電力会社参加見送り
盛り上がり欠く
―自然エネルギー円卓会議発足―
自然エネルギー促進法案の提出をあと押ししようと、自治体、事業者、NGO関係者、国会議員らからなる自然エネルギー円卓会議(主催「自然エネルギー促進法」推進ネットワーク)が設置された。その1回目の会合が1月27日、東京都内で開かれ各党議員はじめ参加者が意見を述べ合ったが、電力会社が参加を見送ったため、「調和点を見極めるための幅広い当事者による対話の場」という円卓会議のねらいは肩すかしを食った格好となった。
この日の会合では、昨年11月に発足した自然エネルギー促進議員連盟の愛知和男会長、加藤修一事務局長ら国会議員が自然エネルギー促進法案の提出に向けて意見表明を行ったあと、風力発電事業者であるトーメンの堀俊夫電力事業本部長が「電力会社に買い取りを課さないと買ってもらえない。一方で、消費者が多少の負担をすることも必要で、買い取り義務化と消費者負担をリンクさせることも考えねばならない。さらに送電線を新たに作るには、関係者の間で相当の合意がないと難しい」と述べた。
また、自治体として風力発電事業に取り組んでいる山形県立川町の舘林茂樹町長は「世論のあと押しでここまで来たが、電力会社にはもう少し高く買ってもらいたい。ただ、我々は電力会社の儲けをかすめ取る気はない」と語り、北海道苫前町の久保田徳満町長も「事業者、電力会社は積極的な姿勢を今後も持続して欲しい。とはいえ、送電線を整備していかないと、これ以上は進まない」と、それぞれ自治体が抱える問題点を披靂した。
これに対し、環境庁地球温暖化対策推進室の谷津龍太郎室長は「環境庁としてはCOP6に向けて、自然エネルギーの普及に積極的に取り組みたい。99年度補正予算でバイオマスや燃料電池に予算をつけた」と述べた。一方、資源エネルギー庁新エネルギー対策課の舟木健太郎課長補佐は「今般、総合エネルギー調査会に新エネルギー部会を設けて検討を開始したが、買い取りの一律義務化は困難で、価格補てんが必要になると思う。新エネルギー部会でわが国にふさわしい方式を慎重に検討する」と述べるにとどまった。
このほか、木質バイオマス研究会の熊崎實代表が「木質バイオマスの最大限の活用を」と訴えたのに対し、林野庁国有林野部経営企画課の福田隆政企画官は「バイオマスの活用に関して、実情は苦労している。製材工場での利用は可能だが、森林などすべてをひっくるめて考えると難しい。コストがかかるので、政策的、社会的合意が必要になる」と、ややおよび腰。
この日は1回目で論点整理が主眼とはいえ、自然エネルギーを考える場合、地域おこし、ならびに雇用創出などを含めた総合的な観点が必要で、その点、問題意識がやや希薄という印象を与えた。また、法案化する場合、自然エネルギーの範疇をどこまで広げるのかが問題になるが、この点でも突っ込んだ議論はなかった。電力会社が出席を見送ったことも議論の盛り上がりを欠いた大きな要因といえよう。
法案化作業は議員連盟が約260人と大世帯ゆえ集約に手間どっている模様で、国会解散含みの情勢も手伝って、当初予定の今通常国会提出を危惧するむきもある。次回の円卓会議は3月の予定だが、電力会社の参加が得られるかどうかで、様相が変わってきそうだ。
一方、2月7日に開かれた原子力政策円卓会議の席上、JOC事故があった茨城県東海村の村上達也村長は「国会における自然エネルギー促進議員連盟の活動に期待しており、東海村も自然エネルギー促進に関して新たな役割を果たしたい」と述べ、注目された。
CO2排出権取引 “技術論”に終始
―第1回IGES地球温暖化対策フォーラム―
(財)地球環境戦略研究機関(IGES)が1月28日、東京都内で地球温暖化対策オープンフォーラムを開いた。第1回のこの日はCO2排出権取引に関する報告と討論が行われ、松尾直樹・IGES上席研究員が米、英、デンマーク、ノルウェー、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなどOECD各国における試みと各国内での論議を紹介。
引き続き、大塚直・学習院大教授、加藤三郎・環境文明21代表、濱岡泰介・興銀フィナンシャルテクノロジー・シニアフィナンシャルエンジニアの3人がそれぞれの立場から、わが国における排出権取引に関する考え方を述べた。
この公開フォーラムはCO2等6%削減の国際公約達成に向けて、「国民の側から議論し、政府に温暖化対策の材料を提供できれば…」(森嶌昭夫・IGES理事長)という趣旨で開かれ、初回は研究者、企業、NGO関係者ら約150人が参加したが、いきなりテーマが排出権取引ということで、参加者の間にはとまどいも見られた。
討論で加藤氏も「排出権取引がひとり歩きし、フラストレーションがたまる。むしろ、研究者は6%削減に向けた具体的シナリオを早く描くべきだ」と指摘。排出権取引に関しては中国など途上国を中心に批判も出ているが、こうした動向には一切触れられず、“技術論”に終始した。フォーラムは6月まであと5回の開催が予定されている。
公募自転車利用モデル14都市選定
建設省 計19都市に
建設省が公募した自転車利用環境整備モデル都市、14都市が決定した。選定された都市は平成15年度をメドに自転車走行空間ネットワークの主要部分を実現するため、提出した提案書に基づき、自転車利用環境整備基本計画を今年6月までに策定することになっている。事業の実施には同省が重点的に支援する。
同省は平成10年12月、東京・練馬区、広島市、静岡市、徳島市、佐賀市の5都市をモデル都市として指定したが、これを拡充するため昨年初めて、公募を行った。この結果、35都市から応募があり、このうち33都市(32件)から提案書が提出された。これらについて、審査委員会(委員長・高田邦道日大教授)で検討した結果、14都市が選定された。これにより、モデル都市は19都市になる。
公募により選定された都市は次の通り(共同事業を含む)。
北広島市(北海道)、二ツ井町(秋田県)、福島市(福島県)、群馬県・前橋市(群馬県)群馬県・新町(群馬県)、浦安市(千葉県)、千代田区・中央区・東京都(東京都)、板橋区・豊島区(東京都)、足立区(東京都)、開成町(神奈川県)、新津市(新潟県)、名古屋市(愛知県)、高松市・香川県(香川県)、平良市(沖縄県)
自転車はクルマより危険?
▼1月31日の尼崎公害訴訟判決について、植田和弘京大教授は「道路の部分的使用差し止めとも言える判決だ。国と(阪神高速道路)公団は既設道路については車線規制や台数規制などの対策、新設道路は計画の見直しなど道路行政の転換を迫る内容」とコメントしている(同日付日経夕刊)。98年の西淀川公害訴訟の和解条項にも国道43号線の一部車線削減が明記された。
▼こうした流れに沿って、建設省も道路行政の見直しを進めており、その一環として自転車専用道路の整備を各地で計画している。ところが、この計画に真っ向から異議を唱える「自動車評論家」という肩書きの人がいる。曰く、「しかし、既存の道路を削って自転車道路のスペースはいったいどんな手段で確保するのだろうか。私の関心事はそこにある。もし『車道を減らしたり』『歩道を狭めたり』といった安易な手段でスペース確保を考えているのなら私は反対である」(1月14日付毎日夕刊)。
▼さらに、"自転車公害"をあれこれあげつらったうえ、「クルマの側はメーカーもユーザーにもさまざまな規制やルールが設けられていて、人間生活に便利なこの道具をさらに発展させようと努力が続けられている。自転車にもしっかりとしたルールを作らないとよい乗り物が危険な乗り物になり、公害の発生源になってしまう。いやもうなっている」(1月21日付同)とおっしゃる。
▼この岡崎宏司さんという「自動車評論家」の目には、「クルマは安全な乗り物で、公害も発生させない。ドライバーもきちんとルールを守っている。これに比べ自転車はどうしようもない」と映っているようだ。こうしたクルマ擁護論にことさら反論してもむなしいが、歩道上の自転車と歩行者間の事故に関して言えば、車道に設けられた自転車レーンを占拠している違法駐停車が存在していなければ、かなり防げるはずである。
▼先進国と呼ばれる国の中で、歩道上を自転車が走ってよいとされているのは、日本だけである。自転車専用道路が整備されているオランダでは、通勤に自転車を使えば所得控除が受けられるという税制改革案が近く成立する見通しとか(2月5日付毎日)。日本の自転車利用者もマナーを身につけつつ、この彼我の差を訴えていくべき時期にきているのではないか。 (I)
ロードプライシング、2003年度にも導入
東京都 条例化で対応
東京都は2月21日、都心部の交通渋滞地域に乗り入れる自動車に料金を課すロードプライシング(特定地域自動車入域課金制度)を、2003年度にも導入する方針を決めた。これに基づき、条例を制定することにしているが、対象地域や金額に関しては今後詰めるという。
課金を徴収するのは平日の午前7時から午後7時とし、対象は全車種。コードン線(道路混雑が生じている特定地域を囲むライン)を検討するに当たり、環状2〜8号線、JR山手線などの鉄道線路、河川などを利用したいくつかのケースを設定することにしている。
このロードプライシングの導入はTDM(交通需要マネジメント)東京行動プランの一環として打ち出されたもので、渋滞緩和という意味合いよりも、むしろ自動車の総量を規制することで、排ガス公害の抑制、CO2の削減、事故の減少をねらっている措置。神奈川県鎌倉市でも同様の制度の導入をめざしており、今後、他の自治体に広がる可能性もある。
ロードプライシングはすでにシンガポール、ノルウェーなどで導入されており、それなりの実効をあげているといわれる。ただ、日本では一般道路は原則として無料公開という道路法の原則があるため、それとの整合性が求められるが、都では「道路通行に課すのではなく、特定地域への乗り入れに課金するので問題はない」と言っている。
TDM東京行動プランではこのほか、駐車マネジメントの推進、自動車使用に関する東京ルールの展開、自転車活用対策(自転車道路網の整備、区市町村駐輪場の整備・促進)、パーク&ライドの検討などを盛り込んでいる。
丸の内市民環境フォーラム
東京海上火災保険が三菱商事、日本航空と共催で行っている丸の内市民環境フォーラムが3月23日開かれる。森田恒幸氏(環境庁国立環境研究所環境経済研究室長)が講師で、テーマは「地球温暖化研究の最前線〜巨大な難問への苦悩と挑戦」。このフォーラムは93年6月に最初の講座を開催して以来、ほぼ年間3回のペースで開き、今回が27回目。問い合わせは、東京海上社会環境室(TEL 03-3285-0274)まで。3月10日締切。
IGES アジア環境シンポ
地球環境戦略研究機関(IGES)と上智大地球環境研究所が3月9日、バングラディシュ、中国、インド、インドネシア、韓国、マレーシア、フィリピン、タイから環境問題の専門家を招き、「アジアの環境ガバナンス・国際シンポジウム」を開く。アジア太平洋地域は温暖化問題の動向に大きな影響を与える地域で、各国の環境対策の現状を知ることができそうだ。問い合わせはIGES(TEL: 0468(55)3850、FAX: 0468(55)3809、E-mail morita@iges.or.jp)まで。申込締切は3月3日。
文献紹介―実践するということ
<60代>
藤田 恵 『ゆずの里 村長奮戦記』
97年6月、細川内ダム建設計画の一時休止(事実上の白紙撤回)を建設省から勝ちとった徳島県木頭村長の文字通り奮戦記である。
ダム建設計画が表面化したのが71年で、その3年後あたりから村内で反対運動が開始されているから、20年以上運動が継続していることになる。著者が村長に就任したのは93年4月で、以後、反対運動の先頭に立つ。
反対運動は苦難の連続だったが、96年に「ダム建設の時代は終わった」と宣言した米国を私費で視察して信念を強めることになる。同時に、ダムに頼らない村おこしに取り組み、特産のゆずやミネラルウォーターなどの販売に精力的に取り組んでいる。
村民の大半が反対しているにもかかわらず、建設省や徳島県は建設を強行しようとしてきたが、これに対して著者は「前近代的な権力の押しつけにより、地方自治を根底から覆す暴挙であり、これを絶対に許すことはできません」と突っぱねる。それはそのまま吉野川第10堰問題につながっていく。
こうした経緯をふるさとの自然のすばらしさを織り込みながら、平易で飾りけのない文章で綴っている。誤植が目立つのがやや難点。
(悠飛社 本体1200円)
<50代>
安井潤一郎 『スーパーおやじの痛快まちづくり』
「空き缶集めてハワイへ行こう」をキャッチフレーズに、廃棄物のリサイクルを核にした街の活性化に取り組んでいる東京・早稲田商店会会長の元気のよいメッセージがつまっている。それは96年、商店街の夏枯れ対策から始まった。同時に、東京都が事業系廃棄物の有料化を実施する直前である。
この2つの問題を一気にクリアーしようと、その年8月に早大構内で初の「エコサマーフェスティバル」というイベントが開かれた。その際、ゲームつき空き缶回収機とペットボトル回収機に、商店会のサービスチケットを「当たり」として付加する構想が生まれる。その一等の景品が高級ホテルの宿泊券であり、その後、ハワイ旅行になるが、これらは何も商店会の負担によるものではないところがミソ。
これをきっかけに毎年フェスティバルは規模を拡大するとともに、そこから派生した独自の事業や人のつながりがふくらんでいく。のちに『五体不満足』の著者になる乙武洋匡君との出会い、全国リサイクル商店街サミットの開催など、当初の夏枯れ対策からは考えられない様相を呈してくる。
著者は団塊の世代で、いわゆる2代目。万事、アバウトで、それまで「環境」も「リサイクル」も考えたことがないという。半面、率直で、よいと思ったことにはすぐ飛びつく。先入観の変更も早い。そして、決して損をしない、儲けを念頭に置く商人だ。
その著者が言う。「だいたい、私は市民運動家といわれる人たちと、どうも波長が合わない。ある市民運動家から『地球にやさしく』っていわれたときには、すぐにそっぽを向いてしまった。....『俺は宇宙飛行士じゃないから地球なんて見たこともないんだ。見たこともないヤツにやさしくするほど心が広かないんだ』 実際の話、『地球にやさしく』なんて、まち場の人間にとってはなんの実感もないフレーズだ。自分の店の前をきれいにしろ、といわれたほうが百倍もわかりやすい」。もって銘すべし。(講談社 本体1600円)
<30代>
疋田 智 『自転車通勤で行こう』
テレビ局のディレクターが東京・日暮里の自宅から赤坂の勤務先まで約10kmを自転車で通勤している。その体験を中心に、自転車にまつわるさまざまな問題(これが山ほどある)や、自転車を媒介とした人間関係、自転車そのものに関するややマニアックな解説などを織り込み、楽しく読ませる。
著者は街を走りながら考える。「要するに自転車というものは、東京の交通社会、特に都心では『走ってもいいが、いなくても構わない。走らないでくれたらもっとよい』という存在なのである」。こうした軽んじられた存在(道交法では自転車は「軽車両」と位置付けられている)に固執していると、数え切れない苦労を経験させられることになる。
にもかかわらず、自転車の持つ魅力には底知れないものがある。「三ノ輪あたりの、吾妻橋あたりの小さな家々の間を縫って存在する道沿いには、そこに住む、恐らくはおじいさんおばあさんたちの丹誠の鉢植えが並び、窓に簾がかかり、郵便ポストが突然現れる。私はゆるりとしたスピードで、そこを行く。ゆるりとした風が顔を撫で、煮物の匂いが漂ってくる。自転車のよいところは、そういった細かな町の匂い、たたずまいに気づくことができることだ」。
アップルコンピュータの創業者がパソコンの理想像は「自転車のようなコンピュータ」と言ったのになぞらえて、著者は人間の間尺に合った「自転車的社会」への移行を訴える。そして、12年間使ったクルマを贅肉とみなして、手放した。(WAVE出版,本体1500円)