今月のキーワード エネルギージャーナル社

今月のキーワード
[過去4〜19 回までの今月のキーワード]


「低CO2化」への移行、今を生きる私たちの責務だ
2021/02/16(Tue) 文:(山)

 地球規模の気温上昇が起こる地球温暖化の原因は人間の活動による温室効果ガスの増加と考えられている。いろいろな温室効果ガスがあるが、中でも二酸化炭素(CO2)はその筆頭で排出削減が求められている。「気候変動に関する政府間パネル」は第5次評価報告書で、このままでは 2100年の平均気温は温室効果ガスの排出量が最も多い最悪のシナリオの場合には最大4.8℃上昇するとしている。
 日本は1年で最も寒い時期で、かつコロナウイルスとの戦いが続いている。地球温暖化どころではないかもしれない。こんな時にでも子供たちや生まれてくる赤ちゃんにとって、CO2排出量が少なく気候温暖で安全かつ楽しく暮らせる未来を考えることが重要ではないだろうか。
 そのためのCO2排出削減のひとつは自動車燃料の改善である。現在、ほとんどの自動車がガソリンを燃焼させて走っている。その燃料は炭素と水素である。炭素と水素に酸素を加えて圧縮し、点火・爆発させて回転エネルギーとして自動車を動かしている。爆発によって、一酸化炭素や炭化水素、窒素化合物、二酸化炭素などが排気ガスとして出てくる。近年ではほとんどの自動車に触媒が設けてあり、こうしたガスが大量に車外には排出されないといわれるようだが、どうだろうか。排気ガスゼロの自動車が増えるといいのだが……。
 さらに問題はガソリンの税金である。ガソリン価格の半分近くが税金でもっていかれている。日本には優れた自動車メーカーがたくさんあるので、ぜひ、環境に負荷をかけない、かつ安全で税金のかかるガソリンを使わない自動車をどんどん作り出していただきたい。
 本号の特集は「トランジションとコージェネ」です。トランジションとは「移行」という意味で、ここでは着実な低炭素化、脱炭素化への移行ということになります。コージェネはコージェネレーションシステムの略で、排熱を利用して動力・温熱・冷熱を取り出し、総合エネルギー効率を高めるエネルギー供給システムです。
 自動車に限らず、化石燃料を使っている企業や役所、家庭なども含め、私たちは自分自身、そして次代を担う子供たちのためにも、着実な低CO2化への移行「トランジション」に取り組む必要があるのではないだろうか。



コロナ時代にも不可欠な脱炭素社会づくり
2021/02/02(Tue) 文:(水)

 2021年元旦の富士山はいつもの濃いブルーがかった頂上部分が幾重もの白い帯に覆われて堂々とたたずんでいた。山頂部分では風が尾根に巻き込こまれ、烈風の嵐になっている様子もなんとなく見える。いつも感動するのはそのきりっとした姿が、人々の生活の徒然をすべて受け入れる懐の奥深さと勇気を与えてくれるような優しい山容だ。実は小生の住んでいる所は東京多摩地域の多摩川沿いで、天気の良い日は場所によっては高台から富士山の山頂部分がよく見える。
 しかし日本の年末年始の風景は様変わりした。新型コロナウイルス感染の拡大を防ぐため恒例のご来光を拝むための終夜電車運行も中止となり、初詣も密を避けるとして自粛や一定の距離を保つ対応が普通になった。こうした社会現象はコロナウイルスの特異性からこの2〜3年続く可能性が高く、それに我々がどこまで耐え、一方で従来の社会経済構造をどうリデザイン(再設計)して新たな生活様式を生み出していくかが試されている。
 コロナ感染の発生と現在の気候変動被害の深刻さは同根という指摘がある。端的に言えば、両方とも自然環境への容赦ない侵蝕とあくなき経済の拡大至上主義がもたらした結果ということになろうか。今日社会のリデザインは小泉進次郎環境相が昨年後半に環境政策展開の柱として打ち出したものだが、今年はそのために地方の自治体や一定のコミュニティエリアにおいて「ゼロカーボン共同体」を試行的に構築していく具体的な施策展開を明言している。例えば長野県を筆頭に長崎県の壱岐市、岩手県の軽米町や福井県の大野町などだ。
 菅義偉首相は「2050年までにカーボンニュートラル」を実現する方針を示し、政府も政策総動員の対策を進めているが、小泉環境相の考えは30年先を待たずこの5〜10年の政策展開が目標実現を左右するとして、ミニ脱炭素社会の前例をつくるという。ただ、そこで追求してほしいのは従来のような外々に向けた経済の拡張主義ではなく、家族団らんや地域資源の再発見など内々に埋もれていたハッピー資源を再発掘することであろう。
 異常事態の新年ではありますが、本年も引き続きよろしくお願いいたします。



2兆円という「脱炭素社会経済」への手切れ金
2020/12/25(Fri) 文:(水)

 2020年のわが国は地球環境問題への対応で歴史的1年となった。菅義偉首相は10月の国会で「2050年までに全体としてカーボンニュートラルを実現する」と歴代首相として初めて宣言、あらゆる経済社会活動を変革していく方針を示した。国会もこれに呼応、衆参の全会派一致による「気候非常事態宣言決議」を採択、政府と国民に対して対策強化を強く求めた。30年先とはいえ、これからの国民生活に重大な影響を与えるこうした方針を霞が関が多用するカタカナ語で提示したのはいただけないが、現代版経済社会革命のスタートといっても過言ではない。
 では「脱炭素社会」とはどんな世界か。今は電気の7〜8割を化石燃料によって発電しているが、これを太陽光や風力などの再生可能エネルギーなどに転換するとともに、製鉄所や化学工場等の熱利用も電化と水素などに変え、自動車など移動機関もガソリンなどの車がなくなることを意味する。すでに欧米諸国が先行しており、2030年代に石炭火力の廃止やガソリン車の販売禁止措置、また50年までにゼロカーボンの実現を公約した国がすでに121ヵ国に上っており、わが国は後塵を拝している。
 今年のトピックに、スポーツ界ではプロ野球日本シリーズで巨人がパ・リーグ覇者のソフトバンクに完敗、しかも昨年の日本シリーズから同じチームに8連敗するという不名誉な新記録をつくった。その負け方もひどかったが、ある野球評論家は「パ・リーグの選手は大方の投手が投げる150キロ台の速球に目が慣れているが、セ・リーグの投手は大半が140キロ台のためそうした違いから巨人の打者は打てなかったのではないか」と分析していたのが印象的だった。
 つまりセ・リーグ全体の平均的な実力が落ち込んでいたにも関わらず、巨人はそのことに戦うまで気付かなかったということだろう。いわばセ・リーグ全体がガラパゴス化していたわけで、それは気候変動対策で欧米に後れをとっているわが国の現状と共通している。政府はそうした温暖化対策の推進を抜本的に強化すべく、追加経済対策の柱に再生エネや水素利用の実装化、カーボンリサイクルなどに2兆円を充てる「脱炭素化基金」の創設を決めた。これが化石燃料に対する“手切れ金”となるかどうか注目されよう。大変な一年でした。来年こそ良き一年となりますように。



コロナで始まりコロナで終わる2020年
2020/12/04(Fri) 文:(山)

 歳をとると月日が経つのは早いもので、あっという間に師走をむかえた。この季節になると、こどものころはプレゼントをもらえるクリスマスやお年玉をもらえるお正月がかきいれどきで、指折り数えていた。まさに「もういくつ寝るとお正月〜〜はやくこいこいお正月」の歌詞通りだった。だが、今年を振り返ると、世界中がコロナウイルスというやっかいなプレゼントに振り回されたことが、最大のニュースだろう。日本では9〜10月にかけて感染者数がおさまりつつあると思われたが、11月からまた感染者数が急増している。残念ながら、来年の正月までにおさまることは難しそうだ。
 12月から来年の正月は親御さんにとってはクリスマスやお正月を祝うどころではなく、とにかく家族をコロナから守ることに一生懸命という状態だろう。家庭だけでなく、企業や学校など人が集まるところは大変なご苦労があると思う。企業はもとより、商店やレストラン、ホテルなどの宿泊施設も計画通りに収入が得られず、苦しい経営を強いられているのではないかと思います。政府はGoToトラベルなるキャンペーンを実施しているが、どこに行っても目に見えないコロナウイルスが徘徊しているわけで、喜んで旅行に出かけるという気分にはなかなかなれないというのが現実ではないでしょうか。
 さて本号の特集は「急加速化する洋上風力」です。洋上風力とは風車を海域に設置して豊かな海風で風車を回し、効率的に発電する仕組みです。海に囲まれたわが国にとって、洋上風力は重要な発電設備になると期待されています。風力発電は太陽光発電のように太陽があるうちだけ発電するのではなく、昼も夜も発電できるのが特徴です。でも、陸上の風力発電は設置場所が風ある地域に限られており、さらに住宅地では羽根の回転による騒音が問題になっていました。陸上の風力に対して、洋上風力は強い風力が持続的に得られるため、安定的に大きな電力供給が可能になる点、もう一つは洋上であるため、騒音や万一の際の人的被害リスクが低く、設置場所の確保がしやすい点である。これらのメリットから、風力発電市場において、洋上風力の動きが活発になってきています。
 洋上で勢いよく回転する風車によって、発電と同時にコロナウイルスも海のかなたに吹き飛ばしてもらえればありがたいのですが、そううまくはいかないでしょうね。



米バイデン政権、国際社会で義務と責任を
2020/12/01(Tue) 文:(一)

 4年間のモラトリアムが明けたと言うべきか、世界2位の温室効果ガス排出国である米国の大統領選で、国際協調路線を掲げる民主党のジョー・バイデン氏勝利が確実となった。皮肉なことに投票日11月3日の翌4日、現職の共和党ドナルド・トランプ大統領の公約どおり、所定の手続きを経て米国は地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」から正式に離脱した。バイデン氏には自他ともに認める大国のリーダーとして、国際社会で義務と責任をしっかり果たしてもらいたい。
 2015年の国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)で採択されたパリ協定は、レガシー(遺産)を意図した民主党バラク・オバマ前大統領と世界最大の温室効果ガス排出国となった中国が先陣を切って批准し、翌16年11月4日に発効した。規定により批准国は発効後3年間、脱退を通告することができず、通告が効力を発揮するのは1年後。トランプ大統領は昨年11月、国連の事務局に脱退を通告していた。
 自国の利益最優先で「気候変動はでっちあげ」といった過激な発言を繰り返したトランプ大統領は、オバマ前政権による温暖化対策を真っ向否定。途上国の気候変動対策を支援する国連の「緑の気候基金」への資金拠出を停止し、石炭産業を復活させるため、発電所からの二酸化炭素(CO2)排出量を削減するオバマ氏の看板政策「クリーンパワープラン」を撤廃するなど、パリ協定を揺さぶり続けた。
 だが、脱炭素化の潮流を変えることはできなかった。トランプ氏が大統領に就任した17年、パリ協定からの離脱を表明すると、米国ともに批准の先陣を切った中国政府は改めて温暖化対策の履行を明言。米国に追随する国が出るのではないかと懸念されたが杞憂に終わり、パリ協定の批准は190ヵ国以上に拡大している。シェール革命により安価で環境負荷が低い天然ガスが産出されるようになり、石炭産業の復活も経済合理性に阻まれた。また、米国産業界で脱炭素社会の実現をビジネスチャンスと捉える先進的な企業が台頭し、トランプ大統領の脱退表明に批判の声を上げた。
 バイデン氏は気候変動への取り組みをまとめた「バイデン計画」を打ち出して選挙を戦った。脱炭素化で足踏みする理由はない。



再生エネ拡大にも不可欠な河野規制改革
2020/11/24(Tue) 文:(水)

 菅内閣の発足で防衛大臣から規制改革担当相に横滑りした河野太郎氏の動きが脚光を浴びている。菅首相は就任後の重点政策課題の一つに前例踏襲方式を見直す縦割り行政の排除を前面に打ち出し、これを踏まえた河野規制改革担当相が押印廃止などの行政手続き・決済方法の採用を各省庁に要請している。
 河野氏とともに次世代の国のリーダーを目指す自民党若手グループ代表格の小泉進次郎環境相もいち早く共鳴、環境行政における規制改革総点検を推進中だ。
 河野規制改革担当相が意欲を燃やす対象分野は再生可能エネルギー事業もターゲットになりつつある。特にこの分野はまだまだ行政展開の歴史が浅いこともあって、ゆうに10は超える法律(条令も含む)・制度が事業展開に際して適用され、ビジネスの大きな足かせになっているとの指摘が以前から多く出されていた。例えば、農林業を守るための法律といわれる農地法や農業振興地域法、市街化地域などを定める都市計画法などは、太陽光発電や風力発電の導入にブレーキの役割を果たしているのが実態であり、むしろそのことが農村地域の疲弊化に拍車をかけているという。
 特に近年は農村地域における人口減少や高齢化、後継者不足などによって未耕作農地(耕作放棄地)の増加が著しいといわれている。再生エネ事業者はこうした地域に太陽光発電を設置して土地所有者にも副収入をもたらすような事業の具体化を図るが、農業振興地域法などによって当該自治体等の同意が得られず、対象とした土地は従来同様荒れ果てた未耕作農地のまま5〜10年も放置された状態が続くという。自治体等が同意しない理由として、「国の食料自給率向上にとって大事な土地だ」という答えが判で押したように返ってくるという。
 また農村地域だけではなく都市部にもみられる相続者不明等の土地でも同様の行政による不作為が見られ、前述分と合わせるとわが国の土地の10%前後は何の価値も生み出さない不良資産となっている現実がある。
 再生エネの主力電源化にとっては太陽光・風力・中小水力など何れも設置空間の確保が今後の大きな課題なのだから、是非とも河野規制改革を最優先課題にしてほしいものだ。



菅首相、違う考え方の人の声にも耳を傾ける度量を
2020/10/20(Tue) 文:(山)

 菅義偉首相が日本学術会議の新会員のうち6人を任命しなかったことが話題になっている。憲法には政権が学問の自由、言論の自由、思想の自由を奪ってはならないとある。「学問の自由をうたった憲法23条に違反する政治介入だ」―任命されなかった6人の中から、こんな異議の声が上がった。
 6人は安保法制(集団的自衛権の行使を可能にすることなどを柱とする)や共謀罪法(組織的犯罪処罰法改正案)などで政府に反対の立場を取った学者だ。首相が意に沿わないからといって排除するというのでは憲法を無視した暗黒の時代が再現されかねない。
 慈恵会医科大の小沢隆一教授(憲法学)は2015年に安全保障法制の国会審議で、野党の推薦で「違憲」の見解を述べたことがある。小沢教授は毎日新聞の取材に「それが理由ならとうてい承服しがたい。政府方針と違っても言うべきことは言う。学術会議はそういう組織だ」と憤ったという。
 菅首相が、こんなに視野が狭いと先が思いやられる。学術会議前会長の山極寿一氏は「説明もなく任用が拒否されることは存立に大きな影響を与える」と述べた。菅首相に対し文書で理由の説明を求めたというが、加藤勝信官房長官が「個々の選考理由はコメントを差し控える」と述べただけだった。
 これもおかしなことである。学術会議の会員にふさわしくないと、自信をもって任命を拒否したならば、きちんと国民に説明する義務があるはずだ。理由も明らかにせず「コメントを差し控える」では任命されなかった6人と国民に対する説明責任を果たしたことにならない。
 学術会議会員だけでなく、学者の間で「政府の主張に反する立場の人を排除することは学問の弾圧につながりかねない」と危惧する声が広がっている。そのうち、学者だけでなく、政府の意に沿わない国民をパージする暗い時代になるのではというのは、あながち考えすぎではないかもしれない。
 1億2427万人余の国民はそれぞれがいろいろな考え方を持っている。学術会議の中にもいろいろな考え方の人がいるのは当たり前だ。皆が同じ考え方を持っている方が、むしろ恐ろしい。菅首相は自分と違う考え方の人の声にも耳を傾ける度量を持っていただきたい。



菅新政権のど真ん中に、気候変動対策を
2020/10/13(Tue) 文:(水)

 菅義偉新政権が9月16日スタートした。新政権はオンライン化を進めるデジタル庁の創設、先例主義の排除による行政改革、地方経済の活性化などを打ち出し、閉塞感が蔓延している国民に期待感を抱かせた。功を奏してか、新政権発足後の内閣支持率は軒並み60〜70%台の高率にアップ、ご祝儀相場もあるとはいえ前政権とは様変わりだ。
 この高支持率を背景に、自民党内には年内早い時期での衆院解散総選挙を求める声が強まっているが、政界通による直近情報によれば、選挙はむしろ遠のき来年のオリンピック後になる可能性が高くなったという。理由はコロナ禍という非常態下での選挙が国民に受け入れられないという常識論のほか、菅首相にはともかく一つでも仕事をしたことの“実績”をあげることを優先させたいとの考えが強くあるという。東京オリンピック開催を確実なものにしないと財政・経済面での打撃が大きく、国際的な日本への信頼も大きく失墜するという危惧もある。
 菅政権では財務・外務・経産など主要閣僚が再任、従来新人閣僚と女性ポストの指定席といわれた環境大臣も珍しく小泉進次郎氏の留任となった。こうした閣僚の顔ぶれは当然ながら政策面で安倍路線を継承することを意味するが、蓋をしたままの「モリカケ問題」をはじめ財務省職員の自殺などの負の遺産には、日本の政治のステータスを上げるためにもまともに対処してほしい。特に安倍前首相が任命した法の番人である河井克行前法相が大がかりな選挙買収の当事者とあっては、政治の矜持がないに等しい三流国そのものだ。
 ただあまり目立たなかったが、菅政権発足に際して自民党・公明党間で締結された「政権合意」には新たな息吹も感じられる。合意には憲法改正への対応など9項目での連携が明記されたが、その中に「気候変動対策を加速させ、(中略) 持続可能で強靭な脱炭素社会の構築に努める」という異例の1項が入った。安倍前政権は国民の前に常に経済成長(富の拡大)という人参をぶら下げ政策推進してきたが、コロナ禍時代という歴史的転換を迫られる今こそ、菅政権は新しい価値観に基づく生活様式と気候変動問題に対応した日本型グリーン経済の推進を政策のど真ん中において欲しいものである。



安倍首相の涙と政治部記者の非常識
2020/09/24(Thu) 文:(水)

 本誌9月15日号が皆さんのお手元に届いている頃には第26代目の新しい自民党総裁が菅義偉前官房長官に決まり、“菅首相”として内閣改造の真っただ中にあると思われる。歴代首相として戦後最長の連続在任年数7年8ヵ月という記録を打ち立てた安倍晋三首相が突然8月28日に辞任会見、またの投げ出しか?と見られたが「持病が悪化」とても総理大臣の重責を果たすことが叶わぬと判断したという。
 辞任会見では冒頭のコロナ対策に続けた自身の辞任に至った経緯の説明までくると、感極まったのかうっすらと目に涙が滲んでいた。そうした姿をテレビは大写ししていたが、その時は任期途中で病に倒れる無念さと果たせなかった憲法改正へのこだわりが交錯したのかと思った。しかし後で振り返ってみると、その涙は長らく握っていた最高権力者としての舞台から降りる悔しさであり、国民に向けた申し訳ない気持ちとは違うとの気がしてきた。
 ある時マスコミ界の先輩から「政治家とお役人の涙には気を付けろ」と忠告されたことがあったが、その後確かに何回かそうした場面にぶつかったことがあり、今でも演技で涙を流せる人がいると確信している。今回の安倍さんがそうだとは言っているわけではないが、あの辞任会見後に安倍政権への支持率が急変、一時は30%台の危険水準まで落ち込んだ状況が50〜60%台まで回復、それどころか想定外だった安倍政権の政策路線を継承するという「菅義偉新政権」が生まれようとしている。このシナリオを裏で用意した演出家がいたとすれば天才的かもしれない。
しかし政治のプレーヤーが変わっても優先的な政策課題は変わっていない。それはコロナ禍からの経済回復ともう一つの非常事態とされている気候変動危機にどう立ち向かうかである。安倍首相の辞任会見→自民党総裁選→3人の立候補による支持獲得運動、これに伴う報道ぶりを見ても、巨大化する自然災害や熱中症など地球温暖化対策をどうするかは話題にもなっていない。環境エネルギー政策が重要政策になっていないのは今に始まったことではないが、その多くの責任は無定見な政治家もさることながら、いつもその周りにいる大メディアの政治部記者の“非常識”にあるような気がしてならない。



一日も早いコロナウイルス撤退を願う
2020/09/08(Tue) 文:(山)

 昨年末に中国武漢で見つかった新型コロナウイルスがあっという間に世界中に広がり、日本では8月26日時点で感染者6万3822人、死亡者1209人に達した。世界では感染者2401万1502人、死亡者82万1909人となった。わずか9ヵ月足らずでこれだけの人々が感染し、お亡くなりになるとは想像を絶する出来事といえるでしょう。
 外出を避けて、自宅に閉じこもっていれば感染のリスクは少ないのでしょうが、仕事があれば外に出かけなければならない。総理大臣官邸・厚生労働省は集団感染防止のため「三つの密(密閉・密集・密接)」を避けるようにと要請している。もちろん、夜の酒場などでの三密は避けなければならないが、会議や他社との折衝などとなると、そうもいかないことが少なくない。マスクなどで自己防衛するしかなさそうである。一日も早くコロナウイルスが地球上から撤退してくれることを祈るばかりである。
 こうした中でも我々スタッフ一同はコロナウイルスに負けずに、新鮮な情報を皆様にお伝えしようと、おかげさまで元気に飛び回っております。本号の特集は「蓄電システムの最新動向」であります。太陽光発電や風力発電という日当たり任せ、風任せといったいった不安定な電力を安定した電源として活用するには、蓄電池を上手に使うことが欠かせません。
 太陽光発電なら晴れの日に電気を蓄電池に貯めておき、曇りや雨の日には電池に貯めた電気を使う、風力も同様に風の強い日に貯めた電気を無風の日に使うということができるからです。お日さまや風任せの発電設備には蓄電池が有効ということになるでしょう。
 いずれにしても太陽光発電や風力発電などといった温室効果ガスを排出しない発電装置を上手に活用して、地球温暖化の原因となる化石燃料の使用をできる限り減らしていくことが求められています。さらに、これは難しいことかもしれませんが、ひとたび事故が起こると大惨事となるだけでなく、使用済み燃料の処分もままならない原子力発電も太陽光発電や風力発電などの普及によって、少しずつでも置き換えていくことができれば安全に生活を送れる日本を実現できるのではないでしょうか。



横浜市新庁舎、ゼロカーボンのシンボルに
2020/08/20(Thu) 文:(一)

 横浜市は6月末に全面供用開始となった市役所新庁舎(32階建て延べ約14万3000u)で使用する電力を、再生可能エネルギー100%とする。発電設備がある市内のゴミ焼却場から発電電力を自己託送制度で供給し、不足分は契約している電力小売り事業者が、住宅用太陽光発電の固定価格買取制度(FIT)期間満了に伴う卒FIT電力を市内で調達する。横浜に誕生した新しいランドマークが2050年の二酸化炭素(CO2)排出量実質ゼロを見据え、市内で消費する電力を再エネへ転換していく「ゼロ・カーボン・ヨコハマ」(ゼロカーボンシティ)のシンボルにもなった。
 ひときわ目立つ超高層ビルの新庁舎はJR桜木町と歩行者デッキで結ばれ、みなとみらい線馬車道駅とは地下でつながる。横浜を観光で訪れた人々は風情のある赤レンガ倉庫や横浜三塔(神奈川県庁本庁舎、横浜税関本関、開港記念会館)を見る前に、“SDGs(環境)未来都市・横浜”という一面を目にすることになる。
 横浜市は東京都や山梨県、京都市とともに、環境省が全国の自治体に地球温暖化対策への取り組み徹底により、宣言を促すゼロカーボンシティの先駆け。市役所は同市で温室効果ガス排出量の約5%を占める最大級の排出事業者であることから、新庁舎に続き25年度をめどに、全18区の庁舎についても再エネ100%化を進めていく。
 一方で、横浜市は2019年2月、脱炭素社会の実現に向けて東北地方の12市町村と再エネに関する連携協定を結んでいる。連携先の自治体で発電された太陽光、風力、バイオマスをはじめとする再エネを横浜市内の需要家へ供給するスキームを検討し、連携自治体全体の地域活力創出につなげる「地域循環共生圏」を構築するのが狙いだ。同年9月には連携先の一つ、青森県横浜町にある風力発電施設で生み出された電力の市内需要家6件への供給が始まり、12月までに契約数は15件となった。横浜市によると市当局は基本的に関与せず、再エネを主な電力供給源とする電力小売り事業者が主導して契約が進んだという。
 ゼロカーボンのシンボル誕生とともに脱炭素化がSDGsの前提として広く認識され、好循環を生み出している。



プラスチック製レジ袋有料化のゆくえ
2020/07/22(Wed) 文:(山)

 スーパーマーケットやコンビニエンスストアで買い物をすると、これまでは購入した商品をレジ袋(ポリエチレンやポリプロピレンなどの合成樹脂を原材料とする袋)に入れて渡してくれた。それのレジ袋が7月から有料になった。店によって、また大きさによってレジ袋の値段が違うが、だいたい2円から5円といったところのようだ。
 経済産業省と環境省は「プラスチック製買い物袋を有料化することを通じて、消費者がその必要性を吟味する機会を提供し、ひいてはマイバッグを携行する習慣が浸透するなどライフスタイル変革を促すことが本制度の目的」としている。ライフスタイルの変革もあるのだろうが、最大の問題はレジ袋の不法投棄による海洋汚染、海洋生物への影響だろう。
 不法に投棄されたレジ袋が下水から、川に流れ、やがて海に到達して、ウミガメやクジラ、海鳥などがレジ袋を誤食してしまう例は少なくないようだ。また海に流れ着いたプラスチックごみが雨や波、紫外線などで細かく砕かれ、それを魚類が餌と間違って食べてしまう事例も少なくないという。
 ただし、レジ袋を有料にしたからといって、こうした海洋汚染などの問題が解決するかどうかは疑問だ。わずか数円のレジ袋代をきらって、昔のようにマイバック(買い物かご)を購入して携帯する人がどのくらいいるかどうかはわからないが、多くの人がマイバックを使うようになれば、レジ袋専門の製造業者は干上がってしまうのではないかという懸念もある。
 今は昔のように女性が家事に専念する時代とは違い、働く女性はたくさんいる。彼女たちは毎日、仕事帰りに買い物にいくための買い物かごをさげて職場にいくわけにもいかないだろう。そういう人たちにプラスチック製レジ袋を有料化するのは酷ではないかという気もする。
 さらに細かいことをいえば、今までは顧客に無料で提供していたレジ袋を有料化すると、そのお金は販売した商店に入ることになるのだろうか。もしそうであるならば、商店にとってはありがたいことだろうが、できればレジ袋代の部分はプラスチックごみの海洋汚染問題などに取り組む団体などに寄付するといったようなことが有効ではないだろうか。



負けるな川勝静岡県知事〜リニア新幹線中断を
2020/07/08(Wed) 文:(水)

 連日の新型コロナウイルス禍問題への対応であまり目立たなかったが、世紀のビッグプロジェクトと言われる「リニア中央新幹線事業」(2027年に品川―名古屋間の開業予定)が事業遂行の最終局面を迎えている。地中化ルートで、最大の難所かつ環境問題も未解決とされる「南アルプストンネル静岡工区」(8.9km)の準備工事に、川勝平太静岡県知事が待ったをかけている。
 リニア新幹線は国が1973年に基本計画、2011年に整備計画を決定、14年には工事計画が認可され一部沿線で関連工事が着工された。最速で品川―名古屋間を40分(大阪まで延伸されると約70分)で結ぶという弾丸列車だが、未解決の土砂処分など環境問題も多い。総工費は約9兆円。JR東海による投資だが、安倍政権は16年に3兆円におよぶ財政投融資を決定して支援、まさに国家プロジェクトそのものだ。一部の有識者からは開業しても当面赤字経営は間違いなく、事業採算性自体にも疑問符が付いていた。しかも、コロナ禍で地方分散の必要性が指摘されており、巨額な投資はむしろ地方で採算維持に長年苦労しているJRローカル線にこそ振り向けるべきとの指摘もある。
 川勝知事は国交省が設置した環境問題等を検討する有識者会議の結論が出るまで本格的な工事に入るべきではないとの考え方を提示。27年開業の厳守と全線の工事着工に弾みをつけたいJR東海に強く抵抗している。その背景には県が権限を持つリニア静岡工区内の大井川水源域(農業用水・水道水等に利用中)で、トンネル工事による地下水脈の遮断があれば、流量が激減する危惧がある。しかしJR東海は、「国家プロジェクト」を錦の御旗に、かつ推進自治体からの支援をバネに全面着工へ圧力を強めている。
 いわば川勝知事は孤立無援の様相だが、コロナ禍で効率第一主義のスピード最優先という大量輸送の時代は終わったのではないか。安倍政権もこれまでの大都市一極集中から地方分散の必要性を指摘し始めた。フランスでは最近、代替手段のある4時間以内の飛行機移動には特別な対応をとる要望が市民側から示された。リニア新幹線という大量の電力を消費し、かつ南海トラフなど大災害に脆弱な交通手段に異を唱える川勝知事には、新たな日常の地平線を拓くために頑張ってほしいものである。



うっとうしい梅雨もありがたい天の恵み
2020/06/17(Wed) 文:(山)

 6月も半ばを迎えた。昨年11月に中国湖北省武漢で最初の新型コロナウイルス感染症の症例が確認されてから、あっという間に世界中に感染が広がり、多くの国々でたくさんの方がお亡くなりになるという悲劇となった。わが国ではようやく罹患者が少なくなり、企業活動も商店、飲食店やレジャー施設などもそろそろ日常を取り戻しつつあるようだ。だが、このウイルスはなかなかしぶといようで、まだまだ油断は禁物だ。
コロナ騒動の中で、今年も半分近くが過ぎ、うっとうしい梅雨の季節を迎える。でも、6月は陰暦で「水無月(みなづき)」という。雨が多い梅雨の季節なのになぜ水が無い月なのだろうか。諸説あるようだが、水がない月だから水無月というわけではなく、水無月の無は「〜の」という意味であるようだ。つまり「水の月」である。陰暦の6月は現在の6月下旬からをさすようで、モノの本によると、梅雨が明けて田んぼに水がたくさんたまったからという説が有力だそうだ。
 都会に住んでいると雨の日が続くのはうっとうしい限りだが、水稲だけでなく、さまざまな植物にとって、この時期の雨は重要な役割を果たしているのだろう。人間にとってもダムに水が溜まって、夏場の水不足を回避できることになる。考えようによっては真夏の前に梅雨があるというのは実はありがたいことなのかもしれない。
 さて、本号は「拡大するか?グリーン環境価値」を特集しました。非化石とは石油や石炭、天然ガスなどの化石燃料以外の燃料、具体的には太陽光や風力などの再生可能エネルギーや水力発電のことです。化石燃料は何百万年も昔に地層に埋まった植物や動物の死骸が熱や圧力によって長い時間をかけて燃料になったもので、これらを私たち人間が使い続ければ、いずれは地球上から化石燃料がなくなってしまいます。
 それだけでなく、化石燃料から非化石燃料に切り替えることにより、地球温暖化の原因となる二酸化炭素の排出を減らすことができるため、非化石燃料が注目されています。非化石証書とは温室効果ガスを出さない電気の環境価値、つまり「非化石価値」を証書にして売買を可能にしたものです。
 雨の日には室内でゆっくり本誌をご覧いただければ幸いでございます。



どうする?もう一つの「非常事態宣言」
2020/06/04(Thu) 文:(水)

 政府は5月25日、約1ヵ月半続けた新型コロナウイルス感染拡大防止対策のための「緊急事態宣言」を首都圏と北海道を最後に全面解除した。まだ感染再発の油断はできないが、ようやくわが国の経済社会活動も重苦しかった目の前の濃い霧が消え、視界が開きつつある。世界中を震撼させたコロナ禍は3密の回避や移動の自粛・制限、働き方改革など、今まで当たり前に繰り返してきた社会経済活動の慣習にことごとく変更を迫った。一つは在宅勤務(テレワーク)という新たな働き方の選択であり、そのためにはわが国に長年根付いていた決済や意思決定があったことを証する「ハンコ文化」そのものが大きな障害になっていることも明らかになった。
 「電子署名サービス」に代用すれば人の活動の絶対量が大きく減少、エネルギー需要の削減にもつながり地球温暖化をもたらすCO2削減に大きく貢献する。特に霞が関における長年の慣習見直しはハンコ文化だけではなく、コロナ禍後のわが国の新しい社会経済活動のあり方を考える上で極めて重要と思われる。
 一例を挙げてみよう。各省庁が毎年行う政策立案→予算要求→概算決定→施策展開による予算執行というサイクルを2年に1回にしたらどうか。その方が時間的余裕も生まれて政策展開の質も向上し、地方自治体も含めて長期の視点を見据えた行政展開が可能となるはずであり、民間の経済活動にも好影響を与える。この可能性を財務省に聞いてみた。答えは財政法で1年間という「会計年度」が明記されており、法律改正しないと無理という。
 2年に1回の予算編成は財政面にも役立つ。政府はコロナ対策で急遽巨額の1〜2次補正予算を具体化したが、霞が関だけが聖域であってはならない。その財源の大半は国債発行となり、いずれ国民には消費税の再引き上げというツケが回ってくる。ならば法律改正して当初予算は2年間での執行として、その余剰分は財源対策に回せばよい。コロナ禍で実施された緊急事態宣言と同じような危機認識は、すでに気候変動の「非常事態宣言」としてすでに国内では20余自治体、世界では1000超の都市が共有している。この10年の対応が気候変動の限界を超えるかどうかの分岐点ともいわれており、CO2削減のための社会経済活動の大変革も待ったなしだ。



洋上風力の進展に期待
2020/05/15(Fri) 文:(山)

 皐月の空に鯉のぼりが泳ぐ季節になったが、今年はあまり見かけなかった。4月29日の昭和の日から3日開けて5月3日から6日まで憲法記念日、みどりの日、こどもの日、振替休日と4日連続の休日が続き、土曜日が休みの会社なら5連休となった。
 とはいうものの、今年のゴールデンウイークはとてもゴールデンとは言えない事態だった。鯉のぼりを眺めて「屋根より高い〜〜」と歌う気にはなれなかった。ご存知の通りコロナウイルスの蔓延である。企業に取材に行っても自宅勤務している人が多く、まともな取材ができない状態である。スーパーマーケットには買いだめの人たちの行列ができるほどだが、飲食店などは閑古鳥が鳴いている。コロナウイルスを退治する薬剤として富士フイルム富山化学の抗インフルエンザウイルス薬ファビビラビルなどが期待されているが、どうなのだろうか。とにかく、コロナウイルス罹患者の回復に全力を尽くすとともに、これ以上の罹患者を出さないことが何より大切なことである。
 大変に厳しい状況だが、弊紙スタッフは全員無事で5月合併号を読者の皆様にお届けできました。特集は「洋上風力」です。日本は山が多いので、風車を設置する場所が限られている半面、海に囲まれていることなどから、洋上への風力発電設置が期待されていた。だが、これまでは@海域の占用に関する統一的なルールがないA先行利用者との調整の枠組みが存在しない――などにより導入が進んでいませんでした。それで遅きに失した感がないではないが、政府は昨年4月に「海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律(再エネ海域利用法)」を施行しました。
 それにより今後、洋上風力の建設が増えることが期待されます。風車が回ると低周波音や機械音が発生し、陸上の風力発電が生活圏の近隣の場合、住民から騒音問題などの苦情が出ることがありましたが、洋上ではこの問題はなくなります。もちろん、海を利用している漁業者や船舶の邪魔をしないことが前提ですが、周囲を海に囲まれたわが国でこそ、洋上風力の活躍が期待されるところです。もちろん、海で発電したからといって電気は塩辛くなることはありません。これは冗談ですが、海から送られてきた電気で生活するなんて、なかなか良い気分になれるかもしれませんね。



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