通常国会に「自然エネルギー促進法案」提出へ
約220人で超党派議員連盟 設立総会
超党派の国会議員で結成した「自然エネルギー促進議員連盟」の設立総会が11月24日に開かれ、会長に自民党の愛知和男衆院議員、事務局長に公明党の加藤修一参院議員を選出、スタートを切った。同連盟は来年の通常国会に、自然エネルギー電力の買い取り義務などを盛り込んだ「自然エネルギー促進法案」を議員立法で提出する考え。現在のところ約220人の議員が参加しているものの、同法案の提出をめぐって、今後、通産省などとどのような折衝が行われるか注目される。
この日はまず、各党代表の意見表明が行われたあと、加藤事務局長が経過を説明、その中で「これまで行ってきた事前の勉強会でEUが一次エネルギーに占める自然エネルギーの割合を現在の6%から2010年には12%に倍増させると聞き、強いインパクトを受けた。EUでは自然エネルギーの普及・促進を地域の活性化や雇用の創出につなげ、50万人から90万人の雇用を確保しようとしている。それに比べれば、日本はこの分野では相当に遅れている」と述べた。
また、同局長は来年の通常国会に法案を提出する意向を示したほか、欧州への議員団の派遣、総合エネルギー調査会設置法の改定、普及促進に向けた国民運動の展開などを視野に入れて活動したいと意欲をみせた。このほか、NGO、自治体代表らが意見を述べたが、風力発電を積極的に推進している三重県久居市の藤岡和美市長は「知恵と行動力で次のステップへ進んでもらいたい」と激励した。会場からは「政府の長期エネルギー需給見通しに政治家は関与していないのではないか」という声も出たが、これに対し愛知会長は「この議員連盟をエネルギー政策そのものを議論する場にしたい」と述べ、長期需給見通しにも関与していく意向を示した。
同連盟は今年9月に北海道苫前町で衆参9議員が参加して設立準備総会を開いたほか、今年3月から約10回の事前勉強会を開いて準備を進めてきた。今後は法案の条項に自然エネルギー電力の買い取り義務化を盛り込めるかどうかが、最大の焦点になる。
設立総会における各党議員の発言要旨は次の通り。(敬称略)
〇河野太郎(自民)
自然エネルギーが技術的に可能かどうかではなく、いまや、やるか、やらないかという問題である。促進の意思を明確にしていく必要がある。
〇細川律夫(民主)
促進法の制定に向けて国民的世論を巻き起こす必要がある。全力を挙げて成立に向けて努力する。
〇近江巳記夫(公明)
欧米に比べ自然エネルギーの普及について日本は遅れている。太陽光を含めベストミックスで前進させることができるよう、国としてレールを敷くことが重要である。
〇笹山登生(自由)
11月20日の秋田自然エネルギー自治体サミットが盛会だったように、地方でも関心が高い。過疎法の改定の際、自然エネルギーを含めて再スタートさせたい。
〇福島瑞穂(社民)
通産省が2010年に3%としている自然エネルギーの割合を10%にもっていきたい。ビジネスとしても日本が最先端を行くようにしたい。
〇水野誠一(参議院の会)
ウラン、石油ともいずれ枯渇する。自然エネルギーを促進することは、エネルギー問題に根幹から取り組むことを意味するから、意義は深い。
「秋田自然エネルギーサミット」に28自治体、280人参加
雪エネルギーの活用に強い関心
当協議会が後援した「秋田自然エネルギー自治体サミット―風と森と雪のシンフォニー」(秋田市主催)が11月20日、同市内で約280人を集めて開かれた。サミットには全国から28自治体の首長らが参加、自然エネルギーの普及・促進に向けて熱のこもった議論が展開され、討論を集約した「秋田クリーンエネルギー宣言」が採択された。
サミット第T部では「地球温暖化防止に果たす自然エネルギーの役割」と題して、一橋大商学部教授(当協議会会長)の栗原史郎氏が基調講演。続いて、北海道苫前町の久保田徳満町長が「わが町の風力発電」、新潟県安塚町の矢野学町長が「わが町の雪エネルギーの活用」、島根大生物資源科学部助教授の小池浩一郎氏が「木質バイオマスの可能性」と題して、それぞれ講演した。
次いで第U部では、栗原教授をコーディネーターとするパネルディスカッション「自然エネルギーを普及させるには何が必要か」が行われ、パネラーとして、三重県久居市の藤岡和美市長ら自治体首長のほか、参議院議員の加藤修一氏、秋田市民代表として太陽光発電パネル設置者の萩井寛氏らが参加、普及策を探った。第V部の自治体サミット「地球温暖化防止に果たす自治体と市民の役割」には埼玉県川越市の舟橋功一市長(当協議会理事)ら9自治体の首長らが顔をそろえ、自治体と市民が一体となって温暖化防止に取り組む必要があるという認識で一致した。
このあと、この日の討議全体を踏まえて秋田市の石川錬治郎市長(同)が「秋田クリーンエネルギー宣言」を読み上げ、拍手で採択された。「宣言」は(1)風力、森林、雪、太陽光など地域に豊富にある資源を活用して、地域ごとに自然エネルギーへの転換を訴える(2)地域の住民とともに、地球温暖化防止への取り組みを積極的に進める(3)国に対し、自然エネルギーの普及・促進を強く働きかけ、地域の住民とともに運動の輪を広げる―とうたっている。
昨年7月に埼玉県川越市で開かれた「省エネ(節電)・新エネ自治体サミット」に続いて開催された今回のサミットは、いまだ国に新エネルギーとして認知されていない雪や木質バイオマスエネルギーをテーマにしたこともあって、強い関心を持たれた。中でも、新潟県安塚町における雪エネルギーの活用については関心が集中した。また、サミットでは自然エネルギーに意欲的に取り組んでいる自治体がネットワークを組み、国などに普及・促進を働きかけることが重要という意見を出され、自治体の力を結集することで一致した。
秋田自然エネルギーサミットへの参加自治体は次の通り。
北海道苫前町、同上ノ国町、青森市、盛岡市、岩手県葛巻町、仙台市、秋田市、秋田県横手市、同大館市、同比内町、同田代町、同琴丘町、同八森町、同井川町、同若美町、同仁賀保町、同金浦町、同鳥海町、同角館町、同羽後町、同山内村、同大雄村、同東成瀬村、水戸市、埼玉県川越市、新潟県安塚町、三重県久居市、福岡県大木町
REPPが「緑の電力革命」シンポ
―市民の選択による自然エネルギーの普及を模索―
自然エネルギー推進市民フォーラム(REPP)が10月31日、東京で第2回「緑の電力革命」シンポジウムを開いた。需要家である市民が太陽光や風力、水力、バイオマスなどの「グリーン」な電力を供給している電力会社を選択することによって、「グリーン電力」の普及を促進させようという「グリーン電力制度」がテーマ。当日は、すでに「グリーン電力制度」を導入している、アメリカ、スウェーデン、デンマーク、オーストラリアの担当者がそれぞれ自国での取り組みを紹介した。また、電力会社の料金システムには体系的に組み入れられていないものの、北海道および九州で市民自らの手によるグリーンファンドに取り組み始めた市民団体の代表がその取り組み事例を報告。国会議員も交えて、日本版グリーン電力制度への芽を探ろうと、パネルディスカッションも行われた。
日本ではまだ大口需要家を対象とした電力の自由化が緒についたばかりで、家庭レベルで電源別に電力会社を選択できる状況になっていない。この点、カール・ラバゴ氏 〔アメリカ Green-E 理事〕は「電力が規制緩和される前の期間に我々は次のようなことをした。まず、電力会社に需要家がどのようなことを望んでいるのかを調査させ、次に、どんどん発電所をつくることをやめさせた。その結果、原発に不安を抱いてグリーン電力を求めている需要家の要望がわかり、新たなグリーン電力の供給者が出てきた」と述べた。さらに、「風力発電は頼りないのではないか」という質問にラバゴ氏 は「誰も風だけに全部を頼ろうとしているわけではない。ただ、バックアップの技術、エネルギーを管理する技術の組み合わせで安定的に風力を使うことは可能。そもそも、日本全部で一気に風がとまるわけはない。」と答えた。
シンポジウム参加者は、加藤修一(参院議員)、小池寿文(再生可能エネルギー推進市民フォーラム西日本 専務理事)、山藤泰(大阪ガス エネルギー・文化研究所理事)、鈴木亨氏(北海道グリーンファンド 事務局長)、福島瑞穂氏(参院議員)、オーレ・オドゴール(デンマーク・エネルギー庁)、トーマス・コバリエル(スウェーデン自然保護協会副代表)、カール・ダバゴ(米国Green-E 理事)、ブリジット・マッキントッシュ(オーストラリア・持続可能エネルギー開発局) (敬称略)
「エアムーブ工法」、高気密高断熱住宅より5%省エネ(夏季)
坂本東大教授が測定
本会報第4号に掲載した「エアムーブ工法」住宅の省エネ度、快適さなどを分析している坂本雄三・東大工学部教授のデータ測定によると、盛暑の今年8月のデータ(エアコン不使用、窓閉鎖)で、「エアムーブ住宅」が比較対象の「高気密高断熱住宅」より、室内温度で最高約5度低い値を観測したという。
坂本教授は(財)「住宅・建築省エネルギー機構」(IBEC)の「次世代省エネルギー基準適合住宅評定委員会」の委員長。このデータ測定は、エアムーブ工法の効果を数値化して科学的に分析することが目的で、比較のために、次世代省エネ基準では最も標準的な仕様になるとおもわれる「高気密高断熱住宅」をエアムーブ住宅と全く同サイズで群馬県内に建築、この2棟について24時間体制で3分おきに「温度」「湿度」「風速」「木材中の含水率」の4項目を測定中。測定個所は居住空間だけでなく床下、屋根裏、内壁、外壁、壁の中など1棟で150カ所で、期間は2年間。
群馬県で99年に最も暑かったころの8月1日、窓をすべて閉鎖してエアコンを使用しないという条件で排熱、除湿効果を調べた結果、高機密住宅では室内温度が午後4時ごろ最高約38度まで上昇したのに対し、エアムーブ住宅では最高約33度までしか上がらず、常時3―5度低かった。また、実在水蒸気圧もエアムーブ住宅の方が20−30%少なかったという。
また、エアコンを使用する場合を想定した実験では、8月25日〜9月19日の間、室温を常時27度に保つようエアコン設定したところ、消費電力量はエアムーブが平均で約5%少ないという結果になった。
これに先立ち、99年3月7日−30日の間、室温を20度、湿度50%になるようエアコン設定した場合でも、暖房用電力消費は同様に平均約4%エアムーブが少なかった。曇天の日はあまり差がなかったが、晴天の日は8−10%も差がついたという。
エアムーブ工法とは、夏期は昔の日本家屋のように熱気を徹底的に屋外に追い出す一方、冬期には建物の内側を暖かい空気で魔法瓶のように包み込む「高気密高断熱」に早変わりさせる仕組み。電気モーターや機械力を一切使用せず、その代わりに、特許をとった何種類かの器具を屋根裏や壁、基礎コンクリートに埋め込むことで、エネルギーゼロで空気の流れを夏、冬、それぞれ好ましい方向に自在にコントロールしている点が特徴である。また、高気密高断熱で問題となる結露も、この住宅が外壁と内壁の間に断熱ボードをはさむ形で空気層を二重に設けており、その空間を絶えず空気が流れるため、全く発生しないうえ、ダニやカビ、木材の腐りを防ぐ効果が大きいといわれる。
「次世代省エネルギー基準」は99年3月、「エネルギー利用合理化法」の規定に基づいて告示された。この基準はオイルショックの教訓から1980年に初めてつくられ、92年に改訂された。今回、それを地球温暖化対策と絡め(1)冷暖房費の節約(2)住宅の耐久性の向上―を目指して大幅に見直し強化された。現在、IBECが同基準適合住宅の認定に向け、住宅メーカーから申請された住宅について個々に審査している。
次世代省エネ基準は(1)住宅建築の際に必要な性能を規定した「建築主の判断の基準」(2)具体的な仕様を定めた「設計、施工の指針」の2本立て。家庭で消費されているエネルギーの約7割が冷暖房と給湯で占められており、次世代基準でこの冷暖房用エネルギーを国全体でさらに20%削減することを目指し、地球温暖化防止につなげようとしている。
主な改正点は省エネへのさまざまな工夫を適切に評価するため、年間冷暖房負荷の基準値を新設したほか、熱貫流率や気密性の要求基準を、従来の都道府県別から、各地の実際の気候に合わせた市町村別の細かい地域区分への変更など。同基準に適合した住宅には住宅金融公庫から250万円の割増融資が受けられる。
(ジャーナリスト・平野真佐志)
「エレクトロファイナンス」という概念
気候変動要因による損害賠償に対する保険金支払額の上昇懸念と、世界的な電力自由化の流れが結びついて、今、「エレクトロファイナンス」(Electrofinance)という新しい概念が生まれている。これは、火災・損害賠償保険、年金積立て、電力供給サービスをひとつのパッケージとして顧客に提供し、保険料の割引や支払予定の年金の増額を再生可能エネルギーの普及や省エネルギーのインセンティブとするという、野心的なアイディア。政策研究を通じた再生可能エネルギーの普及が目的でそのスタンスは再生可能エネルギーの普及をビジネス機会の増大に結び付けようというものだ。これはアメリカの環境NPOの機関紙に掲載されていたもので、その一部を紹介する。
「エレクトロファイナンス」を提唱したのはジョエル・ゴーズとジェルミィ・レゲットの両氏で、それぞれ「環境・エネルギー・ソリューション」および「太陽の世紀」というロンドン郊外の環境NPOの代表。彼らは先進国、特に米国の保険業界に対して、気候変動の影響を「懸念」と捉えず、「新たなビジネスチャンス」と捉えるべきだと指摘したうえで、「エレクトロファイナンス」という概念を提案している。その概略は、(1)まず保険業者は自由化された電力市場で低廉な電力を獲得し、それを顧客に販売する(2)エネルギー利用効率化によって削減された電気料金の節約分は年金の積立金に流れ込むと同時に毎月の保険料が割引される(3)太陽光パネルのとりつけを要望する顧客に対しては長期ローンを用意し、毎月の返済額は省エネによって浮いた分で支払われる―というもの。
ただ、これは電力の小売り自由化が進展しているイギリスや米国においても、まだ「概念」にとどまっている。保険業界の新規事業参入へのためらいやとまどい、ないしは電気事業者の抵抗がその理由という。しかし、この概念の魅力的なところは、保険料割引やベビーブーム世代の退職後の経済的不安にアピールしているところで、一部の環境保護に熱心な層だけでなく、一般の市民も受け入れられる可能性を示唆している。また、アメリカの保険会社に対しては、顧客の開拓と新規事業への参入といった短期的な経済的メリットを訴えることで、気候変動の抑制戦略に参加させる展望を示している。今後、電力の自由化が進んだ欧米を中心に、市場志向的で洗練された「エレクトロファイナンス」が保険業界の新たなビジネスとして普及していくかもしれない。