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省エネ・新エネ普及推進協議会 関連情報

省エネ・新エネ普及ネット会報 第11号 2000年4月


COP6に向け一定の前進 NGO役割果せず──大津でG8環境大臣会合──

 気候変動枠組み条約の京都議定書を2002年までに発効させるための国際的な取り組みが加速してきた。先進主要国が「2002年発効」にこだわるのは、京都議定書に明記された付属書I国(ほぼ先進国)のCO2等削減目標年次が2008年からとなっており、仮に2002年に発効しても、各国が対策を実施する期間はせいぜい5〜6年しかなく、その間に次の削減目標も国際交渉で決める必要があり、難航する折衝を考えれば、ぎりぎりのタイムリミットという認識があるからだ。
 また、地球温暖化抑制政策を世界的に進めるためには、先進国だけでなく、いずれ中国やインドなど途上国の大国がなんらかのCO2等削減対象に加わる必要があり、そのためにはまず第一段階の「先進国が率先して削減する」という垂範を示すことが政治的に極めて重要だ。
 そうしたなかで滋賀県大津市において、4月7〜9日、G8の環境大臣会合が開催され、気候変動問題などにより積極的に取り組む政治的な決意を示した「コミュニケ」が採択された。コミュニケづくりでは、気候変動条約の京都議定書発効時期の目標明記を巡って、予想通り、米・カナダと日本・欧州諸国が対立したが、「2002年までに」という文言が辛うじて残った。
 G8の出席者は米国を除いていずれも閣僚で、なかでも英国は首相に次ぐNo.2の大物のほか、フランス代表は近くEUの環境スポークスマンに就任が決まっている実力者で、11月のCOP6に向け、いずれも大きな影響力を発揮するとみられるキーマンが気候変動、21世紀における持続可能な開発、環境と健康――などに関する今後の取り組み方針を30項目にわたる共同コミュニケとして合意した。
 このうち気候変動に関する合意事項の要点は次の通り。(1)COP6の成果によりできるだけ早く京都議定書の批准・発効を推進すること。大半の国々にとり、これは遅くとも2002年までにを意味する(2)COP6成功のため、閣僚レベル会合を最大限活用すること(3)G8各国はCO2削減の国内的措置を今後何年かのうちに明らかな前進を示すこと。京都メカニズムが国内措置を補完するものとなることを確認。
 合意内容のなかで(1)については新聞等にもとりあげられたので、重複を避けるが、2002年の明記に反対した米国の態度にはCOP3を採択した当時に比べて「軟化しつつある」との見方と、「従前と変化していない」のニ説がある。先進国のCO2排出量の36%を占める米国が批准しなければ、事実上、京都議定書が発効しないということはほぼ間違いないが、いずれにしろ、米大統領選の行方いかんによるといわれている。
 (2)については、地味ながら、あらためてCOP6の成功に向け、政治主導型を確認したことに意味がある。もともと今回のG8会合は気候変動問題を前進させるための会議ではなく、7月の九州・沖縄サミットに向けた前さばきの役割が強かった。このため、環境大臣会合で合意されない事項はサミットでも取り上げられない可能性が強いため、2002年問題を含むコミュニケ内容が注目されたのである。今後、11月のCOP6に向けて、すでに宮崎で開催された「太平洋・島サミット」や、連休中にニューヨークで開くCSDの閣僚級非公式会合、そのうえでG8サミットを開くという政治日程を考え合わせると、大津会議は遅々として進展しない事務レベルの各国交渉に対して、尻をたたくという大きな効果があったと言える。
 (3)については、99年10月のCOP5以降、排出権取り引き、共同実施などの国内的措置が各国で検討されているが、今回改めて、これらをあくまで「補完的措置」と確認したことに重要な意味がある。
 今回の大津会合で残念だったことは、日本のNGOの弱体ぶりが目立ったことだ。G8開催中に各国高官と意見交換のための会食があったが、対等な迫力ある議論のやりとりが全く見られず、個別の運動の成果を“誇示”する程度で終わってしまった。いかにも、日本的な官製の゛儀式゛に見えたが、これでNGOはその役割と責任を果したと言えるのか、疑問が残った。



「買い取り義務化」から「努力義務」へ 議連、自然エネ発電促進法案大綱決定
──「解散」で廃案の可能性も──

 自然エネルギー促進議員連盟は4月21日に開いた総会で、自然エネルギー発電促進法案大綱(以下法案)を決定した。議連では各党内の手続きを経て、今国会への提出をめざす。ただ、衆院の解散日程によっては、提出しても廃案になる可能性もあり、成立までにはなお流動的な要素が残されている。
 決定した法案は議連が従来から主張していた「電力会社の買い取り義務」を引っ込め、電力会社に自然エネルギーを買い取るよう求める「努力義務」を課すことにとどめている。これは、「買い取り義務化」に対する電力会社および通産省の強い抵抗に配慮した措置と言える。
 法案では来年、通産省から衣替えする経済産業省が電力会社に年度ごとの自然エネルギー供給促進計画書を提出することを義務付け、経済産業大臣が国が定めた供給目標値に比べ同計画書を不十分と判断した場合、変更を命じる勧告権を付与している。
 また、電力会社に対しては自然エネルギーの買い取りを促進させるため、発電コストと買い取り価格の差額の一部を補助する一方、自然エネルギー発電事業者の設備投資費用に対する補助金を現在の3分の1から、2分の1に引き上げることを盛り込んだ。これらの財源として法案は、電源開発促進税(2000年度予算で約3500億円)の充当を考えている。
 このほか、国、電力会社のみならず自治体にも「地域の特性に応じて自然エネルギー発電促進のための施策を推進する責務」を課している。さらに、経済産業省に自然エネルギー発電審議会を設け、随時、供給目標の見直しなどを行う考え。施行は2001年度が目標。
 議連では昨年11月の発足以来、同法案の提出をめざして検討を続けてきたが、その過程で電力会社、通産省の反発により「買い取り義務化」をとりあえず撤回、合意が可能な「努力義務」にトーンダウンさせた。ただ、自民党内には電促税を自然エネルギー促進に使うことに関して、原子力発電促進とのからみで異論も根強くあり、党内調整が難航することも予想される。
 また、6月初めの解散説が強まっている中で、法案が提出されても成立せず、廃案になる可能性もあるが、4月20日に開かれた第3回自然エネルギー円卓会議の席上、議連の金田誠一衆院議員は「有権者に対する責任として、まず法案の内容を示す必要があり、廃案は覚悟のうえ」と述べた。
 一方、今回の法案は電力会社および自然エネルギー発電事業者双方に対する補助が柱となっているが、補助金(税金)の投入で、電気料金が結果的に高くなることも考えられる。この点に関しての国民的合意が得られるかどうかも、今後のテーマとして残される。


 

CO2燃料電池バスエンジン2002年に実用化──GLOBE総会でバラード社表明──


 4月7日から3日間、G8環境大臣会合に合わせて第15回地球環境国際議員連盟(GLOBE)世界総会が同じ大津市内で開かれた。総会には海外8カ国から13人、日本から16人の国会議員が参加、「新ミレニアムのエネルギーとしての燃料電池」「環境と貿易」「地球環境ガバナンス」をテーマに討議を行った。
 この中で、固体高分子型燃料電池の開発を手がけているカナダのバラード・パワー・システムズのジェームス・カーシュ副社長は「2002年には燃料電池のバスエンジンが実用化され、2003年から2004年にかけて乗用車の燃料電池エンジンの商業化が可能」と述べ、注目された。また、同社が燃料電池開発のためにすでに10億ドルを投入してきたことも明らかにした。
 燃料電池に関しては、トヨタ自動車、大阪ガス、三洋電機、日石三菱石油、松下電工の各社が開発状況を説明したが、実用化のメドがつくのは各社とも概ね2010年以降との見通しを示した。
 「環境と貿易」に関する議論の中で、WTO(世界貿易機構)のポール・ヘンリー・ラビエール事務局次長は「WTOは"環境"のルールそのものを判定する機関ではなく、自由貿易への支障につながるかどうかという点にのみ関心を抱いている」と述べるとともに、「国会議員は民主的な選挙で選ばれた存在だが、NGOは誰からも選ばれたわけではない」と強調、昨年の米シアトルでのトラブルを意識して、NGOに不快感を示した。
 これらの討議を受け、総会は「GLOBE参加国においては少なくとも2010年までに、総電力需要量の10%を目標に自然再生エネルギーによる発電の実現、および同時期までに総販売台数の10%を目標に燃料電池自動車の普及の実現を強く働きかける」などを内容とする行動計画を採択した。
 閉幕後の記者会見で英国のデイビット・チェイター下院議員は、英国政府が2010年までに20%(90年比)のCO2削減計画を打ち出したことに関連して、その達成手段は(1)2001年から導入するエネルギー利用税(環境税)(2)公共交通機関の拡大、自家用車抑制、自転車利用の促進(交通部門だけで25%削減)(3)住宅の断熱効果を高めるなどの省エネ政策――と述べ、注目された。
 今回の総会はG8環境大臣会合を強く意識して日程を合わせて開かれたが、「2002年の京都議定書発効」に関しては影響力を及ぼすことができなかったため、7月に九州・沖縄で開かれるサミットに対して、改めて同様の要望をぶつけることで合意した。


炭素税 原発未達ケースで賦課増──IGES地球温暖化フォーラム──

 (財)地球環境戦略研究機関(IGES)の第3回地球温暖化対策オープンフォーラムが3月30日に開かれた。この日は炭素税(環境税)導入によるモデル分析に関して、慶大商学部の黒田昌裕教授と国立環境研究所の森田恒幸・環境経済研究室長がそれぞれ報告。
 黒田教授によれば、長期エネルギー需給見通しの「対策ケース」を前提にした場合、2009年から2010年に炭素税導入によってCO2削減目標をめざすとなると、炭素トン当たり約3万円から約5万1千円となり、税収規模は9.5兆円から15兆円になるという。
 また、同教授の「原子力発電未達シミュレーション」によると、2010年までに原発の設備容量が5620万kW(稼働率83%)にとどまった場合、CO2排出量が500万トン(炭素換算)増加し、トン当たり1万5千円の追加的賦課が必要になるという。
 これに対し、AIM(アジア太平洋地域統合モデル)を開発した森田室長は、「いくつかのモデルによる京都会議メカニズムの限界費用(炭素税賦課水準)は炭素トン当たり3万円から5万円ないし6万円に収れんしつつあるが、これでは税率が高くなるため、”単純炭素税パッケージ”方式の実行性は困難」とし、国内排出量取り引きなどとの組み合わせが必要になる、と述べた。
 こうしたモデル分析結果を報告したあと、黒田教授は「経済成長、環境保全、エネルギー確保が成り立つ社会構造の構築に向けた社会像に関する国民的コンセンサスがもっとも肝要」と述べ、森田室長も「わが国の経済システムの体質改善を進め、温暖化問題に対応するためには、国家および地域レベルで環境対策と産業振興政策の統合を図ることを真剣に検討しなければならない」と強調した。次回は5月10日の予定。


乗り捨て、乗り継ぎ自由──「幸せの黄色い自転車」構想──

 私たちは98年10月から40日間、東京・台東区内なら、誰でも、いつでも、どこからでも利用できるという「幸せの黄色い自転車」(車体を黄色に塗った)の実験を行った。個人の所有でもなく、レンタルでもない、乗り捨て、乗り継ぎ自由という発想である。台東区の条例は自転車を「所有者がすぐに動かすことができない状態」を"放置"と定義している。そこで、自転車を区民全員のものにすれば、直ちに移動が可能だから、放置にはあたらない。すべて区民全体で所有する「幸せの黄色い自転車」にしてしまえばよい、というのが私たちの主張である。
 ただ、80台と台数が少なかったためか、説明書をはずしてしまう私物化が目立ち、「台東区内限定で使ってください」と明記したにもかかわらず、千葉県柏市、中野区、新宿区、足立区など、30ヵ所以上に引き取りに行かされた。こうしたモラルの欠如は残念だったが、この「幸せの黄色い自転車」は逆にモラルを向上させる道具として活用できるのではないかと考えた。ニューヨークの犯罪は小さな事件でも徹底的に取り締まったことで、治安が極めて良くなったと言われている。勝手な使い方に対し徹底した指導を行い、公共物の大切さを認識させることにより、人格品位の高揚も図れるのではないかと考える。
 そこで、改めて提案したい。現在ある全ての自転車を自分の自転車と同じように使ってよろしい、というルールに変えたらどうだろうか。都内どこへ行っても自転車を見かける。その自転車がすぐに使え、使い終わったら後の心配もしなくてもよい。バトンタッチでその自転車は使われる。この心と心のバトンタッチが「幸せの黄色い自転車構想」である。
 この構想によって相当の自動車の減少が見込める。東京23区どこでも2q以内にバス停、あるいは鉄道駅があるから、使いたい時に、いつでも、どこでも、自由に使える自転車を提供することにより、公共交通へのアクセスと交通手段の選択が広がり、便利になる。そのための法整備や、必要なら、その施策に合ったインフラの整備を進める必要もある。民間で自転車に添付する広告を募集し、その資金で運営してもよい。いずれにしても、行政と警察の理解と協力は不可欠だ。
 解決が困難な放置自転車対策に、都心の自治体では年間1人当たり17,000円以上の税金が使われている。また、現在の自転車に対する施策は自転車の性格と特質を無視し、ただ単に道路に自転車を置かせない放置の罪悪感を強調して、利便さを奪っているような気がする。これからは、自転車の使い方のモラルを徹底的に追求すべきだと考える。
 これからは、駅前の膨大な費用がかかる大型駐輪施設はいらない。ミニ駐輪場施設を出来るだけ多く作ることだ。それが自転車の特質と利便性を活かした公平な施策だと思う。現在の道路上にミニ駐輪施設を作れる場所は沢山ある。現に、今何10万台もの自転車が取り締まりも出来ずにおかれているのだから。みんなで乗れる飛行機、船、鉄道、バス、車(タクシー)はあっても、みんなで乗れる自転車はない。レンタサイクルはあるが、これは自転車の特性を無視し、利便を奪っているといわざるをえない。1q先へ行くのに、500m歩いてレンタサイクルを借りには行かない。自転車は本来、公共性の高い乗り物だと思う。単独の乗り物のため、公共的な乗り物に活用する方法に誰も気付かなかったのではないか。化石燃料に頼らず、世界中が地球環境を守ろうとする姿勢は、正に公共性そのものであり、健康的な自転車の積極的な活用こそ、今、求められているのではないか。
 最後に、「幸せの黄色い自転車構想」成功へのカギを列挙してみる。
 (1)公共の自転車に特別な権利を与える。駅前やスーパー、デパート、パチンコ店など最も便利な場所に公共の自転車専用ステーションを設ける。迷惑のかからないと思われる場所なら、どこへ置いても構わない(利便性を損なわせないため)。私物の自転車は取り締まり対象とし、これが難しければ道路占有料の徴収、シール等を買わせる。
 (2)可能な限り、乗りたいと思うような、良質な自転車を提供すること。粗悪品だといい加減に扱う。これは指導力に影響するので最初が肝心。
 (3)ルールは簡単に、違反は厳しく取り締まること。私物化、私有地での保管、私有化傾向には徹底的に厳しく取り締まり、破損時の連絡も同様。学校での指導教育が重要。  (4)行き届いたメンテナンスを提供すること。きちんとした対応がモラルを育てる。自転車店との契約も必要。
 (5)利便性が生まれるまで、増やしつづけること。              (東京・台東区議 田中伸宏)




「夏時間」に60%が賛成──99年世論調査結果──

 環境庁、経企庁、資源エネルギー庁が実施した「地球環境とライフスタイルに関する世論調査」(99年11月に実施)で、サマータイム(夏時間)制度の導入に関して国民の60%が賛成していることがわかった。98年には54%の人が賛成(初めて50%を超す)だったが、年を追うごとに賛成者が増えている。
 この調査は全国20歳以上の2000人(回収率67.3%)を対象に実施されたもので、サマータイムに「賛成」が13.5%、「条件が整備されれば賛成」が46.2%で、合わせて59.7%と、約6割が「賛成」を表明した。「反対」「わからない」が各20%。98年調査では条件付きを含めて「賛成」が54%、「反対」が25%、「わからない」が21%だったのに比べ、「反対」が減り、「賛成」が増えたのが特徴。
 サマータイムの認知度をみると、98年には45.8%だった「知っていた」が99年には55.3%に増え、「賛成」の理由(複数回答)も「エネルギーの節約になるから」が98年の37.1%から68.2%と大幅に増加した。今回、新規に設けたサマータイムによる省エネ効果に関しては、「かりに効果が小さくても省エネ効果があるなら実施すべきである」が37.7%、「50万kl程度(石油換算)の省エネ効果なら、他にももっとやるべきことがあるはず」が17.5%、「どちらともいえない」が34.6%だった。
 サマータイムの導入に関しては昨年、環境庁など3省庁が「国民会議」を設置、「導入すべし」の報告をまとめたほか、議員立法による法案提出の機運があったものの、今年に入ってからは本格的な議論はほとんど行われていない。


 
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