迷走する「自然エネ発電促進法案」
自民内調整、再び難航
自治体、事業者「早期成立」求め集会
風力発電など再生可能エネルギーの普及促進をめざす「自然エネルギー発電促進法案(仮称)」の臨時国会提出をめぐり、混迷が続いている。同法案は先の通常国会に議員立法として提案する準備が進められたものの、自民党内での調整がつかないまま見送られた。今回も自民党内における調整が難航、臨時国会での提案・成立をめざす公明、民主、社民の各党はいら立ちをみせている。
同法案に関しては共産党を除く超党派の自然エネルギー促進議員連盟が昨年から、議員立法に向けて精力的に取り組んできた。しかし、先の通常国会終盤に自民党内の原発推進派が「原子力発電立地推進法案(仮称)」の提出を意図するとともに、自然エネ法案の党内手続き入りに反対したため、結局、両法案とも提出が見送られた。その直後の衆院選挙で自然エネ議連会長の愛知和男氏が落選、後任の会長に橋本龍太郎元首相が就任し、橋本会長の下で法制化ワーキンググループが検討を開始。
議連として臨時国会での提案・成立を確認したが、自民党内では再度、「原発立地推進法案とのセット案」、「自然エネ法案にある買い取り約款などの削除案」などが台頭、調整がつかないままになっている。
これに対し、議連事務局長の加藤修一氏(公明)は「買い取り約款とランニングコストへの補助の2点は絶対に譲れない。この2項目が法案からはずされたら従来の新エネ法となんら変わらないことになり、そんな法案を議員立法として提出することは恥かしい」と強く反発している。与党内でも対立が表面化してきた形だ。一方、民主、社民の野党議員も加藤事務局長に同調しており、全ては自民党内の調整いかんにかかってきた。臨時国会の会期は12月1日まで。
こうした状況を背景に10月24日、風力発電推進市町村全国協議会(会長・舘林茂樹山形県立川町長)やNGOが自然エネ法案の早期成立を求めて、東京都内で緊急集会を開いた。集会には公明、民主両党の幹部のほか、自然エネ議連のメンバーも参加、それぞれ意見表明を行った。また、風力発電に取り組む自治体の首長や事業者が次々と同法案の「早期成立」を訴えた。
集会での発言要旨は次の通り(敬称略)。
冬柴鉄三(公明党幹事長) クリーンエネルギーに力を入れるべきだという考え方には敬意を表する。我が党も成立に力をつくしたい。
横路孝弘(民主党副代表) 種々議論があったが、一定の方向性は出ている。原発とからませて進みつつあるようだが、自然エネに関するこれまでの議論の積み重ねをゼロにするということは納得できない。超党派で一気に法律を成立させたい。
金田英行(議連メンバー、自民) だいぶ煮詰まってきた。原発立地促進法案と一緒に出そうということで頑張っている。争点は買い取り義務(約款)条項。議員立法案が近くまとまるんじゃないかなぁという感じ。ただ、自然エネ法案支持者の中に原発忌避の色彩が前に出てきているのは残念。
福島瑞穂(同、社民) 議連には270人もが加盟しているので、臨時国会中に成立させたい。この法案は無理やりに買い取りを義務づけてはいない。自然エネの普及促進は地域の活性化にもつながる。
河野太郎(同、自民) 自民党、通産省、電事連の中には「自然エネの促進は原発にブレーキをかける」という論調が根強い。現在、自民党内のせめぎ合いが続いているが、橋本議連会長にねじ込んでもらうしかない。この問題はそれぞれの地元で国会議員に働きかけるとともに、選挙で反映させることが重要。
山本正和(同、社民) 国民世論を盛り上げねばならない。
金田誠一(同、民主) このままでは元のもくあみになりかねず、予断を許さないが、絶望的ではない。ポイントはランニングコストへの補助、一点のみ。かつてのNPO法案づくりよりは楽ではないか。
舘林茂樹(立川町長) 現状では自治体がリスクを負いながら、自然エネに取り組まざるをえない。しかし、多少コストが高くても温暖化防止などの観点から、自然エネを積極的に利用しなければならない。そのための基本となる法律を土台にして、促進をめざすべきだ。
久保田徳満(北海道苫前町長) 苫前町では町営、民営合わせて、この12月末で52,800kWの風力発電能力に達するが、自治体には限界があり、民間企業の力を借りる必要がある。自治体の役割は用地(農地)の転換、住民意識の統一にあると思う。送電線、風車立地点までの道路整備への補助はぜひ頼みたい。
堀俊夫(トーメン・パワー・ジャパン社長) 2010年に30万kWという政府の風力発電目標値を上方修正してもらいたい。同時に電力会社の経営を圧迫しないような仕組みを作ってもらいたい。
遠藤昭(エコ・パワー社長室長) 風力発電の長期的かつ安定的な導入につながる法律にして欲しい。
電力会社の「グリーン電力制度」
消費者向け10月、企業向け11月から
参加者増は電力各社の努力で
電力会社の「グリーン電力制度」が10月からスタートした。これは消費者の寄付金とこれと同額の電力会社の寄付金により、太陽光発電設備と風力発電事業者に助成、再生可能エネルギーを普及・促進しようという独自の制度。11月からは企業向けのグリーン電力証書システムもスタートする。
この制度の仕組みは毎月の電気料金徴収時に、希望する消費者から寄付金(1口月500円から)を集めるとともに、電力会社も消費者寄付金総額と同額を、東京電力の場合、(財)広域関東圏産業活性化センター(GIAC)に基金として蓄え、太陽光発電設備と風力発電事業者に資金援助しようというもの。
東電の場合、契約者の0.1%(約2万軒)が月500円を寄付すると、1年間で約1億2千万円の基金が集まると試算。仮に1億円の基金で風力発電設備に対して1kWhにつき1円の助成を行うとすれば、出力1万kWの新規設備に5年間助成できるとみている(利用率25%が前提)。
GIACは第3者機関であるグリーン電力基金委員会を設け、ここで基金の配分比率や助成方法を決めるが、事業用風力発電の場合、出力2,000kW以上を対象に入札制で落札者に助成を行うことにしている。そのための事前検討の申し込みの受付を10月から開始した。
一方、企業向けのグリーン電力証書システムとは、最終的には企業・団体が「環境付加価値」を購入するという形をとる。その仕組みはまず、11月1日設立の日本自然エネルギー(株)が同システム参加企業と協議のうえ、最も効率的と思われる風力発電事業者を選定して、発電を委託。事業者は契約に基づいて発電し、日本自然エネルギーに実績を報告、これを中立的な第3者機関(認証委員会)が認証するという形をとる。
日本自然エネルギーと実施契約を結んだ企業・団体は発電実績をグリーン電力証書として、同社から受けとるが、この証書は自社で使用する電気を自然エネルギーで発電されたものとみなすとともに、CO2の削減など企業の環境対策成果として、企業イメージの向上に活用することもできるという。
つまり、発電事業収入が例えば1kWh当たり9.5円とすると、電力会社購入費が同6円、委託費が同3.5円となり、この3.5円分を「環境付加価値」として企業・団体が購入したということを意味する。企業向けのグリーン電力制度の対象エネルギーは当面、風力のみ。いわば将来のCOCO2排出量取引市場を想定した措置といえる。
このグリーン電力制度は今年7月、電気事業連合会が総合エネルギー調査会の新エネルギー部会で示したもので、北海道から沖縄まで10電力会社がほぼ同様の形で実施を開始した。
しかし、一部からは(1)自然エネルギー発電量の目標値が明確でない(2)GIACなどはかならずしも公益的第3者機関とは言い難い(3)入札制は風力発電事業者にとって不利で、普及・促進につながらない――などの批判も出ている。また、「自然エネルギー発電促進法案」に先行する形で実施に移されたため、「電力会社の法案つぶし戦術の一環」と、危惧するむきもある。
こうした批判をかわすためには、電力会社自らが積極的に再生可能エネルギーに取り組むとともに、このグリーン電力制度を本気で推進する姿勢を示すため、大々的にPR、説得を繰り返し、消費者、企業の参加を増やしていく以外にない。「結局、日本では自然エネルギーへの関心は薄かった」という結論だけは御免こうむりたい。
途上国への新エネ・省エネ協力
総合エネ調 小委で検討開始
自立的普及・促進めざす
総合エネルギー調査会は新エネルギー、省エネルギー両部会の下に国際協力小委員会(委員長・柏木孝夫東京農工大教授)を設置し、アジアなど開発途上国における新エネ、省エネ分野での取り組みに関して検討を開始した。小委員会では途上国における新エネ市場の形成・発展、省エネ技術の普及・促進にとっての課題と対応策、およびこれらの分野における日本の国際協力のあり方などを検討、年内に報告書をまとめる予定。
通産省資源エネルギー庁では(1)途上国のエネルギー消費は今後も高い伸びが予想される(2)地球温暖化対策、CO2の排出抑制には、先進国のみの対応では不十分(3)途上国は近年、新エネ、省エネの促進に努力していて、特に太陽光発電についてはアジア各国で軒並み導入量が増えている。風力発電ではインド、中国が日本を上回る導入量を達成――と指摘。こうした状況を背景に、途上国における省エネ技術の自立的な普及の促進、持続的な新エネ市場の形成・発展に日本も協力する必要があると強調している。
同小委員会の主要検討課題は(1)太陽光、風力、バイオマス発電など新エネの導入、および省エネ技術の普及に関する途上国における取り組みの現状、今後の展望、(2)人材育成、ファイナンス・スキームの構築など途上国において新エネ市場の形成・発展、省エネ技術を促進するうえでの課題とその対応策、(3)各省庁、関係機関などが実施している新エネ・省エネ分野における国際協力の現状およびそれらの連携強化を含めた今後のあり方――となっている。
アジアにおける主な新エネ普及政策の動向は次の通り(カッコ内は目標年次)。
<中国> |
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・第9次国家5ヵ年計画(2000年) |
太陽光15MW 風力300〜400MW<BR> |
・光明工程(2010年) |
太陽光、風力を導入して2300万人の無電化人口に2300MWを供給 |
<モンゴル> |
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・10万戸ソーラーゲル計画(2010年) |
遊牧民の移動型住居(ゲル)を太陽光で電化5MW(50W、10万戸)<BR> |
<タイ> |
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・第7〜8次経済開発社会計画(2001年) |
太陽光30MW導入<BR> |
・バッテリーチャージステーション計画(――) |
バッテリーチャージステーション342ヵ所 |
<インド> |
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・第9次国家5ヵ年計画(2002年) |
太陽光70MW 風力1,000MW導入 |
・再生可能エネルギー省の実証・利用プロラム(2003年) |
ソーラー・ランタン30万戸 グソーラー・ホーム・システム(SHS)20万個 |
・ソーラー・ポンプ・プログラム(2003年) |
4000台 |
<インドネシア> |
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・第6次経済開発5ヵ年計画(1999年) |
太陽光(家庭)50MW 揚水ポンプ導入600kW 風力500kW導入 バイオガス3〜5MW |
・100万戸電化計画(2005年) |
50MW導入(50W、100万戸) |
(注)(――)は目標年次なし。インドネシアの第7次経済開発5ヵ年計画は政権交代後策定されていない。
自転車議連 COP6向けアピール
新会長に谷垣氏 モデル都市視察も
超党派の国会議員で構成する自転車活用推進議員連盟は10月6日に総会を開き、新会長に谷垣禎一衆院議員(元金融再生委員長)を選出した。小杉隆前会長は名誉会長に就任。総会では関連省庁の平成13年度自転車関係予算概算要求の内容(別項)を聞くとともに、今後、議連としての活動を活発に展開していくことを確認した。
また、同26日には役員懇談会を開き、自転車の活用を日本を含む世界各国に訴えるため、11月13日からオランダのハーグで開かれるCOP6に向けて、議連として緊急アピールを出すことを決めた。アピールは会議に出席する川口順子環境庁長官に託すことにしているが、同長官の出発前に議連の代表がアピール文を環境庁まで自転車に乗って届けるという。
このほか、年内にも千葉県浦安市など自転車利用環境整備モデル都市を視察することも決めた。
平成13年度の建設省における自転車関係概算要求は次の通り(カッコ内は12年度当初予算額)
自転車利用環境の整備 214億円(198億円)
(1)自転車利用環境総合整備事業 129億円(118億円)
(2)大規模自転車道整備事業 38億円(38億円)
(3)自転車駐車場の整備 47億円(47億円)
(1)は12年度創設。安全かつ適正な走行を支える自転車道のネットワークおよびこれと一体的に機能する駐輪場の総合的な整備を、交通安全施設等整備事業や改築事業によって支援するというもの。
(2)は交通の安全を確保し、同時に健康の増進に資することを目的として、大規模な自転車道のうち整備の必要性の極めて高い路線について、都道府県道に認定のうえ、国庫補助を行うというもの。
(3)は鉄道駅周辺において適正な駐輪を行うため、駐輪場の整備を交通安全施設等整備事業や街路事業による補助を行い、推進するというもの。
同省ではこのほか、自転車交通が多く事故が多発している路線について、自転車道、自転車歩行車道を整備したり、自転車を都市交通の一環として、歩行者、自動車と調和させながら利用できる「エコサイクルシティ」の形成支援、推進などの関連事業を12年度に引き続き実施する考え。
独・ミュンスターの゛ガラスの城゛駐輪場
欧州自転車都市づくり視察団に参加して(上)
10月3日から12日まで、「欧州における自転車交通を中心とした都市づくりの実態調査」という長い名称の視察団に参加した。私にとって同種のテーマの訪欧は4度目になる。今回はドイツ、ベルギー、オランダの3カ国、7都市を訪問、6機関でヒアリングという日程だった。ケルン−ブリュッセル間を列車に乗った以外はすべてバス移動だった。その間に若干の観光も組み込まれているし、少し早めにホテル入りした夜は全員で会食兼ミーティングがあるから、ほとんど熄まる暇もない。それは仕方のないこととして、団体旅行にはつきものの取材活動の制約が多少の不満を残すこととなる。しかし、予想外の収穫もあるもので、バス移動の途中、コース上を少し寄り道することでミュンスターに立ち寄れることに気付いた団長の配慮で、同市の目玉的自転車施設を2ヵ所視察することができた。
ミュンスターは、自転車トリップ(移動)34%というドイツきっての(ということは世界でも有数の)自転車友好都市である。
3年前の1997年10月、私は別の欧州自転車政策視察団の一員として同市を訪れ、その秀逸な施策の一部をレポートや講演などで披露したが、そのひとつがパーク・アンド・ライド(PR)実験施設である。なぜ実験かというと、同市は中心市街地を取り巻く環状道路の外側に数ヵ所のPR基地を建設する計画で、その第1号であったからだ。その基地は50台はとめられる駐車場と市内連絡バスの停留所のほかに、14台の自転車とそれを格納する専用ロッカー、20台分の屋根付き駐輪場をそなえており、すべて無料で利用できる。市の担当者によれば、将来にわたって有料にする考えはないそうで、そのわけは「クルマで市内に入ろうとする人が、自転車やバスに乗り換えれば、市内の空気はその分汚れないし、騒音も少なくなる。つまり、市内の環境保全にプラスするのだから無料にするのが当然だ」といって、ひそかにソロバン勘定を目論んでいた我々を驚かせたものである。
そのミュンスターは当時(97年)、国鉄中央駅前に地下駐輪場を作る計画が進行中ということであったが、今回、図らずも完成したばかりのそれを目にすることができた。
それは駅前広場の中央に、まばゆいばかり透明な光を撒き散らすゆうに3階建てはあろうかというガラスの城だった。
「たしか地下に作るといっていたはず」といぶかりながら中にはいると、地上部は巨大な光の空間になっていて、吹き抜けのスロープが地下に達し、地下駐輪場の一部が見通せる構造であった。そのため、多くの地下駐輪場に見られる暗く、押し込まれたような印象はまったくない。明るい、のびやかな雰囲気に満ち満ちている。
さしづめ日本では、なにもない地上部の空間を「もったいない、税金の無駄遣い」などと非難されそうである。現に同行の1人は「日本には参考にならない」と漏らしていた。
しかし、一見、無駄に見える空間は、地下にひろがる無数の自転車の群れを強烈にアピールしていた。まるで、1台1台の息遣いさえ感じられるほどだった。それはまた市内の各所に見られる自転車優先施策の"奥深さ"を象徴するものでもあった。
私はそこにミュンスター市の主張を感じた。それは「自転車友好都市」として環境問題に真正面から取り組む姿勢を強烈に印象づける、実に効果的な演出でもあったのだ。
(堤 良三/街づくり自転車活用研究所所長)
風力エネシンポ 11月16、17日
日本風力エネルギー協会(会長・清水幸丸三重大工学部教授)が11月16、17の両日、東京・北の丸公園の科学技術館で第22回風力エネルギー利用シンポジウムを開く。
16日は新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、新エネルギー財団(NEF)の関係者が風力発電の現状と課題などについて講演するほか、EUにおける風力発電に関する報告も行われる。また、東京電力が「グリーン電力制度」について説明。17日には風力エネルギーに関する42件の研究発表が行われる。
会費は会員2万円、一般2万5千円、学生3千円。詳細は(TEL)03−3212−8487の同協会まで。