COP6にらみ、積極型
政府2000年度
省エネ・新エネ関連予算案
政府の2000年度予算案が昨年末、閣議決定された。政府は今年11月の気候変動枠組み条約第6回締約国会議(COP6)で、京都議定書の採択、署名を目指していることもあり、来年度も引き続き、地球温暖化対策の一環として新エネルギー・省エネルギー対策に力を入れる方針だ。新エネルギー、省エネルギーに関する来年度施策のポイントを解説する。
<通産省は燃料電池、風力発電開発・普及に最重点>
通産省のエネルギー関連予算はここ数年、総額は伸び悩んでいるものの、新エネ・省エネ予算は順調に増額を続け、来年度も新エネ対策が875→925億円、省エネ対策が865→920億円と、それぞれ6%前後の増額を確保(主な予算項目と計上額は別表)。
うち、新エネ対策では、燃料電池の開発・普及に力を入れているのが特徴。今年度第2次補正予算(昨年11月決定)でも「基盤技術の開発・実証費」として10億円を先行して計上しており、それを加えると、新規分は合計54億円になる。このうち、44億円が自動車や住宅用コージェネなどの分野で大量普及が期待される固体高分子型(PEFC)に充てられる。資源エネルギー庁はこの燃料電池の開発・普及を狙いとした専門委員会を昨年末、官房と石油部のそれぞれに新設するなど、総力を挙げて推進する意向だ。また風力発電の支援も大幅に拡充、新たに出力安定化を目指した研究開発に乗り出す。このほか、NGOや自治体を対象にした草の根活動支援事業を新規に計上。住宅用太陽光発電設置補助やクリーンエネルギー自動車導入補助事業は減額となったが、これは対象設備費の単価が下がったためで、補助件数は概ね現状維持+αとなる見通し。
なお、通産省は昨年12月、総合エネルギー調査会に新エネ部会を設置。8月までに中長期的な導入シナリオや新たな導入方策を盛り込んだ報告書をまとめる方針だ。
一方、省エネ対策では自治体の省エネ設備導入(庁舎改修やITSの導入等)に対する補助費や、新エネ同様NGO等による省エネ促進活動への補助事業が新規に計上された。このほか、先導的な省エネ設備導入者への補助やESCO事業者への支援拡大が目立つ。また、施策的には省エネ法に基づく大規模工場への指導を来年度より具体化、トップランナー対応の技術開発等を加速する。
<環境庁は対策シナリオ策定、科技は技術開発増額>
環境庁は直接新エネ、省エネを対象とした予算こそないが、温暖化国内対策費として「2010年排出削減目標達成シナリオ策定事業」(0.1億)、「排出削減対策第三者認証制度検討事業」(0.2億)を新規計上、関係施策の検討を進める。また、全都道府県に設置予定の地球温暖化防止活動推進センターを対象とした「取組み経費」(0.7→0.8億)「地球温暖化対策地域推進モデル事業」(2→1.5億)を使って、普及啓発や関連事業を進める。
一方、科学技術庁は「環境低負荷型新材料研究開発」(42億)、「革新的温暖化防止技術探索プログラム」(56億)、「未来エネルギー研究開発」(うち新エネ分野9億)を計上、この中で関連の技術開発を進める方針だ。
<建設は自転車道路整備、運輸は低燃費車開発など>
これに対し、建設省は「自転車利用総合環境整備事業」「歩行空間ネットワーク総合整備事業」を創設し、自転車道や駐輪場、歩行空間の整備に乗り出す。交通需要マネジメントの実験事業も継続する。また、「先導的都市整備事業」を創設し、再生可能エネルギーを活用した都市のインフラ整備を進めるほか、公園、下水道、河川等の各事業費を使って、新エネルギーの設置補助なども講じる。
このほか、運輸省は今年度見送られた自動車グリーン税制を来年度も再要望するほか(環境庁も同様の方針)、さらに、低公害・低燃費型のバスやトラックの開発および導入補助事業を引き続き行うことにしている。
<通産省における2000年度の新エネルギー関連予算>(◎は新規。○は継続、99→2000年度予算、以下同)
◎燃料電池普及基盤整備事業(14億)…固体高分子型の実用化に向けて基盤となる標準や基準を整備
◎高効率燃料電池システム実用化等技術開発(20億)…固体高分子型の開発補助。信頼性等評価装置の開発
◎燃料電池用燃料ガス高度精製技術開発費補助(10億)…石炭利用による燃料ガス高度精製技術の開発
◎風力発電電力系統安定化等調査(6億)…出力不安定性による系統影響を調査、影響緩和の方策を検討
◎蓄電池併設風力発電導入可能性調査(11億)…新型電力貯蔵用蓄電池を併設し出力安定化効果を検証
◎草の根型地域新エネ活動に対する支援(11億)…NGO等による新エネ設置補助や普及啓発活動を支援
[その他の主な導入補助事業]――○新エネ事業者支援(103→117億) ○地域新エネ導入促進対策(68→64億) ○地域新エネビジョン策定支援(12→12億) ○産業用太陽光発電フィールドテスト(24→40億) ○住宅用太陽光発電システム導入促進(160→145億) ○風力発電フィールドテスト(17→16億) ○クリーンエネルギー自動車普及促進(100→80億) ○廃棄物発電促進対策費補助(13→12億) ○先進型廃棄物発電フィールドテスト(16→12億) ○環境調和型エネ・コミュニティ形成促進(26→18億)
<同・2000年度省エネルギー関連予算>
◎先進的省エネ設備を導入する自治体への支援(11億)…地域省エネビジョン策定や省エネ設備設置補助
◎草の根型地域省エネ活動に対する支援(8億)…自治体やNGO等が行う省エネ普及・啓発活動を支援
◎省エネ技術の実用化開発(2億)…民間の優れた技術等を活用して省エネ技術の実用化を支援
◎稼働時電気損失削減最適制御技術開発(5億)…稼働時のエネ使用制御技術・制御機器等を開発
[その他の主な支援事業]――○新エネ・省エネ先進技術アドバイザリー事業(4→7億) ○先導的省エネモデル事業(41→51億) ○省エネ情報提供事業(30→27億) ○省エネ型住宅・オフィス新増築の推進(8→14億) ○高性能工業炉等の導入促進(39→39億)
太陽光採光システムシンポ
住宅、建築物への太陽光の採光や省エネルギーをテーマにした太陽光採光システムシンポジウム(同協議会主催)が1月20日、東京都内で開かれた。
席上、宮田紀元・千葉大工学部教授は「採光ルネッサンス」を唱え、「採光というより、かつて石油ョック時に検討された昼光利用照明技術を見直す時期にきている」と問題を提起。宿谷昌則・武蔵工大環境情報学部教授は「閉じられた技術より"流れ"や"循環"を重視した方向を追求すべきだ」と述べ、採光、省エネにおいて新たな観点が必要なことを強調した。このほか、藤井石根・明大理工学部教授が「地球環境と自然エネルギーの利用」と題して講演。
太陽光採光システム協議会には、三洋電機、松下電工など6社が加盟していて、通産省のあと押しを受け同システムの普及、促進を目的として設立された。太陽光採光システムとは、太陽光を採光するため、自動追尾する駆動部を備えたシステム。
電力ピーク時 自然エネと省エネで対応
―揚水発電ダム問題シンポ―
昨年12月12日、東京都内で揚水発電問題全国ネットワークと足温ネット(足元から地球温暖化を考える市民ネット・えどがわ)が共同で、揚水発電ダム問題シンポジウムを開いた。揚水発電問題全国ネット共同代表の高見優氏は「日頃、過疎地で人目につかない場所に計画されることの多い揚水発電ダムに関して、水源地であり計画対象地である個々の村が孤立して反対している現状を、電力の消費地の人々にも理解してもらおうと東京で開催した」と趣旨を述べた。
基調講演で日本自然保護協会の吉田正人氏が「ダム開発と自然破壊」というテーマで、猛禽類保護問題に焦点をあてながら報告。揚水発電問題全国ネットワーク共同代表の田中優氏が「原発と揚水発電」に関して報告、「電気が不足しているのは夏季のピークだけのことであり、省エネと自然エネルギーの普及によりピークカットできれば揚水発電は必要ない」と主張した。
引き続き、揚水発電所建設予定地各地から「揚水発電の建設によって、景観や動植物だけでなく、人間関係も破壊される」「電力需要の低迷など揚水発電建設計画当初の情勢が変化したのにも関わらず、建設が強行されようとしている」「種の保存法で保護の対象となっているイヌワシやクマタカなどの猛禽類の巣があるにも関わらず、電力会社と県はその存在を隠している」と現場の情勢が報告された。
このほか、「市民にエネルギーを取り戻す」というテーマで江戸川区内につくられた市民共同太陽光発電所の取り組みも紹介された。これは、区民からの寄付金で区内の寺院の屋根に太陽光パネルを設置したもので、今後、東京電力への余剰電力売却金によって第二、第三の「市民立発電所」を建設するという。
G8環境大臣会合用自転車を学生から募集 大津市
滋賀県大津市は4月7〜9日に同市内で開かれる主要8カ国(G8)環境大臣会合の期間中、会議関係者や報道関係者の移動に自転車を利用してもらおうと、大学生から不要自転車の提供を求めている。市内および周辺の大学ごとに計100台集めることが目標で、会議終了後はすべて市の公用自転車として利用する予定。
応募の学生には不要自転車の収集、管理のほか、簡単なメンテナンス、市内のサイクルマップの作成などを頼むことにしている。集めた自転車は市が設けた何カ所かのステーションに配置、乗り捨て形式にするという。
大学生を対象にしたのは、市が集めに行く手間をはぶくため。従って、一般市民からの提供は受けないそうだ。また、「各国の大臣自身が乗るのは時間的にも警備の点からも無理」と言っているが、せっかくの機会ゆえ、せめて日本の大臣くらい乗ってみたら?
原発増設効果除くとCO2排出量微増
省エネ努力目標も大半が未達成
―98年経団連自主行動計画を独自検証―
経団連は昨年10月、自主行動計画に基づく産業界におけるCO2排出量の削減率を発表したが、それによると、エネルギー転換部門、産業部門31業種(民生向け電力分を除く)の98年におけるCO2排出量は90年比で300万トン(炭素換算)、2.4%減少したという。
原単位では24業種中18業種において98年は90年比で改善。排出総量で減少が目立つ業種は建設、住宅で、その素材を提供している鉄鋼、セメント、板硝子も減少した。これら5業種の減少は600万トンで、全体の削減300万トンの倍になる。半面、電力(4%増、原発による削減分を含む)、石油(30%増)、化学(6%増)、紙パルプ(3%増)など大口の排出業種が増加、これが前記5業種の削減分を相殺した形となっている。
ところで、このCO2排出量データには原発増設による購入電力CO2排出原単位の低下が含まれていて、各業種が独自に行った排出削減効果がそのまま反映されているとは言い難い側面がある。そこで、自主行動計画による実情を把握するため、電力のCO2排出原単位が90年レベルにとどまった場合にどうなるかを試算してみた。試算には各業種の燃料と電力の消費比率が出ている通産省の「石油等消費構造統計表」を用いた。
その結果、この補正を入れると98年の排出量は90年比1.5%の微増となる。また、原単位でみても、98年のエネルギー原単位、あるいは上記補正を入れたCO2排出原単位は全体の半分程度が90年比で悪化している。さらに、省エネ法の努力目標(年率1%の省エネ)も24業種中20業種が達成していないことになる(表参照)。不況と原発増設でCO2排出総量は削減されたと言われるものの、原単位などをみると、必ずしも省エネは進んでいない可能性もあるようだ。
各業種の原単位の推移
(注) 1990年を1とした時の指数。CO2はCO2排出原単位を、エネはエネルギー原単位。 補正は、96年の各業種の燃料と電力の消費比率(通産省「石油等消費構造統計表」)により、電力のCO2排出原単位が90年レベルにとどまった場合を試算。CO2原単位を用いている業種のみ補正を行った。
省エネ法に基づく「工場におけるエネルギーの使用の合理化に関する事業者の判断の基準」では、「エネルギー消費原単位を工場ごと又は事業者ごとに年平均1%以上低減させることを目標としてエネルギーの使用の合理化に努力するもの」とされている。90年以降年率1%改善を行うと8年間で約8%(7.7%)改善になるため、原単位改善がこの水準に至っているかを検討した。プラスは省エネ法の努力目標に至らないことを、マイナスは原単位の改善が省エネ法の努力目標以上に進んだことを示す。CO2原単位を指標に選んだ業種では、原発によるCO2原単位改善を除去した補正値が概ねエネルギー原単位となるため(自然エネルギーや燃料転換を主要な手段にしている業種がないため)、これについて検討した。