省エネ・新エネ普及Net エネルギージャーナル社
省エネ・新エネ普及推進協議会 関連情報

省エネ・新エネ普及ネット会報 第7号 1999年12月


COP3  2周年

オランダ企業・自治体の先進事例に関心
山形・立川町 環境・エネルギーセミナー

 地球温暖化防止京都会議(COP3)開催(97年12月)2周年を記念して、12月9、10の両日、山形県立川町で「エコランド’99環境とエネルギーセミナー」(同町主催)が全国から約200人を集めて開かれた。風力発電事業を積極的に推進している舘林茂樹町長は「日本では何故EUのように強力な新エネルギー対策がとれないのか。このままでは日本の風力発電が一時のブームに終わってしまう懸念もあるので、COP3 2周年を記念して、改めて地球環境問題を考えることにした」と、セミナーの趣旨を説明した。
 基調報告でオランダ・ヌオン社のアンネマリー・グードメーカーズ国際・再生可能エネルギー部長は「当社は2010年に販売する総電力のうち、10%を再生可能エネルギー源から発電するという目標を掲げている」と述べ、オランダ政府目標の2020年より10年早く一企業として達成する方針を明らかにして、注目された。
 ヌオン社は同国最大級の複合公益事業会社で、同国エネルギー供給市場の40%のシェアを有し、98年6月、合弁で中国初の商業用風力発電企業を立ち上げている。同社は風力、水力、太陽熱・太陽光、バイオマス発電など幅広い分野を手がけているが、企業が政府目標を10年先取りする姿勢を示すのは、きわめて異例といえる。
 また、同行した同国ナイメゲン市(人口15万人)のライン・ヴァーダイク市議会議員は、同市内に98年夏、地面暖房システムのサッカー場が完成したことを披露するとともに、「当市議会の最優先事項は環境への配慮と再生可能エネルギーの使用」と語り、自治体が率先して地球環境問題に取り組んでいることを強調した。
 「ハウ・ツウ風力発電」と題した討論会では、北海道苫前町長の久保田徳満氏が「大規模風力発電の取り組みと問題点」、NEDO新エネルギー導入促進部主査の東野政則氏が「日本政府の再生可能エネルギー支援と課題」、東北電力研究開発センター主幹研究員の山田俊郎氏が「電力系統に連携する場合の課題」、足利工業大教授の牛山泉氏が「日本の取るべき政策」と題して、それぞれ報告した。この中で、山田氏が風力発電の供給の不安定さ、電力会社の経済的負担などに言及したことに対し、コーディネーターの清水幸丸氏(三重大教授、日本風力エネルギー協会会長)が「勉強不足」と一喝するひと幕も。
 10日に行われたパネルディスカッション「地域で何ができるか−私たちが身近にできること」では、高知県梼原町長の中越武義氏らがパネラーとして発言、中越町長はこの10月から風力発電の運転を開始したと報告した。このあと、参加者は同町内の風車村とたちかわ風力発電研究所を見学した。
 このセミナーは風力発電や有機米栽培などを柱にした町おこしを推進している地元グループが自主運営し、参加者に新鮮味を与えた。また、ヌオン社関係者が招かれたこともあって、参加者の中には関連メーカーなどの社員も多く、レセプションで商談も行われるという、この種の会合としては珍しい光景も見られた。


省エネ・新エネ促進条例制定で雇用創出へ
北海道 1万2千人

 北海道省エネルギー・新エネルギー促進条例(仮称)の制定をめざしている道では、同条例に関連して、環境・リサイクル分野において約1万2千人の雇用を創出する方針を決め、検討に入った。道では北海道拓殖銀行の経営破綻以降続いている域内経済の低迷を打開するため、新たに約5万人の雇用創出が必要とみて、各分野ごとに雇用増加目標を立てているが、このうち、約4分の1を環境・リサイクル分野から創出することにしている。
 北海道ではすでに、雪の冷熱を利用した施設や風力発電施設などで省エネ・新エネに向けた動きが活発になっているが、道内で自律的に確保可能なエネルギーを可能な限り将来に引き継ぐ必要があるという判断から、省エネ・新エネ促進条例を制定する意向を示している。これに基づき、今年10月から有識者からなる条例制定検討懇話会を発足させ、検討に入った。
 道では、国のエネルギーの使用の合理化に関する法律(省エネ法)のうち、小規模な工場・事務所を対象にした準エネルギー管理指定工場、事業者のエネルギー管理の促進、住宅性能向上の努力規定、中小企業を対象とした財政支援、教育活動、啓発活動の増進を、また、新エネルギー利用等の促進に関する特別措置法(新エネ法)のうち、新エネ導入の始動への支援、新エネ導入施設の支援、新エネ電力買い取り努力規定、地域熱供給の導入努力規定、廃棄物発電等に対する導入支援などをそれぞれ条例に取り込む考えだ。
 こうした条例による省エネ・新エネの開発導入促進と環境保全のための施設の整備促進により、雇用の創出をめざすという。雇用の場としては(1)リサイクル関連施設(2)家電リサイクルセンター(3)国のエコタウン事業を活用した「エコランド北海道21プラン」施設(4)環境リサイクル関連技術研究機関(5)省エネ・新エネ関連技術開発機関―などを想定している。これにより、約1万2千人の雇用の創出を見込んでいるが、自治体が省エネ・新エネを軸にこうした試みに挑戦する例は少なく、その成果が注目される。


集中型と分散型 新たな組み合わせ模索
―環境共生エネルギーシンポ―

 環境共生時代におけるエネルギー利用の在り方を探るべく、11月17日、東京都内で「環境共生時代におけるエネルギーの選択」と題するシンポジウム(日本経済新聞社主催、資源エネルギー庁後援)が開かれた。大宅映子氏(ジャーナリスト)が「豊かさの限界」というテーマで基調講演を行い、自動販売機の氾濫や季節感を無視した農業の実態など、過剰消費現象に警鐘をならした。第二部では、末次克彦氏(太平洋エネルギーフォーラム代表幹事)をコーディネーターに、「エネルギーと環境問題を考える」というテーマでパネル討論が行われた。討論参加者の基調発言の後、需要サイドと供給サイドが複雑に入り組んだ新たなエネルギーシステムの展望について、活発な議論が展開された。
 北畑隆生氏(資源エネルギー庁石炭・新エネルギー部長)は「エネルギーセキュリティを考えると、集中型がメイン」としながらも、「燃料電池は自動車から入ってきたのが大きなインパクトとなっているが、家庭にも入る燃料電池も今後、戦略的に進めていきたい」と発言。集中型と分散型の組み合わせを構築していく土俵づくりを通産省として表明したことは注目される。
 柏木孝夫氏(東京農工大教授)も「新エネルギーの中でも燃料電池は今後の需要の伸びに対して量的なインパクトがあり、しかも、都市部に入れても環境負荷の少ない需要サイドの電源である」という認識を示し、燃料電池に対する期待を表明した。また、「コジェネで70%の電気をまかなうぐらいになったときに一番省エネになる」というシミュレーション結果を紹介しつつ、送電網をだれでも利用できることを担保するなど、分散型がうまくいくような制度にかえるべきであると提言。
 布谷龍司氏(NTTファシリティーズ 副社長)は「環境問題への対応はもはや社会貢献ではなく、企業評価に直結している」という見解を示した後、自社の環境問題への取り組みの具体例として、コジェネや太陽光、風力などのクリーンエネルギーの導入事例を紹介。また、自身のコジェネ導入の経験から、その普及の課題として、発生する熱の使い道を挙げ、「余剰熱を地域冷暖房会社に買ってもらう話をまとめた」と述べ、地域冷暖房会社に積極的に買ってもらう制度構築の必要性を強調した。
 コジェネの導入および熱供給に関してNTTから相談を受けている鍵山一郎氏(東京ガス副社長)は天然ガスのクリーン性および需要オンサイト型電源の普及の見通しから、天然ガスに基幹エネルギーとしての期待が高まっていると述べる一方、燃料電池に関しては、ガス会社より自動車メーカーが研究開発した方が効率的という考え方を示した。しかし、改質装置や水素の貯蔵施設など、燃料供給のための周辺装置の開発で貢献の余地があり、2005年頃には商品化する方針という。
 パネリストの発言から、自動車メーカー間による燃料電池の開発競争が分散型エネルギーシステムへの転換に与えたインパクトの大きさが随所にうかがえた。燃料電池の、自動車を中心とする燃料インフラのあり方を検討する検討会が資源エネルギー庁内に設置されるなど、分散型エネルギーシステム構築をとりまく環境は変化しつつある。これまでコジェネの普及は電力会社とガス会社間の利害対立によってなかなか進展しなかったが、自動車メーカーの開発競争により、分散型電源システムの構築へ向けてはずみがつきそうだ。


液晶型モニターに報奨金をつけては?
―拡大する情報通信の電力消費―

 通産省資源エネルギー庁は10月15日、98年度のエネルギー需給実績の速報を発表した。それによると、最終エネルギー消費全体で対前年度比1.1%の減少となり、82年度以来の対前年度比減少という。家庭部門も1.9%減少したが、電力だけは増加。98年度だけでなく、このところの不況にも関わらずエネルギー需要が着実に伸び続けているのが、エネルギー源別でいうと電力、部門別でいうと運輸(その大半は自動車)である。
 家庭での電力消費増加の主な要因は、テレビや冷蔵庫の大型化および電力による暖房機器、パソコンの普及である。特に、パソコンの普及と電力需要の拡大には密接な関係がある。エネルギー消費は用途別に、冷房・暖房・給湯・厨房・動力他(テレビやステレオ、FAX、パソコン、照明など、電力以外の他のエネルギーでは代替不可能な用途)に区分されるが、90年代前半まで家庭部門で一番需要が大きかったのが「給湯用」。それが94年から「動力他」が逆転し、以来、今日まで家庭での用途別エネルギー消費のナンバーワン。パソコンの普及とピタリ符合する。さらに、最近ではインターネットの普及がパソコンの普及に拍車をかけている。今年に入って低料金のインターネット24時間常時接続サービスや、プロバイダーに加入することを条件に低料金(あるいは無料)でパソコンを提供するサービスも登場。今後も、情報化の進展とパソコンの普及があいまって、家庭での電力消費がますます拡大していきそうである。
  一方、政府は情報通信の活用による交通代替を省エネ量の削減見込みの中に組み入れている。例えば、昨年の長期エネルギー需給見通し改定で、省エネ対策の中で「情報通信を活用した在宅勤務やサテライトオフィス勤務等の場所にとらわれない働き方であるテレワーク及びテレビ会議システムの普及を進めることも意義がある」という認識を示したうえで、情報通信インフラの普及による交通代替を推進することで、原油換算約190万KLの省エネ量を見込んだ。
  しかし、通信量の増大は交通量も増加させる。交通と通信の相互関係を分析対象とする「テレコム・モビリティ」という分野の研究によると、情報化が進展すればするほど、それを補完するために人々の移動もより活発になるという結果が明らかにされている。サテライト・オフィスやホーム・オートメーション、あるいはパソコンやインターネットなど、コンピュータと情報通信機器を利用したコミュニケーション手段が急速に普及している半面、機械では対応できない"face to face"のヒューマン・コミュニケーションが逆により重要となっているという(石井晴夫『交通ネットワークの公共政策[第2版]』中央経済社,1999)。情報通信部門の電力消費拡大と運輸部門の拡大基調という現実が何よりもこうした研究成果を実証している。
  従って、政府は通信インフラの拡大による交通代替などをあてにせず、実効性あるモーダルシフト、例えば、自転車の普及を着実に進める必要があろう。ただ、情報通信インフラの整備・パソコンの普及自体は企業の業務効率改善などの側面もあるうえ、不況下における数少ない成長分野のひとつでもあることから、一概に否定できない。
  ただ、情報通信およびパソコンの普及による電力需要の拡大をただ手をこまねいて見ているのでは能がない。消費者、メーカー、電力会社、さらに政府、それぞれの立場に応じて、求められる省エネに向けての対応措置があるはずである。
  パソコン本体の購入は市場競争と消費選好の範疇だろうが、モニターに関しては、ブラウン管型と液晶型との価格差および消費電力の差は大きい。液晶型の消費電力はブラウン管型のほぼ2分の1から3分の1だが、価格はブラウン管型の方が安く、液晶型と比較して2分の1から3分の1。個人や学術機関および企業などでモニターの購入を検討する場合、液晶型モニターは安くなったとはいえ、まだまだ“ぜいたく品”という位置づけである。そこで、液晶型モニターなどは行政や電力会社が介在して、省エネ対応商品という位置づけから、購入者に何らかの報奨金を支払うような仕組み(米国のいくつかの州で実行中)があってもよいのでないか。
  もちろん、パソコン本体や各種周辺機器およびモニターを購入した後は主として、消費者自身の省エネ行動が求められる。普段の使用においても使わないときは電源を完全に落とす、スクリーンセーバーを使用せずモニターの電源だけを完全に切るといった行動が必要だ。
  情報通信による交通代替はあてにできず、パソコンの普及と情報通信インフラの拡大を止めることができない以上、消費者、メーカー、電力会社、行政、それぞれの立場からの省エネ措置により、いささかでも、情報通信分野における電力消費の増加を抑えることができるはずだ。

(S)


まず、地元選挙区で問題提起を ―自然エネルギー促進議連の発足によせて―

▼11月下旬、200人を超す超党派の国会議員からなる自然エネルギー促進議員連盟が発足した。議連としては最大級の規模といわれ、設立総会会場にも熱気が感じられた。各党代表の発言にも意欲がにじみ出て、国会議員がようやく自然エネルギー促進法案の提出に向けて、歩調をそろえたという印象を与えた。
▼しかし、同法案の最大の焦点である風力発電などの自然エネルギー電力の買い取り義務化に関しては、公式、非公式の議論の場で、通産省、電力会社とも強い抵抗を示している。この高いハードルが議連の発足によって直ちに越えられるかというと、客観的にみて容易でないことをは明らかである。
▼確かに、茨城県東海村の臨界事故などを考え合わせれば、流れは自然エネルギーへということになろうが、一般の国民の意識として、かならずしもそういう方向に傾いているとは、にわかに言い難い。原発に不安を抱いていることは間違いないこととしても、明確な世論形成にまで至っていない。このことは議連も強く認識しておくべきだろう。
▼そこで提案したいのは、永田町あるいは霞が関での議論ばかりでなく、地元の選挙区で有権者ないし支持者と徹底した討議を行ってもらいたいということだ。加盟議員の多くはこの暮れから正月にかけて地元に帰ると思われるので、この機会にエネルギーの在り方について多角的に話し合い、地元で世論を確立してもらいたい。
▼自然エネルギーの導入促進はビジネスチャンスを拡大するとともに、雇用の創出にもつながる。一般的なありきたりの景気浮揚策をやりとりしているより、この方が効果的である。「環境」は票にならないという俗説をくつがえすことにもつながるのではないか。議連の活動に期待するだけに、あえて―。

(I)

【戻る】

【TOP】 【今月のキーワード】 【行事予定カレンダー】 【最新情報リンク】
【書籍紹介】 【最新号見出速報】 【今週の注目記事】 【記事データベース】
【こぼれ話】 【省エネ・新エネ】 【出版物案内】 【本誌紹介】 【会社概要】 【リンク集】