省エネ・新エネ普及Net エネルギージャーナル社
省エネ・新エネ普及推進協議会 関連情報

省エネ・新エネ普及ネット会報 第22号 2001年5・6月


新エネ導入目標 2010年度3倍に

風力38倍、太陽光23倍

総合エネ調報告


 総合資源エネルギー調査会の新エネルギー部会は6月22日、太陽光、風力発電など新エネルギーの2010年度導入目標を、1999年度実績に比べ全体で約3倍に引き上げることを骨子とする報告をまとめた。総合エネ調では同28日にまとめた新たな長期エネルギー需給見通しの中に、これを盛り込んだ。
 供給サイドの新エネのうち、発電分野を見ると、太陽光は118万kl(原油換算)と約23倍、風力は134万klと約38倍、廃棄物は552万klと約5倍、バイオマスは34万klと約6倍に、それぞれ目標を引き上げる。また、熱利用分野では雪氷冷熱を含む未利用エネルギーを約14倍の58万klに引き上げるなど、発電、熱利用合わせて計1,910万klと、99年度実績693万klの約3倍に目標を設定した。
 この結果、一次エネルギーに占める新エネの供給比率は、99年度の1.2%から2010年度は3.2%に高まることになる。
 一方、需要サイドの新エネではクリーンエネルギー自動車を99年度の6.5万台から約55.3倍の348万台に、天然ガスコージェネレーションを152万kWから約3.1倍の464万kWに、燃料電池を1.2万kWから約183倍の220万kWに、それぞれ目標を引き上げた。
 報告書は今回の新エネ導入目標の引き上げに関連し、市場拡大のための助成が必要と述べ、特に初期コストが高い住宅用太陽光発電システムやクリーンエネルギー自動車に関する補助の見直しを随時行うとともに、集中的な補助が行われていない太陽熱利用に関しても、太陽光発電とのハイブリットシステムなどの導入促進のため、一定期間補助を検討する必要がある、と提言している。
 一方、電力会社に販売電力の一部を新エネでまかなうことを義務づけ、第三者機関がその実績に応じて証書を発行する制度の導入については、一部委員の反発もあって、その必要性を述べるにとどめた。
 このほか、報告書は自治体に対し、国と同様、すべての公用車を低公害車に切り替えるよう求めるとともに、エネルギー消費者としての国民および事業者には、太陽光発電、太陽熱利用機器、クリーンエネルギー自動車を積極的に導入するよう要請している。
 (注) 本報告書で言う「クリーンエネルギー自動車」とは電気自動車、燃料電池車、ハイブリット車、天然ガス車、メタノール車、ディーゼル代替LPガス車を含む。


 与党3党 再生可能エネ促進法制化検討


 上記、新エネ部会報告を受けた形で、自民、公明、保守の与党3党で構成する自然エネルギーに関するプロジェクトチームは6月25日、再生可能エネルギー導入促進対策に関する中間報告をまとめた。今回のまとめでは、再生エネの活用を推進するには新たな市場拡大措置が必要との考えを示し、新たな制度の導入に向けて、法制化を含めて早急に検討を開始すべきだと強調している。
 新たな制度とは、再生可能エネの導入基準(ポートフォリオ・スタンダード)を設定、取引可能な証書の保持を基本とするというもの。一方で、電力会社が自主的に実施している「グリーン電力制度」に関しては、「再生可能エネルギーの導入促進に貢献する取り組みとして評価される」と位置づけている。
 再生可能エネルギー導入促進のための法制化作業は、自然エネルギー促進議員連盟が「自然エネルギー発電促進法案」の提出を長らくめざしていたが、今回の与党3党の中間まとめではこの件について一切触れられていない。

 

 年間10万円分もの節電

太陽光発電モニター事業報告

クリーンエネルギー普及調査会


 クリーンエネルギー普及調査会(理事長・深海博明慶大名誉教授)は6月8日、東京都内で太陽光発電モニター事業最終報告会を開いた。同調査会は生活クラブ生協東京と同神奈川が東京電力などの協力を得て、太陽光発電のモニター事業を実施するために1997年に設立した組織で、この日は4年間の実績と評価をまとめた報告が行われた。
 このモニター事業に参加したのは東京都、神奈川県在住の132人。1999年10月から2000年9月までの1年間の発電実績を見ると、一世帯平均の発電量は2,945kWhで、売電量はその約55%に相当する1,595kWh。この結果、年間平均で74,900円(従量電灯契約)の電気料金が削減され、時間帯別電灯契約だと、99,300円も節減されたという。ただ、発電実績はトップと最下位で約2倍の差が出たそうで、これはパネルの設置条件によるものと、同調査会ではみている。
 一方、パネルの設置費用は既築で約330万円(うち補助金約149万4千円)、新築で約313万円(同150万円)、出力は3.12kW(いずれも平均)。
 今回のモニター事業を通じて、月別でみると、3〜5月に発電量が多くなり、夏はパネルの温度が上がるため発電効率が下がるということもわかった。また、モニター世帯は一般の家庭のCO2排出量(自家用車を除く)の約30%を削減したことになるという。
 同調査会はこの報告をもとに、(1)太陽光発電システムに対する各種助成制度を今後も一定期間継続するとともに、新たな助成制度を創設してもらいたい(2)公共施設に率先して太陽光発電などのクリーンエネルギーを導入してもらいたい(以上、対行政)(3)より一層の高効率システムを開発してもらいたい(対メーカー)(4)発電電力の買い取り価格を維持してもらいたい(対電力会社)(5)共同クリーンエネルギー発電所、グリーン電力制度などに参加しよう(対生活者)――などの提言を行った。
 モニター事業に参加した人々は今後も交流を続け、発電実績などの追跡調査を行うことにしている。


「持続可能な交通」めぐり議論

環境文明21 脱クルマ社会に向けて


 NPO法人・環境文明21は6月22日、東京都内で「クルマ社会を変えよう」と題するワークショップを開いた。日本のCO2排出量の約20%を占めるクルマに過度に依存する社会のあり方をめぐって、活発な議論が展開された。
 この中で、柳下正治・名古屋大大学院教授はOECDの持続可能な環境保全型交通(EST)プロジェクトを紹介。ESTガイドラインによると、交通分野に特化した定量的目標として、(1)交通部門からのCO2排出量を1990年レベル20%以下(80%削減)とする(2)交通インフラに供される土地利用の全体に占める割合を1990年レベル以下にする――などが盛り込まれているという。目標年次は25〜30年先とされているが、柳下教授は「ESTレポートが出されたのを機に、持続可能な交通のあり方に関する本格的な議論や検討に着手すべきではないか」と訴えた。
 一方、東京都武蔵野市交通対策課の中村哲朗氏は同市のムーバス(コミュニティバス)への取り組みを説明、運賃が100円にもかかわらず、運行開始4年目から収支が黒字化したと報告した。
 このほか、会員から自動車の燃費に関して、米国のCAFE(企業別燃費規制)の日本への導入、2010年のガソリン車燃費改善目標(1995年比)22.8%をEU並みの28%への引き上げなどが提言された。パネルディスカッションでは、カーシェアリング(乗用車の共同利用)の拡大、自転車利用を促進するためのインセンティブ導入の必要性などが強調された。


「人類は廃棄物とともに」

「拡大生産者責任」を明記

環境省、初の循環型社会白書


 「廃棄物は人類の歴史とともにあり」――環境省が循環型社会形成推進基本法(昨年6月施行)に基づいた初めての循環型社会白書を6月26日閣議に提出、了承された。産業廃棄物の広域移動、大量の不法投棄という現状を前に、過去、人間がどのように廃棄物と対応してきたかと振り返ることで、経済や生活を見直していこうという姿勢が読みとれる。
 序章ではエジプト、ギリシャ、インダス、中国の4大文明から始まり、ヨーロッパ中世、日本の江戸時代における廃棄物対策の系譜を追う。江戸時代には物が大事に扱われ、廃棄物もほとんど出されなかったと言われているが、その背後に提灯の張り替え、炬燵(こたつ)の櫓(やぐら)直し、傘の古骨買いなど合わせて27業種もの循環的利用を支えた業者が存在したことを指摘。
 第1章で廃棄物の発生量および循環的利用、処分状況を示したあと、第2章では循環型社会の形成に向けた制度や考え方を整理。この中で「拡大生産者責任」について、「生産者がその生産した製品が使用され、廃棄された後においても、当該製品の適正なリサイクルや処分について一定の責任を負うという考え方」と規定、生産者に(1)製品の設計を工夫すること(2)製品の材質または成分の表示を行うこと(3)一定の製品について、それが廃棄された後、引き取りやリサイクルを実施すること――を求めている。
 このほか、第3章の循環的利用に関する取り組み状況の中で、ごみ焼却施設での熱回収、発電が拡大していることを示し、平成9年度末で全国の190施設がごみ発電を実施(うち104施設は売電も)、その発電能力は約84万kwで、約170万世帯の消費電力に匹敵する、と強調している。


大統領、せめて「省エネ」を考えて―

 ▼拝啓、ブッシュさん。今年も暑い夏がやってきました。この夏、カリフォルニア一帯での電力不足が起きなければよいが…と余計なお世話かもしれませんが、遠いところから心配しております。
 ▼ところで、日本の雑誌「省エネルギー」(同センター発行)の6月号に「なんでも浪費する、アメリカ」と題した一文が掲載されています。ノースカロライナ・ジャパンセンター研究員の永見裕一さんが書いたものです。これを読んでびっくりしました。
 ▼なんでも、お国ではセキュリティー上の理由から、一戸建ての事務所では部屋の電気やエアコンをつけたまま、スタッフが帰ってしまうということです。それは、電気がついていなければ無人であるとわかってしまうし、たとえ、電気がついていても、エアコンが入っていなければ、侵入者はだれもいないと判断するからだそうです。だから、双方ともにつけっ放し。
 ▼しかも、「朝来たときにも快適な環境で仕事が始められるでしょう」というダメ押しの説明があったということです。これを聞いて、永見さんも旅行に出かける際には自宅の電気をつけっ放しにするようにしたそうですが、さすが日本人だけあって、エアコンは消したようです。
 ▼この一文にはほかにも「生活習慣病」とも言うべきお国の浪費ぶりが多々書かれていて、日本とのあまりの落差にただ驚くばかりです。これを読んで思いました。日本ではお国の電力不足は規制緩和の結果、とよく言われていますが、自由化が原因というより、常識的に考えて「こんなに電気を使えば足りなくなるのも無理ない」ということではないでしょうか。
 ▼でも、大統領は「それは日本の常識であって、米国のそれではない」とおっしゃるかもしれません。「京都議定書は米国の国益に沿わない」という大統領ですから、「セキュリティーのためにエネルギーを使うことは米国の伝統である」と考えても矛盾は生じないでしょうね。
 ▼これに反して、日本では埼玉県川越市のように、エレベーターの使用回数を減らしてまで「1%節電運動」というまことにつつましい努力を継続しています。温暖化の影響は米国人、日本人とも平等に被ります。ひとつ、お考え直し願えないでしょか。無理を承知でお願いいたします。敬具。  (I)



<文献紹介>

今泉みね子  『フライブルク環境レポート』

 「環境首都」と呼ばれるドイツ・フライブルクに住む著者が生活体験をもとに、多様なテーマを地道に掘り起こした労作。サッカー場やコンサート、万博会場などにリユースコップを導入、ゴミを減量した話は感動的である。
 日本では一般に多数の人が集まる会場では、紙コップなどの使い捨て容器を用いることが主流だが、ゴミを減らすという観点から、ポリプロピレン製のリュースコップを採用、サッカー場のゴミが60%以上減ったという。飲料スタンドを出店する業者はメーカーにリース料を払って納入してもらい、ビールなどを売る際、客からデポジット金を取り、コップが返却されたら、これを払い戻すという方式で、実に99%が回収されるという。
 もともと、マイグラスを持ってパーティなどに参加するというお国柄だけに、こうした方法が浸透しやすいという背景もあろうが、野球場などで1回1回ビールを求めるたびに新しい紙コップを渡され、それが大量のゴミとして出口に山積みされている光景を見慣れている身には、きわめて新鮮である。
 フライブルク市では1999年に1,000台収容の駐輪場が中央駅の脇にできたという。ドーナツ型、3階建てのこの自転車ステーションは、屋根付き、警備付きだけでなく、公共交通機関の情報コーナー、ツアー情報の提供、カーシェアリングの窓口などを併設、しかもカフェもある。クルマをできるだけ排除しようとする同市ならではの施設だが、なんともうらやましい限りだ。
 このように、ゴミ、交通問題のほか、エネルギー、教育、自然、経済、NGO・市民活動などのテーマで実例が細かく紹介されている。この本は(財)地球・人間環境フォーラム発行の「グローバルネット」に1992年から2000年12月まで連載されたレポートをまとめたものだが、この間、日本は「失われた10年」と言われている。日本がひたすら失っている間、ドイツはコツコツと得点を重ねてきた――というのが読後感である。

(中央法規出版 本体2,200円)



原  剛   『農から環境を考える』

 「世界人口の2.2%でしかない日本人が、世界の輸出穀物の20%近くを一国で輸入・消費している現状を何とも思わないほど、わたしたちは能天気だったのだろうか」と、著者は疑問を投げかける。世界に今ある食料危機、そして、さらなる人口増と温暖化により加速が予見される将来の食料危機――それを地球環境の視点から考察しようというのが本書のねらいである。
 食料自給率の向上、「食の安全」への取り組みなど日本農業が抱えている課題は多いが、一方で農業が環境・自然破壊の元凶になりうることを指摘、「持続可能な農業」をどのようにして実現していくかを考える。また、8億人もの飢餓人口に全く無頓着としか言いようがない日本人の、食生活とは無縁の“食べ残し生活”にも批判の目を向ける。
 持続可能な農業がめざす方向について著者は、米国農業法が模索中の低投入型農業や、EUが実施している環境保全型農業への助成、所得補償制度、加えて地元の農作物を地元で消費する「地産地消」による地域流通・消費の拡大を挙げている。そして、農業が持つ貨幣に換算できない環境、文化面での価値(関係価値)を軽視してはならないと強調する。
 この貨幣に換算できる「交換価値」とは対極にある「関係価値」がこの書のキーワード。それはWTOの思想とは鋭く対立する概念であるが、著者は強く支持してやまない。
 新書版にしてはきわめて多様で複雑な問題が盛り込まれているという印象を受けたが、手際よく整理されていて読みやすい。それに、こうした「警告書」にありがちな独善や押しつけが見られない点も好感が持てる。

(集英社新書 本体600円)




イベント情報募集

 省エネ・新エネ関連のシンポジウム、研究会、展示会など各種イベント情報をお寄せ下さい。この会報に順次紹介していきます。ただし、会員が主催もしくは関係しているものに限らせていただきます。原稿の扱いは事務局に御一任下さい。


「省エネ・新エネ全国記事情報」 (2000年12月分)発行

 省エネルギー、新エネルギーに関連する全国の新聞記事を1ヵ月ごとに整理・編集した「省エネ・新エネ全国記事情報(2000年12月分)」ができました。国、自治体、企業、NGO、海外などの動向を網羅したもので、1ヵ月ごとに整理・編集して発行していますが、それぞれのお立場でお役に立つと確信しております。当協議会の会員の方には無料でご送付します。非会員の方には1部1000円(郵送料込み)にて、申し受けます。
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