今月のキーワード エネルギージャーナル社

今月のキーワード
[過去4〜19 回までの今月のキーワード]


COP 33、中国の開催地立候補に期待
2026/09/02(Wed) 文:(M)

7月28日、熊本県で最大震度7の地震が起きた。被災された方々が早く日常を取り戻せるよ
うに祈るばかりだ。
その震災前、熊本市で生物多様性の国際会議「グローバル・ネイチャーポジティブサミット
2026」が開かれた。14 − 15 日の2日間の会期中、会場に2700」人が訪れた。定員が2000 人だっ
たので、想定以上の来場だ。併設の展示会場にも1 万4000 人が詰めかけた。
お金の話になって興ざめするかもしれないが、サミットを聴講する参加費は1人3万円だった。
東京からだと交通費と宿泊費がかかる。実際、会場には東京からの参加者が目立った。それなり
の費用なのにこの盛況ぶりには驚いた。
サミットのスポンサーにも約40 社が社名を連ねた。協賛金を支払った企業はサミット会議に登
壇し、自社の活動をPRできる。さらに成果文書である「熊本宣言」に署名できる。サミットは
海外の民間組織「ネイチャーポジティブ・イニシアティブ」が主催しており、宣言に法的拘束力
はない。それでも約40 社が価値を認め、少額ではない協賛金を投じた。今回のサミットで、日本
における生物多様性への関心の高さをうかがい知ることができた。商業的にも成功だっただろう。
世界最大級の環境イベントといえば、国連の気候変動枠組み条約締約国会議(COP)がある。
2023 年、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開いたCOP28には過去最多の10万人が
集まった。途上国が経済効果を狙ってCOPを誘致していると聞く。商業主義だと批判するつも
りはない。産油国も議長になれば責任を果たすこととなり、COP28では化石燃料からの脱却
や30年までに再生可能エネルギーを3倍にする目標が合意された。
開催地未定となっている28年のCOP33は、中国が誘致に意欲をみせていると報道されて
いる。中国はこれまでのCOP交渉では前面に出ていないが、議長となれば国家の威信にかけて
気候変動対策を前進させる成果を目指すはずだ。国民の環境意識を高める機会にもなる。ぜひ、
中国に立候補してほしい。
ところで、日本政府は名乗りを上げないのだろうか。高市政権の気候変動問題への本気度が試
されているというと大げさだが、招致レースに加わってはいかがか。



高市首相肝いり「骨太方針」の落とし穴
2026/08/13(Thu) 文:(水)

7月28日、10年前に続き震度7の地震に見舞われた熊本地域。8月9日現在で家屋被害は約2万740棟で、避難者の約6183人が断水と猛暑による熱中症の危険に晒されている。さらに日本列島には、この先20〜30年以内に東南海地震や首都直下型地震が高い確率で予想されている。
そうした中、高市政権は2040年度までに累計総額370兆円の官民投資を想定した「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太方針2026)を閣議決定、危機管理投資や成長投資を中核に27年度の概算要求で重点的に配分する方針を決定した。今後の予算編成作業では、上限枠を設定しない「強く豊かな日本投資枠」の創設、複数年度での予算確保の容認、補正予算依存からの脱却など、従来慣行を大幅に見直す方針を示した。ただ、これら施策推進に伴う財源は国債発行で賄う考えだが、具体的な中身までは明確にしていない。
こうした高市首相の経済政策は、17の業種等戦略分野への官民投資をエンジンに、経済成長(実質年1%超、名目3%の定着)を最優先とするいわば「それいけドンドン」の構図そのものである。しかし、かつての経済成長=「是」の時代は過ぎ去り、今日では地球温暖化を抑制するための国際的なCO2等排出の削減とそれに連動した2050年カーボンニュートラル達成も国是だ。また、年間2000人を上回る熱中症関連死亡者の発生、そして温暖化が要因とされる自然災害に加えて冒頭のような地震発生も想定されている。
残念ながら、今回の「骨太の方針」には、そうした経済成長を阻害する要素にはほとんど目を向けず、旧来型の成長一本槍を指向しているように見える。本来ならば、経済成長に伴うCO2等排出や資源循環の実現、自然再興の程度などを事前に「戦略アセスメント」をすべきであろう。また、熱中症対策として昨年、労働安全衛生規則が改正され屋外作業の制限などが施行されたが、こうした労働環境の変化にも対応する必要がある。
要は経済成長の政策展開は今や働き方改革や環境保全を含めて日本の社会構造をどう変えていくのかであり、そのためには例えば「長期夏休み期間の法定化」(支援付き)とその間における地方生活の半義務化などに発想を変えてトライしたらどうだろうか。



クマ被害の深刻さと自然との共生
2026/07/15(Wed) 文:(水)

石原宏高環境相が7月8日に東京八王子市を訪れ、クマが発生した状況や捕殺した現場などを視察、その後初宿和夫市長や東京都の担当課、出没した近くの小学校校長など関係者との会議に臨んだ。石原環境相は会議で省内にクマ対策チームの発足や関東地方の自治体向けに研修会の開催指示など、出没対策の強化及び人身被害の防止に一層の取組強化を図る考えを示した。
時の環境大臣がクマ被害の現場に出向き関係者と意見交換するというのはおそらく初めてのケースと見られる。それだけ、最近のクマ出没による人身被害や生活環境への影響が広域的かつ深刻さを増しているからでもあろう。特に八王子市は首都東京圏であるうえ、近隣の昭島市などでもクマ出没の痕跡が見つかっており、大都市においても例外ではなくなっているところに事態の深刻さがある。環境省の調査によると、クマ類の出没件数(北海道除く)は全国で2025年度が計約5万件超あって前年度の2万超を大きく上回り、26年度も8333件と前年度を上回るペースが続いている。
クマ被害は地域の日常的な生活慣習に大きな影響を及ぼすのが厄介であり、地域住民のストレスも相当なものになる。例えば、子供の学校通いや地域での催事、健康維持のために行う散歩ができないなど、それら対象地域は広大なエリアとなる。
こうした現実に、政府は「クマ被害対策等に関する関係閣僚会議」を設置して随時状況把握や対処方針を打ち出す一方、環境省は「クマ類による被害防止に向けた対策方針」「クマ被害対策施策パッケージ」などを示しているほか、直近では増えすぎたクマ類を捕獲して個体数を一定目標に抑える方針を示している。
ただこれらの対応は、乱暴に言わせてもらえば大半が緊急的措置であり、対症療法どまりである。クマ問題の根底には山々にいるクマのエサ不足→慢性的な空腹感があり、その原因は戦後に展開された植林事業による針葉樹偏重の林業政策があるという。つまり、クマのエサ不足の常態化があると有識者は強く指摘する。広葉樹多数の森林であれば、木の実や果実などが潤沢に供給され、リスクを侵してまで里山には降りてこないだろうという見方だ。
環境省が唱える「自然との共生」は実に難しい。



「環境政策応援団」と新経済成長戦略の深いミゾ
2026/07/01(Wed) 文:(水)

少し古い話で恐縮だが、5月13日に参議院の議員会館で「環境大臣経験者による環境政策応援団会議」(仮称)という変わった議員グループ設立の集まりがあった。呼びかけ人代表は昨年10月まで環境大臣を務めた浅尾慶一郎氏(参議院、神奈川選挙区)で、現職の国会議員で党派を超えた環境大臣経験者およそ10人が出席、環境省の秦康之官房長から重点施策の取組状況の説明を受けるとともに、応援団としての役割を議論したという。
会議には斉藤鉄夫中道改革連合顧問や小泉進次郎防衛相も駆けつけ、最近のクマ被害対策はもちろんのこと地球環境問題への対応、中東情勢の不安定化に伴うレアメタルなど資源循環対策の強化などの必要性が指摘された。
6月24日。政府は経済財政諮問会議と日本成長戦略会議の合同会合を開き、「日本列島を、強く豊かに」と提唱する高市首相の下で、造船・ペロブスカイト太陽電池・次世代革新炉・量子コンピュータなど成長戦略17分野における「主要な製品・技術等」を提示、「官民投資ロードマップ」に基づき2040年までに総額370兆円を投ずる新たな経済政策の推進を公表。これを着実に推進するため、従来の単年度予算編成方式を見直し、複数年度の予算要求や地域未来交付金の拡充など、大胆な制度見直しと支援措置の拡充を図る方針を示した。
しかし、これらの新たな経済成長政策と官民投資ロードマップ案には、「沸騰する地球」といわれる地球温暖化への対応(CO2等の削減)や環境保全の維持が確保されるのかの見通しにはほとんど触れられておらず、先の17分野でも蚊帳の外だ。国際的には、パリ協定に基づく30年までのCO2等削減目標とそれ以降のさらなる大幅削減の必要性、自然生態系の維持・回復など多くの対応が要請されているにも拘わらず、である。本来は新たな成長戦略を打ち出す前に、政策に対する「戦略アセスメント」を政府は実施して、その結果を国民に開示すべきであろう。成長戦略が実現すれば国民の所得は増えるかもしれないが、その半面で傷みが伴う“ミゾ”のあることをしっかりと示すべきであり、それが責任ある政治と言えないか。冒頭の環境政策応援団はそうした政策課題に是非挑戦して欲しいものである。 



「権力」を用いて猛暑食い止める大胆な政策展開を
2026/06/24(Wed) 文:(M)

5月半ば、京都に出張した。仕事の合間にも神社仏閣を巡れることができるのが観光都市・京都の魅力だ。
一日目は宇治市の平等院へ。池に浮かぶように建つ阿弥陀堂、旧1万円札のデザインになった鳳凰の美しい姿に見とれてしまった。二日目は京都市の二条城へ。豪華な装飾に圧倒され、大政奉還が宣言された大広間からは緊張感が伝わってきた。次は南禅寺へ。お目当ては水路閣(水路橋)だ。れんが造りのアーチ構造の橋脚は古代ローマ風の建築物でありながら、鎌倉時代に開山した南禅寺の光景に溶け込んでいた。
歴史的遺産巡りを振り返ると、どれも当時の為政者の権力を感じ取れる。平等院は平安時代の藤原氏の栄華を伝え、二条城は徳川幕府の権威の象徴だ。そして水路閣は明治期の京都府知事・北垣国道氏の主導力によって生まれた。北垣氏は東京遷都によって衰退した京都を復興させようと、琵琶湖の水を京都へ引く運河「琵琶湖疎水」を計画し、5年がかりの難工事で明治23年(1890年)に完成させた。水路閣は琵琶湖疎水の一部だ。運河の途中に水力発電所を設置したことで町に電灯がともり、電車が走り、工場の機械化が進んで京都に活力を取り戻した。
現代の為政者はどうか。台湾の頼清徳総統は4月末、1000万本以上の木を植える「緑蔭倍増戦略」を発表した。都市部の気温上昇を和らげる目的だが、単純な植樹運動ではない。都市を冷やす効果を科学的に分析し、市民が徒歩6分以内でたどり着ける範囲に計画的に緑地を設ける。水源を守り、洪水を防ぎ、自然を豊かにする効果も引き出す。
頼総統は「もっと暑くなる夏を前に、私たちは守備に徹するだけでしょうか。攻勢に出て気候変動への適応に積極的に取り組む」「私たちの今日の努力は、明日の台湾にとって最も経済的かつ直接的な気候変動対策となる」と、その狙いを述べている。
それでは日本はどうか。政府は熱中症予防として冷房の使用を呼びかけている。命を守るために大切だが、猛暑の根本的な解決策ではない。為政者なら、地球温暖化を止める対策に権力を使ってほしい。国づくりにも通じる大胆な政策なら、歴史に名を残せるだろう。 



熱中症予防と「2027年問題」
2026/06/04(Thu) 文:(宗)

温暖化の進展を肌身で感じるようになって久しい。気象庁の長期予報によると、6〜8月の平均気温は60〜70%の確率で平年より高い見通しという。
昭和40年代後半、まだ小学生の頃。真夏でも一日中家の外で遊んでいた記憶がある。当時はクーラーもなく、窓を全開して蚊取り線香を焚き、扇風機だけで過ごせた。夕食時には蛍光灯めがけてカブトムシが飛び込んで来たこともある。しかし今ではこんな暮らしはもはや出来ない。夏の暑さへの警戒を促すように「夏日」「真夏日」「猛暑日」「酷暑日」と気象庁の新用語もどんどん追加されてきた。
この厳しい暑さを乗り越えるには、出来るだけ冷房の中で過ごすことだ。特にマンションのようなコンクリート壁に覆われている構造では、コンクリートの蓄熱効果にって一日中熱にさらされるケースが多い。夏場に冷房を付けないのは、もはや自殺行為とも言えよう。エアコンは現在、生活にとっての必需品であり、命を守る“生命維持装置”ともなっている。
だがその生命維持装置が容易に入手できない事態が迫っている。一つは、ナフサショックにより設置工事に必要な樹脂が入手しにくい事態となっていること。もう一つは、来年導入される省エネ法の新トップランナー基準による「2027年問題」だ。従来よりも大幅に省エネ基準が引き上げられることで、これまで広く普及していたリーズナブルなエアコンは販売できなくなる。このため、エアコン価格が来年大きく引き上げられると見られている。そうなると、低所得層は容易にエアコンの買い換えが難しくなる可能性がある。
省エネを進めることは重要な政策ではある。しかし、生命維持装置でもあるエアコンをリーズナブルに入手できなくなるまで規制を強化する必要があるのだろうか。エアコンは電力で動くため使用時は直接CO2を発生しない。とすれば、CO2対策としては再エネの最大限活用など電源の脱炭素化を進めていくことの方がはるかに重要ではなかろうか。 



日本の負の遺産・水俣病解決に向けて
2026/05/13(Wed) 文:(水)

�@ 1956 年から70 年 �A約3.6 万人(3001 人) �B 202 人・82 歳 �C約47 万人、約1000人 �D 1.44 万〜 1.92 万円 �E 153 ヵ国(25 年11 月時点)
この5 月1 日前後、マスメディアに例年と同様の「公害の原点・水俣病」に関する報道がこぞって出ていたが、上はその記事での主な数字だ。�@は、水俣病が国による公式確認から70 年の歳月が流れたこと。�Aは、水俣病対策特別措置法に基づく被害認定申請者と認定された人、�Bは、認定の存命者と平均年齢、�Cは、熊本県の当時の潮谷義子知事(2004 年) が環境省に提案した住民健康調査の対象数(未実施)と06 年に環境省が実施した調査数、�Dは、法律に基づく認定患者に支給される療養手当額(26 年4 月現在)。そして、�Eは17 年に発効した「水銀に関する水俣条約」でこれまで153 ヵ国が批准、関連対策の大きな拠り所となっている。
一口に“70 年” とはいうものの、被害者( 潜在者も含め) にとってはまさに艱難辛苦そのものの人生であり、塗炭の苦しみであったことは容易に想像できる。今なおそれが続いていることに我が国の政治・行政の無能さを感じざるを得ない。もちろんこの間の関係者の尽力を否定するものではないが、ともかく抜本的な“ 解決” に向かっていないという現実は否定しようがない。しかも、環境省はこの水俣病被害を公害・環境対策の反面教師として多用してきた。
それでは水俣病問題の「解決」とは何か。第一に、水俣病に関連する被害等の全容と現在の実態を客観的に集約することであり、福祉政策的な面も含めた総合的なプログラムと行程表を策定することであろう。第二に、そのための財政措置を特別法として立法化、被害発生当時に産業政策の当局者として瑕疵を犯した通商産業省も含めて、環境省とともに財源の手当てをすべきではないか。現在、経産省が推進中の約3 兆円のGI 基金に比べれば大した額ではないだろう。ただ、こうした対応が具体化したとしても、抜本的解決とはならず、あるべき姿の“ 方向性” を示すことでしかない。
高市首相は先月29 日開かれた昭和100 年記念式典の挨拶で、「若者たちが日本に生まれたことに誇りを感じて“ 未来は明るい” と自信を持って言える国を創り上げていく」と語ったようだが、その手始めをこの公害の原点への新たな対策で実践して欲しいものである。



新たな省エネ・資源循環こそ強靭な経済安全保障
2026/04/15(Wed) 文:(水)

3月下旬、かつて我が国のエネルギー行政に関わったことのある某氏へ、旧知の紙製品(トイレットペーパーなど)製造会社の社長から突然電話がかかってきた。電話の主旨は「高市首相は石油備蓄を放出する方針のようだが、本当にそれで大丈夫なのか。石油価格も大きく上がるし、備蓄分がなくなったらどうするつもりなのか」という内容だった。紙製品製造工程では、加工段階で付着している不純物を飛ばすために大量の石油を使うので、石油類の確保に支障が出れば即生産が止まってしまい最悪ケースでは廃業に追い込まれる。そうした事態を危惧した社長が懸命に情報収集をしていたと見られ、中小企業の一紙屋さんまでも今回のホルムズ海峡封鎖による影響を強く懸念していたわけだ。
これに先立つ20日(日本時間)、訪米した高市首相はトランプ大統領と対面での初の首脳会談に臨んだ。冒頭で派手なハグを見せながら、イランが封鎖しているホルムズ海峡における船舶航行の自由確保やエネルギー分野への対米投資約11.6兆円などに合意した。しかし、トランプ氏によるイラン攻撃の正当性を持ち上げる言動が目立ち、「世界中に平和と繁栄をもたらすことができるのはあなただけだ」というお世辞(ゴマすり?)まで発したという。
この時の両氏の親しげなハグも巷で話題を呼んだ。いわく1億の日本人を背負って対面するのだから軽率ではないか、いやあれは欧米での儀礼だから仕方がない、などなどであった。そのハグについて外交官の経験を持つ人に聞いてみた。答えは、欧米での対面首脳外交では一般的だが、日本人としての文化・慣習から見ると配慮が足りなかったのではないかとの指摘だった。
ところで、肝心の我が国における原油や発電所用燃料が大半のLNGの備蓄および供給確保の見通しである。かつて1973年(昭和48年)に勃発した中東戦争では日本のあちこちのスーパーでトイレットペーパーがなくなり長蛇の列をなした。今回のホルムズ海峡封鎖について、高市首相は十分な原油備蓄体制があることを強調しているが、長期的かつ構造的な省エネ・省電力、資源の再利用など強靭な経済安全保障への抜本的な政策転換は示されていない。遅きに失した事態にならないか、強い懸念を覚える。 



省エネと、「もったいない」精神はどこへ行った!
2026/04/08(Wed) 文:(M)

都内のあるビルでエレベーターに乗り込むと、閉じた扉に動画が映し出された。振り向く天井にプロジェクターが設置されていた。動画の内容はCM。目的階に着くまで10秒未満なので、途中で終わった。何の宣伝だったのか分からなかった。
通勤で使う駅構内には柱にディスプレーが取り付けられ、CMが延々と流れている。ほとんど、立ち止まって見る乗降客はいない。宣伝効果はあるのだろうか。紙媒体を生業にする者の身びいきだが、新聞や雑誌の広告の方が見てもらえるのではないかと思う。
それに環境面からも疑問だ。他の機器と比較すると、少量とはいえプロジェクターやディスプレーも電力を消費している。イラン情勢が緊迫化して原油価格が急騰している。かつての日本なら節電によってエネルギー消費を減らそうと努力した。今、人々の省エネ意識は薄れ、政府は補助金で負担を和らげる。補助金と言うと聞こえは良いが、元は税金だ。エネルギーの海外依存を下げるために、再生可能エネルギーの普及を急ぐという意見も聞こえてこない。省エネや再エネなら気候変動対策にもなるのに。
他にも日本社会がどっちを向いているのか、分からないことがある。東京都内や大阪市内ではタワーマンション(タワマン)が建設ラッシュだ。なかには入居せずに投資目的で購入されている物件があり、住宅価格を押し上げている。
一方で空き家が増え続けている。国土交通省によれば、全国に900万戸の空き家があると推定される。空き家問題が解決されないまま、タワマンによって住宅の供給量が増えている。住宅にも多くの資源が使われている。「もったいない」精神も希薄となり、サーキュラーエコノミーと言いながら住宅の大量生産・大量放置が続く。
旧約聖書『創世記』に、人類が天に届く塔を建設する「バベルの塔」の物語がある。人類は神の怒りに触れ、それぞれが違う言語を与えられる。人間の傲慢を戒める故事だ。
日本もエネルギーや資源を野放図に使っていると神の怒りを買うのではないか。きっと将来のツケが大きくなる。そういえば、ニューヨークには大統領の名を冠した高層ビルがある。神は、このタワーの主にどんな罰を与えるのだろうか。



もう一つの「地球存立危機事態」
2026/03/18(Wed) 文:(水)

ロシアによるウクライナ侵略戦争に加えて米国・イスラエルはイランへの攻撃を拡大、世界のエネルギー大拠点である中東地域が戦争状態となって、先の見通しがつかない状況にある。トランプ米政権が一方的に踏み切ったイラン攻撃は国際法違反との指摘がある中、高市首相は国会の答弁で「暫く時間をいただかないと法的な評価ができるものではない」と述べ、中東のホルムズ海峡が封鎖された対応について、我が国の「存立危機事態」にあたるかどうかの判断を留保した。高市首相は19日に訪米してトランプ大統領との会談が予定されており、どんな宿題を抱えることになるのかが注目される。
国際社会が戦時状態にある現在、もう一つの「存立危機事態」への対応がすっかり棚上げとなりそうな雲行きだ。周知のように、国連が主導する気候変動対策では195ヵ国が締結したパリ協定によって地球の気温上昇を1.5〜2℃に抑えるべく、その原因となるCO2等の削減を規定。この10年の各国による削減努力如何がその成否を左右し、場合によっては“地球沸騰”という時代に突入する可能性を指摘している。
各種の報道等によると、ロシアによるウクライナ侵攻戦争で排出が推定されるCO2換算排出量は最近2年間で1億5000万t、自動車が排出するCO2の9000万台にも匹敵する量になるという。これに今回の米・イスラエルによるイラン攻撃と中東紛争が排出するCO2を加えると、各国が合意したパリ協定の要削減量を帳消しにするかもしれない。また、この2〜3年にわたって頻発している山林火災などを加えれば、CO2排出増大は不可逆的な地球温暖化に近づいている可能性大と言えそうだ。
こうした戦争とCO2排出の因果関係は未だに公的な分析がなく、可視化もされていないどころか事態を引き起こした責任のあり方も全く定められていない。それどころか世界第二のCO2排出国の米国はパリ協定からの脱退を決めている。つまり端的に言うならば、国を挙げて脱炭素社会に向けた懸命の努力を重ねている行動が水泡に帰していることになる。これらの主導者はいつの日か地球社会を滅亡させた張本人として墓銘を刻まれることになるのだろうか。



北京紀行点描
2025/07/18(Fri) 文:(水)

 4月中旬、トランプ米大統領の相互関税問題で張り合う中国経済社会の実情とCO 2排出大国としての再生可能エネルギーに対する取組状況などを見たいと考え、1週間ほど北京に滞在した。
 実は中国訪問は三度目で、前回は15年以上も前になるが北京の街中には中高層ビルがあまりなく、ちょっとした通りに入ると沿道には屋台の店や古ぼけた椅子に座っての散髪、縁台将棋などの風景が広がり、生活の匂いがそこはかとなく伝わってきて、それほど異国という雰囲気はしなかった。
 ところが、今や北京の街は一変していた。ここ10数年の急速な経済成長を物語るように、官庁街を筆頭に巨大ビル群の連続であり、幹線道路や高速道路も整然と整備され、かつては目立った道路脇の砂埃が立っていた空き地も、その大半がみどり豊かな商店街や業務・住宅地などに整
備されていた。何よりも驚いたのは、北京から高速道路で50分ほどかかる天津市までの間、高さ50mから60mはある中高層の鉛筆ビルが30ヵ所以上あって、その大半が住居用マンションといわれ、中国南部の農村地域からの出稼ぎ者向けのようだ。そうした建坪空間の少ないノッポビルは大地震が来ればひとたまりもないが、この200〜300年間地震発生がなかったためか、北京市民はほとんど気にしていないという。
 これだけの中高層マンションの乱立やスマホ社会( 生活の大半の手段にスマホを活用) の常態化となれば、電力の消費量はうなぎのぼりとなるはずで、その電源確保も容易ではないはずだ。
 しかし、北京の街中をはじめ天津までの移動中においても、太陽光発電パネルの存在は全く見かけなかったし、他の再エネが立地している光景も見当たらなかった。ようやく天津市の港に近くなって、風力発電の風車が5〜 6基程度見えてきた程度だ。
 その理由を大手新聞社北京支局の関係者に尋ねたが、北京周辺は緯度が高く太陽光発電の効率が悪いからではないかとの答えだった。それにしても、中国は今や太陽光と風力発電機器市場のシェア7割以上を占める再エネ輸出大国であり、しかも低廉な価格での世界市場席巻はトランプ相互関税の標的にもなっている。世界第一のCO2排出大国ならば、あらゆる手段を尽くすという意味で電力の急増地域にこそ再エネ開発を急ぐべきだろう。 



熟練工が手を止める時、日本も止まる
2025/06/20(Fri) 文:(宗)

 最近、テレビでヤマサキという会社のCMを見かけるようになった。高炉の耐火レンガを積み上げる築炉工が「炉が無いと鉄は生まれない。だから僕はその手を止めない」と言う内容で、鉄鋼業を支える職人を描いている。
 製鉄の中心的存在でもある高炉は、20年程度で「巻替え」という大規模改修をしなければならない。高炉を輪切りにして分解し、内部の劣化した耐火レンガを剥がし、新しいレンガを一つ一つ積み上げていくという、地道な作業だ。多くの築炉工を動員して作業を進めていくのだが、レンガを緻密に積み上げる技能は一朝一夕で得られるものではない。それにも拘わらず一度巻替えが終わると、同じ高炉での次の仕事は20年も先。そのため各製鉄所で築炉工を抱えておくことは出来ない。従って築炉工は各製鉄所を回って順次仕事をこなすことになるが、それでも仕事の山谷が多く、熟練した築炉工の維持や育成は鉄鋼業にとって重要な課題だ。
 その築炉工を将来的に維持できるかどうかは20年前から大きな問題だった。技術の習得には10年という時間と多くの工事経験を必要とするが、国内の高炉の数が減っていくなかで、複数の会社が巻替えで競合を続けると築炉工の維持・育成が出来なくなる。そのため以前は3社程度
が行っていた巻替え作業は、最終的に日鉄系に集約された経緯がある。しかし、築炉工の高齢化と典型的な「3K」の仕事で若い人が入ってこないことは長年の宿題となっていた。築炉工を確保することが出来なければ、高炉を動かし続けることはできない。「いつまで高炉操業を続けられるだろうか」という悲痛な声も聞こえてくる。
 そういうこともあって、ヤマサキのCMを見てまずは築炉工をまだ維持できていることを確認できて安心した。このヤマサキという会社は、築炉工を維持していくため、高等学校卒業者を対象とした1年間の職業能力開発校を自社で運営している。これまで同社が築炉工を維持できたのは、こうした企業努力の賜物といえるだろう。
 熟練工は製鉄だけではない。最新のガスタービンや原子力機器の製造や施工など、発電設備建設にも欠かせない。彼らが「その手を止めない」と言ってくれる間は良いが、担い手がいなくなった瞬間、日本の産業全体も止まるのだろうか。



トランプ外交と環境政策は「脱・マニュアル」で
2025/05/16(Fri) 文:(M)

 「芽吹き始めた草木に、春の暖かい日が差し込む…」。出席した卒業式で聞いたあいさつの冒頭だ。
 この日、東京は真冬に逆戻りした寒さで、雪が降っていた。祝辞で語られた情景と、積雪のある校庭の光景にギャップがありすぎて、心の中で失笑した。同時にあきれた。どうしても原稿をそのまま読まないといけないのか。大人なら雪の日の門出に触れる臨機応変さがあってほしかった。
 融通のきかない様子を見て、作家の東野圭吾さんの「マニュアル警察」という作品を思い出した。推理小説家の著者にしては珍しい短編コメディーで、妻を殺した男が自首しようと警察署に出頭する場面から始まる。女性警察官に署で取り扱い中の事件かと聞かれ、男が「殺してきたばかり」と告げると、「事件の通報手続きをとって下さい」と窓口を案内される。
 行った先の担当者から男は「第一発見者」扱いにされ、捜査員からは「奥さんが亡くなられました」「犯人への心当たりはないですか」と手順通りに声をかけられ、なかなか自首できない。
 事件発覚前の自首がマニュアルにないためだ。
 トランプ米大統領には、通常の外交マニュアルは通用しないだろう。常識外の高率の関税を課すと言い出し、発動した途端に停止する。赤沢亮正経済再生担当相が渡米すると、トランプ氏自らが交渉相手に名乗り出るなど展開が読めない。石破茂首相は「外交上のやりとりであり、言及を差し控える」とマニュアル通りに答弁したが、日本のリーダーとして国益を守る判断を下せるのだろうか。手腕が試される。
 環境政策も既存のマニュアルは通用しない。気候変動が進行し、自然災害が多発しているからだ。海外では規制が強化されている。日本が例年通りに対策予算を執行して「現状維持」にできたと思っても、実際には「後退」している可能性もある。マニュアルがあると便利な面もあるが、頼りすぎると思考停止に陥り、必要な決断を遅らせることがある。卒業式のあいさつや小説のように笑い話で終わるなら良いが、外交も環境政策も手遅れになるとダメージが大きい。マニュアルに依存しすぎない臨機応変な判断を政治家や政府に期待したい。



東京ビッグサイト風景と我が国再エネ技術力
2025/02/28(Fri) 文:(水) 

 2月19 〜2 日に東京ビッグサイトで開催された「スマートエネルギーWeek( 春)2025」はさながら中国のどこかの会場ではないか、と錯覚するほど中国カラーに溢れた展示と取引商談が目についた。出展社数が約1600 社の会場は太陽光発電展(PVEXPO)、ゼロエミ火力発電展、
風力発電展、水素・燃料電池展などのゾーンに分かれていたが、圧倒的に中国系企業等のコマが多く、入場者もその団体・グループが多く見られ、中国語が盛んに飛び交っていた。それだけではなく、会場のスタッフにも若い中国女性が目立ち、戸惑いながら業務をこなしていた。
 我が国はこの18日、脱炭素化社会づくりと再生可能エネルギーを主力電源とする「GX2040ビジョン」など3 国家戦略を閣議決定した。産業構造の改革とエネルギー自給率向上に直結する再エネ産業の自立化は待ったなしの課題としたものだが、主力の太陽光発電ビジネスでは機器導入の7 〜 8 割が中国製と言われており、国内関連企業は霞んでいる。
 この展示会で目当てにしていた風力ゾーンの五洋建設コマに行ってみた。先月、同社は政府が導入拡大に最も力を入れている洋上風力の建設に不可欠な「大型基礎施工船」(HLV) の建造契約をシンガポールのSeatriumGroup等と契約したと発表。28年5月に完成させ、同年秋から
の稼働を予定する。芙蓉総合リースとの共同保有で、建造費は約1200 億円、電力ケーブルの敷設に必要な「大型作業船」(CLV) 建造費約310 億円を加えると、約1500 億円超の先行投資となる。
 同社はZEB建設でも知られるが、洋上風力分野にも積極的でSEP船(風車据え付け船)を複数所有する。今回のHLV等建造は28 年以降本格化すると見られる浮体式の導入を見込み、15MW〜20MW級風車据え付けに必要なモノパイルが施工できる5000t 吊り全旋回クレーンを搭載するなど、自航式では世界最大級になるという。ただ、残念だったのはこの商談過程において、日本の造船メーカーは受注できない理由をさんざん示したが、契約したこのシンガポールの造船会社からは一発で「我々は十分にできます」との答えが返ってきたことだと、関係者は自嘲気味
に語っていた。



米国トランプ政権の4年、試される気候危機への対応
2025/02/21(Fri) 文:(水) 

国立環境研究所と宇宙航空研究開発機構( JAXA ) が打ち上げている人工衛星「いぶき」( GOSAT ) の観測によると、地上から上空までの地球大気全体のCO2 平均濃度は2024 年に421ppm となり、この10 年超の観測値としては最高を記録した。2010 年は388ppm だったが、最近1 年間の増加量が平均3.5ppm になっているという。
また、欧州連合( EU ) の「コペルニクス気候変動サービス」は今年1 月の世界平均気温が13.23℃となり、1 月としては最高を記録したと発表。産業革命前(1850 〜 1900 年) の1 月の平均よりも1.75℃高かったとしており(2.1 付毎日新聞)、日本の「いぶき」の観測結果を裏付けた。
地球危機の兆候はまだある。米ロサンゼルスであった最近の大規模山火事(1 万6000 棟以上の建物消失) は、地球温暖化による高温・乾燥化・少雨などの気象条件が重なって約35% 増の発生頻度になっていたという調査結果を国際研究チームのWWAが発表している(前出)。
再度の登板となったトランプ米大統領は選挙戦での公約通り、国連気候変動枠組み条約を推進する「パリ協定」からの脱退を国連事務局に通告、1年後には世界第2 のCO2 等排出国が削減対策を放棄することになる。またシェールガスの増産、アラスカのノーススロープ石油・天然ガス開発など化石燃料使用への回帰を鮮明にしており、国際的な温暖化対策の推進に急ブレーキがかかるのは間違いない。日本政府関係者には、米国はすでに州レベルや市場取引で脱炭素化ビジネスが浸透しており時計の針を元には戻せないとの楽観論もあるが、果たしてどうだろうか。
第一に危惧されるのは昨年12 月のCOP 29 で合意された2030 年までに気候変動対策資金年間3000 億ドルという合意の行方だ。すでに、トランプ政権は国連活動のための運営費用やWHOなどへの拠出金を減額・停止する方針を示しており、一連の活動縮小につながりかねない。気候変動対策の影響では最大の排出国・中国も米国に追随する可能性( 逆の見方もあり) とともに、国際的な対策効果の無力感( 野心の減退) に陥る可能性が大きい。「地球沸騰時代」と指摘されるいま、反温暖化対策に掉さすトランプ政権はこれから4年続く。されど4年しかし4年という時間に国際社会はどう立ち向かうのか、かつて環境立国を標榜した我が国の主体性も問われている。



「令和の日本列島改造」への期待と危惧
2025/01/24(Fri) 文:(水) 

 昨年10月の政権担当以来、「地方創生」を看板政策としていた石破茂首相が年頭の記者会見で、「令和の日本列島改造」を打ち出した。いわく、「地方創生を通じて東京の一極集中を打破する」「政府機関の地方移転によって職員による都市と地方での2拠点生活する制度の創設」など具体的な政策展開の中身にも言及、これを成就させないと日本の将来はないという危機感まで滲ませた。
 かつて昭和40〜50年代にかけて、日本は全国に新幹線網の背骨をつくり地方の隅々まで高速道路を走らせて地域の過疎を新たな交通網で結び、石油コンビナート立地のための沿岸埋め立てなど、当時の田中角栄首相による日本列島改造論に沸いた。そうした列島改造は多くの便利さと所得拡大をもたらしたが、三次にわたる石油ショックよって日本経済は挫折した。
 その後は大平正芳内閣による「田園都市国家構想」や竹下昇内閣による「ふるさと創生」、そして岸田文雄政権による「デジタル田園都市国家構想」と続いたが、過疎化解消の成果は上がっていない。石破内閣では2025年度予算案で地方創生交付金を200億円計上して改めて対策の重要性を示しているが、地方創生への繋がりは今のところ不透明だ。
 「地方創生」という政策課題は人口の減少・高齢化が急速に進む中、つまるところ数十年続いた東京圏への一極集中を排し、地方の人材も含めて地域に眠っている資源の再発掘と活用を図る対策を実施することだろう。そのための方策として、例えば前述の公的機関や大学・高等専門学校等の地方移転、民間企業の東京本社拠点化の制限措置など、政治がすぐにでもやれることは多い。また、地方の過疎化進行と一次産業の衰退を食い止める方策として、大学生等を対象とした1年間の体験実習半義務化や定住生活の2拠点化支援措置などが浮かぶ。
 ただ、かつての列島改造時代と大きく異なるのは、今や気候変動対策の実施が不可欠な要件となっていることである。来るべき首都直下型地震にも備える必要がある。どんな政策が正解か、石破政権は「地方創生」に向けた戦略的計画アセスメントを実施して欲しいものだ。



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