今月のキーワード エネルギージャーナル社

今月のキーワード
[過去4〜19 回までの今月のキーワード]


電気会社は貧乏暇なしが最善
2020/04/10(Fri) 文:(水)

 かつて大手電力に勤め今は外資系エネルギー企業の幹部となっている某電力マンが最近つくづく語っていた。「いまの電気事業制度改革や市場取引を見ていると、電気は儲かる商売という幻想がはびこっている。電気事業という仕事は地べたに這いつくばって顧客のために供給を滞りなく確保するという仕事であり、貧乏暇なしが最善」のあるべき姿という。
 大手電力会社はこの4月から販売・発電・送配電部門が法的に分離され、業務運営の公正中立が担保される送配電会社がスタートした。加えて今通常国会に提出中の電気事業法等の改正により、長年続いた垂直一貫体制の事業形態が大幅に変わってくる。例えば顧客との接点が最も近い配電部門は、ローカルな一定の供給エリアごとに切り離され、別の地域電力会社が運営することも可能になる。そこでは従来の大手電力に変わる自治体系電力会社や市民電力、アグリゲーターなどと提携した新電力会社が事業に参入する見込みという。
 しかし、本当にそうした新規参入者が中長期に事業収益を確保できるというビジネスモデルを持っているのかどうか。周知のように、電気事業は先行設備投資型の典型的な薄利多売の商売と言われてきた。一般の家庭の電気料金はおよそ月300kWhの使用量で8000円前後だが、この領域にいくつかの仲介者が介在して電気利用の付加価値を上げたとしても、その売り上げは1件当たり数百円にすぎないだろう。それによって会社経営が長期間維持できるとはとても思えない。まして、今後の再エネ導入拡大は屋根型設置等の太陽光発電が主流となり、大手電力供給の外部電源への依存が省エネの進展とともに次第に縮小していく。ここ数年、地産地消を謳い文句に続々と各地に登場した自治体系電力や市民電力をみると、いずれも経営維持に四苦八苦の現況だ。
 東日本大震災前の話だが、大手電力会社では毎年の決算において経常利益2000億円以上を確保するのは「公益事業として妥当な収益水準か」という論争があった。年2000億円超の利益計上は一部上場企業のステータスの証しだが、電力会社の場合はその源泉は国民の電気料だ。つまり電力会社の儲け過ぎは社会が許さず、「貧乏暇なし」が最善ということになる。



新型コロナウイルスによる感染症と200号
2020/03/30(Mon) 文:(山)

 中国を発生源とする新型コロナウイルスによる感染症が世界中に広がっている。日本でも8日に始まった大相撲春場所が無観客で行われ、プロ野球も開幕を延期、春の訪れを告げる選抜高校野球大会も史上初の中止となった。サッカーJリーグも試合再開を延期することが決まった。
このほかにも科学技術振興機構が毎年実施している科学の甲子園全国大会は中止が決定した。私たち報道の関係でも大勢が集まる記者会見やイベントなどが中止となる例が相次いでいる。
 米国や日本の株式も急落している。帝国データバンクの新型コロナウイルス感染症による企業業績への影響調査によると「マイナスの影響がある」と見込む企業は63.4%にのぼる。「既にマイナスの影響がある」という企業が30.2%、「今後マイナスの影響がある」が33.2%だった。すでに企業業績にも影を落としているようだ。 
 大手企業の中には在宅勤務に切り替えたりするところもあるようだが、ほとんどの企業が、年度末の忙しい時にそうもいかないというのが実情だろう。毎日出勤しなければならないサラリーマンにとっては、マスクが必需品となっているが、そのマスクも品薄状態のようだ。早急に新型コロナウイルスの撃退を願うばかりだ。       #            #            #
 そんな中で「創省蓄エネルギー」は今年度最終の本号が記念すべき創刊200号となります。発刊に向け、編集スタッフはいつまでこんな状況が続くのかわからず、不安を抱えながらも“貴重”なマスクをして頑張りました。
 200号の特集は「自治体・企業のCO2排出実質ゼロ」です。急速に世界中に蔓延する新型コロナウイルスはもちろん恐ろしいのですが、考えようによっては、すぐに影響が顕在化せずに、手をこまねいていては、将来、じわじわと影響が出てくるであろう地球温暖化による気候変動はもっとやっかいかもしれません。
 200号を支えていただいた読者の皆様に御礼申し上げますとともに、今後ともご愛読のほど、なにとぞよろしくお願い申し上げます。



原発に対する“地元同意”の近代化
2020/03/23(Mon) 文:(水)

 昨年世間を驚かせた関西電力の原子力発電を巡る多額の金銭授受問題の最終的な対応が表に出てこなくなった。福井県高浜町に立地する高浜原発4基の新増設や稼働に関連して、20年以上にわたって地元の有力者が関電幹部ら20人余に計3億2000万円余の金品を贈与。一部は返却されたがその要因解明と企業責任、再発防止対策を昨年社外に設置された第三者委員会が検討中だ。年度末も迫りそろそろ検討結果をまとめる時期に差し掛かっている。 年度末は会社にとって決算をまとめる重要な時期であり、それにつきものの次期幹部人事を決める必要がある。関電の場合、過去の金銭授受問題へのかかわり度合いによっては会長・社長などの役員不適任という事態になりかねず、首脳部人事の新たな陣容が難しい。
 そうした関電としてのけじめのつけ方と社会的責任のとりかたもさることながら、第三者委員会のまとめではこれまで何十年と繰り返されてきた旧態依然の「地元同意のあり方」を是非とも問題提起してほしい。今回の多額な金銭授受の要因は、原発の新増設や再稼働への対応で絶対的条件といわれる当該市町村・県レベルからの「同意」の獲得、あるいは関電と地元との良好関係の維持がその動機にあったのは間違いない。しかし、この地元同意(合意)がどのようなプロセスで行われ、誰がどう判断したのかはその大半が常に藪の中であり、そこに様ざまな利権が発生する余地があった。
 もちろん原発の新増設等では、電気事業法や環境アセスメント法などが適用され公正な手続で進めることになっているが、それはあくまで建前であって、肝心の「地元同意」の条件については明確な規定がなく、慣例と地元首長の判断に委ねられている。原発推進の経済産業省も、自らは何もせず旗を振っているだけだ。電力会社はこの地元合意を形成するために、案件の説明と理解獲得のためのローラー作戦で社員7000人以上を集中的に投入という事例も珍しくない。
 重要なことは国に対して地元同意の十分条件とは何かを法律上明確にさせること、その上で例えば住民投票や条例等に基づくアンケート方式、さらにはフランスなどで採用され始めた委嘱者による直接意思決定方式など多様な手段を提示してほしいものである。



見えてきた水素社会−地域で、企業活動で
2020/03/16(Mon) 文:(一)

 日本は1次エネルギーの大部分を、海外から輸入する化石燃料に依存している。エネルギー安全保障の確保と、温室効果ガス排出削減を両立する有力な資源として注目を集めるのが水素だ。2月末には福島県浪江町に、メガソーラー(大規模太陽光発電所)の電力から水素を製造・貯蔵するパワー・ツー・ガス施設「福島水素エネルギー研究フィールド」が完成する。製造した水素は、まず今夏の東京五輪・パラリンピックで利用される。東京都は各種競技会場への移動手段として、燃料電池(FC)バスを100台以上導入する。
 2011年に起こった東日本大震災からの復興施策として、政府は福島県で再生可能エネルギーの導入拡大を意欲的に進めている。福島水素エネルギー研究フィールドはその拠点施設の一つ。水素社会実現に向けた先導モデルとして期待されている。太陽光や風力などの再生エネ導入で、最大のネックとなっているのが電力系統の需給バランス維持。蓄電池に加え、水素システムを組み合わせて再生エネの余剰電力を利用すれば、電力系統の安定化だけでなく、水素を“電気の素”として蓄えられる。
同フィールドに設置される1万キロワット級の水素製造装置は、定格で1時間当たり1200ノルマル立方メートルの水素を製造。1日の製造量で一般家庭約150世帯へ電力を供給できる。FC普通車なら約560台分の燃料だ。パワー・ツー・ガスは、再生エネ電力から水素を取り出すプロセスだけではない。水素を利用したメタン化やメタノール化なども可能になる。
 民間企業にも新たな動きが−。トヨタ自動車は船舶向けのFCシステムを開発した。FC乗用車「MIRAI(ミライ)」の基幹部品を使い、船舶用システムを仕立てた。再生エネで世界一周航海を目指すフランスの「エナジー・オブザーバー号」に提供する。エナジー・オブザーバー号は太陽光や風力などの再生エネと、海水から生成した水素を用いたFCを動力とする。トヨタがFC技術を船舶向けに応用するのは初めて。トヨタはJR東日本と連携し、鉄道車両へのFCシステム搭載も見据える。
 まだ片鱗に過ぎないが、こうした動きが水素社会実現に向けた好循環につながっていくことを期待したい。



「気候危機」は政治を変えるか
2020/03/06(Fri) 文:(水)

 昨年からわが国では2050年に向け地球温暖化の原因である温室効果ガス(CO2等)の排出をネットゼロとする「ゼロカーボン社会づくり」を宣言する自治体が31にものぼり、さらに増える勢いだ。ほかにも「地球危機宣言」を行った長野県や長崎県壱岐市のように、30年先の目標設定ではなく近年の異常気象による風水害や農業・漁業被害などを目の当たりにした対策の緊急性を訴える動きが顕在化している。
 海外でも温暖化の要因と見られる高温・集中豪雨・寒波・干ばつ・森林火災がこの10年観測史上例を見ない深刻さと回数で発生している。地球の肺といわれるブラジル・アマゾンにおける大規模な森林消失には驚かされたが、追い打ちをかけるようにオーストラリアの東南部地方で大規模な森林火災が昨年後半から発生、日本のほぼ半分に相当する約19万km2を焼き尽くし、今も延焼中といわれる。
 翻って日本の温暖化対策の現実はどうか。上の前向きな自治体や先駆け企業による「RE100」の取り組みは出てきているものの、政府の対応は30年先のCO2等削減目標を強調するばかりで、地球環境の運命を左右するといわれるこの先10年間の対策内容は旧態依然のままだ。その典型が昨年閣議決定した首相官邸と経済産業省が主導する「革新的技術イノベーション戦略」で、2050年までにCO2を大量に他の有用物に変える画期的技術を開発して、それを実装化していくという。いったい技術開発が成功しなかった場合どうするのか、その代替策は何も示されていない。
 ただ、日本でもようやく気候変動問題に対する政治家の意識が覚醒してきた。この通常国会の代表質問で自民党の二階俊博幹事長や公明党の斎藤鉄夫幹事長、立憲民主党の枝野幸男代表が気候変動対策を取り上げ、政府の対応をただしていた。今国会中に超党派による「気候危機議員連盟」の発足も予定されている。この動きに日本の環境NGOも是非とも連携してオールジャパンの体制をつくり、選挙の際には自らの主義主張を超越して2〜3人の国会議員を送り出せるような組織力と財力を持ってほしい。もう一つ重要なのは、大手マスコミの政治部記者の気候変動問題に対する鈍感さだ。政治部記者はあのスウェーデンのグレタさんの鋭い指摘に謙虚に耳を傾けるべきである。



どうなる電力改革の最終コーナー
2020/02/19(Wed) 文:(水)

 2020年は日本のエネルギー事業が本格的な変革時代を迎える始まりともなる。大手の10電力会社はこれまで約70年以上続いた発電・送電・小売り部門の垂直体制が法的に分離され、送配電事業部門を中核に発電・小売が別の組織として運営される。
 この間、日本のエネルギー政策は3E+S(安定最優先、資源自給率、環境適合、国民負担抑制)の確保を大原則として、電力・ガス小売りの完全自由化を突破口に数々の電力システム改革を具体化。従来の火力・原子力を中軸とした供給体制から、再生可能エネルギーを主力電源化とする様ざまな施策がとられつつある。2016年から第1〜3次にわたって推し進められた電力改革は最終ゴールを目前に、その成果即ち果実が問われることになる。
 当時、あまり話題にはならなかったが、昨年の11月20日に開かれた自民党の総合エネルギー戦略調査会(額賀nu郎会長)に興味深い資料が示された。タイトルは「強靭かつ持続可能な電力システムの構築に向けて」で、もちろん出所は資源エネルギー庁。資料では上の3Eに関して、@電気料金の上昇、A電力セクターにおけるCO2排出量の増加、Bエネルギー自給率の低下――を取り上げ、それぞれ2010年度と電力改革後の18年度を比較、コメントはないが正直な数字を明記していた。(10年度と18年度の順で1年間の合計)。
 当初、電力改革は東日本大震災による供給不安と悪影響を早急に解消するため、電気料金は国際水準並みに引き下げ、CO2排出量を低減、そしてエネルギー自給率の大幅改善などを目標に掲げていたが、実績の数字を見るかぎり三つの指標全てが悪化している。もちろん改革は現在進行形であり、これら数字のみをもって“失敗”というつもりはないが、欧米流の受け売りと揶揄される改革の中身に大きな課題が潜んでいることは否定できない。 一方で、SDGsとの連動性が顕著な再生可能エネルギー主力化のスピードは速く、政策展開が追い付くのかどうか今年の展開を注視していきたい。
 味のある情報誌を目指して精進しますので、本年もよろしくお願いいたします。



RE100企業増えた2019年の日本
2020/01/28(Tue) 文:(山)

 今年もあと半月を残すだけとなった。地球の回転速度は昔と変わっていないのだろうが、歳を取るとともに地球の回転が加速して、あっという間に今年も終わりを迎えるという感じがする。年内に済ませないといけない仕事が溜まってしまい、頭を抱えているありさまだ。
 瀧廉太郎の作曲による「お正月」は♪もういくつ寝るとお正月…はやくこいこいお正月♪と正月を楽しみに待っている子供たちの思いを見事に表現した。現在では正月の前にクリスマスというイベントが日本でも定着し、短期間にクリスマスプレゼントとお年玉をもらえる子供たちにとっては楽しいかきいれ時だ。でも、大人にとっては忙しいだけでなく、財布の中のお金が出ていくさみしい季節でもある。
 という愚痴はこのくらいにして本題に入る。今年最後の本号では弊紙恒例の「創省蓄エネルギー十大ニュース」を掲載した。担当者が「口角泡を飛ばして議論して10テーマをまとめるのに苦労した」というほどではないが、今年は台風などの災害による電気をはじめとしたエネルギー施設の損壊や太陽光発電の卒FITなど、この分野のニュースには事欠かなかった。詳しくは本文をごらんいただきたい。
 今年は夏がバカに暑くて、秋には台風が猛威をふるった。天候が不安定なことも影響したのか、大手企業の地球温暖化による気候変動に対応しようという動きが目立ってきた年だった。特に使用する電力の100%を再生可能エネルギーで発電された電力で賄うことに取り組む国際的な企業連合「RE100」(再生可能エネルギー100%=十大ニュース参照)に加盟する日本企業が増えてきた。
 RE100加盟の日本企業は2017年のリコーが最初で、この年は3社、18年はダイワハウスなど10社、さらに今年は戸田建設やコニカミノルタなどなど15社が加盟した。日本のRE100加盟企業は28社となった。太陽光発電や風力発電など再生可能エネルギーの需要はさらに高まると思われる。
 その一方で、石油ショック以降の火力発電を支えてきた石炭は大量の温室効果ガスを排出するにもかかわらず、いまだに発電燃料として30%以上のシェアがある。これを再生可能エネルギーに置き換えていかないと、パリ協定の2度Cはもとより1.5度Cは到底クリアできないだろう。来年こそ、脱石炭を本格化する年とし、再生可能エネルギーによる電力の本格化を目指していきたい。



日本は「化石賞」の常連を返上せよ
2020/01/16(Thu) 文:(水)

 12月2〜13日までの日程でCOP25(国連気候変動枠組み条約締約国会合)がスペインのマドリッドで開かれる。
 COP25の主要ミッションは、表向き2020年から実施される温暖化ガス(CO2等)の削減対策を決めた「パリ協定」の確認と、前回会合までに決めきれなかったパリ協定第6条に規定する「市場メカニズム」(協力的なアプローチ、持続可能な開発に貢献するメカニズム等)の合意とされる。日本は安倍政権の下で決めた「気候変動長期戦略」において、東南アジアやアフリカなど海外での発電事業、省・再エネ関連事業の展開によるCO2等削減を重視しており、その貢献分を自国の削減分にカウントする方法が焦点となる。
 「表向き」と言ったのは、今回会合において主要国が野心的なCO2等削減対策をどこまで示すか、つまり国際社会に向けてどんなアクション(自主的な行動)をアピールするかが、ひそかに期待されている裏のミッションという。IPCC(国連気候変動パネル)が示した地球の気温上昇をこの先気候災害等の少なくなる1.5度C上昇に抑えるためには、世界のあらゆる国が今よりも約3〜4割以上CO2等を削減する必要があり、それを各国が“野心的”に競って示す舞台になるかもしれない。
COP25の前にはスウェーデンの16歳の環境活動家のグレタ・トゥンベリさんが次世代へのつけ回しを批判した行動が世界に広がったほか、直前に来日したフランシスコ教皇も気候変動による地球の危機回避への対応を促しており、国際世論を盛り上げている。
 翻ってわが国の対応はどうか。依然として対応策を示せない多くの石炭火力の新増設や80%以上という高い火力電源比率、見直しされていない低水準の2030年のCO2等削減目標など、今回も温暖化対策に不熱心という烙印が押され16〜17年と連続した「化石賞」と同じになる可能性がある。化石賞受賞となれば、日本政府代表団率いる小泉進次郎環境相の失点ともなり、長年世論調査でbPの首相候補にも大きな傷がつく。海外からは、いつまで日本は東日本大震災ダメージに甘えているのかとも指摘される。新たなCO2等削減対策は、例えば石炭火力新増設の場合は再生エネとのセット義務化、CO2等削減を国際貿易ルールに組み込むなど、いくらでも“野心的”な政策手法はあるのだが…。



ブロックチェーンを経済活動と環境維持の両面で
2019/12/17(Tue) 文:(一)

 米フェイスブックが発行を計画する仮想通貨(暗号資産)「リブラ」−。フェイスブックは世界で25億人を超すユーザーを持つだけに今年6月、計画が公表されると、国家管理に基づく貨幣経済の根幹を揺るがしかねない存在として波紋を広げた。いわゆるキャッシュレス化は、長らく現実の資産が裏付けだったクレジットカードと同じ磁気式のプリペイドカードに始まり、ICカードの登場で電子マネーへ移行。すでにクレジットカード自体もコモディティー化し、電子マネーとの違いはほぼ使い方だけになっている。さらにこうしたカード機能は携帯電話機、スマートフォンに取り込まれた。
 コンピューター技術の進歩は境界や国境が意味をなさないボーダーレス社会を徐々に形づくり2009年、為替の手間や変動リスクを排除する究極の決済方法として仮想通貨「ビットコイン」を誕生させた。ビットコインはじめとする初期の仮想通貨はハッキング(盗難)の危険と隣り合わせ。だが、その基盤技術であるブロックチェーン(分散型台帳)のセキュリティーレベルも着実に向上。今日ではブロックチェーンにより国として仮想通貨ならぬ、デジタル通貨でキャッシュレス社会を実現しようとする構想も出ている。
 貨幣経済において長年、基軸通貨として君臨してきた「ドル」を有する米トランプ政権は11月上旬、世界各国が参加する地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」からの離脱を正式に国連に通告した。何とも皮肉な巡り合わせだ。
 そもそも地球環境問題はボーダーレス。大気や水に国境はない。地球温暖化をもたらしている二酸化炭素(CO2)は米国を筆頭に経済成長を遂げた先進国の“負の遺産”であり、海面上昇による被害も現実となった。一方、経済発展に伴う途上国の温室効果ガス排出量が急増し、先進国の責任だけを追求する状況ではなくなった。その現実が、パリ協定の採択・発効を後押しした。
 キャッシュレス化で、お金の大切さを実感できない子どもが増えているという。同様に、見えないCO2が孕むリスクを理解するのも難しい。ブロックチェーンはパリ協定の目標達成に向け、CO2削減価値を取引する手段としても注目されている。革新的な技術を経済活動と環境維持の両面で生かしたい。



「リチウムイオン電池」がノーベル化学賞
2019/11/18(Mon) 文:(山)

 リチウムイオン電池を開発した旭化成名誉フェローの吉野彰氏(71歳)のノーベル化学賞受賞が決まった。テキサス大学オースティン校教授のジョン・B・グッドイナフ氏(97歳)とニューヨーク州立大学ビンガムトン校のスタンリー・ウィッティンガム氏(77歳)との3人の受賞になる。
 10月9日にスウェーデン王立科学アカデミーから発表され、すでに新聞やテレビで大々的に報道されているが、弊紙としてはまさに“創省蓄”の高度化には欠かせない、喜ばしいアイテムなので、遅ればせながら「一考/再考」に掲載させていただくことにした。
 リチウムイオン電池は正極にコバルト酸リチウムなどのリチウムイオン含有の金属酸化物、負極にカーボン系材料を用いた二次電池。充放電の際にリチウムイオンが電解液の中を往復することにより機能する。電圧がニッケル水素電池などの約3倍と大きな電力を持っている。スマートフォンやノートパソコン、ビデオカメラ、デジタルカメラ、携帯用音楽プレイヤーなど、最近では電気自動車にも使われ、モバイル機器になくてはならない最先端の電池となった。
 私事で恐縮だが、田舎に住んでいた子供のころ、部落中で電話がある家は数軒しかなく、急病人が出たりすると、その家に駆けこんで電話を借り、町のタクシーを頼んで医者に駆け込んだ記憶がある。それが一家に一台の電話機どころか、一人に1台の時代になった。こんなに便利な時代をつくりだした吉野氏らのノーベル賞受賞は当然といえよう。
 残念なのは吉野氏とともにリチウムイオン電池の正極材料コバルト酸リチウムなどを手がけた東芝の水島公一エグゼクティブフェローと世界に先駆けてリチウムイオン電池を実用化した元ソニーの西美緒氏(現・西美緒技術研究所所長)の受賞がなかったことだ。
 水島氏は1977年に当時、英国オックスフォード大に移ったグッドイナフ教授に招かれ、充電池の研究に取り組んだ。西氏も1991年にソニーでリチウムイオン電池を製品として世界で初めて世に出した。受賞は3人までなので、残念ではあるが、両氏もノーベル賞受賞に値する業績といえるだろう。



徹底的に膿を出し切り関電再生を期待する
2019/10/25(Fri) 文:(水)

 「お前のいい加減な仕事ぶりを社長に言ってやる。今すぐ、この電話を社長につなげ」「お前なんかいつでも飛ばせるし、何なら首も飛ばすぞ」「お前の家にダンプを突っ込ませる」―-。関西電力が八木誠会長、岩根茂樹社長ら役員を含む社員20人が過去10年以上、総額約3億2000万円を福井県高浜町の元助役、森山栄治氏(2019年3月死去)から金品を受け取った問題で、同社が10月2日に公表した社内調査の「報告書」にこのような生々しい露骨な恫喝の様子が出てくる。
 森山氏から金品を渡される場面は、異動の挨拶などの際にお土産の菓子箱の底に見えないように金品類をしのばせておくやりかたが多かったようだ。しかもこの問題が特異なのは、例えば原発の再稼働に反対するグループに対してそれを切り崩す工作の一環としてカネを用意するというのが過去にはあったが、今回の場合は当事者の関電に平均一人1500万円強が還流していたことである。このニュースをテレビで見た弊社の社員は「まるでテレビドラマの時代劇のようなことが本当に現実にあったのだ」と驚きの表情を見せていたが、それが普通の人々の今回の受け止め方である。
 関電に金品攻勢をかけたのは森山氏が顧問を務める地元企業の吉田工業が工事の受注を期待したものだが、それにしてもなぜ返却できなかったのか。報告書ではある社員は返却の申し出もかなわず、身の危険も想定して金銭を受け取り、返却などの経緯を遺書に作って貸金庫に預けていたという必死の対応がなされたこともあった。しかし、大半の金品返却が金沢国税局の立ち入り調査後であったこと、組織としての毅然とした対応をとらず個人の対応に委ねていたこと。なぜ行政当局などと相談しなかったのか、まさに前例踏襲主義という会社の悪しき体質がここまでの深刻さを招いた原因である。
 関電は同日、公正中立な社外委員からなる第三者委員会を設置して今回の問題を再検証、「徹底的に膿を洗い出す」との方針を明らかにした。特に懸念されるのは今回の不祥事で顧客離れが加速し、企業の存立基盤まで脅かす事態が想定されることだ。とにかく関電にとって重要なことはあらゆる膿をこの際徹底的に出し切り、幹部役員も一新して若い世代に会社の再生と将来を委ねるべきだろう。



首相候補・小泉進次郎氏の環境相就任
2019/10/04(Fri) 文:(水)

 @「環境省は社会変革担当省であり、SDGs推進省でもあり、環境だけを考えている役所ではない。社会全体に大きな変革を起こし一人一人の国民の行動が変化して社会全体を歯車が回っていくように変えていく、そういった取り組みの思いをともに噛み合わせ、よい日本を作っていきたい」「環境省には誰が大臣に来ようと、いま世界の最重要課題を扱っていることに変わりはない。(私が)そこにあてがわれたのはありがたい」。
 A「二度と原発事故を起こしてはいけない。一つの国で二度やったら終わりだ。特にいつ地震がくるか分からず、台風の規模も大きくなっている。そして『天災は忘れたころにやってくる』という格言はもう終わったのではないか。忘れたどころか天災は常にやってくる。そうした中で、どうやったら(原発を)残せるかという一部の人はいるかもしれないが、どうやったらなくても経済や雇用に悪影響与えることがなく、自然を再生可能エネルギーとして社会に実装して、事故の恐怖に怯えることなく生活ができるような日本の未来をどうやって描けるかを考え続けていきたい」。
 以上が9月11日夜発足した第4次安倍再改造内閣で38歳の若さで環境相に抜擢された小泉進次郎氏の弊誌も含めた就任会見での主な所信である。@の質問は環境省という重要閣僚ではないポストをどう認識したかを聞いた。Aは、父親の小泉純一郎元首相が一枚看板に「原発ゼロ・廃止論」主張していることへの評価と、進次郎氏自身がこれまで掲げてきた(反)原発という考え方を閣僚になってどうするかを問うた。大臣になったからといって、これまでの政治信条を変えれば変節とのそしりを免れないし、従来通り原発廃止を唱えれば安倍内閣の閣僚としては“失格”の烙印を押されることになる。上の所信表明は、特に原発への対応では内閣の方針にギリギリおさまったと言えよう。
 小泉進次郎氏は過去自民党総裁選で安倍首相のライバルである石破茂氏を支持し、そのことがまた時の権力におもねらないとして国民の人気を得てきた側面もある。それが一転、8月の総裁選では安倍首相支持に回り、初閣僚就任に繋がった。今回の宗旨替えが、次期以降の首相候補である小泉氏にとって吉と出るか凶と出るか、環境相としての仕事ぶりに注目していきたい。



熱中症の増大と温暖化対策への努力
2019/09/17(Tue) 文:(山)

 「今年の夏はものすごく暑かった」と、このところ毎年同じようなことを言っているのは歳をとって暑さに耐えられなくなったせいかもしれない。子供のころに住んでいたのは東京より少し北の田舎だった。もちろんエアコンなどというものはなかったが、これほどの暑さを感じることはなかったように記憶している。
 夏休みの朝はラジオ体操に出かけ、昼間は炎天下で野球をやったり、川で泳いだりして外で遊んでいたが、熱中症で倒れる子供はいなかったように思う。夕方になると雷を伴った夕立が頻繁にあり、何の意味があるのかいまだにわからないが、母親に「雷様にへそを取られる」といわれて蚊帳の中に避難した。夕立の後に涼しくなるのがありがたかった。
近年は熱中症で倒れ救急車で病院に搬送される患者の数が少なくない。今年の7月は雨が多く、平年より気温が低かったこともあり、消防庁によると、熱中症で救急搬送された人が1万6431人で、過去最多だった前年同月の5万4220人から約7割減少したそうだ。
 ところが7月の終わりころから8月に入ると30度Cを超える暑い日が続き、7月29日から8月25日までの熱中症による緊急搬送の人数は全国で4万1663人と大幅に増え、昨年同期の3万453人を上回った。夏休みの子供たちが外で遊びまわるには危険な状態である。
 この夏の暑さで気になるのが地球温暖化による気候変動である。日本が暑いからといって、すぐに地球全体の温暖化に結びつけるのはいかがなものかとも思うが、やはり少なからず影響がでているような気がする。
 昨年10月に気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が発表した特別報告書は「地球温暖化が現在の度合いで続けば、2030年から52年の間に1.5度Cに達する可能性が高いとし、気温上昇を2度Cではなく、1.5度Cに抑えることによって、多くの気候変動の影響が回避できる」と強調している。また「2100年までに、地球温暖化を1.5度Cに抑えた場合、世界の海水面上昇は2度Cの温度上昇の場合に比べて10cm低くなる」そうだ。
 地球温暖化に懐疑的な人もいるとは思うが、こんなに暑い夏が続くのはごめんだろう。とにかく自分たちができることから二酸化炭素などの温室効果ガス排出削減に取り組むしかないようだ。



大手電力の「環境部」が絶滅寸前に
2019/09/04(Wed) 文:(水)

 かつては地域の公害・環境対策の矢面に立ち、発電所の立地交渉でも不可欠の存在だった大手電力会社の「環境部」が今や絶滅寸前になっている。公害問題の典型と言われた大気汚染による喘息患者の発生や温排水排出による漁業資源などへの影響問題が下火になったこともあるが、環境部の縮小には電力の全面自由化による市場競争の激化に耐えうる会社組織の効率化追求が背景にある。
 例えば東京電力を見ると、かつて本店の環境部は200〜300名の大所帯を誇り、政府・地方自治体の環境規制強化や環境アセスメントへの対応、自然環境問題への対応などあらゆる環境問題に対処、わが国企業の先導的役割を果たしていた。それが3.11の大震災と原発事故後に一変、「稼ぐ力創造ユニット」という名の組織が設置されるほど、収益力のアップが経営課題の最優先となり、かつての環境部は「環境室」に縮小され10数人の小さな所帯となっている。もちろん縮小された社員がすべて退職したわけではなく、その多くが福島第一原発の事故処理や各発電所・支店などに配属された。
 それにしても温暖化対策の「パリ協定」への対応(2020年から開始)、石炭火力問題や再生エネの主力電源化、ESGへの対応、途上国も含めたプラスチックや廃棄物問題への対応など、環境対策はこれからが正念場なのに東電の組織的対応は真逆の方向だ。こうした傾向は東電のみならず、他電力でも続いており、過去30〜40年にわたって築きあげた「環境人材」の継承も困難になりつつあるという。
 ではどうするか。一つは環境部の業務を経営企画部門に格上げして、国際的な環境問題に対しても環境部がイニシアチブを発揮すべきだろう。今や温暖化への対応は「環境への配慮」というレベルの問題でなく、会社存続そのもののテーマであり、まさに「経営との一体化」の時代に入っている。もう一つは原子力部門との一体化である。廃炉決定が原発の過半に近い24基となったこと、放射性廃棄物処理処分問題など困難な問題山積なのに、縦割り行政の悪弊に倣って環境部はこれまでほとんど関与してこなかった。これをこれからは環境部も担うべきであろう。特に福島第一原発の汚染水処理問題を見れば明かだ。



再エネ政策の転換点に−保護から競争へ
2019/08/22(Thu) 文:(一)

 経済産業省が8月上旬、再生可能エネルギー固定価格買い取り制度(FIT)の抜本的見直しに向けた中間整理案を公表した。発電コストが低下した大規模な事業用太陽光発電や風力発電を買い取り対象から外し、入札制度や相対取引へ移行させていく。想定以上に膨らんだFIT賦課金の国民負担を抑制し、市場競争の下で事業者にさらなるコスト削減を促す。FITはあくまでも再生エネ導入に弾みをつけるための特別措置だ。所期の目的は達成されつつある。再生エネ政策は保護から競争への転換点に差し掛かった。
 2012年に本格導入されたFITは、送配電網を持つ電力大手(旧一般電気事業者)がインセンティブを上乗せした固定価格で電力を買い取り、その上乗せ分を賦課金として消費者全体が負担する仕組み。だが、買い取り価格の設定にバランスを欠いて太陽光発電の導入偏重が起こり、制度設計の甘さから事業者が初期の高単価でFIT認定を受けたまま着工せず、設備費用の低下を待つ未稼働案件も多発した。
 再生エネの普及拡大にはコスト削減が不可欠だがFITによって、競争原理が働きにくくなってしまった実態もあった。FIT法の付則には2020年度末までの見直しが盛り込まれており、コスト削減と普及を両立させる見直し案が求められていた。
 一方、住宅用太陽光発電の余剰電力で11月以降、10年間の契約期間満了が出始めるのを控え、環境価値を持った新たな電源として新電力などによる買い取り(囲い込み)合戦も繰り広げられている。小規模ながら将来、VPP(仮想発電所)の分散電源となる可能性も秘めるためだ。さらに、新築のオプションとして太陽光発電システムを販売した住宅メーカーや蓄電池などの新たなビジネスモデルが探求される格好になっている。
 政府は昨夏、「エネルギー基本計画」の改定で再生エネの主力電源化を明記した。日本の再生可能エネ分野における発電コストは欧州などの環境先進国に比べると、まだ十分に低減したとはいえない。ただ、再生エネを巡るこうした動きが好循環を生み出し、普及拡大のエンジンになっていくことは間違いない。



鈍感日本と参議院選挙での危惧
2019/07/24(Wed) 文:(水)

 今年の7月は参議院の選挙一色だ。21日に投開票となり安倍政権に対する国民の審判が下され、自民党が計60〜70人前後のいくらの当選数を獲得するかによって、今後の政権運営への影響度合いが変わるという。選挙戦では憲法改正問題を筆頭に、3度目の正直となる消費税10%への引き上げ是非、老後に備える2000万円の貯蓄の必要性に関連した年金制度の脆弱性など、身近な当面の生活に関係したテーマが圧倒的に重視されている。
 大手新聞による主要テーマごとの各党の公約・方針の紹介記事や各党首が一堂に会したテレビ討論も、憲法改正・消費税・年金問題などに焦点を合わせた議論となっており、今世紀最大の懸案事項とされる気候変動・地球温暖化問題はほとんど議論に登場してこない。日本の政治家もメディアも、そして国民もおそるべき鈍感さという言葉しか浮かばない。特に、社内の政治部が主体となっている日本の主要マスコミの“見識”を疑いたくなる。しかも参院選に突入する直前にはG20首脳会議が安倍首相議長の下で開かれ、気候変動問題において欧米間がパリ協定の実行を巡ってギリギリまでもめた経緯があったのに、である。
 国際的にはIPCCから提示された地球の平均気温を工業化以前に比べ1.5度Cの上昇に抑えるのか、それとも2度Cへの上昇はやむを得ないとして許容するのか、その選択が各国に突き付けられている。いずれも各国の経済政策と地球環境保全への対応の優先順位をどうするかという差し迫った問題であり、欧米では政治勢力を左右するほどの重大問題となっている。一部ですでに取り上げられているが、欧米ではスエーデンの一少女のグレタさんが昨年12月の国連気候変動会議で訴えたことがテーンエンジャーの共感を呼び、若い世代が政治に十分な対策の実行を求めて抗議活動を続けている。そこまで気候変動問題への危機感が広がっているのだ。
 翻って政治レベルでのわが国の認識はどうか。すでにその被害は昨年の西日本豪雨で顕著だったが、今年の梅雨の局地的大雨でもその兆候は強く現れているのに、参議院選では争点の一つにもなっていない。年金も消費税引き上げ問題も大事かもしれないが、それも持続的な地球環境あってこその話である。いっそのこと新党の「れいわ新選組」を立ち上げた変わり種の山本太郎議員にでも問題提起を頼むか。



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