10月28日、日米両政府は「日米共同投資に関するファクトシート」を発表した。合意された総額5500億ドル(約83兆円)の投資分野と、関心を示す企業名が示された。投資額の規模で圧倒的なのはエネルギー分野、なかでも原子力関連事業が目立ち、次いでデータセンターを中心としたAIインフラ分野となっている。
両分野は、エネルギーと演算資源(コンピューターリソーシング)という形で密接に関連しており、今後の日米経済安全保障の要となりそうだ。
この2分野について、日本企業のチャンスとリスクに焦点を当てた。
エネルギー関連投資が全体の84%占める
ファクトシートは、日米共同で興す戦略産業と整備するサプライチェーンの絵姿である。総額5500億ドルという数字は、事業費ベースの規模を示す。今後、特別目的会社(SPC)が組成され、日本の政策金融機関であるJBIC(国際協力銀行)、NEXI(日本貿易保険)が出融資や債務保証で支援することになる。列記された事業候補は日米投資協議委員会によって議論され、米国側の投資委員会が推薦し米大統領が選定するというプロセスを経る。政治色の濃い構造だが、実態は経済安全保障を軸とした産業再編プログラムと言えよう。
ファクトシートでは、主要候補となる事業名、関心を示す事業者名と想定される金額が記されたが、明記された数字は投資、売上げ等が混在している。投資額は「最大で」という断りが多く、あくまで目安であり、事業者が最終的に決定したものではない。例示された事業数は21件で、単純に想定額を積み上げると計3935億ドルとなる。
候補事業は@エネルギー関連、AAI向け電源開発、BAIインフラの強化、C重要鉱物――の四つに分類される。9月4日の「対米投資に関する共同声明・覚書(MOU)」では、「半導体や医薬品、金属、重要鉱物、造船、エネルギー(パイプライン含む)、人工知能(AI)、量子コンピューティングなど経済・国家安全保障上の利益を促進する分野に焦点を当てる」と記されており、それがより明確となった。
事業数と投資想定金額は、@は8件・3270億ドル、Aは1件・未定、Bは7件・600億ドル、Cは5件・65億ドルとなっている。エネルギー関連は、@とAを合わせると3520億ドルとなり、84%を占めている(表1)。
(以下については本誌2847をご参照ください)
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