今月のキーワード エネルギージャーナル社

今月のキーワード

菅首相、違う考え方の人の声にも耳を傾ける度量を
2020/10/20(Tue) 文:(山)

 菅義偉首相が日本学術会議の新会員のうち6人を任命しなかったことが話題になっている。憲法には政権が学問の自由、言論の自由、思想の自由を奪ってはならないとある。「学問の自由をうたった憲法23条に違反する政治介入だ」―任命されなかった6人の中から、こんな異議の声が上がった。
 6人は安保法制(集団的自衛権の行使を可能にすることなどを柱とする)や共謀罪法(組織的犯罪処罰法改正案)などで政府に反対の立場を取った学者だ。首相が意に沿わないからといって排除するというのでは憲法を無視した暗黒の時代が再現されかねない。
 慈恵会医科大の小沢隆一教授(憲法学)は2015年に安全保障法制の国会審議で、野党の推薦で「違憲」の見解を述べたことがある。小沢教授は毎日新聞の取材に「それが理由ならとうてい承服しがたい。政府方針と違っても言うべきことは言う。学術会議はそういう組織だ」と憤ったという。
 菅首相が、こんなに視野が狭いと先が思いやられる。学術会議前会長の山極寿一氏は「説明もなく任用が拒否されることは存立に大きな影響を与える」と述べた。菅首相に対し文書で理由の説明を求めたというが、加藤勝信官房長官が「個々の選考理由はコメントを差し控える」と述べただけだった。
 これもおかしなことである。学術会議の会員にふさわしくないと、自信をもって任命を拒否したならば、きちんと国民に説明する義務があるはずだ。理由も明らかにせず「コメントを差し控える」では任命されなかった6人と国民に対する説明責任を果たしたことにならない。
 学術会議会員だけでなく、学者の間で「政府の主張に反する立場の人を排除することは学問の弾圧につながりかねない」と危惧する声が広がっている。そのうち、学者だけでなく、政府の意に沿わない国民をパージする暗い時代になるのではというのは、あながち考えすぎではないかもしれない。
 1億2427万人余の国民はそれぞれがいろいろな考え方を持っている。学術会議の中にもいろいろな考え方の人がいるのは当たり前だ。皆が同じ考え方を持っている方が、むしろ恐ろしい。菅首相は自分と違う考え方の人の声にも耳を傾ける度量を持っていただきたい。




菅新政権のど真ん中に、気候変動対策を
2020/10/13(Tue) 文:(水)

 菅義偉新政権が9月16日スタートした。新政権はオンライン化を進めるデジタル庁の創設、先例主義の排除による行政改革、地方経済の活性化などを打ち出し、閉塞感が蔓延している国民に期待感を抱かせた。功を奏してか、新政権発足後の内閣支持率は軒並み60〜70%台の高率にアップ、ご祝儀相場もあるとはいえ前政権とは様変わりだ。
 この高支持率を背景に、自民党内には年内早い時期での衆院解散総選挙を求める声が強まっているが、政界通による直近情報によれば、選挙はむしろ遠のき来年のオリンピック後になる可能性が高くなったという。理由はコロナ禍という非常態下での選挙が国民に受け入れられないという常識論のほか、菅首相にはともかく一つでも仕事をしたことの“実績”をあげることを優先させたいとの考えが強くあるという。東京オリンピック開催を確実なものにしないと財政・経済面での打撃が大きく、国際的な日本への信頼も大きく失墜するという危惧もある。
 菅政権では財務・外務・経産など主要閣僚が再任、従来新人閣僚と女性ポストの指定席といわれた環境大臣も珍しく小泉進次郎氏の留任となった。こうした閣僚の顔ぶれは当然ながら政策面で安倍路線を継承することを意味するが、蓋をしたままの「モリカケ問題」をはじめ財務省職員の自殺などの負の遺産には、日本の政治のステータスを上げるためにもまともに対処してほしい。特に安倍前首相が任命した法の番人である河井克行前法相が大がかりな選挙買収の当事者とあっては、政治の矜持がないに等しい三流国そのものだ。
 ただあまり目立たなかったが、菅政権発足に際して自民党・公明党間で締結された「政権合意」には新たな息吹も感じられる。合意には憲法改正への対応など9項目での連携が明記されたが、その中に「気候変動対策を加速させ、(中略) 持続可能で強靭な脱炭素社会の構築に努める」という異例の1項が入った。安倍前政権は国民の前に常に経済成長(富の拡大)という人参をぶら下げ政策推進してきたが、コロナ禍時代という歴史的転換を迫られる今こそ、菅政権は新しい価値観に基づく生活様式と気候変動問題に対応した日本型グリーン経済の推進を政策のど真ん中において欲しいものである。




安倍首相の涙と政治部記者の非常識
2020/09/24(Thu) 文:(水)

 本誌9月15日号が皆さんのお手元に届いている頃には第26代目の新しい自民党総裁が菅義偉前官房長官に決まり、“菅首相”として内閣改造の真っただ中にあると思われる。歴代首相として戦後最長の連続在任年数7年8ヵ月という記録を打ち立てた安倍晋三首相が突然8月28日に辞任会見、またの投げ出しか?と見られたが「持病が悪化」とても総理大臣の重責を果たすことが叶わぬと判断したという。
 辞任会見では冒頭のコロナ対策に続けた自身の辞任に至った経緯の説明までくると、感極まったのかうっすらと目に涙が滲んでいた。そうした姿をテレビは大写ししていたが、その時は任期途中で病に倒れる無念さと果たせなかった憲法改正へのこだわりが交錯したのかと思った。しかし後で振り返ってみると、その涙は長らく握っていた最高権力者としての舞台から降りる悔しさであり、国民に向けた申し訳ない気持ちとは違うとの気がしてきた。
 ある時マスコミ界の先輩から「政治家とお役人の涙には気を付けろ」と忠告されたことがあったが、その後確かに何回かそうした場面にぶつかったことがあり、今でも演技で涙を流せる人がいると確信している。今回の安倍さんがそうだとは言っているわけではないが、あの辞任会見後に安倍政権への支持率が急変、一時は30%台の危険水準まで落ち込んだ状況が50〜60%台まで回復、それどころか想定外だった安倍政権の政策路線を継承するという「菅義偉新政権」が生まれようとしている。このシナリオを裏で用意した演出家がいたとすれば天才的かもしれない。
しかし政治のプレーヤーが変わっても優先的な政策課題は変わっていない。それはコロナ禍からの経済回復ともう一つの非常事態とされている気候変動危機にどう立ち向かうかである。安倍首相の辞任会見→自民党総裁選→3人の立候補による支持獲得運動、これに伴う報道ぶりを見ても、巨大化する自然災害や熱中症など地球温暖化対策をどうするかは話題にもなっていない。環境エネルギー政策が重要政策になっていないのは今に始まったことではないが、その多くの責任は無定見な政治家もさることながら、いつもその周りにいる大メディアの政治部記者の“非常識”にあるような気がしてならない。



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