「買い取り義務化」で対立
電力会社「反対」で押しまくる
―第2回自然エネルギー円卓会議―
3月17日に第2回自然エネルギー円卓会議(「自然エネルギー促進法」推進ネットワーク主催)が開かれた。この日は電力会社関係者も出席、自然エネルギー電力の買い取り義務化を中心に議論が行われたものの、電力会社側が義務化に強い抵抗を示したため、議論は平行線のまま終わった。
この日は自然エネルギー促進議員連盟の加藤修一事務局長が「2010年段階で総エネルギー供給量の10%を自然エネルギーにすることが最小限の目標値」と述べ、NGO側も「我々は買い取り義務化ではなく、合意に基づくルール化と言っている。ドイツに比べ風力による発電量はきわめて少なく、遅れているので、法制化を急ぐ必要がある」と強調した。
これに対し、東京電力の勝俣恒久副社長は「日本では原子力が過度と言われているが、新エネルギー、省エネルギーも過度と言える。日本がこの面で外国に比べて特に遅れているということはないから、あわてて対応する必要はない。各種の補助制度で自然エネルギーが離陸しかけている時に、いきなり買い取り義務化というのは、いかにも花火がパッと上がって消えるような話」と、全面的に反論。
また、通産省・資源エネルギー庁関係者も「3月21日から電力の部分的自由化がスタートするが、これと買い取り義務化は一体化せず、むしろ、電力会社の自主性を縛ることになる。外国の事例をそのまま日本に持ち込むと、電力需要者に迷惑をかけることになる」と、同調した。
議論の過程で東電の勝俣副社長は「電力会社は10年以上にわたって新エネルギーの導入に寄与してきた。こうした努力によって、現在の段階まで普及するようになり、これら自然エネルギーを高い値段で買ってもいる」と述べ、エネ庁関係者も「我々も自然エネルギーの普及には努めているが、電源構成の選択はあくまで企業の判断」という見解を示した。
こうした意見の対立の中で、山地憲治・東大教授は「義務化でなくルール化と言うなら賛成する。自然エネルギーの定義を明確にしたうえ、値段設定にあたってはその価値を定めるなど、共通認識を築く必要がある」とコメントした。
この日はこのほか、北海道電力の瀬山幸二常務が平成13年度まで風力発電の受け入れ検証枠を15万kWに上限を定めた理由を説明。また、デンマーク国立リソ研究所のポール・ゾーレンセン氏が同国の電力系統における風力発電に関して解説、さらに、風力発電事業者としてトーメンの中村成人・電力事業本部第1部長が「電圧変動があることは認識しており、電力会社に迷惑をかけないよう対策をとっている。また、周波数の変動に関しては電力系統全体で電力会社に考えてもらうことで、この面では我々は受身」などと述べた。
この日の議論では全体として、買い取り義務化を求める議連、NGO側に対し、これを拒絶する電力会社側が圧倒する印象を与えた。牛山泉・足利工大教授は「今後は"この日本をどうするのか"という観点から議論するため、"エネルギーおたく"ばかりでなく、地域振興などをからめて問題提起できる人にも幅広く参加を呼びかけていきたい」と締めくくった。次回は4月20日の予定。
一方、議員連盟による自然エネルギー発電促進法案(仮称)の法制化作業は、各議員から5つの試案が示され検討が進められている。論点は対象エネルギーに廃棄物発電や地熱発電を含めるのか、あるいは対象は法律に書き込まず政令で処理するのか、といった点や、長期エネルギー需給見通しとの関係をどうするか、といった点で、すり合わせにはなお時間を要する模様。
CO26%削減 環境税導入で
横国大・諸富氏提唱 産業界反対
―IGES地球温暖化対策フォーラム―
2月29日に開かれた(財)地球環境戦略研究機関(IGES)の第2回地球温暖化対策オープンフォーラムで、横浜国大の諸富徹助教授は「京都議定書遵守のためにも、環境税を導入すべきである」と提案した。同助教授は同時に、「仮に他の手段と政策ミックスになる場合でも、あくまで環境税を中心とするポリシーミックスを構築すべきである」と強調した。
この提案の前提として、同助教授は(1)長期的な戦略(2008〜2012年以降を見通して)のもとに国内政策手段の議論を行う必要があり、今からCO2等の国内削減を進め、とりうる選択肢を増やしておく(2)途上国を国際的な削減メカニズムに組み込んでいく際、日本が自ら国内削減措置を行っていなければ、説得力はない(3)最大の排出国である米国の削減努力なしには国際的な削減合意は無意味で、日本は欧州同様、環境税を導入することによって排出削減を進めるとともに、EUと共同で米国に対して自国内削減を進めるよう迫る必要がある―と指摘。
同助教授はさらに、国内手段として政府が考えている原発の20基増設ないし森林・土壌吸収は論外とし、企業の自主的取り組み、直接規制、国内環境税、国内排出許可証制度のいずれか、あるいはその組み合わせが考えられるものの、「やはり環境税を中心としたポリシーミックスを組み立てることが、国内削減目標の達成を実現し、環境保全型社会構造への転換を可能とする、最も効果的な選択肢」と結論づけた。
一方、もう一人の提案者である東京電力の細谷泰雄理事は産業界の京都メカニズムに対する考え方を表明したが、同理事は「各種国内制度は経団連自主行動計画のあくまで補完的対策としてとらえている」と述べ、CO2の発生源は多様かつ多数あるため、排出量の公平な配分は困難という点から、排出権の割り当てには反対、さらに環境税の導入にも反対、という見解を示した。また、排出量の割り当ては「燃料使用制限など経済統制につながる」とも述べ、産業界としては自主行動計画(植林を含めて)のみで対応するという姿勢をみせた。
EU各国では90年代初頭から環境税(炭素・エネルギー税)の導入が始まり、遅れていた英国、フランスも2001年4月からの実施を決めており、近い将来、欧州共通環境税へ向かう可能性も指摘されている。日本でも政府税調が6月にまとめる税制中期答申で環境税の導入を提唱するという観測も流れていて、今後、論議が本格化する見通し。
自治体 自然エネルギーに強い関心
―公明党調査―
公明党が自然エネルギーに関して実施した47都道府県・12政令指定都市に対するアンケート調査によると、回答全自治体が「自然エネルギーに関心がある」と答えた。この調査は1月から2月にかけて行われたもので、自治体の自然エネルギーに対する関心の高さをうかがわせた。 59の自治体のうち、すでに58自治体が自然エネルギーを導入しており、36自治体(60.0%)がさらに導入の計画ないし構想を持っていると答えている。また、自然エネルギーに関する独自の補助制度を設けている自治体が18(30.5%)あり、「制度化を予定」と「現在検討中」が合わせて5自治体。
さらに、地域おこし、雇用拡大、税収増、環境保全の面で、自然エネルギー事業の促進が「望ましい」と答えた自治体は51(86.4%)にのぼり、今後拡大すべきエネルギー源として、原子力を挙げたのは4自治体(6.8%)にとどまった。
このほか、電力会社に電力の購入を義務づける「自然エネルギー促進法」に関しては、「法制化した方がよい」「法制化の方向で検討すべき」「法制化する、しないも含めて検討した方がよい」を合わせて56自治体(94.9%)に達した。
家庭・業務部門の省エネ行動支援へ
エネ庁 エネルギーDSM検討委発足
通産省・資源エネルギー庁が3月17日、エネルギー需要最適マネジメント(次世代DSM)検討委員会を発足させた。同委員会はエネルギー消費が増え続けている民生部門(業務・家庭)における省エネルギーを促進するため、特にコスト意識の徹底に向けた効果的なシステムの導入、およびその支援策を検討することにしている。
同委員会は家庭、企業(事務所、店舗など)におけるエネルギー消費量と料金が即刻把握できるシステム導入のための具体的方策を検討するとともに、エネルギー使用機器制御システム、ESCO(エネルギー・サービス・カンパニー)、エネルギーの利用効率化・料金メニューの多様化、環境会計など、省エネ行動を支援するシステム・サービスに関して議論を深める考え。
この日の会合で座長に柏木孝夫東京農工大教授を選出、委員には舟橋功一・川越市長、中上英俊・住環境計画研究所長らが名をつらねている。今後、6月までに合わせて6回の会合を開いて、結論をまとめる予定。
雪サミット 7月に山形・舟形町で
風サミットは岩手・葛巻町で8月末から
第3回全国明るい雪自治体会議(雪サミット)が7月6日から3日間、山形県舟形町で開かれる。雪サミットは豪雪地域にある自治体が雪エネルギーをはじめ、雪の活用に関して幅広く論議する場で、一昨年は北海道沼田町、昨年は新潟県安塚町で開催された。
日本の国土の52%は積雪地帯に属し(市町村数にすると962)、年間500億トンとも900億トンともいわれる降雪がある。この雪を0.2%利用するだけで、100万kWの発電所15ヵ所分に相当するエネルギーが確保できるといわれている。こうした埋もれた自然エネルギーを積極的に活用していくことで、地球温暖化対策の一助にするとともに、地域の再生につなげていこうというのが、自治体会議設置の趣旨。
雪サミットでは豪雪地帯の自治体首長が集まり、国への要望を集約するとともに、各地での活用事例が報告される。また、研究者らをまじえたパネルディスカッションなども予定されている。
舟形町では98年からエコ産業プロジェクト研究会を発足させ、雪の活用に関して研究を続けてきたが、その中から全国初の民間利雪住宅「エコ環境住宅」を完成させたほか、農業体験実習室への雪冷房システムの導入、「アグリテック」という名の雪冷房貯蔵施設の建設など、実績をあげてきた。今回、これらの成果も披露される。
一方、風力発電推進市町村全国協議会による「第7回全国風サミット」は8月30日から3日間、岩手県葛巻町で開かれる予定。
いずれのサミットの開催要領など詳細は次号以降に掲載。
関西生協連 環境家計簿活動報告書
関西生活共同組合連合会が家庭の環境管理・監査(環境家計簿)の推進活動結果報告書をまとめた。会員が取り組む環境家計簿活動の1998年度の成果を集大成したもので、この方式の定着度を見る部分と省エネ等の効果をみるパフォーマンス評価の部分からなっている。
定着度を見るための評価項目では、全ての項目について、前年度を上回った。ただ、「削減マニュアルの作成」と「達成期間の明確化」の2項目はやや評価が低かった。パフォーマンスに関しては、前年度比で、電気が0.7%、ガスが7.8%、水道が4.6%の削減をグループとして達成したという。
ただこれは、環境家計簿の取り組みを開始した97年度との比較で、取り組み前との比較ならより大幅な削減量になるとみられる。項目間で削減率に差がでた原因の解明については今後の課題と報告書は言っている。
詳細は関西生協連(TEL)06-6357-6444へ。
欧州の自転車事情
―オランダ・ドイツを訪問して―
ヨーロッパの各都市では公共性の高い車以外は、パーク・アンド・ライドを導入したり、都心の駐車料金を上げ、故意に車を走行しにくくする工夫をして、自動車の利用を抑えて自転車利用の促進を図っている。自転車道のインフラ整備も積極的に行われていて、都市の中では新たに道路を拡幅するのは困難なため、自動車道路を狭くし、自転車専用道路を整備している。今年2月8日から訪問したオランダのアムステルダム市、ハウテン市とドイツのミュンスター市における自転車事情を簡単に紹介する。
アムステルダムはオランダの首都であり、歴史的にも古くから栄えた街。平坦な国土の条件もあり、交通マヒの解消策として、積極的に自転車が活用されている。既存の古い建物があるため、道路を拡幅したくても出来ない。そこで、マイカーから自転車利用への転換を推進するため、自動車道を削り、自転車道の整備を進めていた。今や250kmの自転車道が整備され、交通機関の自転車への依存度は40%以上になっているという。
ハウテン市はオランダで最初に自転車の街づくりを導入した。居住区内の移動は自転車が中心で、生活上の移動にとって自転車が最も便利なように街づくりがされている。自動車道は市を囲むように環状道路があり、外部からの進入は環状道路から各市民の家々に通じているものの、街の中心部へ行くには自動車ではきわめて不便という設計になっている。高齢者、障害者、子供たちにとって安全でやさしい町にできていて、快適に生活できる町だと感銘した。ただ、住む人にとっては快適でも、来街者にとっては問題があるかもしれない。
一方、ドイツのミュンスター市は人口25万人の中世の香り漂う町で、大学都市としても有名。市が行っている自転車の優先政策は(1)自転車路線ネットワーク(2)自転車のための交通規制の緩和(3)特別標識、信号の整備、市内の駐輪場の整備―が柱だ。欧州の中でも、特に自転車が使いやすい街づくりにポイントが置かれている。
しかし、これらの各都市の政策を、東京などの大都市にそのまま導入した場合、果たして成功するかどうか、疑問が残る。それぞれの都市の土地形状、人口密度、都市の規模、都市の性格など条件が皆異なっているからだ。ただ、見習うべきことは徹底して環境問題を考え、自転車の有効活用と利用促進を図ろうという考え方である。この精神はわれわれも大切にしていかなければならないと思った。
肥大化しすぎた東京などにマイカーの乗り入れを規制すると、かえって社会生活に不便さをもたらし、コストがかかり過ぎるのではないか。また、マイカーと自転車の性格は異なり、自転車の快適な行動範囲は2kmといわれるから、東京都全体のボリュームと条件を考えると、それに見合った別の方法があるのではないかと思う。
人間は皆、快適な生活を求めており、自動車はそれなりの役割を果たしている。重要なことは公共交通の利便性を最大限に高め、マイカーの役割を縮小することだ。幸い東京の公共交通は他都市に比べても遜色がなく充実しており、目的地に向かう交通手段は多々あるが、その際の補助交通としては自転車が最適と考えられる。自転車を活用することにより、最寄りの駅だけでなく、多少遠い駅へのアクセスも容易になり、交通手段の選択の幅が広がる。この補助交通(自転車)に対する意識改革を進めるとともに、自転車の特徴を活かした施策を展開することが重要だ。次号にこの提案に関して詳述したい。
(東京・台東区議・田中伸宏)
つくば市 100円で自転車貸し出し
茨城県つくば市は5月から、観光客向けの自転車貸し出し制度「ノリノリサイクル」をスタートさせる。この制度は貸し出しノートに記入して100円の預り金で利用でき、24時間無人管理で実施するという。100円硬貨を入れるとロックがはずれ、自転車を戻してロックすると硬貨が戻る仕組み。
同市では昨年5月から、「コミュニティサイクル」の名称で同様の制度を始めたが、今年から預り金を500円から100円に下げるとともに、24時間無人管理に切り替える。
貸し出し用の自転車30台は市内の企業が買って市に寄付する形をとっており、その代わり自転車に企業広告をつけるという方式。貸し出し場所も従来の1ヵ所から6ヵ所に増やし、利用しやすくする。自転車に企業広告が刷り込まれているためか、この1年間、持ち去られることはなかったという。
"慎太郎的なるもの"
▼若者向けの雑誌も「いけ、いけ! オレらの石原慎ちゃん!!」と大騒ぎ。閣僚を含めた政治家、警察をはじめとする官僚らに対する国民の強い反発が"慎太郎人気"を一段とあおり立てているのか。それとも、平準化された社会の中でのヒーロー待望なのか、とにもかくにも、石原都知事の人気は今や絶大である。
▼古証文を持ち出すようで、いささかはばかれるが、24年前の昭和51年、44歳の時に石原氏は福田内閣の環境庁長官に就任した。この時もその言動が大いに注目されたのである。当時のマスコミは"太陽族のエース"という呼称で、何かにつけ氏の動向を細かく追っていた。
▼公害病患者団体の面会要求を「公務がある」と断わり、実はその間テニスをしていたり、「国土庁は存在理由がなくなった。環境庁と合体したらよい」と発言して物議(当時は)をかもしたものである。いずれの件も官房長官から厳重注意を受けたが、氏はそんなことではへこたれない。
▼自民党議員の質問に対し、「公共事業の環境整備と環境保全との間で二律背反が起こっている」と述べ、公共事業の具体例をあげて、「整然たる破壊だ」と一刀両断したこともある。同時に、当時わが国ではまだなじみが薄かった「アメニティー」を環境行政目標のひとつに掲げたのも氏だった。
▼外形標準課税の導入、ディーゼル車への規制、ロードプライシングの導入と、矢継早に打ち出した方針は今、世間で評判になっている。外交にまで言及して首相が2人いるような印象も与えている。しかし、24年前を想起すると、"慎太郎的なるもの"は複雑怪奇だ。個々の政策を個別に評価することは、それはそれでよい。問題は「NO」と言わせない体質の危うさを世間がどう受け止めるかだ。 (I)