CO2削減で5政策モデル提示
中環審企画政策部会、小委報告
「京都議定書」目標遵守へ意欲
中央環境審議会企画政策部会は昨年12月11日、温暖化対策を確実に実施するための国内制度として5つの政策パッケージモデルを示した小委員会の報告書を了承した。この経済的手法や規制的手法を組み合わせたモデルは〈1〉地球温暖化対策推進大綱重視モデル〈2〉自主的取り組み強化モデル〈3〉環境税モデル〈4〉環境税&大規模管理モデル〈5〉ハイブリッド排出量取引モデルで、これを環境省発足に伴って改組された新中環審における議論の出発点にする考え。
各モデルについて報告書はそれぞれ次のように説明している。
〈1〉現行の地球温暖化推進大綱に盛り込まれた各種施策を推進するとともに、2008年以前に各種施策の評価と見直しを行う。
〈2〉産業部門においては、自主行動計画の協定化、または計画策定を義務づけることで自主的取り組みを強化する。民生・運輸部門についても、ビル・大規模住宅の省エネ基準を義務化し、自動車税制のグリーン化など対策を一段と拡充する。
〈3〉環境税を導入し、CO2など温室効果ガスを排出する全ての者による取り組みを幅広く促進する。環境税の導入に当たっては、わが国の産業構造の中長期的な展望や国民生活への影響の観点からなんらかの緩和措置を講じる。民生・運輸部門対策については〈2〉と同じ。
〈4〉環境税を導入して幅広く取り組みを促進する一方、より確実に排出量を管理する必要があると考えられる業種・分野については、環境税に代えて総量規制、または排出量取引制度を導入する。民生・運輸部門については〈2〉と同じ。
〈5〉化石燃料の輸入・製造者および大規模排出者を対象とするハイブリッド型の排出量取引制度を導入し、確実な排出削減を行う。2008年以降は国際的な排出量取引制度と国内の同制度とをリンクさせる。民生・運輸部門については〈2〉と同じ。
また、この5モデルに関して、(1)排出量管理の確実性(2)京都メカニズムの補足性の確保(3)国民経済的な費用対効果(4)持続可能性、生産・消費構造の改善、環境産業の振興(5)公平性――の5つの観点から評価を示した。
それによると、モデル〈1〉は定量的基準の達成が法的に担保されている対策が全体の20%未満で、他のモデルに比べると対策実施の担保が弱く、排出量管理の確実性が最も低い、といっている。モデル〈2〉については、モデル〈1〉に比べると排出量管理の確実性は高くなるものの、環境税や排出量取引を導入するモデルと比べると、排出量管理の確実性は依然として低い、と認定。モデル〈3〉に関しては、税率を適切に調整することによって、排出量管理の確実性を高めることが可能、と高く評価している。モデル〈4〉は総量規制および部分的な排出量取引の対象者については排出量管理の確実性がモデル〈3〉よりさらに高まるが、その他のモデルについてはモデル〈3〉と同じ、と指摘している。モデル〈5〉については、国全体として化石燃料起源のCO2排出量は確実に管理される、と強調。
ただ、いずれのモデルも京都メカニズムの補足性、および公平性の観点などで注意を要する場合や、配慮が必要になるケースもあるため、かならずしも排出管理の確実性だけでは評価できない、といっている。
このポリシーミックスによる政策パッケージの検討に当たり、報告書は(1)京都議定書に基づく6%削減目標を確実に達成できること(2)国内対策による削減を基本とし、京都メカニズムの活用は補足的であること(3)国民経済的にみて費用対効果に優れていること(4)21世紀において世界的に期待される持続可能な経済社会づくり、循環型経済社会づくりに向け、生産・消費構造の改善や環境産業の振興を促進するものであること――を念頭に置いたという。
(資料)報告書に示された5つのモデルの考え方は次の通り(全文)。
<モデル1> 地球温暖化対策推進大綱重視モデル
現行の地球温暖化対策推進大綱に基づく施策を引き続き推し進める。
現在排出量がほぼ横ばいの産業部門については、経団連等を中心とする自主行動計画の着実な推進を引き続き図る。
民生部門については、省エネモニターの設置等による普及啓発の強化、社会資本整備の促進、既存の省エネ法の対象製品の拡大や基準値の強化を行う。
運輸部門については、既存の省エネ法の燃費規制の強化、インフラ整備等による物流の効率化、公共交通機関の利用促進、交通渋滞の緩和を引き続き推進する。
全体に共通する推進メカニズムとして、社会資本整備や助成措置等を行う。
<モデル2> 自主的取り組み強化モデル
現在排出量がほぼ横ばいであるが、全排出量の約45%と最大である産業部門については、自主行動計画の透明性、確実性を高める観点から協定又は義務的な計画策定を導入する。この際、モニタリング方法や達成できなかった場合の措置について規定することが必要である。達成できなかった場合に課する措置としては、例えば、指導、助言、勧告や、改善命令等が挙げれられる。また、2008年以降は、こうした措置に加えて、不足分に相当する国際的な排出枠価格を政府に支払うことや、事業者自らが京都メカニズムによって海外から調達することを義務づけることも考えられる。ただし、一般的には海外の排出枠価格は国内削減コストよりも安価であることが予想されており、意図的に不遵守を起こす誘引が懸念されるため、こうしたことが起きないように制度化することが必要である。
民生部門については、省エネモニターの設置等による普及啓発の強化、社会資本整備の促進、既存の省エネ法の対象製品の拡大や基準値の強化に加えて、対策効果が大きいと期待されるビルや大規模な住宅への省エネ基準の義務化を行う。
運輸部門については、既存の省エネ法の燃費規制の強化、税制のグリーン化に加えて、自動車メーカーおよび大規模自動車ユーザーに新たな規制を導入する。また、インフラ整備等による物流の効率化、公共交通機関の利用促進、交通渋滞の緩和を引き続き推進する。
全体に共通する推進メカニズムとして、社会資本整備や助成措置等を行う。
<モデル3> 環境税モデル
温室効果ガスを排出する全ての者による取組を促進し、持続可能な社会構造への転換を目指して、できるだけ早期に環境税を導入する。税収の一部を活用して、追加的な温暖化対策のための社会資本整備や助成措置の強化を図り、温暖化対策推進大綱に盛り込まれた施策を推進する。
環境税の導入に当たっては、我が国の産業構造の中期的な展望や国民生活への影響の観点から何らかの緩和措置が必要と考えられる業種・分野については、他の施策により必要な排出削減を担保できることを前提に、税率調整や承認計画と減税のセットなどの緩和措置を検討する。こうした税制度の一環として位置づけられる計画は、税法上の措置を講じることが適切か否かを政府が判断する基礎となるものであり、自主的取組の透明性や確実性を増すために導入される協定や計画とは性格を異にする。このため、計画が達成できなかったときには、その状況に応じて、指導、助言、勧告にとどまらず、優遇措置を取り消したり、罰則を課すこととなる。
民生部門、運輸部門の個別施策については、<モデル2>と同じ。
<モデル4> 環境税&大規模管理モデル
温室効果ガスを排出する全ての者による取組を促進し、持続可能な社会構造への転換を目指して、できるだけ早期に環境税を導入する。税収の一部を活用して、追加的な温暖化対策のための社会資本整備や助成を行い、温暖化対策推進大綱に盛り込まれた施策を推進する。(ここまでは<モデル3>と同じ。)
二酸化炭素排出量が多いことから、より確実に排出量を管理する必要性があると考えられる業種・分野については、環境税の対象とせず、その代わり、生産弾力性のある総量規制と基準値を超える削減への助成措置、又は、グランドファザリングによる排出量取引制度を導入する。総量規制、又は排出量取引による目標を達成できなかった場合の措置を規定しておくことが必要である。達成できなかった場合に課する措置としては、行政処分や罰則の適用が挙げられる。また、2008年以降は不足分について京都メカニズムによって排出者自らが海外から排出枠を調達することを義務付けることが考えられる。ただし、一般的には海外の排出枠価格は国内削減コストよりも安価であると予想されており、意図的に不遵守を起こす誘引が懸念されるため、こうしたことが起きないように制度化することが必要である。
産業、民生、運輸の大規模排出者については、排出量取引制度の準備ができるまでの間、協定又は義務的な計画により、削減対策の推進を図る。
民生部門、運輸部門の個別施策については、<モデル2>と同じ。
<モデル5> ハイブリッド排出量取引モデル
基盤メカニズムの整備・構築を推進し、ハイブリッド型の排出量取引制度を導入する。排出枠の販売により得られた収入により、温暖化対策のための社会資本整備や助成の強化を図り、地球温暖化対策推進大綱に盛り込まれた施策を推進する。ハイブリッド排出量取引は、我が国の化石燃料起源のCO2排出全体にキャップをかけることから、排出量を確実に管理できる。排出量取引制度においては、猶予期間内に必要な排出枠の調達を怠った者に対しては、行政処分や罰則が課せられる。
2008年以降は、国際排出量取引と連携させ、全体として、より経済効率的に必要な削減量を確保することができる。具体的には、当初より京都メカニズムで確保することを予定していた量をキャップから差し引き、制度全体としてその量と等しくなるまで、海外からの調達を認める仕組みが考えられる。
一般的には海外の排出枠価格は、国内削減コストよりも安価であると予想されていることから、国際排出量取引との連携に当たっては、国内における削減量を確保する観点からは、わが国全体として予定量以上の排出枠が海外から購入されないよう調整を行う仕組みが必要となる。
なお、これら5つのモデルは、典型的なモデルの例として示したものであり、これ以外にも様々なモデルがあり得る。例えばイギリスにおいては、環境税を導入した上で、政府と業界が温室効果ガスの排出削減等について協定を結べば減税を実施し、かつ、その協定達成のために排出量取引を認めるという政策パッケージを実施する予定である。
実際に政策パッケージの具体化を図る場合には、既にある制度や仕組みとの関係についての検討も必要である。
「住宅、学校にも雪冷房を」
雪を核に地域づくりめざす
新潟・安塚町の矢野町長に聞く
豪雪地帯対策特別措置法で「豪雪地帯」として指定されている自治体は962市町村で、このうち、全域指定されているのが10道県あり、その全面積は194,000km2に達する。実に日本の国土総面積の50.8%を占めているわけで、わが国の半分以上は「雪国」なのである。こうした豪雪地帯で雪を核にした地域おこしが成果をあげつつある。昭和60年代から雪を地域の資源としてとらえ、雪冷房の導入にまでたどりついた新潟県安塚町の矢野学町長に雪とのつき合い方を聞いた。
――一般に雪国の人にとって、雪はやっかいな物、邪魔ものという意識が強いようだが・・・。
「私は平成元年に町長に就任したが、その前の総務課長のころから、まず雪を好きにならなければならない、と考えていた。雪に対する心意気を変えていく必要があると思った。それには、克雪、利雪も大事だが、楽しい雪国づくりをしなければならない。その一環として、雪の宅配便、スキー場、各種イベントと、次々に取り組んできたわけだ。当町の雪国文化村構想も雪国らしい街づくりをめざしたもので、暮らし、遊び、産業、景観などを含めて、全町を公園化しようという発想で推進しているが、現在、その50〜60%は達成できたと思っている」
――地域づくりも行政だけでは十分な成果が得られない。町民にどのような問いかけをしているのか。
「町の雪だるま物産館を運営しているのは、女性100人委員会という組織だ。この委員会を設けたのは、女性に販売の喜び、消費者に接することの喜びを知ってもらいたかったからだ。彼女らは自分たちの責任で自主運営しているが、街づくりといっても、行政がすべてやるということはしない。よく行政主導とか住民主導とか言うが、そんなことは考える必要はない。私は“住民参画型”と言っているが、これは中途半端な住民参加とは訳が違う。また、部分的な成功例だけで街づくりを考えているわけではなく、雪国そのものをテーマにしており、産業、エネルギー、景観すべての面で雪を利用していこうということだ」
「今、町民の約1割に相当する330人から340人に地域の魅力発見事業という試みに挑戦してもらっている。グループごとにフリートーキングを行い、その中から政策提言をしてもらい、それを行政に反映させたい。また、この10年来、40、50、60歳と、10歳ごとに“人生の同窓会”を開いている。その際のテーマは月であったり、花であったり、風ということもある。これを私たちは“生涯楽習”と呼んでいる。よく、環境共生なんて言うけれど、こういう言葉には疑問が多い。精神的な豊かさを得るには、まず、生活をきちんとしていかねばならない。そこから、やさしさも生まれてくる。雪国に地滑りはつきものだが、この対策に何億円というお金を使って、そこで終わっているのが実情だ。しかし、安塚町では地滑りでハゲ山になった所に、町を訪れた人にも木を植えてもらっている。これは人間にとって大事なものを残すという発想でやっているわけで、それが結果的にCO2の削減につながるということになっている」
――都市との交流にも積極的だが……。
「地域交流にはすでに実績を残しており、倍々ゲームで進行している。都会の子供たちも喜んで町にやってくる。農業を理解してもらうには、都会から来てもらうしかない。都市と農村では根本的に環境が異なるから、来てもらえば農村の良さがわかる。こうしたことを他の地域でもやればよいと思うが、なかなか受け入れる度量がないようだ」
――公的施設に雪の冷熱エネルギーを利用した冷房施設を導入してきたが、次のステップは?
「安塚町では住宅の屋根上の雪処理は完璧にできるようになったし、玄関先の雪処理も90%は可能になった。これにより、生活の不便さはほぼ解消されつつあり、今、雪を楽しむという方向へ行こうとしている。今後はフィンランドのように各家庭が玄関や窓際にキャンドルを立てて、全町にメルヘンとロマンが満ち溢れるようにしたい。すでに、その一部は実施している。雪エネルギーの利用はまだ始まったばかりだが、今後、学校などの公共施設のほか、一般住宅にも雪冷房を導入したい。問題はコストをいかに下げるかだが、雪のストック場である雪センターを作り、そこから一般家庭に雪を持っていってもらえば、経費は安く済む。また、食糧備蓄にも活かしていきたい」
2020年に燃料電池車500万台
新規産業の創出も可能
実用化戦略研が報告書
経済産業省資源エネルギー庁長官の私的諮問機関である燃料電池実用化戦略研究会(座長・茅陽一慶大教授)は1月22日、燃料電池導入による省エネルギー、環境負荷低減効果、および実用化・普及に向けたシナリオなどを内容とする報告書をまとめた。
それによると、省エネ効果はガソリンエンジン自動車の車両効率が15〜20%なのに対し、固体高分子燃料電池車は30%以上と高く、定置用電池も排熱を利用することによりエネルギー効率は70%以上を達成することが可能、と指摘。また、環境負荷低減効果として、省エネ効果によるCO2排出量の抑制、NOx、SOx、PMなどの排出がゼロまたは極く微量と評価している。
さらに、燃料電池は天然ガスなどの石油代替エネルギーや太陽、風力、バイオマス発電など再生可能エネルギーの多様な供給源から生産された水素を燃料とすることができるため、水素の供給源によってはエネルギーの多様化、および石油代替を促進する、と強調。加えて、燃料電池技術は自動車、電気機器、素材、エネルギーなど幅広い産業が関係するため、国内企業の競争力の強化や新規産業の創出につなげることができる、と言っている。
実用化・普及への課題として、報告書は@基本性能の向上A経済性の向上B燃料開発とインフラの整備――など挙げている。こうした課題克服と実用化へのスケジュールとして、2005年ころまでを基盤整備、技術実証段階と位置づけ、2005年から2010年までを導入段階と見通している。そして、2010年以降を普及段階とし、2020年の導入目標を自動車用で約500万台、定置用で約1000万kWと示した。
この目標を達成するため、報告書は産学官が共有する燃料電池技術開発戦略を早急に策定、実施するとともに、民間においては関係企業で構成する燃料電池実用化推進協議会(仮称)を設置するよう求めている。このほか、国、自治体、関連企業による率先導入、人材の育成、欧米政府との情報・意見交換などに取り組むよう提言した。
“別件逮捕”? 徳島・木頭村の水
▼徳島県木頭村の(株)きとうむらから、自宅へちょっとショッキングな文書が送られてきた。筆者が購入している同社の「山の湧水」(ミネラルウォーター)の販売を自粛するという内容である。
▼その原因は水を紙パックに充てんしている東京の業者が保健所および旧厚生省の許可を得ていなかった、ということらしい。充てんした業者が無許可である以上、一般飲料水水質検査に合格していても、無許可製造販売に該当するというのが、当局の判断という。
▼この業者は13年前からトラックに紙パックの充てん機械を搭載して全国の酒蔵会社、食品メーカーの委託を受けており、同社も実績を信用して確認をしないまま依頼してきた。しかし、食品衛生法では、トラックに充てん機を搭載したパック詰め移動工場は前例がないという。
▼紙パック充てんシステムはかなり高額なため、自社での購入は困難というが、それにしても、意外なところに落とし穴はあるものだ。木頭村は全国的にも知られているように、ダムに頼らない村づくりをめざして、第3セクターで特産品の販売に取り組んできた。
▼特産品は水以外にも数多くあり、この一件でダメージを受けることは少ないと思われるが、発覚の原因が別の製品の廃棄物処理を巡り、保健所と警察に通報があって、その件で立ち入り検査が行なわれ、その際、水の充てん業者の無許可営業が明るみに出た。
▼永年、国や県と対立を続け、細川内ダムの建設中止を勝ちとった同村だけに、一連の経過は“別件逮捕”のようで何かすっきりしないものがある。しかし、ミスはミスと認めるしかない。いち早く立ち直り、また、おいしい水が飲めることを待ちたい。
<文献紹介>
宇沢弘文 『社会的共通資本』
著者の言う「社会的共通資本」とは、大気、森林、河川、水、土壌などの自然環境、道路、交通機関、上下水道、電力・ガスなどの社会的インフラストラクチャー、加えて、教育、医療、司法、金融制度などの制度資本を指す。そして、これら社会的共通資本の管理・運営は政府によって決められた基準ないしルール、あるいは市場的基準に従って行われるのではなく、フィデュシアリー(受託・信託)の原則に基づいて信託されているものだというのが、著者の強調するところである。
こうした考え方に立つ時、現在主流の反ケインズ経済学(マネタリズム、合理主義経済、サプライサイドの経済学、合理的期待形成仮説など)は「歴史の捻転」とみなされる。本書はこの視点から、農業と農村、都市、学校教育、医療、金融制度、地球環境の現状に対し、独自のメスを入れている。
著者は1974年に『自動車の社会的費用』を著したが、望ましい都市として、ジェーン・ジェイコブスの4つの原則を紹介している。第1は「街路の幅はできるだけ狭く、曲がっていて、1ブロックの長さは短いほうが望ましい」、第2は、「再開発に際して古い建物ができるだけ多く残るように配慮しなければならない」、第3は「都市の各地区は必ず2つないしはそれ以上の機能を持っていなくてはならない」、第4は「都市の各地区は人口密度が十分高くなっているように計画されなければならない」―というものだ。いずれも、ル・コルビュジェの「輝ける都市」の発想とは対照的な考え方である。
農業と農村を考える際の「コモンズ」、大学の在り方を検証する際の「マルティバーシティ」という刺激的な概念も紹介されている。レーガン(米)、サッチャー(英)、中曽根(日)らが推進してきて、今、規制緩和と分権化と市場主義の大合唱の中、ちょっと立ちどまって冷静さを取り戻すには最適の書と言えよう。ただ、2,3誤植が気になる。
(岩波新書 本体660円)
池内 了 『私のエネルギー論』
「単にスローガンとしての省エネルギーやエコロジーでなく、もっと具体的にエネルギー論を通して議論して欲しい」と編集者に言われたことが、本書にとりかかるきっかけになった、とあとがきにある。確かに、いつまで経っても、この国では何ごとにつけ掛け声ばかりで、いささかあきれさせられる。
3年前に著者は自宅を建て直した際、太陽光発電と太陽熱温水器を導入した。その著者が言う。「世の中には、完全な技術はあり得ない。人工物である限り、自然に何らかの負荷をかけるのは当然である。ならば、なるべく負荷の少ないものを、個人が責任を取れる形で背負っていく覚悟が必要なのではないだろうか。それによって何もしないのが最善の場合もあるし(あえて新技術に手を出さない)、経費がかかっても積極的に実行する場合もあるだろう(太陽光発電はこれにあたる)」と。
小型・分散型・多様化エネルギーの解説書の形をとっているが、メッセージは個人に向けられている。「自然エネルギー利用を総計しても、今のように大量消費をしている全エネルギーのうちの30%にもならないだろう。エネルギー問題全てを解決できるわけではないのだ。しかし、だからといって、自然エネルギー利用を云々することが無意味であることにはならない。そこから私たちのエネルギー消費の現状と、よりムダのない利用の方向を厳しく見つめ直し、全体としてエネルギーの大量消費構造を変えていくヒントが得られるからだ。やはり、個人個人のエネルギー問題への姿勢こそが、未来を考える鍵なのである」。
温暖化などの気候変動を環境が人間に「環境圧」を与えているとみる著者は、携帯電話、自動販売機、クルマとの訣別を求める。それが真の豊かさにつながると考えるからだ。名古屋大学大学院理学研究科教授。
(文春新書 本体690円)
「省エネ・新エネ全国記事情報」(7、8月分)発行
省エネルギー、新エネルギーに関連する全国の新聞記事を1ヵ月ごとに整理・編集した「省エネ・新エネ全国記事情報(7、8月分)」ができました。国、自治体、企業、NGO、海外などの動向を網羅したもので、1ヵ月ごとに整理・編集して発行していますが、それぞれのお立場でお役に立つと確信しております。当協議会の会員の方には無料でご送付します。非会員の方には1部1000円(郵送料込み)にて、申し受けます。ご希望の方は住所、氏名等を明記のうえ、FAX(03-3341-3030)にてお申し込み下さい。現物と振込用紙をお送りします。3〜6月分が必要な方はその旨を記して下さい。
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