今後10年間の脱炭素化対策に向けて約150兆円の官民投資を実現するためのGX(グリーントランスフォーメーション)の全体像が固まってきた。西村康稔GX実行推進担当相(経済産業相)は11月29日に開催した首相官邸のGX実行会議に「GXを実現するための政策イニシアティブの具体化について」を提示、大筋でほぼ了承された。
最大論点だった約20兆円の「GX経済移行債」(仮称)の後付け財源となるカーボンプライシング(CP)の導入では、化石燃料輸入事業者への炭素に対する賦課金の創設と企業を対象にしたCO2排出量取引制度の導入を明記、環境省が長年主張していた本格的な炭素税導入は見送りとなった。
会議に出席した岸田首相は、年末の次回会合にCPと資金確保・国債償還の開始時期、エネルギー政策関連に関し政治決断が必要な事項、GX10年ロードマップを示すよう指示した。
炭素税を賦課金に代替、排出量取引は有償化
29日の脱炭素実行会議(議長;岸田首相)に示された「政策イニシアティブ」は、(1)成長志向型CP構想(GXリーグの段階的発展・活用含む)、(2)規制・支援一体型投資促進策、(3)新たな金融手法の活用、(4)アジア・ゼロエミッション共同体構想など国際展開戦略、(5)「公正な移行」と中堅・中小企業に関する取組、(6)今後10年を見据えたロードマップの全体像――の6点。各事項について基本的な枠組みのあり方を提示、具体的な制度等の内容は示されなかったが、その中身は11月24日に経産省が開いた「クリーンエネルギー戦略合同会合」でほぼ了承されたものと同じで、最終的に次回の会議でとりまとめる方針だ。
最も注目されていた@のCP枠組みについては、「炭素に対する賦課金」を化石燃料の輸入事業者等(上流段階)に課する賦課金方式の新設と現在経産省がGXリーグとして試行的に実施中の「排出量取引制度」の本格的実施が提示された。CO2等排出に対する賦課金は環境省が10年以上にわたって主張してきた「炭素税」に代替するもので、現行エネルギー対策特別会計の歳入となっている石油石炭税、およびその一部の「地球温暖化対策税」の別枠となる公算が高く、これが向こう10年間の公的投資規模とされる20兆円を賄う「GX経済移行債」(仮称)の財源とする考え方だ。
西村GX担当相が29日に提示した資料によると、「炭素に対する賦課金」と排出量取引に関する制度設計の柱は下記のようになっていた。
[賦課金関連]…〇代替技術の有無、国際競争力への影響、国外への生産移転(カーボンリーケージ)が生じることを踏まえ、直ちに導入ではなくGXに取り組む期間を設けた上で導入 〇最初は低い負担で導入し徐々に引き上げていく 〇賦課金の対象者は化石燃料の輸入事業者等 〇排出量取引市場との一体性確保のため賦課金の負担率を決定できる制度設計
[排出量取引関連]…〇発電部門への段階的な有償化導入 〇GXリーグを段階的に発展させ、多排出企業に対するGX経済移行債での支援策と連動 〇CP新制度はエネルギーに係る負担総額を中長期的に減少させていく中での導入を基本
(以下については本誌2703をご参照ください)
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