今月のキーワード エネルギージャーナル社

今月のキーワード
[過去4〜19 回までの今月のキーワード]


2019年キーワードは、持続可能な社会づくり
2019/01/25(Fri) 文:(水)

 平成最後の2019年。年頭に様々な新年メッセージに接した。昨年12月に難産の末に合意された「パリ協定の実施ルール」の余韻もあったためか、ほぼ共通していたのは気候変動対策への対応強化とそれと並走する「持続可能な開発目標」(SDGs)というコンセプトだった。
 原田義昭環境相は、「これからの環境政策は世の中を脱炭素型かつ持続可能な形へと転換させ、イノベーションを引き起こし新たなマーケットを創出していく。環境政策が成長の牽引役となっていくことが重要」。世耕弘成経済産業相は、「パリ協定は今世紀後半に温室効果ガスの排出を正味ゼロを目指すとしており、エネルギー政策には脱炭素化が強く求められる」。
 JFEエンジニアリングの大下元社長は、「193ヵ国で合意されたSDGsへの関心が世界中で高まっている。環境・エネルギー・インフラ分野での世界貢献が求められており、当社の暮らしの礎を創り・担う使命とまさしく同じ方向性」。変わったところでは、出生証明付き(電源地の証明)再生エネを全国の新電力や市民発電所などに売電しているみんな電力の大石英司社長のメッセージ。「テクノロジーを使って、電気の生産者と消費者を顔の見える関係でつなぎ、皆さんの電気代というお金が故郷や復興地の電気生産者にしっかり渡って、有効活用されるようサービス改良に励んできた。2019年はこの顔の見える電力を一層広めて当たり前にするのが第一の目標です」。
 圧巻は、年頭に際しての記者会見で述べた中西宏明経団連会長(日立製作所会長)の発言がサプライズだった。
 「お客さんが利益を上げていない商売で利益を上げるのは難しい。一方で、稼働しない原発に巨額の対策費がつぎ込まれているが、8年も製品をつくっていない工場(原発)存続のために電力会社が費用をつぎ込むなど、経営者として考えられないことをやっている」という内容だ。経団連会長として日本の電力業界に対する強い危機感、さらに出身会社の日立製作所のビジネス展開に目を曇らせている。共通するのは、政府が本気で原子力再編・統合の牽引力を果たしていないことであろう。東芝がWHの原子力に潰され、重視された原発輸出が実らず、今の国内原発のありようでは日本のインフラ産業は持たないとの危機感かもしれない。



産業界も気候変動対策に舵を切る
2018/12/26(Wed) 文:(山)

 清少納言の「枕草子」には「ただ過ぎに過ぐるもの」のとして「ほ(帆)かけたるふね(舟)。人のよはひ(年齢)。春、夏、秋、冬」とあります。地球の回転の速度は変わっていないのに、歳を重ねるごとに時の流れが速くなっていくように感じます。人間の感性は1000年以上も前とそうは変わらないのかもしれません。というわけで“早いもので”今年も残すところ半月足らずとなりました。そこで本誌は「創省蓄エネルギー」今年の十大ニュースを掲載しました。
 話はかわりますが、今年はわが国の産業界で「脱炭素」に向けた流れが大きく加速しました。事業で使うエネルギーのすべてを再生可能エネルギーでまかなう「RE100」に加盟した日本企業は昨年まで3社でしたが、今年は10社が加わりました。これは十大ニュースでも取り上げています。
また日本気候リーダーズ・パートナーシップ(J−CLP)は国連気候変動枠組条約第24回締約国会議(COP24、ポーランド・カトヴィツェ)が始まる前の先月30日、「パリ協定に基づく長期成長戦略への提言」を発表しました。J−CLPは「脱炭素社会へ先陣を切ることが自社にとって次なる発展の機会」と捉え、2009年に設立され、現在、大企業を中心に93社が加盟しています。
 提言は脱炭素社会の方向性を共有、目的地とそこに至る経路について具体的なシグナルを発することが必要として、以下の5項目をあげています。@国民全体で気候変動への危機感を共有 A「脱炭素ビジネス立国」を掲げる B2050年温室効果ガス排出ゼロ Cカーボンプライシングと公共投資による脱炭素インフラの整備 D脱炭素ビジネスへの「転換マネジメント」の仕組みを構築。
 このように気候変動対策に後ろ向きとみられていた産業界も大きく舵を切りつつあります。世界的にも脱炭素に着手した企業がビジネスで優位に立てる時代となってきたように感じます。来年こそ産業界だけでなく、国民全体が脱炭素社会の形成に向けて行動を起こす年ではないでしょうか。本誌もその一助となるよう頑張りますので、引き続きご愛読のほどよろしく願い申し上げます。



いびつな日本の再生エネ事業を脱却する契機に
2018/12/06(Thu) 文:(水)

 経済産業省が打ち出した事業用太陽光発電(PV)の未着工案件に対するFITの買取り減額措置が侃々諤々の議論になっている。自民党の再生可能エネルギー普及拡大議連(柴山昌彦会長)は先月8日に会合を開き、大手PV事業者から減額措置案に対する意見をヒアリングしたが、自民党会合では珍しく経産省への過激な批判が集中した。
 例えば、これまで200件・250万kW以上の太陽光発電関連ファイナンスを扱ったという法律事務所の弁護士は、「今までで最悪の制度変更だ。経産省が減額措置案を発表したわずか1週間で25億、40億、16億円の融資がストップした。新規案件だけではなく、全く問題なくもう少しで運転開始する事業までリスクありとみられている」と、事業継続の危機感を強く訴えた。続けて法制度の運用面でも瑕疵があると指摘。FIT制度の買取価格と期間の20年は法律で保証されているものであり、これの着工が遅れているからといって過去に遡って不利益な変更をすることは法治国家ならば「禁じ手」だ。少なくとも告示変更などの安易な対応ではなく法律改正が必要なはずと指摘、FIT制度に対する内外の信頼を失墜させると断じた。業界関係者によると、今回の措置によって大手金融機関が投融資しているPV案件の計3000億円程度が焦げ付く可能性があるという。
 経産省の未着工案件に対する減額措置案は、再生エネの普及拡大に真面目に取り組む良質の事業者と一時の利潤稼ぎだけを狙いとした悪質事業者を峻別し、中長期的な再生エネの主力電源化に脱皮するショック療法ともいわれる。ただ、ショック療法とは言っても日本の再生エネ市場が成熟し、制度変更リスクを十分吸収できる余地があればの話であろう。
 特に今回議論になっているのが、着工遅れの原因が事業者自らの責に帰さない、例えば環境アセスや林地開発等の許認可遅れのケースの扱いだ。確かに手続きに4〜5年もかかる事例があるかもしれない。しかし冷静に見れば、急斜面の崖地や景観を無視した乱開発など近隣住民との紛争事例がとみに最近増えているようであり、こうした強引な開発手法が時間のかかる要因にもなっているわけで、いびつになっている日本の再生エネ事業を脱却させる契機かもしれない。



再生可能エネルギーの自立と連系を
2018/11/22(Thu) 文:(一)

 9月上旬の北海道胆振東部地震では、離島を除く道内の全電源が停止する大規模停電(ブラックアウト)に陥った。九州では10月半ばから11月にかけての週末(土日)、一部の太陽光発電所や風力発電所を止め、出力が抑えられた。ブラックアウトは地震の被害が北海道電力の想定を上回り、強制的に供給エリアを遮断する強制停電を繰り返しても、電力供給が追いつかなかったことが原因。一方、九州電力が実施した再生可能エネルギーの出力制御は、工場や事業所が休みになって電力需要が減る週末の日中、太陽光発電や風力発電がフル稼働すると、供給過剰になってしまう恐れがあったため。何とも対照的な事態だ。
 電力の送配電は需要と供給を一致させる“同時同量”が原則。電力システム改革の時流と相まって再エネの導入が進んだが、さまざまな課題も浮き彫りになってきた。今後の再エネ活用は自立化と、連系がキーワードになるだろう。
 自然豊かな北海道は風力発電の先進地で、広大な土地を生かした大規模太陽光発電所(メガソーラー)も多い。一方の日射量に恵まれた九州はメガソーラーのメッカとなった。両発電方式とも自然の気象条件によって出力が大きく変動する。送配電を担う電力会社にとって、出力変動が大きい再エネは扱いにくい存在。こうした再エネ電力が増えてくると必然的に、電力会社側の調整は難しくなってくる。実際、北海道電によるブラックアウトからの復旧過程でも、風力発電などの接続は影響が出にくいように、火力発電所などが再稼働して電力系統がある程度の規模になってからになった。ただ、北海道のブラックアウトでも太陽光発電システムがある家庭の85%が自立運転モードに切り替えて発電電力を自家利用し、蓄電池を併設した家庭では2日間程度、普段通りに生活できたという。
 分散型電源の再エネに蓄電池を組み合わせれば非常時、マイクログリッド(小規模電力網)として運用できる可能性が広がり、送配電網との連系も容易になる。再エネ導入に併せて、蓄電池や電力を地域間で融通し合う連系線などを整備する仕組みが求められる。



アクセルとブレーキを同時に踏む再生エネ政策
2018/11/07(Wed) 文:(水)

 経済産業省が最近打ち出した再生可能エネルギー政策が波紋を呼んでいる。一つは8月に示した再生エネの買取価格制度(FIT)の運用で、現行の買取価格(住宅用太陽光発電=26円/kWh、風力発電=21円など)を4〜5年先にはそれぞれ半分以下にするような対応措置を示した。もう一つは、先月関係する審議会が事務当局案をほぼ了承したもので、2012年以降3年間にFIT設備の認定を取得しながら未だに未着工の太陽光発電等に対して、来年3月末を期限に同様の状態が続けば認定時の価格の引き下げ措置を行うとしたこと。いずれも根っこは、FIT制度開始後膨れ上がった賦課金(国民負担)の総額約2.4兆円を抑制するための対応である。
 しかし、これら方針を決めるたった3ヵ月前に閣議決定した政府の「エネルギー基本計画」では、再生エネの主力電源化を打ち出し、2030〜50年以降に向けた国際的な脱炭素化時代のベース的なエネルギー供給の主役を担うべきとしていた。計画では、化石燃料に代わる主力電源化を目指してさらなる量的拡大を図るとしながら、その一方で急激な価格抑制方策と買取価格減額を行うという、いわばアクセルと急ブレーキを同時に踏む政策展開が進められようとしている。かつて小泉純一郎政権時代の田中眞紀子外相(父は故田中角栄元首相)は、積極的な外交政策を展開しようとしたが、官邸からスカートの裾をいつの間にか踏まれ、前へ進もうにも進めないとぼやいたことがあったがその構図と似ている。
 再生エネを中長期的にさらに一段と導入拡大しなければならないのは時代の要請であり、かつエネルギーセキュリティや化石燃料の輸入に莫大な国民の稼ぎを費やしている現実から見て論を待たないと言えよう。そこに急ブレーキをかければ、再生エネ事業者は右往左往するばかりで、これからの事業経営にも意欲をなくし、関連ビジネスからの撤退や廃業・倒産が増え、強いては再生エネ事業全体の衰退になりかねない。
 経産省はアクセルとブレーキを同時に踏むのではなく、むしろ一定期間は推進のアクセル踏みつつ、現行の化石燃料資源の確保や原発などに偏重している財政支援のスキームを見直し、再生エネ事業の推進基盤整備こそに力を注ぐべきではないだろうか。



  ノーベル賞、来年はペロブスカイト太陽電池に期待
2018/10/16(Tue) 文:(山)

 今月初旬にノーベル賞の自然科学3賞が発表された。そのうち生理学・医学賞が京都大学高等研究員の本庶佑特別教授(76歳)らに授与されることが決まった。受賞理由は「免疫細胞制御分子の発見とがん治療への展開」。本庶さんはPD−1という免疫の働きにブレーキをかける分子を発見、がん細胞を攻撃する免疫の働きを活発にし、腫瘍の増殖や転移を抑えることに成功した。この研究が小野薬品工業のオプジーボ開発につながった。
残念ながら日本人の物理、化学賞の受賞者はなかった。でも来年以降の受賞が期待されている日本人研究者は少なくない。なかでもエネルギー関連で、有望視されているのが桐蔭横浜大学の宮坂力特任教授(65歳)である。宮坂さんは「効率的なエネルギー変換を達成するためのペロブスカイト材料の発見と応用」、つまりペロブスカイト材料が太陽電池に応用できることを見い出した。
 ペロブスカイトは灰チタン石(CaTiO3)という鉱石で、これと同じ結晶構造をペロブスカイト構造と呼ぶ。宮坂さんは2009年に、この結晶構造が太陽電池に適していることを見い出し、実際に製作した。変換効率は当初3%台だったが、世界中の研究者が着目して研究が進み、10年足らずで20%台を実現し、シリコン太陽電池に近づきつつある。
 材料費が安く製造プロセスがシンプルで、シリコン結晶に比べて低コスト、印刷のように基板に塗るだけなので、ビルや電車の窓、曲面のある車などにも塗布できる。このため、オフィスの節電や電気自動車などへの応用が期待される。課題だった耐久性も解決の突破口が見え、実用化へのハードルが下がった。最近ではインクジェット法によるペロブスカイト層の低温成膜に成功したと新聞で報じられている。一般的な樹脂基板の耐熱温度である150℃の条件で成膜し、インクジェット法では世界最高のエネルギー変換効率13.3%超を達成した。折り曲げ可能な太陽電池の実用化が視野に入ってきた。
 今後、効率向上と長期間の耐久性維持が実現すれば、シリコン太陽電池にとってかわることも夢ではない。来年は地球温暖化の原因であるCO2を排出しない低コストの発電装置を開発した宮坂さんのノーベル賞受賞を期待したい。



パリ協定−日本は環境技術で存在感を
2018/10/02(Tue) 文:(一)

 12月にポーランドで開かれる国連気候変動枠組み条約第24回締約国会議(COP24)が迫り、2020年以降の地球温暖化対策の新たな国際枠組み「パリ協定」のルールづくりが佳境を迎えている。15年末のCOP21で採択されたパリ協定は、翌16年11月に1年足らずで発効した。準備作業が追いつかず2年後のCOP24までに、検証や報告などの詳細な運用ルールを策定することが決められていた。
 パリ協定は先進国に温室効果ガス排出削減を義務づけた京都議定書に代わる国際条約。各国が自主的に温室効果ガスの排出削減目標を策定し、5年ごとに見直して取り組みを徹底するスキームで、平均気温の上昇を産業革命前に比べ2℃未満に抑えるため、温室効果ガスの排出量を今世紀後半に実質ゼロとする目標を掲げる。
 だが、採択時から総論賛成・各論反対の色彩が強かった。途上国はルールづくりに際して資金支援の増額を担保する仕組みを求め、長年にわたり先進国が大量の温室効果ガスを排出し続け、気候変動による海面上昇(高潮)などで生じた損失・被害への補償問題もくすぶる。9月上旬に草案作成のため、タイで事務方による最後の準備会合が開かれたが両者間の溝は埋まらず、具体的な中身はCOP24での政治決着に委ねられた。
 日本は国際協力で環境技術・制度を移転するだけでなく、途上国との協働により新市場創出とライフスタイルの変革をもたらす「コ・イノベーション」を標榜する。経済成長していく途上国の温室効果ガス排出量を、いかに抑えるかが脱炭素社会実現のカギを握るのは確か。日本にとって国際協力を新たな経済成長に結びつける機会にもなる。環境省はこれまで推進してきた地熱発電に加え、各国の状況に合わせて廃棄物発電や熱電併給システム、洋上風力発電などの再生可能エネルギーを中心としたインフラ投資拡大を挙げる。
 昨年、パリ協定からの離脱を表明したトランプ米大統領のパフォーマンスは相変わらずだが、国際社会は平静を保っている。“地獄の沙汰もカネ次第”ということわざはあるが、日本は環境技術で世界に存在感を示したい。



わが国初の「ブラックアウト」発生
2018/09/21(Fri) 文:(水)

 小説の世界だけかと思っていた「ブラックアウト」がわが国で初めて発生した。今月6日の北海道胆振地方を震源とする震度7の地震が引き金となって、大主力電源の北海道電力・苫東厚真火力発電所(出力計165万kW)がトリップ、道全域の295万戸が約1日半一斉停電となった。昭和20年代に現在の10大手電力会社体制になって以来、これだけ広域的に事前予告なしに大停電となったのは初めての経験だ。
 「ブラックアウト」というタイトルの本が数年前に電力関係者の間で話題になったことがある。中身は某国の工作員がわが国に決定的な打撃を与えるため、柏崎刈羽原発近くの送電鉄塔によじ登ってダイナマイトで破壊、大停電を発生させて首都圏に経済的・社会的混乱をおこして、自らの目的を成就するという内容だった。
 わが国は常々、電力の安定供給を最優先政策として掲げ、大停電の確率は欧米とは違って10年に一度位であり、それだけ電力供給の品質が高いネットワークが築かれている、と経済産業省は今日まで胸を張っていた。あの東日本大地震+福島第一原発事故においても、計画停電はされたが突然のブラックアウトはなかった。今回は想定外の地震が大規模発電所を直撃したとはいえ、本当に防げなかったのか十分な調査と検証が必要だ。そうでないと再度起こる可能性がある。
 今回の大停電を起こした直接原因は、北海道の当時の需要ピーク約380万kWのほぼ半分を賄っていた苫東厚真が地震の衝撃でボイラー蒸気漏れや火災をおこしたことだが、唯一の主力電源がこんなにも脆いものなのか。きちっとしたメンテナンスをやっていたのかどうか。大手電力は近年の激しい電力間競争を勝ち抜くため、不要不急のコスト削減、特に送電系統設備や発電所機器のリニューアルなど修繕費の先送り措置が顕著になっている。欧米式の競争至上主義の導入が本来の公益事業という役割を毀損していないのかどうか。
 もう一つは集中大規模電源供給方式の再検討である。これだけ大量の再生可能エネルギー導入が進んでいるにもかかわらずリスクの高い一点供給方式がとられ、分散型電源との機能分担が未だにできていないことだ。原発という大電源の扱いも含めて早急にあるべき姿の提示と議論が必要といえよう。



隔靴掻痒の気候変動適応対策
2018/09/03(Mon) 文:(水)

 8月の後半だというのに全国的なこの夏の猛暑がまだ収まらない。1日の最高気温が40度を超えるような地域が出現し、「命の危険がある気象条件」という警告がテレビで何度も流された。
 こうした地球温暖化が引き起こす気候変動対策への抜本的な対応策は国際政治の舞台や国内でも先送りされ、原因のCO2等排出を世界各国が自主的に削減する「パリ協定」が発効、年末にポーランドのカトヴィツェにて開かれる締約国会議(COP24)でその具体的な内容を決定しようとしている状況だ。つまり地球温暖化の進行→気候変動による被害の拡大に政治も行政も追いつけないという現実が我われの目前にあることになる。
 「気候変動適応法」という法律が先の国会で成立、年内12月までに施行される。簡単に言えば、この法律は一定の地球温暖化の進行はもう止められないから、気温上昇が進んでも被害が最小になるように高温耐性品種の普及や亜熱帯・熱帯果樹への転換、防潮堤など公共インフラの再整備を計画的に進めるというものだ。ただ、道路・河川・ダムなどの公共インフラ事業と農漁業などを全く所管していな環境省主導の法律のためか、具体的な措置を見ると「気候リスク情報等の共有と提供を通じた理解と協力の促進」にトーンダウン、そのための情報システムと拠点づくりに化けている。これでは現に被害を受けつつある国民にとっては隔靴掻痒の感覚ではないか。
 いま大事なことは三つのことに最重点で取り掛かるべきである。一つは、従来の公共事業が前提としていた安全指針等を総点検し、例えば30〜50年に1回の稀有な気象条件に耐えるという設計・構造物でよいのかどうか。ダムの放水基準なども当然点検すべきであろう。二つは、その総点検結果を反映させた新たな公共事業政策を立案することだ。三つは、被害を被った住民らの保障や生活再建がどんな形で行われるのか、被害の受け損なのかそれをつまびらかに明らかにすべきだろう。こうした対応は何も公共事業分野に限ったことではない。停電も従来の想定をはるかに超えて頻発するかもしれない。西日本豪雨被害では保険会社の支払いが台風以外の水害では過去最高となって保険会社を慌てさせたという。気候変動の影響は過去の常識を根底から崩しつつある。



本当に間に合うのか、気候変動対策
2018/08/27(Mon) 文:(水)

 この7月から8月にかけて日本も世界も記録的な猛暑が続いている。日本列島の最高気温は7月23日に埼玉県熊谷市で41.1度、8月6日に岐阜県下呂市で41.0度を記録するなど、歴代上位10の観測地点のうち実に4地点が今年の7〜8月に集中、まさに猛暑というより「炎暑」という言葉がふさわしい気象異変だ。暑さだけではない。西日本一帯を襲った豪雨による大規模な土砂崩れやダムの決壊、河川の氾濫による多くの犠牲者と建物の損壊、欧米・中国でも記録的な高温や豪雨、山火事などが相次ぎ、まさに地球規模の異変が深刻化しつつあると言えよう。実はこうした地球規模の異変は、20年以上前からIPCC(国連気候変動政府間パネル)が指摘しており、この夏におきている気候変動事象の大半を的中させている。IPCCは地球平均気温の上昇による様々な悪影響だけではなく、局地的にその地域の地理的条件や気象特性によって今夏に頻発している極端な事象が発生すると警鐘を鳴らしていた。
 2016年にはパリ協定が発効、現在2030年と50年に向けた温暖化ガス(CO2等)削減方策を検討中だが、およそ20年以上も前から指摘されていた世界のCO2排出量の削減は未だに実現せず増大トレンドは変わっていない。この間G7・G8やG20などで何度も議論され、対応策も打ち出されたが実効性は上がっておらず、政治の責任は依然として果たされないままだ。わが国でも8月3日、官邸主導による2050年以降のCO2等を80%削減するための戦略を検討する有識者懇談会が始まった。安倍首相肝いりの懇談会だが、議論のベースは環境対策を経済成長に取り込み成長なくして温暖化対策なしの前提という。
 この前提は少しおかしくないだろうか。この10年を見ても経済成長率は微々たるものであり、そもそも成長率に大きく寄与する個人消費は今後伸びる余地が少ない。では経済成長が止まった場合、温暖化対策を停止するか緩めるという選択になるのか。そもそも50年目標というのも長すぎる。極論すれば、非現実的だが2049年に80%削減のための対策を一挙にとればそれでもパスという話だ。しかし気候変動被害は確実にいま拡大している。50年に向けた戦略よりも、目の前の20年や30年に向けたCO2等をどれだけ減らすべきかの検討こそ、責任ある政府の取り組む対応ではないだろうか。



ダイベストメントの潮流−再生エネを後押し
2018/07/26(Thu) 文:(一)

 再生可能エネルギービジネス拡大の背景に、化石燃料からのダイベストメント(投融資撤退)がある。独立系の大手再生エネ事業者がまとめた資料によると、石炭・石油・ガスからの撤退を約束した世界の機関投資家は2017年末時点で900機関以上になり、その資産総額は実に約600兆円。4〜5年前は地球環境問題の重要性に気づいた一部の機関投資家に限られていたが、ここ2〜3年で一気に進展した。
 半面でクリーンエネルギー、つまり再生エネ事業への投資が増え続けている。04年から17年の14年間で、累計投資額は約380兆円。ダイベストメントが世界的潮流になっていることを考えても、再生エネ投資は今後も高水準で推移していくだろう。
 再生エネの普及とともに、発電コストも従来の電源と十分に競争できるレベルに低下した。国際再生可能エネルギー機関(IRENA)調べによる世界の均等化発電原価(LCOE)は、17年実績で太陽光が1kWh当たり10セント、陸上風力が同6セント。6年前の11年に比べ太陽光は18セント、陸上風力は2セント安となった。
 こうした再生エネ電源単価の低下と供給量の拡大は、機関投資家にとどまらず社会経済全体を変える原動力になる。象徴的なのは再生エネ100%で事業運営を目指す国際的な企業連合「RE100」。17年時点の参加企業数は前年に比べ35社増えて122社。まだ日本企業は数えるほどだが、今年6月中旬には環境省が世界の公的機関として初めて、参加を決めたことで話題となった。
 地域市場を独占してきた電力大手も、企業の社会的責任(CSR)の観点からダイベストメントの潮流には逆らえず、化石燃料を使う火力発電所の廃止や計画中止が相次ぐ。原子力発電所の再稼働や新増設も難しく、結果として再生エネ事業の展開に本腰を入れ始めている。
 7月3日に閣議決定された政府のエネルギー基本計画では「再生可能エネルギーの主力電源化」が明記された。その一方で、15年に策定した30年度の望ましい電源構成比率(再生エネは22〜24%)を踏襲したことを訝しむ声も。だが、社会が脱炭素社会実現に向けた好循環に入りつつあるのは間違いない。



再エネ電気はAIで賢く使い、人は創造的な仕事を?
2018/07/13(Fri) 文:(山)

 6月下旬にパシフィコ横浜で第13回再生可能エネルギー世界展示会(再生可能エネルギー協議会主催)が開かれた。初日だったせいか、会場はあふれんばかりの人だかりというほどではなかったが、ほどほどの人出で、再生可能エネブームも一段落といったところかもしれない。おかげで、いくつかのブースで担当者の説明をじっくり聞くことができた。
 特に東京電力の福島第一原子力発電所が過酷事故を起こした福島県は「原子力に依存しない、安全・安心で持続的に発展可能な社会」を目指し、そのために再生可能エネルギーの飛躍的な導入を進めている。同じブースの産業技術総合研究所福島再生可能エネルギー研究所とともに結構、人が集まっていた。
 東電は福島第一だけでなく第二の4基の扱いについて「福島第一の廃炉とトータルで地域の安心に沿うものとするべく、第二も全号機を廃炉の方向」と6月16日に表明。福島県の原発10基はすべて姿を消すことになる。福島県は2040年までに県内で必要なエネルギーと同じ量を再生可能エネで生み出す「再生可能エネ先駆けの地を目指す」という目標達成を加速する。
企業ブースではパナソニックの「スマートHEMS(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)」の説明に人が集まっていた。モノのインターネット(IoT)と人工知能(AI)を駆使して家電の運転制御、外出先からでも施錠の確認や風呂のお湯はり、室内の空気情報、機器の自動制御などで節電ができるという説明だった。
 太陽光発電もAIが翌日の天気予報をチェックし、天気に応じて燃料電池(エネファーム)の沸き上げ量や蓄電池の充電量を調整する仕組みだ。再生可能エネに限らず、IoTやAIの活用は便利といえば、そのとおりだが、なんだか技術の進歩は人間の緊張感をなくしそうだ。雑事はIoTやAIに任せて人間はもっと創造的なことに力を注げということなのだろう。
 もう一つ興味深かったのは中小企業や地域の仲間たちが手作りの自然エネルギー利用機器や省エネ機器を展示していたブースだ。小型太陽光パネルで充電できる空き瓶を利用した「ボトルスピーカー」や「ひょうたん型スピーカー」、太陽光を反射板で集光する湯沸かし器などのアイデアグッズに思わずほほが緩んでしまった。IoTやAIと無縁のこうした草の根の活動も再生可能エネ普及に欠かせないアイテムかもしれない。



 エネルギー大競争時代−価格以外の「色」も忘れずに
2018/07/06(Fri) 文:(一)

 2016年4月の電力小売り全面自由化に続き、17年4月には都市ガス小売りも全面自由化された。エネルギー産業は、まさに大競争時代を迎えている。電力自由化で異業種から参入した新電力(特定規模電気事業者)は、既存事業と組み合わせたサービスで電力会社(一般電気事業者)の切り崩しを図った。そしてガス自由化以降、予想された通り、エネルギー事業者間の熾烈な競争に突入しつつある。
 思い起こしてみれば、通信事業も同じような道をたどった。85年の電電公社民営化(現NTTグループ)に伴う通信自由化で新電電が誕生。固定電話の中継サービスを足掛かりに携帯キャリアへと事業を展開した。そして情報通信社会といわれる今日、電電公社の流れをくむNTTドコモと並んで、一般消費者のコミュニケーションを担っている。
 いわゆるモバイルコミュニケーション、移動体通信市場には外資の参入・撤退もあり、勢力図が固まったのはほんの10数年前。既得権益に守られてきた市場が段階的に解放され、技術革新を伴って収斂するまでには20年以上かかるのかもしれない。
 地球環境問題も背景にエネルギー産業の将来像が見通せないなか、電力・ガス市場は専業から多角化を進める既存事業者、そして新規参入組が入り乱れる揺籃期にある。彼らにとってシェアの確保・獲得は至上命題。手っ取り早いアピール策として、安さを売りにするのが常道になる。契約期間を定めて料金を割引したり、電力・ガスのセット割販売など、多様な料金プラン設定もモバイル市場の揺籃期を彷彿させる。これから市場競争が本格化し、淘汰が進んでいくだろう。新電力幹部は「電力契約を切り替えた顧客層は価格に敏感。今後は流出を防ぐのが課題」とする。
 ただ、通信とエネルギー産業では、事業環境に大きな違いがある。再生可能エネルギーの導入が進んできたとはいえ、依然として電力・ガスは原燃料の大部分を化石資源に依存し、事業そのものが地球温暖化をはじめとする環境問題に直結する。非化石価値取引などを利用し“環境に優しい”電力を売る事業者もあるがまだ少数派だ。
 電力やガスは価格以外で“色がつけにくい商材”なのは確か。エシカル消費(倫理的消費)が企業行動を左右できることを忘れずにいたい。



後追いエネルギー基本計画を脱せよ
2018/06/28(Thu) 文:(水)

 経済産業省が昨年から検討してきた「エネルギー基本計画」(第5次計画)の改定内容がほぼ固まった。政府部内調整を経て7月にも閣議決定される見通しだ。
 第5次計画の特色は、国際的な温室効果ガス(CO2等)の長期的な削減を約束する昨年の「パリ協定」の発効を踏まえて、脱化石燃料≒低炭素社会づくりに向けたエネルギー需給構造の実現が国のエネルギー政策に最大限要求され、従来の2030年のみならず50年をも展望したシナリオを描いたことだ。しかし審議した委員会の有識者ヒアリングでは、「30年先の世界を予測すること自体が不可能。予測できないことを前提に近未来の課題を深く議論することが大事」(特に海外からの招聘者)などの意見が続出、議論のかみ合わない場面も多くみられた。
 近未来である2030年の政策目標では現行と同様、エネルギーミックス(電源構成割合)の原子力=20〜22%、再生エネ22〜24%、火力56%の達成に引き続き努力するとして、改定計画では変更しない方針という。ところが現実は、こうした10年後に達成するとした目標とは大きな乖離が生じている。例えば、九州と四国エリアの電力需要に占める太陽光発電の供給割合がこの4月末から5月上旬にかけて80%を超える事態となり、系統維持のための再生エネへの出力制御措置が現実味を増している。日本全体の再生エネ30年目標の22〜24%に対して、地方ではそれを遥かに上回る速さで進展している。
 原子力を見てもミックスの目標達成は現実の進捗状況からいえばせいぜい10%というのが一部有識者の指摘であり、そうなる可能性も極めて高い。目標達成の蓋然性が極めて低い数値の継続は計画そのものの信頼性を失うばかりでなく、政策資源の投入(予算や制度の見直し、人材確保など)を誤り、後追い行政の典型となりかねない。原発は中長期的なCO2削減の手段としては不可欠だが、経産省が最も安いとする発電コストは福島第一原発事故関連費や安全対策費の急増、核燃サイクル費用の増大などからとっくに破綻している。再稼働に備えて確保している系統余力も現実的な見直しが必要であろう。経産省には3年ごとの計画見直し規定で修正すればよいとの見解もあるが、こうした後追い行政では世界の潮流から取り残され、エネルギー産業を弱体化させるだけである。



必至となるか中央省庁再々編の足音
2018/05/22(Tue) 文:(水)

 財務省での公文書改ざんやセクハラ不祥事など一部官僚組織による国民の信頼を裏切る行為が相次ぎ、2001年以来の中央省庁再々編を検討する動きが強まっている。すでに自民党の行政改革推進本部(甘利明本部長)が役員会で現行体制・組織の課題洗い出しを確認したほか、5月以降新たな方向性に関する議論を行う方針だ。
 現在の中央省庁は1府12省庁体制を基本として、これにその時々の重要課題を担務する兼務または専任の担当大臣を置く。当時の1府21省庁という大組織を、縦割り行政を排して政治主導による政策決定を目指すとして、強大な権限を持つ内閣府の新設や10以上の局を抱える総務省、厚生労働省の創設とともに組織のスリム化も図った。
 そうした組織改編から20年近くたち、官僚組織の肥大化が目立つ一方で少子高齢化に伴う行政ニーズ、電子政府化の要請、地球温暖化対策の強化と再生可能エネルギーの主力電源化に伴う既存インフラの再構築など、現在の縦割り一府省完結主義では対処できなくなっている。加えて「森友学園」と「加計学園」の問題では、安倍首相への官僚による忖度が組織ぐるみで公文書改ざんという行為に発展、安倍政権の支持率低下を招いている。ここは人心一新、霞が関の再々編に打って出て国民の信頼を回復させ、安倍政権の延命につなげようという戦略であろう。ただ、膨大なエネルギーと政治力が必要となる“体力”が安倍政権に果たして残されているかどうかが微妙だ。
 ではどのような霞が関の再編が望ましいか。財務省の分割再編や巷間指摘されている内閣人事局の見直しとか、単なる組織いじりにとどまってはならない。組織が必要となる前提にこそ目を向けるべきだ。例えば、@当たり前となっている単年度予算編成方式を2年ごとに変更、A一府省庁での政策展開完結主義の見直し(同じような行政組織の廃止)、Bほぼ無用となっている法律・制度の統廃合――など、大胆かつ繊細に次世代のニーズに対処できるようにすべきと思う。特にBは地味だが重要と思われ、現在ごまんとある法律のスクラップと廃止を具体化して、行政のスリム化と余力の確保に結び付けるべきではないか。



石炭火力の新増設−法的規制は避けたい
2018/05/11(Fri) 文:(一)

 環境省が3月下旬に公表した2017年度の電気事業分野における地球温暖化対策進捗状況評価で、環境負荷が大きい石炭火力発電をめぐって課題や懸念を示した。同省は電力業界の自主的な温室効果ガス排出削減の取り組みを前提に、石炭火力の新増設を容認する姿勢だったが、ふたたび疑念を強めている。自主的な取り組みを徹底し、法的規制だけは避けたいところだ。
 現状で国内の二酸化炭素(CO2)排出量のうち、電力部門が約4割を占めている。同部門の低炭素化が、温室効果ガス排出削減のカギを握るのは自明の理。だが、東日本大震災後の電力需給逼迫と電力自由化を背景に、安価な石炭を燃料とする火力発電計画が相次いだ。
 15年に地球温暖化対策の新たな国際枠組み「パリ協定」が採択されたが、政府はそれに先立ち、日本の30年度における温室効果ガス排出量を13年度比で26%削減する目標を決めた。前提となる30年度の望ましい電源構成(エネルギーミックス)で石炭火力の割合は26%程度とされ、これに合わせて電気事業者35社は同年、30年度に販売電力量1kWh当たりのCO2排出量を示す排出係数0.37kg程度、火力発電所の新設に当たり実用化できる最良の技術(BAT)を活用することにより年間で最大約1100万tの排出削減という目標を設定している。
 しかしながら、石炭火力の新増設計画は50件近くあり、計画どおり建設されると目標達成が危惧される。当時の望月義夫環境相は履行を担保する仕組みがないことから、環境影響評価法に基づいて事業者が提出した環境配慮書に対し意見書で「是認しがたい」を繰り返した。
こうした状況を受け、電力業界が自主的に取り組みをチェックする電気事業低炭素社会協議会(電力会社と新電力42社加盟)を設置し、翌16年に後任の丸川珠代環境相が経済産業省との間で新設容認の合意に至った経緯がある。ただ、同協議会は任意団体で拘束力を持たず、目標達成に向けた道筋を描き切れていないのが実態だ。
 このままでは2年前の議論に逆戻りしてしまう。消費者が“環境に優しい”電力自由化のメリットを享受できるように願いたい。



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