政策課題としている気候変動対策は何よりも一般の人々の理解と協力を得ることが不可欠だが、カタカナ語では国民の胸に刺さらない。
 日本社会はすでに人口の3割が高齢者となり、この人たちには英語に馴染みのない人も多く、まして「カーボンニュートラル」というような専門用語をどれだけの人が理解できるだろうか。しかも高齢者は地域にあっては環境問題などで熱心に活動しているケースも多いのに、わざわざ霞が関はそうした人々を遠ざけていることになる。



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