省エネ・新エネ普及Net エネルギージャーナル社
省エネ・新エネ普及推進協議会 関連情報

省エネ・新エネ普及ネット会報 第13号 2000年6月


風車4基で730万kWh発電
初年度、目標の9割以上達成
三重・久居市の大規模風力発電

 三重県久居市が99年5月、室生赤目青山国定公園の山中に完成させた4基(1基750kW)の風力発電が稼働して1年が経過した。その結果、予定していた発電量の約93%に達し、順調なスタ−ト。同市はさらに20基の風車を2年後に設置する予定で、青山高原を「一大風車地帯」ウインドファームにしたい、と意欲を燃やしている。
 久居市は南北に細長い三重県の中央部に位置する。人口は約4万人(約1万3000世帯)。「久居榊原風力発電施設」が正式名称の風車は、青山高原の尾根に林立している。標高は約800mで、高野山とほぼ同じ。尾根の反対側は伊賀の里だが、この尾根は笠取山と呼ばれ、昔、旅人が笠を吹き飛ばされたといわれるほど強い風が常時吹く。
 4基の風車はオランダのラガウェイ社製で、NKKが代理店として設置した。1基が750kW(97年の計画時点では東洋一の規模だった)で、計3000kWの発電能力がある。事業費は約8億8000万円。このうち約4億1500万円が通産省の補助金、残りは県の起債を借用、このほか、管理棟、見学者用の休憩所、トイレ,駐車場などに約6500万円かかった。
 純白の風車群は、清楚な野草のサギソウにも似て、周りの緑にしっくりと溶け込み、景観上も違和感がない。風車の要の部分の高さは50mで、奈良・東大寺の大仏殿(約47.5m)並み。3枚の羽根で構成される回転翼の最上部は75 mに達する。
 この風車の特徴は、シュルシュルという騒音公害がない点にある。羽根が発電機に直結してギアがないため、梢に風がそよぐ程度の風切り音しかしない。風が最も多く当たるよう、風見鶏のように自動的に首を風上に振る。秒速2mで回り始め、3mで発電を開始、秒速15mで750kWの出力に達する。中型台風なみの25mで回転はストップ、60mの風まで耐えられる。回転数は秒速15mで毎分約26回転と、それほど多くない。
 昨年5月1日のスタート時点では、年間の平均風速が7.6mあることから、風車の年間平均出力を最高出力750kWの3割とはじき、1年間の総発電量を約788万kWh(一般家庭の消費電力として約2400世帯分)と試算した。その結果、「夏ごろまでは発電機の調子が良くなかった」(同市企画課)にもかかわらず、年間で約93%の729万kWhと、初年度としては極めて満足すべき成果を挙げた。当初は「従来の他地域での先行事例から見て、せいぜい500万から600万kWhだろうと冷ややかに見られていた」(同)という。とはいえ、発電機には常時、電力を流して磁場をつくっておく必要があり、その電力は中部電力から買う。この買電が約10万kWh。
 発電した約729万kWhは、1kWh当たり11.7円で中電に売っている。一方、買電は同28円。売電は約8500万円、買電は約280万円になるが、このほか、土地借地料、運転管理保守委託料、管理棟、トイレ、駐車場などの清掃維持管理費などもかなりの額で、出費総額は約4000万円。残りで借金を返済すると、15年で完了する。
 久居市はこの1年の経験から、風車設置に必要な3条件を上げる。(1)平均風速が5m以上あること(2)風車本体を搬入できる道路があること(同市の場合、発電機は直径5.6m、重さ29t、羽根も25mあった。幸い、かつて有料道路だった幅7mの道があり、日本一の25m長尺トレ−ラーに積み、津のNKKから4時間かけて運んだという)(3)近場に高圧送電線が走っていること(この点でも久居市は恵まれていた。近くにある自衛隊ミサイル基地用に2.2万Vの高圧線が走っていた。そこを通じて売電が可能になる。通常、風が強いのは山中などで、そこには道も高圧線もない。風車の設置者がその両方を自費で設置することは難しいが、国防上の理由で高圧線が引かれていたり、原発立地促進のため一般財源からも自治体への振興費を増やそうという法案が準備されていることを考えると、自然エネルギーである風車の適地にその両方の設置を政府が支援してもなんらおかしくない)。
 同市は2年後を目途に、NKKと隣接の大山田村と共同で、さらに750kWの風車を20基(計1万5000kW)設置する予定だ。だが、「売電価格は現在の値段が約束されてはない。今後の協議による」という事情が不安材料という。電力会社側から安く買い叩かれたら、挫折しかねない。妥当な価格での買い取りを義務付ける法律の早期整備が不可欠だろう。
 風車の宣伝効果は抜群である。1万人以上が同市を見学に訪れ、「くい」と誤って呼ばれがちだった市名も、やっと正しく「ひさい」と呼ばれるようになったという。
                                      (ジャーナリスト・平野真佐志)



 「クルマ社会」の見直し迫る
自転車利用、「環境自動車」普及
運政審部会 中間報告 秋にも答申

 運輸省の運輸政策審議会は6月8日、総合部会を開き「21世紀初頭における総合的な交通政策の基本的方向」に関する中間報告をまとめた。この報告は同部会の企画、環境、物流、長期輸送需要予測の4小委員会のそれぞれの報告を集約したもので、今後、国民からの意見募集を行ったあと、今秋にも運輸大臣に答申する予定。
 まず、企画小委員会(委員長・杉山武彦一橋大商学部長)の報告では、「重点課題」として「クルマ社会の見直し」を掲げ、「マイカーに過度に依存しない都市と交通をめざすべきだ」と強調。国、自治体、交通事業者に対し、「公共交通の利便性を大幅に高めつつ、歩道・自転車道の整備を進め、マイカーの使用抑制を図るといった施策を進めていくことが必要である」と提言している。
 一方、環境小委員会(同・石弘之東大大学院教授)の報告は「運輸部門からのCO2排出量はわが国全体の排出量の約2割を占め、運輸部門の排出量の約9割は自動車からの排出」と指摘したうえ、(1)自動車単体対策(2)公共交通等を中心とした環境の改善に貢献する持続可能な都市交通の実現――などが必要と強調している。
 (2)でも自動車への過度な依存を脱するため、「地域の特性を踏まえつつ、徒歩・自転車利用の促進、鉄道・バス等の公共交通機関利用への転換促進、自動車の利用抑制などを適切に組み合わせたTDM(交通需要マネジメント)施策を推進する必要がある」と言及。その具体策として、快適な歩行空間、緑地空間の確保されたトランジットモールの整備、駐輪場、自転車道の整備などによる自転車利用の促進、公共交通専用空間の設置、LRT(路面電車)の整備などを通じた公共交通サービスの向上、自動車流入規制、ロードプライシングなどの自動車の利用抑制に向けた措置などを挙げた。
 また、自動車単体対策として「環境(グリーン)自動車」の普及促進を求め、小・中型、大型トラック、路線バス、観光・高速バス、乗用車の種別ごとに対応策の現状と今後の方向を示した。特に乗用車に関してはLPG、CNG自動車の燃費向上や、ハイブリット自動車の性能改善・普及、燃料電池自動車の開発が期待される、という見通しを示している。
  しかし、CO2の削減などに向けて個別の施策で対応していてはコストがかさみ効率的でないという判断から、自動車関係諸税のグリーン化など税、補助金といった経済的措置の導入や、企業の自主的な取り組みを促すための施策など、多様な政策を組み合わせて対応するポリシーミックスのあり方に関する検討が必要、と運輸省に注文をつけた。
 同審議会総合部会は昨年5月に諮問を受け、各小委員会で1年あまりの検討を経て、今回の中間報告をまとめた。21世紀をにらんだ交通政策が今後どのように具体化されていくか、政府の対応が厳しく監視されることになる。


 

温暖化対策 政治主導で
地球・人間環境フォーラム10周年記念シンポ


 (財)地球・人間環境フォーラムが6月20日、創立10周年を記念して、「21世紀・人類は生き残れるか」と題するシンポジウムを開いた。近藤次郎同フォーラム会長が記念講演を行ったあと、後藤康男氏(安田火災海上保険名誉会長)、堂本暁子氏(参院議員)、森島昭夫氏(中央環境審議会会長)らによるパネルディスカッションが行われた。
 近藤氏は21世紀を展望するにあたり、(1)水など資源争奪による核戦争の勃発(2)環境ホルモン異常発生による人口の減少(3)自然体で自己中心主義の行き方へのシフト――の3つのシナリオが描けると述べた。このうち、老子の「無為自然」の生き方こそ、生き残りへの道であると強調した。
 ディスカッションでは後藤氏がNGO、NPOに代わるCSO(Civil Society Organization=市民社会組織)という概念を提示、このCSOこそが"環境革命"を担う地球市民の予備軍であり、「環境ビッグバンの原動力として期待がもてる」と述べた。また、同氏は産業界がこぞって反対している炭素税やCO2排出量取引を積極的に導入すべきだ、と発言して注目された。
 GLOBE(地球環境国際議員連盟)世界総裁でもある堂本氏は「日本では温暖化問題に関する地球規模の政治的リーダーシップが発揮されていないうえ、国家的な意思決定もされていない」と述べ、政治の関与の重要性を訴えた。森島氏も「温暖化対策では日本の政治家はリーダーシップに欠ける」と批判したうえ、「若者の認識を深めることが重要」と強調した。
 同フォーラムは1990年に現神奈川県知事の岡崎洋氏(前理事長)らによって設立され、温暖化対策の調査、研究など環境関連分野で幅広い活動を行っている。


北海道 省エネ・新エネ促進条例
7月成立へ 道民の意見聴取

 北海道省エネルギー・新エネルギー促進条例(仮称)の制定をめざす道は4月下旬から5月初旬にかけて、同条例の素案骨子に関する道民からの意見を募集した。その結果、20件、101項目にわたる意見が寄せられたが、道ではこれらの意見も加味し、6月道議会に条例案を提出、7月半ばの成立をめざす。
 条例素案によると、道および事業者の責務のほか、道民の責務として、「日常生活において、省エネの推進や新エネの導入に自ら積極的に努めるとともに、道や市町村が実施する省エネの促進や新エネの導入の促進に関する施策に協力する」と明記している点が特徴。
 また、知事が地域特性に対応した的確な目標や施策の基本事項を定める計画を策定し、道自らの率先的な取り組みをすることを規定している。さらに、学習の推進、民間団体の自発的な活動の促進、省エネ・新エネ関連企業の振興なども盛り込んでいる。
 このほか、省エネ・新エネ関連技術向上のための試験研究、功績があった個人、団体の表彰など幅広い内容になっている。


自然エネ議連 自民18人落選

 ▼6月25日投票の衆院選で、自然エネルギー促進議員連盟の自民党メンバー84人の21.4%に当たる18人が落選した(立候補見送り、無所属立候補、参院へのクラ替えを除く、以下同)。自民が失った38議席の半数近くを占め、同議連会長の愛知和男氏もこの中に含まれる。
 ▼これに対し、民主党は32人中4人、公明党は15人中1人、社民党は7人中2人などとなっているが、自民党以外の落選者は67人中合わせて13人。合計31人がごそっと落選した(5月29日現在、メンバーは衆院159人、参院97人)。
 ▼今回の選挙の全般的傾向を反映したもの、と言えばそれまでだが、同議連の活動になにがしかの期待を寄せているむきには、いささか寂しい結果と言えよう。恐らく、「自然エネ議連所属」を前面に押し出して選挙に臨んだメンバーはほとんどいなかっただろうし、メンバーであることが有利、不利双方に影響を及ぼしたとも思えない。
 ▼しかし、議連が提案をめざす「自然エネルギー発電促進法案」はきわめて重要な政治的選択を迫る案件である。同法案は自民党内で「原子力発電立地推進法案」と相討ちとなり、前国会での提出が見送られ、次期国会で再挑戦ということになる。
 ▼ただ、前国会終盤で「自然エネか、原発か」という対立の構図が表面化してしまったことは、好ましい状況とは言えない。従って、なお流動的な要素が残るだろう。それにしても、愛知自然エネ議連会長と、原発推進法案の旗振り役であった桜井新氏がともに落選、というのはまことに皮肉な結果である。 




「環境白書」
温暖化対策 "総力戦"で
環境税制導入へ一歩踏み込む
個人・家庭も照準

 政府は5月30日、閣議に「平成11年度環境白書」を提出、了承された。今年の白書は新たな政策展開として、ポリシーミックスの必要性を強調、中でも環境税制の導入に一歩踏み込んだ点が特徴で、年末にかけて各種審議会において論議が本格化することを予感させる。
 白書は従来の規制的手法は行政コストが高く、小規模な発生源が多数存在する場合は効率的な対応ができないうえ、すべての有害物質の影響を解明して基準を定めるには莫大な経費と時間を要するという欠点があると指摘。地球環境問題や生活型公害などへの対応に当たっては、これら規制的な手法に加え、経済的措置の導入や企業との自主的な取り組みを促すための協定など、問題の性質に応じて適切に組み合わせることが重要、と言っている。
 このうち、環境税に関してはOECD諸国で1990年から支持を高めているうえ、わが国でも「近年、国民や企業の間でも経済的手法についての認識が進んでいる」と、バックグラウンドを説明。また、昨年12月の政府税調の答申が環境関連税制についても、幅広い観点から検討を行うという考え方を示したことにも言及している。  一方、第2章「『持続可能な社会』の構築に向けた国民一人一人の取り組み」は122ページにもわたり、「様々な環境問題の原因は、個人が日々何気なく営んでいる生活の中や通常の生産過程に存在している」という認識から、「個人(家庭)生活」の在り方に問題を投げかけた。
 中でも、家庭から排出されるCO2に詳しく触れ、全体の12.6%が家庭内から発生、1世帯が1年間に排出するCO2の総量は平成9年度で約3.4tと試算、冷暖房、照明、テレビなどの使用法に注意を喚起している。また、自家用車についても、旅客部門全体の59.9%の輸送を担っているが、エネルギー消費量は同部門全体の83.7%に達しており「輸送効率の面から見た場合、エネルギーを多く消費する比較的環境負荷の高い交通機関」と規定、使用の抑制を求めた。
 こうした実情に対し、白書は「消費のグリーン化」という概念を提示。そのひとつがスウェーデン、米カリフォルニア州などで実施されている電力の選択購入制度で、日本でも「北海道グリーンファンド」や東京電力の動きを紹介しつつ、「大いに注目される」と言っている。もうひとつの「消費のグリーン化」としてカーシェアリング(自動車共用)を挙げた。これは1台の自動車を複数の世帯で共同利用する方式で、すでにドイツ・フライブルグ市などで実施されているが、日本でも横浜市、神戸市で実験されている。
 このように、従来の「資源・エネルギー浪費型のライフスタイル」に厳しく反省を迫っているのが今年の白書のもうひとつの特徴だが、そのライフスタイルの転換を図る施策として、昨年5月に導入に向けて報告書をまとめたサマータイム(夏時間)制度に関しては、検討の経緯に数行触れているだけで、なんとも理解に苦しむ。
 それはともかく、白書を読む限り、温暖化防止、すなわちCO2等6%削減(90年比)の決め手なるものはひとつもなく、考えうる、あらゆる手法、戦術、取り組みを"総動員"する以外に対応策はないということのようだ。その"総力戦"を前に、読み手にももどかしさが残るが、白書の書き手側の焦燥感も伝わってくる。





「省エネ・新エネ全国記事情報(4月分)」発行

 省エネルギー、新エネルギーに関連する全国の新聞記事を1ヵ月ごとに整理・編集した「省エネ・新エネ全国記事情報(4月分)」ができました。国、自治体、企業、NGO、海外などの動向を網羅したもので、今後、1ヵ月ごとに整理・編集して発行しますが、それぞれのお立場でお役に立つと確信しております。当協議会の会員の方には無料でご送付します。非会員の方には1部1000円(郵送料込み)にて、申し受けます。ご希望の方は住所、氏名等を明記のうえ、FAX(03-3341-3030)にてお申し込み下さい。現物と振り込み用紙をお送りします。3月分が必要な方はその旨を記して下さい。

 
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