「05年以降、早期に環境税導入」
中環審専門委 中間報告
産業界も軌道修正ヘ
中央環境審議会の地球温暖化対策税制専門委員会が6月13日、「2005年以降、早期に温暖化対策税(環境税)を導入すべきである」とする中間報告をまとめた。環境税に関しては6月10日に奥田碩・日本経団連会長が「前向きに検討しなければならない」と発言、これまで導入に抵抗を示してきた産業界も軌道修正の動きを見せており、導入論議に一気に弾みがつきそうだ。
中間報告は「第2ステップ(2005〜07年)以降に温暖化対策税を導入する可能性を事前に明示することは、早期の対策実施を進めるメリットを与えうる点から望ましい」と強調。また、導入にあたっては「温暖化対策のための税制優遇措置を含む減税(自動車税のグリーン化など)と併せて、税制改革全体の中で検討することが必要である」と述べている。
課税のタイプとして報告は、1)全ての化石燃料(石炭、石油、天然ガス)に対し、炭素含有量を勘案して、上流(化石燃料輸入業者など)で課税する「化石燃料上流課税」、2)同じく下流(化石燃料の販売業者など)で課税する「化石燃料下流課税」、3)CO2の排出量に応じて排出者(CO2大規模排出者)に直接課税する「排出量課税」―― の3種類を提示、3タイプの組み合わせも可能という考え方を示した。
電力に関しては現行の石油税と同様、発電用燃料にも課税されることになるが、これは発電事業者が「CO2排出のより少ない発電用燃料を選択するインセンティブを生じさせる」と付記、税負担は石炭、石油、天然ガスの順で重くなり、原子力、水力、風力、太陽光などの化石燃料起源以外の電源には課税されないことを改めて強調している。
税収の使途に関しては「税制面の対応においては全国的視点から制度を構築することが適当であるが、対策については、地域における取り組みが重要であることから、税収の一部を自治体の財源にする方式も考えられる」と、自治体への配慮が必要であることを示唆。その具体例として、自治体が実施する温室効果ガス抑制に向けた都市整備、植林、里山林の整備、国土緑化運動の推進・都市緑化によるCO2吸収源の保全・強化などを挙げている。
環境税については日本経団連などが「企業の競争力の低下につながる措置の検討は慎重を要する」と、導入に消極的な姿勢を維持しているが、奥田会長の発言に見られるように、産業界も徐々に“外堀”が埋められつつあるという認識が強まってきたようだ。
CO2吸収に森林整備急務
環境・農水懇談会 中間報告
環境省と農水省の「地球環境保全と森林に関する懇談会」が6月11日、中間報告をまとめた。報告はCO2等の削減目標90年比6%減のうち3.9%を森林による吸収で達成するには、「現状の整備水準(1998年〜2000年)ではその吸収量は大幅に下回る恐れがあると推定される」として、新たな森林整備に早急に着手するよう求めている。
整備の柱は、1)道路網整備の遅れなどから森林施業が行われず、管理が不十分な人工林の整備・保全 2)奥地天然林などにおけるササ生地の未立木地での森林の再生 3)林齢が高い人工林を複層林に誘導する100年の森林づくり 4)NPOなど市民参加による里山林整備 ―― となっている。
これら森林整備を推進するにあたり、報告は日本人のライフスタイルと関連させて森林をとらえるとともに、学校教育の総合学習の時間などで森林学習を積極的に実施するなど、多様な形を模索するよう提言。このほか、中長期的には財源確保のため環境税導入などの検討が必要、と言及している。
これら森林整備に要する費用は、2003年から10年間で1兆1,740億円と試算されている。最終報告は8月の予定。
「温暖化の影響、すでに深刻」
モンゴル自然環境相強調
日本の協力と先進国の責務訴える
モンゴルのウランバヤル・バルスボルド自然環境相が7月1日、日本環境ジャーナリストの会の研究会で、「温暖化…モンゴルへの脅威」と題して講演した。同環境相は、「モンゴルはほかの国より10倍のスピードで温暖化の影響を受けつつある。対策を講じるにはあまりにも時間が足りない」と訴えるとともに、日本の協力を強く求めた。
同国の首都ウランバートルでは1992年から2001年までの過去10年間でみると、1月の最低気温がマイナス28.6℃からマイナス39.8℃まで下がる一方、年間の平均気温はマイナス0.2℃から5.6℃まで上昇、気候変動が急速に進んでいるという。また、同国のある地域では過去60年の年平均気温が1.8℃(世界平均の3倍)上昇、モンゴル全体では2050年までに5〜6℃の上昇が予測されている。
この結果、夏季の降水量の減少、氷河の後退、永久凍土の溶解、湖沼の消失といった現象が起こり、水量の減少が顕著になっている。また、北部地域における永久凍土層の深度は1945年の50mが67年に28mに、92年には18mになったという。これにより、今世紀中ごろには永久凍土が消失すると予測されている。このため、膨大なエネルギーが地上に放出され、大量の凍土層蓄積のメタンガスが放出されている。
さらに、1990年以降、ゴビ地域にある湖沼が全て消失、4つの河川も消えつつあり、中でもオンギ川は百数十Kmにわたり消失してしまったという。水量の減少も深刻で、ウランバートル市民の水源であるトーラ川では今春、2週間にわたって断流が起こったそうだ。
このほか、森林火災の頻繁な発生と永久凍土層の溶解によって、森林が減少、これに伴い、降雨量の減少、表面水の減少、地下水不足をもたらし、植生、草地の減少が顕著になっている。
こうした草地の砂漠化によって、同国の基幹産業である遊牧型の家畜生産は大きな打撃を受けており、2000年には349万頭、2001年には476万頭が死亡。伝統的な遊牧生活というライフスタイルの変更を迫っているという。同時に、モンゴル人の食料不足という現象も出はじめた。
一方、同国は銅、モリブデン、金などの輸出国でもあるが、銅山、金山などで地下水や表面水を使うため、これが砂漠化に拍車をかけているというジレンマにも陥っている。カシミヤ、畜毛加工品などの輸出にも陰りが見え始めており、バルスボルド自然環境相は「温暖化により、国家は存亡の危機に立たされている」と、理解を求めた。
こうした現状に対し、同相は「温暖化対策を中心とした日本との環境協力を具体化し、確固たるものにしたい」と、日本の積極的な協力を求めた。また、8月にヨハネスブルグで開かれる環境サミット(リオ+10)の場において、「モンゴルは気候変動枠組み条約を最初に支持し、しかもCO2をほとんど排出していない。その国がすでに大きな被害を受けつつあるから、温暖化に対する先進国の責任を強く訴えたい」と述べた。
同相は1964年生まれで、現在37歳。「モンゴルは若者の国。これからはエコツーリズムを産業化して、国を支えていきたい」と、自然環境省の予算は日本円で約1,200万円という状況の中でも、終始、前向きの姿勢で語った。
「過度な緑化、地下水位を低下」
砂漠化シンポで問題点指摘
「砂漠化のメカニズムと日本の役割」と題するシンポジウムが6月17日、環境省などの主催で東京都内で開かれた。1996年に国連砂漠化対処条約が発効、日本も98年に批准しているが、わが国では砂漠化(土壌荒廃)に対する一般の認識が低いということから、シンポが開催された。
石弘之・東大教授が基調講演を行ったあと、砂漠化問題の専門家が意見を述べたが、半乾燥地における緑化(植林)に関して、大手信人・京大助教授は「現地の自生種は水効率がよいが、いわゆる緑化樹種は水を浪費する。従って、過度な緑化は地下水位の低下を招く。また、ユーカリなどの早成樹は地中の養分を収奪する」と述べ、注目された。
一方、吉川賢・岡山大教授は「熱帯地域では毎年、イスラエルの国土と同じ面積の森林が減少している」と警告したうえ、「緑化を林業につなげていくべきだ」と提言。また、NPO法人・サヘルの森の森律子氏は、地域の政治、社会情勢に十分配慮した植林活動を行うべきだと強調した。
このほか、武内和彦・東大教授は中国の黄砂現象と温暖化の関連を示唆するとともに、韓国では黄砂飛来の直後に死亡率が高まるというデータがあることを紹介した。
砂漠化(土壌荒廃)地域は貧困とパラレルな関係にあると言われているが、これらの地域に約12億人が居住している。シンポでは日本から中国などへボランティアで植林に出かける人が増えているが、植樹にはかならずしも適さない夏休み期間中に集中する傾向がある(適期は4〜5月)とか、モンゴルなどでは山羊の飼育が盛んになって、草原を荒らし土壌荒廃の原因を招いているが、その生産物であるカシミヤが日本に大量に輸入されているといった矛盾も指摘された。
「反対」ばかりでなくビジョンの確立を
R・ブラウン氏「エコ・エコノミー」提唱
「市場に真実を語らせるべき」
ワールドウォッチ研究所を設立し、今回新たにアースポリシイ研究所を立ち上げたレスター・ブラウン氏が近著『エコ・エコノミー』を刊行したのを機に4月11日、東京都内で講演した。この中で同氏は「これまでの環境保護派の行動は反対運動ばかりで、将来を見据えたビジョンが欠落していた」と強調した。
ブラウン氏は近著の中で、1)人類は地球を救うための戦略レベルでの闘いに敗れつつある 2)環境的に持続可能な経済(エコ・エコノミー)の在り方について明確なビジョンを持つ必要がある 3)新しいタイプの研究機関(エコ・エコノミーのビジョンを提示するだけでなく、その実現に向けての進捗状況の評価を繰り返し実施する機関)を創設する必要がある−−という認識のもとに、アースポリシイ研究所を設立したと述べている。
同氏は講演で「市場が真実を語るべきだ」と述べ、「そうしないと、資本主義は崩壊する」と強調。その事例として、社会的コストを負担しないクルマの販売や、森林の伐採による洪水の多発(立木の方が材木より3倍の価値がある)などを挙げた。「市場に真実を語らせるには、税制改革(炭素税の導入)が不可欠であり、米ブッシュ政権はこの面でリーダーシップをとるべきだ」と語った。さらに、米国の京都議定書からの離脱には米国民の65%が否定的意見を表明しているとも述べた。
さらに、クルマ中心のグローバル化経済を再編成し、風力、太陽光など新たなエネルギー経済に移行させるとともに、「石油産業の影響力を克服するまでの力を我々は持たねばならない」と訴えた。そのための技術はすでに存在しており、米国では1kW時3セントの風力発電が可能になっているという見方を示した。さらに、中国では風力発電だけで、現在の倍の電力の供給が可能という見通しも語った。
「原則車道走行・鉄道に駐輪場義務化」
自転車活用推進研が報告書
新たな法制化も求める
自転車活用推進研究会(委員長・小杉隆帝京大教授)は4月17日、「自転車総合政策の確立に向けて」と題する報告書を、超党派の自転車活用推進議員連盟(会長・谷垣禎一衆院議員)に提出した。同研究会は合わせて自転車活用推進法案(仮称)の素案も提示、同議連に議員立法での法制化を働きかけた。
同研究会の報告書は2000年9月から2年間にわたり、検討を続けた結果を集約したもので、運輸部門におけるCO2の削減のため、クルマから自転車への転換を促すにあたり、自転車の活用推進にとっての課題、問題点を網羅するとともに、現行関連法規の改正、もしくは新法の制定を求めている。
報告書はまず、都市交通体系の中に自転車を明確に位置づけるとともに、走行空間の確保を強く求めた。「軽車両」という位置づけにある自転車は本来、車道ないし専用レーンを走行することが原則であり、この原点に立ち返るよう要望。路上違法駐車の徹底排除と、トラック業界などによる路上荷捌きの早期ルール化を訴えている。
また、駅前放置自転車を削減するため、鉄道事業者に駐輪場の設置を義務づけるとともに、車道上の駐輪など、新たな発想による駐輪場の確保を求めた。最近急増している輸入自転車に関しては、国としての安全基準を設け、同時に安全走行教育を小学校低学年から徹底するよう提言。
さらに、循環型社会をにらんで、自転車の共同利用とリサイクルにも言及し、公共(共有)自転車の普及と放置自転車のリユース、途上国への寄贈に積極的に取り組むよう強調する一方、クルマから自転車への転換を促すため、自転車通勤者への経済的インセンティブの導入、鉄道車両等への持ち込みを拡大するよう求めている。
このほか、自転車政策を総合的に展開するため、政府内に一元化した政策を担当する調整担当(官)を設置することを求め、自転車利用者の声を政策に反映させるため、「自転車ユーザーユニオン」(仮称)の創設を提言。これらを合わせて、短期、中長期の計26項目の提言を掲げた。
国会議員66%が導入賛成
「サマータイム」で調査
(財)社会経済生産性本部が実施した国会議員に対するサマータイム(夏時間)制導入の是非を問うアンケート調査で、66.5%の議員が導入に賛成と回答した。この調査は同本部が生活構造改革フォーラム(代表=茅陽一・東大名誉教授、評論家・木元教子氏)を立ち上げたの機に実施されたもので、3月18日に発足した同フォーラムではこの結果に基づき、超党派の「サマータイム推進議員連盟」の発足を働きかける方針。
この調査は衆参全国会議員725人を対象に実施され、うち200人(27.6%)から回答を得た。200人のうち、サマータイム制の導入に「賛成」もしくは「どちらかと言うと賛成」と答えた議員は133人に達した。さらに「直ちに法案化し実現」(29人)、「2〜3年のうちに実現」が合わせて115人いた。
導入賛成者にその理由を聞いたところ、「夕方の明るい時間が増えることで生活スタイルが変わり、家族との触れ合いやボランティア活動への参加、文化・スポーツに親しむことが容易になるから」(複数回答75.2%)、「省エネ効果が期待されるから」(同71.4%)などの回答が多かった。
一方、導入に「反対」もしくは「どちらかと言うと反対」は56人(28.0%)で、その理由は「現状に問題があるわけでなく、導入の必要性を感じないから」(複数回答46.4%)、「結果的に労働時間の増加や労働強化につながる恐れがあるから」(同37.5%)などする回答が目立った。
GLOBE Japan 「水資源」でシンポ
地球環境国際議員連盟(GLOBE japan、会長・橋本龍太郎元首相)が4月15日、「水との共存 ―― 環境安全保障の確立を目指して」と題するルシンポジウムを東京都内で開いた。同議連は日本政府に対し、「本年8月末のヨハネスブルク・サミット並びに来年3月の第3回世界水フォーラムの場で、水資源の公平かつ持続的利用に向けた議論のリーダーシップをとるべきである」とアピール。また、同議連の谷津義男事務総長は議員立法による「自然再生法案」(仮称)の国会提出を準備していることを明らかにした。
シンポでは「森は海の恋人」をスローガンに水質改善のため源流地域で植林活動に取り組んでいる畠山重篤氏、水資源を重視した街づくりを推進している神奈川県南足柄市の職員らがそれぞれの立場から現状を報告。また、「水を基盤とした環境安全保障を考える」と題してスピーチした中山幹康・東京農工大教授は世界的に水資源を巡る係争が懸念されていることに触れ、「過去10数年を見る限り、確かに係争も増えているが、水資源の逼迫により流域国間における国際協調の事例の方が多い」と述べ、注目された。
同議連はこのシンポを踏まえ、国際的な水資源問題解決のため、GLOBEネットワークやNGOと連携しながら、内外の立法者、各国政府、国際機関に働きかけを強めることを確認した。
美唄で「雪サミット」、テーマは「白いダイヤ」
雪を資源として位置づけ、エネルギー活用や地域の活性化につなげようという第5回全国明るい雪自治体会議(雪サミット)が7月6、7の両日、北海道美唄市で開かれた。今回の統一テーマは「雪は白いダイヤ ―― 今年の七夕には、あなたの白いダイヤを見つけましょう」。
7月6日には、JAびばい氷室貯蔵試験研究所、雪冷房を導入した賃貸マンションなどの施設見学会があり、市町村長会議が行われた。
7日は雪冷熱活用の事例発表に続き、専修大北海道短大の山上重吉教授が「農の風景 ―― 空知における地産・地消への道」と題して基調講演。さらに、第1分科会(北海道内における利雪・親雪)、第2分科会(自然冷熱エネルギー利用の現状と展望)でパネルディスカッションが行われた。
<文献紹介>
小林 料 『「生真面目」でいいじゃないか ――電力・環境・人模様』
東京電力で50年間、一貫して「公害・環境畑」を歩み続けた著者が、自らの体験に基づき、エネルギーと環境の調和を切々と訴える。東電が業界に先駆け、1968年に「公害対策本部」を設置した経緯や、東京都と「公害防止協定」を締結したてん末など、渦中にあった人でないと記述できない貴重な歴史の証言が随所にみられ、「電力・環境史」の側面も持つ。
また、第二部の将来に向けた提言の中で、地球温暖化問題、カリフォルニア問題などに触れて著者の持論を展開しているが、いずれも企業人の枠を超えた幅広い視点からの論述になっている。これは本書にも盛り込まれているNGO体験から来るものかもしれない。社外の人間とのつき合いがいかに重要か、改めて本書は問いかける。
サブタイトルにある「人模様」はコラム形式ではさみ込まれているが、いずれも著者の人間性が色濃く反映されていて、「仕事ばかりが人生ではない」と言いたげだ。著者は1994年にUNEPのグローバル500賞を受賞したが、その授賞式の光景もほほえましい。
政・官・民、あらゆる所で不祥事続きの今日、著者は「生真面目でいいじゃないか」と警鐘を鳴らしたいのかもしれない。
(エネルギージャーナル社 本体1,800円)
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