今月のキーワード エネルギージャーナル社

今月のキーワード

生まれてくる子どもたちに安全でおいしい空気を
2021/09/14(Tue) 文:(山)

 今号の特集は「脱炭素社会に挑む住宅・建築物」です。脱炭素社会とは地球温暖化の原因(温室効果)とされる二酸化炭素(CO2)などの排出量をできる限り減らして、実質ゼロに近づけようということです。かつては「低炭素社会を目指そう」という言い方もありましたが、いまでは地球温暖化を食い止めるためにはCO2の排出をゼロ、つまり脱炭素が欠かせない状況になってきたということだと思います。
 なぜこんなことになったか。モノの本によれば、私たち人間の活動により温室効果ガスが増えたことが原因ではないかと考えられているそうだ。もちろん、現在を生きている私たちのせいでもあるのだろうが、それだけでなく、産業革命以降、石炭や石油などの化石燃料の利用や森林の伐採などにより、大気中の温室効果ガスが増加したということではないかという気もする。
 でも、いまさら何年も前のことを云々してもなにも始まらない。私たちはここでひとつ脱炭素社会実現に向けて踏ん張らなくてはならないところにいるようだ。脱炭素社会とはCO2の排出が実質ゼロとなる社会のことである。そのため、まずは、CO2の排出量を可能な限り減らし、脱炭素社会の実現に向かうことが、地球環境を守るために重要になるのだろう。
 脱炭素社会という言葉が掲げられる以前は、低炭素社会というあり方が目指されていた。低炭素社会はCO2の排出量が低い水準に抑えられた社会のことで、基本的な考え方や目的は脱炭素社会と同じである。しかし、低炭素社会の実現に向けて設定された目標は、地球温暖化を止めるためには不十分だった。そこで、CO2の排出量を減らすだけではなく、実質的にゼロの状態を目指すために掲げられた考え方が脱炭素社会である。
 「言うは易く行うは難し」の典型のような話だが、これから生まれてくる子どもたちが、安全かつ、おいしい空気を存分に吸い込んで、のびのびと成長できるような世の中になるよう、今を生きる私たちが脱炭素社会の実現に向け、もうひとがんばりしようではありませんか。




東京五輪、人々に行動変容を起こせたのか
2021/09/01(Wed) 文:(M)

 54歳の現役プロサッカー選手、三浦知良さんが著書「カズのまま死にたい」(新潮新書)で、欧州出身選手から「欧州と守備のやり方がだいぶ違う。日本に慣れないと」と言われたエピソードを紹介している。カズさんは「ん?僕らはさんざん欧州の映像を見て、ラインの作り方や押し上げ方をそっくりにしているのに。なのに『違う』って」と首をかしげる。
 現代のサッカーは個人技よりも戦術が注目される。パスで相手の陣形を崩すチーム、守備を固めながら隙を突いて攻勢に出るチームなど、戦術は多様化している。日本のサッカー界は欧州から戦術を学んできたはずだが、本家から見ると「違う」という。カズさんは「日本人の考える戦術と彼らの指す『タクティクス』とは、意味合いや中身が微妙にずれているんじゃないかな」とも述べている。
 日欧の“ズレ”はスポーツの社会的な位置づけにも現れている。日本でスポーツは夢や希望を与える存在だろう。8日に閉幕した東京五輪にも多くの国民が選手の活躍に感動し、結果に歓喜した。一方の欧州ではスポーツにサステナビリティ(持続可能性)も求める。特にプロスポーツには環境や社会の課題解決に市民を導く役割を期待している。多くの人を魅了する影響力があれば、人々に行動変容を起こせるからだ。
 実際、欧州スポーツ界は動きだしている。英サッカーのプレミアリーグは所属クラブのサステナビリティを順位づけしている。クラブもESG(環境・社会・ガバナンス)への取り組みがスポーツビジネス参加の条件となった。気候変動対策にも熱心だ。欧州サッカー連盟(UEFA)はカーボンオフセットによって、欧州選手権開催に伴う40万tの二酸化炭素(CO2)排出量をゼロ化している。日本でも1試合や2試合の単発のゼロ化はあるが、UEFAは全試合を対象に、会場を訪れた観客の飛行機やマイカーの排出もオフセットしており、本気度が違う。
 日本は今、欧州発のESGや脱炭素政策に取り組む。サッカーの戦術のように本家からは「違う」と映るかもしれない。欧州を完全コピーする必要はないだろうが、学ぶべき点はある。巨費を投じた東京五輪は、国民に気候変動対策を働きかける絶好のチャンスだったかもしれない。




「豊かさ」の再定義求めた経産省若手グループ
2021/08/05(Thu) 文:(水)

 菅政権は6月に経済財政運営の指針である「骨太の方針」とともに、2050年のCO2等実質ゼロに向けた「グリーン成長戦略」を政府の実行計画として策定した。実行計画ではアンモニア・水素や次世代太陽光、洋上風力など14分野における技術の実装化と政策の行程表を明示、環境対策(温暖化対策等)と経済成長の一体化が強調された。その中に「グリーン成長に関する若手ワーキングの提言」という他の項目とは異質なものが盛り込まれていた。
 その骨子は、カーボンニュートラル(CN)の実現に向けていかなる基本政策を今後重視すべきかをまとめたもので、「豊かさ」の再定義ととともに具体的な行動として、▽サステナブル指標の設定、▽行動の可視化、▽炭素循環プロセスの構築、などを提起していた。特に目を引いたのは、この半世紀以上続くGDPに匹敵する指標として、経済の持続可能性を表す新たな「サステナブル指標」の設定を提案したことだ。指標のイメージ案としては、RE100取得企業数/SBT認定取得企業数/自社製品の資源循環率、そしてユニークなのは「2050年に住みたい国(子供を産みたい国)と答えた高校生の割合」で、若手グループならでの着想といえよう。
 こうした結論にたどりつくまでの延べ4回の議論では、誰の何を守るためにCNに取り組むのかなどの答えのない問いにぶつかり、結局は“やらされ”ではなく“自分ゴト”としてCNに取り組める環境をつくること、そのためには個人の価値観の多様性を踏まえ「なぜやるのか」を腹落ちする複数の軸が必要、との集約になったという。
 一方、今回のグリーン成長戦略は依然としてさらなるGDPの拡大を前提にしたCNの実現である。温暖化対策はそれが「成長に資するのかどうか」が是非の判断基準とされており、この若手グループ提言とは大きな距離がある。しかも、常に政策展開の最大目的に経済成長の拡大を置いてきた本家本元の経産省の方針に異論を挟んだ行動が面白い。外部の人も含めて平均年齢30歳という若手グループの事務局を務めた蓑原悠太朗氏に本省からの圧力はなかったかを聞いたところ、「残念ながらありませんでした。引き続き検討を重ねるようにというお達しでした」との予想外の答えが返ってきた。



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