今月のキーワード エネルギージャーナル社

今月のキーワード
[過去4〜19 回までの今月のキーワード]


必至となるか中央省庁再々編の足音
2018/05/22(Tue) 文:(水)

 財務省での公文書改ざんやセクハラ不祥事など一部官僚組織による国民の信頼を裏切る行為が相次ぎ、2001年以来の中央省庁再々編を検討する動きが強まっている。すでに自民党の行政改革推進本部(甘利明本部長)が役員会で現行体制・組織の課題洗い出しを確認したほか、5月以降新たな方向性に関する議論を行う方針だ。
 現在の中央省庁は1府12省庁体制を基本として、これにその時々の重要課題を担務する兼務または専任の担当大臣を置く。当時の1府21省庁という大組織を、縦割り行政を排して政治主導による政策決定を目指すとして、強大な権限を持つ内閣府の新設や10以上の局を抱える総務省、厚生労働省の創設とともに組織のスリム化も図った。
 そうした組織改編から20年近くたち、官僚組織の肥大化が目立つ一方で少子高齢化に伴う行政ニーズ、電子政府化の要請、地球温暖化対策の強化と再生可能エネルギーの主力電源化に伴う既存インフラの再構築など、現在の縦割り一府省完結主義では対処できなくなっている。加えて「森友学園」と「加計学園」の問題では、安倍首相への官僚による忖度が組織ぐるみで公文書改ざんという行為に発展、安倍政権の支持率低下を招いている。ここは人心一新、霞が関の再々編に打って出て国民の信頼を回復させ、安倍政権の延命につなげようという戦略であろう。ただ、膨大なエネルギーと政治力が必要となる“体力”が安倍政権に果たして残されているかどうかが微妙だ。
 ではどのような霞が関の再編が望ましいか。財務省の分割再編や巷間指摘されている内閣人事局の見直しとか、単なる組織いじりにとどまってはならない。組織が必要となる前提にこそ目を向けるべきだ。例えば、@当たり前となっている単年度予算編成方式を2年ごとに変更、A一府省庁での政策展開完結主義の見直し(同じような行政組織の廃止)、Bほぼ無用となっている法律・制度の統廃合――など、大胆かつ繊細に次世代のニーズに対処できるようにすべきと思う。特にBは地味だが重要と思われ、現在ごまんとある法律のスクラップと廃止を具体化して、行政のスリム化と余力の確保に結び付けるべきではないか。



石炭火力の新増設−法的規制は避けたい
2018/05/11(Fri) 文:(一)

 環境省が3月下旬に公表した2017年度の電気事業分野における地球温暖化対策進捗状況評価で、環境負荷が大きい石炭火力発電をめぐって課題や懸念を示した。同省は電力業界の自主的な温室効果ガス排出削減の取り組みを前提に、石炭火力の新増設を容認する姿勢だったが、ふたたび疑念を強めている。自主的な取り組みを徹底し、法的規制だけは避けたいところだ。
 現状で国内の二酸化炭素(CO2)排出量のうち、電力部門が約4割を占めている。同部門の低炭素化が、温室効果ガス排出削減のカギを握るのは自明の理。だが、東日本大震災後の電力需給逼迫と電力自由化を背景に、安価な石炭を燃料とする火力発電計画が相次いだ。
 15年に地球温暖化対策の新たな国際枠組み「パリ協定」が採択されたが、政府はそれに先立ち、日本の30年度における温室効果ガス排出量を13年度比で26%削減する目標を決めた。前提となる30年度の望ましい電源構成(エネルギーミックス)で石炭火力の割合は26%程度とされ、これに合わせて電気事業者35社は同年、30年度に販売電力量1kWh当たりのCO2排出量を示す排出係数0.37kg程度、火力発電所の新設に当たり実用化できる最良の技術(BAT)を活用することにより年間で最大約1100万tの排出削減という目標を設定している。
 しかしながら、石炭火力の新増設計画は50件近くあり、計画どおり建設されると目標達成が危惧される。当時の望月義夫環境相は履行を担保する仕組みがないことから、環境影響評価法に基づいて事業者が提出した環境配慮書に対し意見書で「是認しがたい」を繰り返した。
こうした状況を受け、電力業界が自主的に取り組みをチェックする電気事業低炭素社会協議会(電力会社と新電力42社加盟)を設置し、翌16年に後任の丸川珠代環境相が経済産業省との間で新設容認の合意に至った経緯がある。ただ、同協議会は任意団体で拘束力を持たず、目標達成に向けた道筋を描き切れていないのが実態だ。
 このままでは2年前の議論に逆戻りしてしまう。消費者が“環境に優しい”電力自由化のメリットを享受できるように願いたい。



河野外相のエネルギー政策への深謀遠慮
2018/04/06(Fri) 文:(水)

 2月19日、河野太郎外務大臣に提出された「エネルギーに関する提言」の内容は、霞が関の官僚をざわつかせるのに十分だった。提言は「日本の新しいエネルギー・気候変動外交の方向性をまとめた」としているが、その矛先は経済産業省が検討中のエネルギー基本計画に向かったものだろう。提言の中身は、所掌する外交政策に対する課題指摘というよりも、従来の価値観にしがみつく国内のエネ政策に対する痛烈な批判となっている。
 そのエキスを拾ってみると、▽各国はパリ協定が求める脱炭素社会の実現に邁進しているがその速度は日本を遥かに上回る、▽日本は再生エネの拡大で先行する諸国に水をあけられた、▽世界の努力と齟齬ある政策を続ければ、カーボンリスクを重視する世界市場でビジネス展開の足かせとなり、国際競争力を失う、▽エネルギーのことをエネルギーだけで考える時代は終わった――などなど。特に最後のフレーズは経産省への最大の当てこすりだろう。
 提言を読んだ経産省の某課長は、「政府方針にフライイングしているどころか、所掌の枠を超えている」と、不快感を隠さなかった。世耕弘成経産相はエネ基見直しに関して、「2030年目標のエネルギーミックスの見直しは必要ない」と再三言明しており、河野外相が提言を踏まえたアクションを起こせば「閣内不統一」と批判され、政府内調整も難しくなる。また中川雅治環境相も、50年に向けた低炭素社会づくりへの礎として、石炭火力の削減と再生エネの主力電源化を提示、外務省―環境省の連合軍ができる可能性もある。
 ただ外務省の有識者会合が河野大臣に提言した文書は、外交を進めるうえでのあくまで「参考」にするという位置づけで、それ自体が重要な役割を果たすものではない。形式的には河野大臣が提言を受けたとなっているが、しかしこの会合を河野外相自ら主導し数回出席するなど、この種の会合では異例ともいうべき力の入れようだった。当然、政治家として一時のパフォーマンスでは済まされない責任が今後も要求されよう。
 「森友学園問題」で安倍長期政権が先行き不透明になってきた。河野外相が再生エネを主力にした日本再興と、封印していた脱原発を旗印に「ポスト安倍」に挑む姿が見られるのだろうか。



洋上風力は国が明確に各論を示すことから始まる
2018/03/22(Thu) 文:(徐)

 日立製作所はベルギーの企業と共同で、台湾の電力会社から洋上風力発電21機の受注を内定した。日立が開発した5000kWダウンウインド型で初の大型受注となりそう。日本にとって今後の再生可能エネルギーのエースと見込まれる洋上風力は、世界で1880万kWに対し、日本は6万5000kW。日立が洋上風力の大型受注を最初に獲得するのは日本からではなく、国策の下400万kW洋上風力実現を目指す台湾からだ。日本が洋上風力で30年代に1000万kW以上を目指すには、国は港湾整備、国内部品企業の創出など産業育成につながる各論を示すことが不可欠だ。
 海洋国家日本にとり、取り組むべき海洋エネルギーは海洋温度差発電、波力発電、潮流発電もあるが、いずれもマイナー。洋上風力こそ日本の再エネのエース格に育つ賦存量の大きなエネルギー源である。海外は欧州が北海中心に着床式の洋上風力を活発に導入、累計は英国の680万kWを筆頭にドイツの540万kWと続く。欧州は各国の強みを生かした事業の分業化(セントラル方式)を採用、太陽光発電(PV)で中国勢に市場を席巻された苦い経験を生かし、欧州企業の育成・強化を前面に押し出して臨む。英国の洋上風力は衰退する北海油田から代替する産業振興策でもある。欧州は10の拠点港を構え、単機風車の規模は1万kW以上を目指し、1億kW以上の導入に向け、北海に大規模送変電基地を造成する計画など中長期の明確な導入指針がある。
 日本は現在、洋上風力の事業計画が270万kWほど上がってきてはいる。国も港湾に加え、一般海域も対象に共通ルールの策定に入る。日本も着床式がしばらくは中心になるが、まだ拠点港がなく、大型のSEP船(自己昇降式作業台船)もない。大型風車の部品メーカーも育ってない。洋上の動きが建設段階へ進まないのは、国の体系だった将来への導入指針がなく、事業の将来性がみえないからだ。
 国は今後、全国5海域での重点ゾーニング選定などの検討に入ったが、一方で洋上風力は入札制にするなど導入前からいたずらに競争を強いるといったアンバランスな対応だ。投資額が大きい洋上風力は日本の産業育成につながる。欧州のようなはっきりとした導入拡大と産業振興の施策を明示した洋上風力のビジョンを示すべきである。浮体式の導入も念頭に置いて長期の具体的な指針を打ち出すことが洋上風力発電大幅拡大の道となる。



 地域資源の竹を利活用−薩摩川内市の省エネに期待
2018/03/07(Wed) 文:(一)

 地域の再生可能エネルギー発電所を活用する“地産地消型”の電力ビジネス、地域新電力が全国各地に誕生しているが、それに加えて、地域の特徴的な資源を省エネルギーに生かそうという取り組みもある。
 鹿児島県薩摩川内市は2015年、豊富な竹資源をバイオマス燃料や高機能材料に生かすための産学官組織「薩摩川内市竹バイオマス産業都市協議会」を発足し、さまざまな利活用策を検討してきた。その一環として市内に工場を構える中越パルプ工業が竹を原料に、次世代のバイオマス素材として注目されるセルロースナノファイバー(CNF)を製造することに成功。用途開発につながるプロジェクトが同市を舞台に始動した。
 集合住宅設計の日建ハウジングシステム(東京都文京区)は建材メーカーのLIXILと共同で昨秋、CNFを使った建材を開発して性能評価する事業に着手。樹脂窓や屋根、外壁などにCNF複合材料の適用を試み、既築の集合住宅に施工して断熱性や強度を比較検証する。環境省の委託業務「2017年度セルロースナノファイバー活用製品の性能評価事業」で採択を受け、2019年度末まで実施する計画だ。比較検証により効果を確かめるための集合住宅として、薩摩川内市が市営住宅の住戸を提供する。中越パルプも薩摩川内市竹バイオマス産業都市協議会の会員だ。
 樹脂窓は樹脂サッシとガラスを組み合わせた建材。樹脂はアルミに比べ熱伝導率が約1000分の1で、断熱性能が圧倒的に高く、サッシメーカーは樹脂窓やアルミ枠と複合化した製品を開発している。熱変形しにくく高強度のCNF複合樹脂を適用してサッシの断面積を小さくし、複層ガラスと組み合わせることで断熱性能をさらに高め、同時にサッシの耐候性も向上させて長寿命化を図り、環境負荷低減につなげる狙いだ。屋根や外壁についてはCNF複合材料の吹き付けなど、さまざまな施工方法が検討されている。
 CNFの用途として最も注目されるのは軽量・高強度を実現するゴムや樹脂との複合材料化。自動車部品や建材へ適用が期待されているが、未だ実用化には至っていない。地域活性化への思いが推進力となって、地方都市で世界に通じる省エネ技術が結実することを期待したい。



大手電力会社自らが再生エネの主役に
2018/02/28(Wed) 文:(水)

 最近の再生可能エネルギーに関する系統制約問題や買取価格の引き下げ要請、火力発電の調整力活用などの議論を見ていると、経営資源が豊かで電気のプロでもある大手電力会社がなぜ再生エネ事業の主役にならなかったのかつくづく不思議に思う(子会社等が手掛けている例はあるが)。欧米では、従来の電力会社がいち早く再生エネ普及拡大の潮流を読んで自ら事業を積極的に展開しており、例えばフランスのEDF社は今後世界中でおよそ5000万kW規模(100万kW原子力発電の50基分に相当)の再生エネ事業を今後展開する方針という。
 その理由はどうやら次のようなことらしい。一つは当初のFIT制度においては、電力小売りの全面自由化もあって大手電力が直接再生エネ事業者になるのを制度上認めず、異業種からの新規参入を促す政策に重点が置かれたこと。二つは、当初は再生エネコストが他の電源に比べて割高で、その国民負担に大手電力は批判的姿勢をとっていたこと。三つは原発の再稼働を最優先としたのに加え、火力燃料であるLNG・石炭の長期契約による引き取り義務があり、これをチャラにはできなかったこと。
 では大手電力が自ら再生エネ事業を手掛けた場合のメリットは何か。系統制約問題では空き容量として確保している原発再稼働分や石炭・LNG新増設分の送電容量を自在に再生エネに活用できる可能性が高まる。再生エネ発電コストの引き下げには土地代や工事費等の削減が必須だが、十分に活用していない発電所用地などを潤沢に持つ大手電力がやりやすいはずだ。改正FIT法では再生エネ発電所の立地に対して、環境への配慮など事業の適切性を確保する措置が規定されたが、質の高い開発を確保する上でもプレーヤーの資質は重要なことと思われる。
 そうした問題意識を強めて次世代再生エネ事業を開拓する意欲を示しているのが、自民党政調の組織である「再生可能エネルギー普及拡大委員会」(片山さつき委員長)が立ち上げた再生エネ利用拡大のためのタスクフォース(TF)だ。このTFはほぼ全国の電力供給エリアごとに設置され、当該地域出身の自民党議員に加えて地域の大手電力が参画し、系統制約の解決をはじめ電気事業に係わる料金引き下げなど地域の目線であらゆる問題を俎上にあげ、関係者間で解決の方策を模索するという。



石油ピークは意外に早く訪れる
2018/02/07(Wed) 文:(徐)

 再生可能エネルギーの増加、天然ガスの拡大、自動車の電動化と多様なエネルギー時代を迎え、石油ピークが意外と早く訪れる可能性が高まっている。石油埋蔵量が30年と言われ続け、需要に供給が追いつかなくなるのがかつての石油ピーク説だった。シェール革命で石油、天然ガス生産世界一となった米国の存在が石油枯渇を消し去り、石油需要のピークが現実味を増してきた。
 自動車の電動化への切り替えスピード次第だが、シェールガス、オイル増強もあって長期に石油価格は現状維持されそうであり、価格が石油ピークの時期を左右しそうだ。
 石油は発電燃料として大量に利用されてきた。現在も各電力会社は非常用に石油火力を保有する。福島第一原発事故時の電力供給不足カバーのためフル回転したが、再エネ電源がシェアを高め、天然ガス火力の高効率化が進む今後の電源ミックスの中では消えていく電源である。石油需要の中心は自動車であり、今後、市場が電気自動車、プラグインハイブリッド、燃料電池車に移っていけば、石油需要はどんどん減っていく。
 ハイブリッド車が普及し、内燃機関エンジン車の燃費向上もあってガソリンスタンドへのドライバーの頻度は減り、全国のガソリンスタンド数は3万4000軒とピーク時の40%減だ。今後、世界の新車のすべてがゼロエミッションビークル(ZEV)になるのを2050年と想定して、日本エネルギー経済研究所は「石油消費は30年頃にピークとなり、50年頃には16年頃と同等まで減少する」と仮定付きだがピークの可能性を示す。
 IEAは17年にまとめた40年までのエネルギー見通しで、世界のエネルギーシステムはクリーンエネの急速普及とコストダウン、電化の進展、中国のクリーンエネへの移行、米国はシェールガス、タイトオイル輸出国へ、といった4大変化をバックに、石油は自動車消費の減少で20年代半ばまでは堅調な石油需要が、後半からは鈍化するとしている。ただし石化製品向けが堅調に伸び、40年までは増加傾向が維持されそうとみている。世界一の石油王国・サウジアラビアは世界最大の石化コンビナートを2兆2000億円をかけ25年に完成する。石油の今後の需要を象徴するプロジェクトだ。日本は30年に1次エネルギー構成比で石油は30%とトップに置いているが、国の「やる気」を前提に、電動車両がどこまでブレークするかによって構成比は下がる。



再生可能エネルギー立国に向け全力投球
2018/01/15(Mon) 文:(山)

 新年あけましておめでとうございます。
 旧年中は「創省蓄エネルギー時報」をご購読いただきましてありがとうございます。本年も創エネ、省エネ、蓄エネに関するニュースや解説に全力で取り組む所存でございます。引き続きのご愛顧のほどよろしくお願い申し上げます。
 さて、本年は江戸幕府が倒れ、明治政府が発足してから150年の節目に当たります。西洋文明が流れ込み文明開化≠ェ始まりました。その象徴の一つが電灯です。1882年に東京・銀座に電灯(アーク灯)が灯りました。1886年に東京電灯(東京電力の前身)が開業するなど、電力会社が各地に設立され、発電を開始しました。
 当初は小規模の火力発電所が各地にありましたが、日本の電力は水力中心の「水主火従」でした。それが1960年代前半から「火主水従」に移行しました。1963年に茨城県東海村に動力試験炉が建設され、ここから原子力発電が始まりました。その後は火力、原子力、水力による電力供給が続いてきました。
 1973年に第1次オイルショックが発生、政府は1974年にサンシャイン計画で再生可能エネルギー開発に乗り出しました。温室効果ガスの排出による地球温暖化が深刻化したことも再生可能エネルギー普及政策に拍車をかけました。さらに2011年3月の東日本大震災で福島第一原子力発電所が過酷事故を起こして原発が停止し、2012年7月に再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)を設けました。
 弊誌は2010年10月に「時報PV+」として創刊、本号が154号になります。この間、再生可能エネルギーによる発電、省エネ、蓄電池、水素エネルギーの利用などの技術開発、普及に関する報道を続けてまいりました。ただし日本の再生可能エネルギー普及は諸外国に比べ、遅れているのが現状です。再生可能エネルギー装置・関連機器ビジネスでも海外の後塵を拝している部分もあります。
 弊誌は今年も再エネ・省エネ・蓄エネの普及拡大、そしてそれらの関連産業の隆盛を目指し、全力で「創省蓄エネルギー」の報道に取り組んでまいります。



「たまには停電も」は愚かな発想か?
2017/12/25(Mon) 文:(水)

 12月7日。自民党本部で「再生可能エネルギー普及拡大議員連盟」の会合が開かれ、全国的にネックとなっている電力会社の送電線に再生エネ電源をつなぐための新たな方策が熱心に議論された。講師役の有識者は、大きな焦点となっている東北北部4県の主要幹線の利用率を分析した結果、「実際の送電量は全体容量の20%以下に過ぎない。高速道路に例えるならば、中はガラガラにすいているのにゲートで多くの車両がまだかまだかと待っている状態だ」と指摘した。
 しかし東北電力からすれば、送電系統の空き容量計算には▽万が一の設備トラブルと事故への対応(安定供給)、▽建設予定電源からの仮押さえ(先着優先)、▽系統に接続する(予定含む)全電源が同時に定格出力になることを前提――など、一定のルールで運用しているとなる。
 ここでの問題は、送電系統でも絶対条件とされている「安定供給」の考え方だ。確かに気象条件に左右される太陽光発電や風力発電は、そのシステムにアクセルはあってもブレーキがないといわれ、系統につながれる電気は日中の負荷変動が激しい。このため、停電を起こさない「安定供給」の措置として、全ての電源が最大(定格)出力になる状態、送電系統のトラブルや自然災害などに備え、一定割合の空き容量確保が必要になるという。
 これに対して、有識者は過去の潮流実績やトラブル発生の確率からみても、あまりにも過剰スペックの要求であってそのことが電力システムのコストを押し上げ、ひいては託送料金の高止まりとわが国の高い電気料金の要因になっていると強調する。欧州では10年に1回の大停電発生を予め組み込んでシステムを構築、過剰スペックを避けていると話す。
 43年前、豆腐屋の作家と言われた松下竜一氏(故人)が「暗闇の思想」という本を書き、便利すぎる現代文明に警鐘を鳴らしたことがある。元来、分散型である再生エネの活用は最小限の需要を賄うための電源であり、ある程度の不安定さを社会全体で受け入れ、10年に1回程度の停電があってもよいのではないか。停電が起こった日はローソクを囲み、来るべき大災害への備えや日ごろ不足がちな家族団らんの日と決めて、電気という文明の利器に感謝するというのは愚かな発想だろうか。



「悪の枢軸」とまで言われた日本
2017/12/07(Thu) 文:(水)

 11月18日に閉幕したドイツ・ボンの国連気候変動枠組み条約第23回締約国会議(COP23)で、環境NGOが表彰する特別化石賞に米国政府、化石賞には日本政府が昨年に続いて選ばれ、今回もかつての「環境立国日本」はその面影すらなかった。会場では「日本は悪の枢軸か」とまで批判され、ある参加者は顔色を失ったという。
 これは民間企業人の話だが、国内で具体化中の約2000万kW規模の石炭火力新増設計画と東南アジアへの石炭火力輸出ビジネスが痛烈に批判されたものだ。海外から見れば、ようやく先進国対途上国の対立を乗り越えてパリ協定の詳細設計をつくるところまで漕ぎつけたのに、自分の国の利益のみを重視して今後40年も大量のCO2を排出し続ける石炭火力を新規につくるということを正気で考えているのか、ということになる。欧米でも既存の石炭火力の稼働は多いが、今はその比率をどうやって減らすか国を挙げて議論している最中なのに、ということもある。
 今回のCOP23会議の前後では二人の国際的な賢人の発言が目を引いた。一人は国際移住機関のスウィング事務局長であり、「地球温暖化の進行に伴い海面上昇などから住んでいる場所を追われる“環境難民”が顕在化している」(18日付け毎日新聞)という指摘で、そうした地域としてアフリカ・サハラ砂漠の南縁とキリバスなど南太平洋の島国をあげていた。
 もう一人はCOP23直前に来日した環境活動家のアル・ゴア米国元副大統領だ。「不都合な真実」パート2の日本上映に合わせて訪日したが、インタビューに答えた話が印象的だった。曰く、▽気候変動問題は20年前の京都議定書が採択された状況とは激変した(環境難民の発生などを指す)、▽安価なコストの風力や太陽光発電、蓄電池という具体的な解決策が出てきた――などを指摘し、あとはそれらを政治がどう選択するか、決して手遅れではないとも語った(18日付け朝日新聞)。
 日本ではCOP23の直前に主要国の国会議員らが集まって議論する「地球環境議員連盟」(GIA)の総会が開催されたが、国際的な石炭火力への批判を恐れてか会議の中身や総括が一切公表されていない。COP23では「脱石炭に向けたグローバル連盟」が創設されたが日本は参加を保留している。「悪の枢軸」とまで言われた環境後進国を払拭できるか正念場である。



持続的な普及の時代に向かう太陽光発電
2017/11/22(Wed) 文:(駒)

 経済産業省は再生可能ネルギーの導入量を牽引してきた太陽光発電(PV)の固定価格買取制度(FIT)の価格を2018年度にはさらに引き下げ、非住宅用を1kWh20円以下にする方針だ。FITが始まった12年度の同42円の半分以下になる。そもそも42円は世界でも例がない高すぎた売電価格である。それはPVに参入する事業者を増やし、安易な参入が今になって倒産に追い込まれる例も増えている。
 高い買い取り価格はPV導入量を16年に累計で4000万kWと、FIT以前の66万kWから飛躍的に増やした。そして今後は日本のPV産業は欧米より割高な導入コストの一層の引き下げが望まれる。FIT価格が10円前後となり、さらにFIT制度がなくても自立していくだけの発電電力量が稼げる質の高いPVをグローバルに提供していく事業展開が望まれる。
 国際エネルギー機関(IEA)が10月に報告した16年の世界の再生可能エネルギー導入量は記録ずくめだった。全体で1億6500万kW、特筆すべきはPVが前年比50%以上伸び、断トツの74000万kWと今までトップだった石炭火力を上回ったことだ。PVの国別では中国が3400万kWと圧倒した。「PVは世界で最も大きな電源となった。オークションでの電気落札額は3年で半減、インド、メキシコ、UAEでは1kWh3〜4.5セントになり価格も大きく下がっている」と貞森恵祐エネルギー市場・安全保障局長はPVが世界一の電源になってきたと指摘する。
 日本はFIT売電価格が下がり、2000kW以上では競争入札制導入が始まった。最初の入札の答えがまもなく出る。そして住宅用は19年からFITの10年が終了する。住宅向けPVは自家用エネルギーとしての利用拡大を目指し、産業用は中型を中心に蓄電池と一体化した安定電源として、新たな需要を目指す第2フェーズに入ってくる。
 グローバルで最大の電源として普及しつつあるPVは、日本では14年の928万kWをピークに、16年は645万kWに減少してきた。これもFITが描いた宴≠フ結果だが、コストが一層下がっていくことと合わせて18年以降は毎年400万kW前後をコンスタントに維持していく出荷量になっていくことが予想される。市場の今後の動向に対応し、国産PVメーカーには本腰を入れた世界戦略こそが、事業の発展に求められる。



電力調達の環境配慮、価格と対等条件にせよ
2017/11/15(Wed) 文:(水)

 あまり耳慣れないが、「環境配慮契約法」という2010年に施行された環境省所管の法律がある。庁舎など国の機関や独立行政法人等が管理する建物・業務(サービス)・物品調達において、地球温暖化対策などへの環境配慮を強く促して契約(入札)する制度だ。いわば物品の購入という立場を最大限に活用、国自ら環境対策への範を示すことで、地方自治体にも同様の対応を促し、経済活動全般に環境保全との一体性を定着させるのが目的だ。
 その制度に電力調達の分野があって、2018年度の基本方針がほぼ固まってきた。基本方針に記載する電気供給を受ける契約に関する基本的事項には、▽温室効果ガス等(CO2等)の排出程度が低い小売事業者との契約に努める、▽入札への参加資格者としてCO2排出係数の程度や再生可能エネルギーの導入状況など環境負荷の低減への取り組み状況――などを示す。これらの対応を点数化して70点以上獲得した事業者が入札に参加できること(裾切り方式と呼ばれる)になるが、制度発足後10年以上もたって多くの改善すべき点が指摘されている。抜本的な見直しは今までなされないままだ。
 一つはこの環境配慮契約法による環境配慮を実施していない機関等が、対象となる契約件数・予定電力使用量の約1/3もまだあることだ。未実施の理由は「組織再編等への対応のため」「応札が見込めない」「長期継続契約によって安価な契約が可能」などが多かったという。いずれの理由も取り組みの工夫をすれば解決可能と思われるものばかりであり、法律によって半義務化されている制度に対して、こうした安易な言い訳が通ること自体が不思議である。
 関係者は役所の物品調達には「会計法」という別の法律があり、ここで「安価な調達」が規定されそれを過度に重視すれば未実施になるというが、これでは環境省の強調する環境と経済な完全な統合や国民・企業に対するCO2対策強化の実行にも説得力を欠き、同省の弱腰は強く批判されるべきであろう。
 もう一つは、この制度が国際的な温暖化対策の緊要性を反映していない時代遅れの価格の安さ優先方式になっていることだ。今の方式はあくまで競争入札前の参加資格者決定のためのものであり、価格と環境配慮を対等に評価する「総合方式」に早く是正すべきである。



衆院選公約に見られる政治家の二流さ
2017/10/20(Fri) 文:(水)

 10月10日公示、21日投開票の衆議院選挙が始まった。公示前(議員総数475人)に圧倒的多数だった自民党(計290人)と公明党(35人)が現有議席の2/3以上を獲得して安倍晋三連立政権を維持するか、はたまた小池百合子東京都知事が率いる希望の党が旧民進党議員(57人)を吸収してどこまで議席を伸ばせるか、直前に新党として立ち上げた立憲民主党(16人)が足元を固められるかが焦点だ。
 選挙戦の各党公約は2019年実施とされている消費税10%引き上げの是非と財政再建など9テーマでその独自性を競い、原発・エネルギー政策のあり方も主要な争点となっている。しかし、こうした経済政策および原発・エネルギー政策と表裏一体の「気候変動問題」に日本がどう対応するかという政策展開に関して、公約が提示されていないのには驚かされた。
わずかに立憲民主党が「パリ協定に基づく地球温暖化対策の推進」を掲げたぐらいで、他党は主要9テーマにすら入れていない。地球の温暖化進行が世界各地で異常気象による大洪水や干ばつ、海面上昇、生物種の激減などを発生させ、多くの人的・物的被害と数千万人と言われる「環境難民」を顕在化させている現実は、21世紀中最大の政治的課題といわれて久しい。日本でも近年の集中豪雨被害やサンマなどの漁場異変の出現が記憶に新しい。
 気候変動問題への対応策は、各国とも化石エネルギーをどれだけ使えるかを中長期的に約束するものであるため、利害得失が直接ぶつかり簡単に国際ルールも合意できない。昨年11月にようやく発効した「パリ協定」とて、その具体化にはまだまだ多くのクリアすべき困難な課題がある。なにしろ国際的な気候変動問題への対応は、毎年開かれる先進国首脳会議において過去20年近く必ずテーマに取りあげながら、未だに目に見える成果を上げていないほど大変なテーマであり、欧州では政治勢力を左右するほどにもなっている。
 だが、わが国の総選挙では公約にすら盛り込まれず、政策展開の方向も示さないというのは国民に対して無責任であり、いかに政治家が不勉強でかつ短期的な利益誘導しか考えていないという二流政治の典型でもある。グリーンカラー制服を着用して、清潔な環境派イメージ作りのために「環境」を利用する時代ではなくなっていることに、政治家は心すべきであろう。



一般家庭の温室効果ガス排出削減−環境省が支援に本腰
2017/10/06(Fri) 文:(一)

 環境省が経済成長にもつながる気候変動対策として、一般家庭の温室効果ガス排出削減支援に乗り出す。日本が地球温暖化対策の新たな国際枠組み「パリ協定」で掲げた温室効果ガス削減目標「2030年度に13年度比26%減」を達成するためには、産業部門や運輸部門に比べて取り組みの遅れが目立つ家庭・業務部門の対策徹底が不可避。地球環境問題意識を高める意味でも、一般家庭に対する助成措置は有効だろう。
 18年度予算の概算要求で、環境省は新規施策として経済産業省および国土交通省との連携による「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)化等による住宅における低炭素化促進事業」62億円、経産省との連携による「太陽光発電の自立化に向けた家庭用蓄電・蓄熱導入事業」84億円の計146億円を計上した。
 前者では7000戸を対象にエネルギー消費を実質ゼロにするZEHの新築・改修費用を補助する。エネルギー消費を実質ゼロにするZEHについては、すでに国として標準化する方針を決めている。その具現化を助成措置で後押しする格好だ。一方、後者は19年以降、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)による売電期間が終了する一般家庭が出てくる状況を踏まえ、2万7000戸を対象に家庭用蓄電池や蓄熱設備の設置費用を補助し、エネルギーを無駄なく使えるようにする。
 また、業務部門についても経産・国交両省および一部農林水産省との連携による「脱フロン・低炭素社会の早期実現のための省エネ型自然冷媒機器導入加速化事業」で、前年度当初予算比1.5倍の95億円を要求。これにより従来の規模が大きい冷凍冷蔵倉庫に加え、小売店の冷凍冷蔵ショーケースにまで助成対象を広げて、環境負荷低減を徹底する姿勢だ。
 環境省がまとめた15年度におけるエネルギー起源の温室効果ガス排出量は二酸化炭素(CO2)換算で前年度比3.4%減の11億4900万トン。家庭部門が同5.1%減の1億7900万トン、業務その他部門も同3.1%減の2億6500万トンと貢献した。空調の省エネ化や発光ダイオード(LED)照明の普及が背景とみられるが、これにとどめず持続可能な循環共生型社会の形成を目指したい。



バイオマス発電の急増とFIT制度見直し
2017/09/19(Tue) 文:(水)

 わが国の再生可能エネルギー導入は全体の95%以上を太陽光発電が占めるといういびつな構造だったが、今年3〜4月にかけてバイオマス発電の新たな認定申請が急増、政府関係者を慌てさせている。経済産業省は3年前に策定した「エネルギー基本計画」の点検・見直し作業を有識者の委員会で実施中で、バイオマス発電をどう扱うかも焦点となりそうだ。
 バイオマス発電の急増は、FIT制度の開始以降4年間で計約600万kWの認定・稼働規模に過ぎなかったものが、16年度末に計約1100万kWの申請量になったという変化がそれを示した。背景にはバイオマス発電の買取価格が変更され、従来の24円/kWhが引き下げられて2万kW以上の場合21円となり、これがこの10月から適用となるため、旧価格での買い取りを目指した駆け込み的な申請が集中したとみられている。加えて、大手電力や新電力の計画する石炭火力の新増設が1000万kW以上もあり、パリ協定発効後に国際的に高まっている大量のCO2排出増への対応として、燃料の一部に海外で調達する安価なバイオマス資源を混入してそれを相殺、地域住民の反発を少しでも抑える狙いがある。
 インドネシアやマレーシア、カナダなど海外で調達するバイオマス資源は木質チップ、パーム油などだが、購入価格が割安ということもあって現地の生物多様性や持続可能性に配慮しない不適切な資源調達になることが懸念されている。特に石炭火力に混焼するケースは分散型電源として小規模な設備を建設するのとは異なり、大型火力として立地させるのが一般的でその使用量も膨大となってタンカーで原油を年に数十回も運ぶ形と同様の方式となり、運搬上でのCO2排出量も決して小さくない。こうした懸念から環境省はバイオマスを混焼する大型石炭火力の環境アセスメントで、▽国際的な森林認証を得た燃料調達に努める、▽調達過程のCO2排出低減に努力――などの留保条件を指摘している。
 経産省もFIT制度見直しの一環としてバイオマス発電の価値を再検討、買取価格対象の電源から外すかまたは一定の条件を満たした計画のみ認める、などの新たな対応を模索中だ。その理由としてはコストの60%を燃料費が占め買取価格低減の余地が少ないこと、環境保全への寄与があるのか、などを挙げている。



「核のごみ」最終処分問題を考える
2017/09/05(Tue) 文:(水)

 8月下旬、世耕弘成経済産業相が高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場として建設中のフィンランドのエウラヨキ市を訪れ、現場の視察とともに市長や議会関係者らと意見交換、わが国でこの20年近く停滞したままの処分場選定に関する知見や方法論を温めた。
 経済産業省は7月、日本列島全体を核のごみ最終処分場に適しているか、それとも火山や活断層の近傍、土地の隆起・侵食が大きくないかなど8項目のチェックリストに該当する「不適地」を4色で色分けした「科学的特性マップ」を公表し全国の自治体に送付した。わが国でも最終処分地の候補選びが再度キックオフされた。これから年内にかけて、経産省と最終処分の事業主体である「原子力発電環境整備機構」(NUMO=電力会社の共同事業体)が全国で説明会や意見交換会などの理解醸成活動を一斉に展開する。
 ただ、科学的特性マップは単に「より適性が高いと考えられる地域(科学的な有望地)」を地図上に色分け(自治体別は示さず)しただけで、肝心の社会経済的な条件の集約による対象地域の絞り込みはこれからだ。今回有望地に色分けされたところには国立公園もあれば人口密集地の大都会もあるし、さらには最も肝心な100〜1000年わたって不可欠な安全性確保の担保方策や経済社会的措置(分かち合いの代償)などは今後の検討課題という。
核のごみ問題に限らないが、一般ごみの処分場や火葬場などの嫌忌施設の立地は古今東西を問わずいつの時代も大きな騒ぎとなり、収拾までには長い時間がかかる。自分が住んでいるところだけは避けてもらいたいというのも普通の感覚だろう。とすれば、そうした認識を変えてもらうに十分な“代償措置”と「国民のために」という深い思いが何よりも重要となる。
 原発による電気は今から41年前に日本原電の東海発電所が供給して以来、これまで現世代がその利便性を享受してきた。自分が頼んだわけではないという理屈もあるが、経産省のいう次世代にツケ回しをしてはならないというのもその通りだ。しかし、一方で核のごみがさらに増加する原発再稼働を進めているのも同じ経産省である。ここは一度立ち止まり、原発を再生エネに全面的に置き換えたらどうなるかを提示してみたらどうだろうか。



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