今月のキーワード エネルギージャーナル社

今月のキーワード

安倍改造内閣は経済政策の大転換を
2017/08/17(Thu) 文:(水)

 国民の支持率が政権発足以来最低の中で第3次安倍改造内閣が3日スタートした。発足後の首相会見の冒頭、加計学園問題で見られた説明不足や相次いだ閣僚の資質批判などを反省、国民に陳謝するという異例の船出となった。頭を下げた効果と新内閣への期待によって支持率が一時的に上向いたが、従来の政権運営とどう変わったかが目に見えるようにならない限り、低空飛行を変えるのは無理であろう。
 そうした意味での注目は、サプライズ人事となった異端児・河野太郎氏の外務大臣登用だ。前回の行政改革担当相では脱原発推進や核燃料サイクル政策の見直しなどの持論を封印、内閣の方針に従うとして順調に閣僚を全うした。しかしその当時に比べて政治情勢が一変している。安倍一強の権力構造が崩壊しつつあり、一方で環境カラーを前面に出した小池都知事勢力が保守層を取り込みつつある。いわば政治の激動期に入ったとみることができ、こうした時こそ新たな自民党カラーを国民にアピールすることが必要だ。そのためには河野氏の斬新な持論を閉じ込めるのではなく、自由闊達な議論を踏まえ安倍政権として活用すべきではないか。
 もう一つは、「アベノミクス」に代表される従来型経済政策の見直しだ。その切り口は環境政策との完全な統合であり、そうした対応が国内に新たな産業と雇用へのイノベーションを引き起こす可能性がある。環境政策との統合とは、気候変動対策を国の主要な経済政策やエネルギー政策の決定に対等に取り入れることであり、そのことが新たな産業起こしや関連ビジネスを活発化させることにつながる。
 国連の報告書では、地球の気温上昇を産業革命前に比べ1.5〜2.0℃上昇以内に抑えるためには2050年までに人為的なCO2排出可能量が残り1兆トンといわれる。世界の産業はこうした制約を意識してすでに再生エネやエコビジネスに邁進している。先日、イギリスとフランスがガソリン車などの内燃機関を2040年までに取りやめ電気自動車にシフトさせる方針を決めたのも、経済と環境政策の完全統合ともいえる。日本でも1000ヵ所以上に誕生したといわれる再生エネ等発電所が地域経済に新たな息吹を起こしているという。これまで環境政策に冷淡と言われてきた安倍政権が世界の潮流に遅れてはなるまい。




東芝の家庭用燃料電池撤退の波紋
2017/07/20(Thu) 文:(徐)

 東芝が家庭用燃料電池の製造と販売から7月末に撤退する。原子力事業の損失で企業存続が問われる極めて厳しい経営環境の中、事業の選択に家庭用燃料電池(FC)は外された。日本が世界で初めて開発した固体高分子形(PEFC)のコージェネシステム「エネファーム」は、日本企業の世界一のモノづくりを世界に知らしめるエネルギーシステムだが、東芝の撤退でPEFCメーカーはパナソニックだけになる。固体酸化物形燃料電池(SOFC)のエネファームも京セラのデバイスで大阪ガスなどが実用化する。このためこれからはPEとSOが競争しあってコストをさらに下げ、革新技術を大きく開花させていかなければならない。
 東芝の定置型FCは日本のFC開発そのものでもある。リン酸形燃料電池の開発に乗りだしたのが1978年。東京電力向けに1万1000kWの実証プラントを完成、200kW機を商用化した。そして家庭用を照準にしたPEFCの開発を1992年から開始。国の大規模実証をリードし2009年度から商用化、計8万台を販売した。14年度は2万1000台とトップの実績で、売上高182億円で黒字化した。この2年は赤字だったがエネファームはコストダウンの余地が大きく、東芝にとって現在は商用化の第一ステージであったはずだ。東芝はFC生産の子会社は存続、水素製造、貯蔵、利用の中で数kW以上のFC開発と販売は続けつつも、家庭用FCは水素事業の柱にならないと判断した結果である。
 これから本番の家庭用FCを原発事業の犠牲にして撤退するのだ。エネファームは参入が最も遅かったパナソニックが現在は累計10万台を販売、増産対応を強化し、海外展開も進める。それは東芝との競争があったからこそ技術を強化することができたのだ。家庭用PEFCメーカー1社体制は、競争の面から大きなマイナスである。
 一方、発電効率が高いSOが実力をつけてきているだけに、異なる機種の高レベルな競争が家庭用FCのコストダウンと、数百万台の普及につながっていくことを期待したい。夢のFCを、そこにあるFCにしてきた東芝技術陣の情熱が、パナソニックやSOメーカーの技術のパワーを増幅していくことを願っている。




 エコカー原点は軽量化−NCVプロジェクトに期待
2017/07/04(Tue) 文:(一)

 環境負荷が小さいエコカーのイメージは電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)で、もはやハイブリッド車に至ってはコモディティー化してしまった。だが、自動車産業が近代化していく歴史の中で、一貫して追求されたのが車体の軽量化。原動機の種類を問わず、限られたエネルギーで走行距離を伸ばし、動力性能も高める。軽量化はエコカーの原点といえる。
 そんなことを思い起こさせてくれたのが環境省の音頭で、大学や研究機関、各種部材メーカーなど22団体で昨秋発足したコンソーシアム「NCV(ナノ・セルロース・ビークル)プロジェクト」。軽量・超高強度の次世代バイオマス素材、セルロースナノファイバー(CNF)を自動車部材に適用し、東京五輪・パラリンピックが開かれる2020年に、10%程度の軽量化を実現するNCVのプロトタイプを世界に披露するのが目標だ。
 CNFは木質繊維(パルプ)をナノメートルサイズ(ナノは10億分の1)まで細かく解きほぐしたもの。セルロースミクロフィブリルと呼ばれる最小単位の繊維素は直径が髪の毛の1万分の1、3ナノ〜4ナノメートルしかない。それでいて鉄鋼に比べ5分の1の低比重(1立方センチメートル当たり1.5グラム)で同等の曲げ強度と、5〜8倍の引っ張り強度を持つ。こうした特性が自動車部品などの分野で、新たな補強材として期待を集める。ただ、バイオマス素材のCNFは基本的に親水性で、樹脂やゴムとの複合材料化は決して容易ではない。NCVプロジェクトでベクトルを合わせ、切磋琢磨しながら技術改新を成し遂げるのが狙いだ。
 プロジェクトの2年目のスタートにあたり5月中旬、参加機関・企業の研究者が一堂に会する成果報告会が開かれた。ポスターセッションを中心に、まだ荒削りながら一部ではサンプル展示も。研究分野の違いはあっても目指すところは同じ。会場は熱気にあふれ、互いにシンパシーを感じているのが分かった。
 会場の外にはCNF複合部材を実際に装着していくスポーツ車「トヨタ86(ハチロク)」が置かれ、疑似的に軽量化効果を体験する試乗も行われた。自動車市場の成熟が叫ばれる中、運転を楽しめる“王道のエコカー”があってもいい。



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